分岐点 こんごうの物語   作:スカルルーキー

8 / 81
急速に 距離を詰める 2つの艦影

勝利を確信する者、明日の為に挑む者

海の上の戦いが始まる


7.砲雷撃よ〜い!

パラオ泊地 旗艦 由良

「提督さん 落ち着いたら いかがですか? 慌てても艦は進みませんよ」と 由良に言われて、由良の代わりに 艦長席に座る 泊地提督は

「ああ 分かっている」と答えた

 

駆逐艦を先行させる事も考えたが 洋上での艦隊合流は難しい

分散する愚を犯すより 纏まって居るほうが 都合がいい

 

「由良 装着艤装は重くないかい?」と 提督が尋ねると 由良は

 

「はい 大丈夫です、コレを着けている方が 艦の性能も上がります」と答えた

長良型4番艦として建造された彼女、1923年から今まで数々の戦場を駆け巡った

パラオでは 泊地設営初期から 秘書艦を務め、いまや 提督の信任が一番あつい艦娘である

 

「すまないね 僕がこの席に座っていて」と遠慮がちに言う 提督

 

「提督さん」と やや照れながら答えた 由良

 

「航海長 金剛の位置は特定出来たか!」

 

「はい 提督、先程の電文受信時 殿の 秋月と三点計測を行いました、本艦 前方およそ70km前後の海域です」

 

「由良、水観 出せるか?」と 提督

 

「先程から 準備出来ています、もう“俺の出番はまだかって”うるさいですよ」

 

「すまんが 前方警戒に出してくれ、どうも電文の内容が気になる」

「はい 提督」と 由良は艦内電話を取り

「水観 出番よ! 前方警戒お願い」

 

「こちらカタパルトです、もう 水観妖精さん 機体で待ってますから、今から打ち出します」

 

「うるさいから とっとと打ち出して!」と 由良

艦の中央部から 水観が打ち出された

 

「電信妖精 金剛からの電文はコレで間違いないのだな」

 

「はい 提督、暗号電文です 確認しました」と 電信妖精

 

「いったい どういう事でしょうか?」と 由良

 

「この内容だけでは 何とも言い難いな、特に所属不明の友軍艦隊とは何だ?」

 

「はい 提督さん、最新の艦隊編成表を確認しましたが、重巡洋艦4隻の艦隊が近海で活動している という報告は有りません」

 

「まさかと思うが、金剛お得意の いたずらじゃないだろうな?」と笑いながら言う 提督

 

「雷撃を受けたのは間違いありません、長門さんがトラックへ報告する電文を傍受しています

 

「まずは 水観の報告を待つか、由良 一応 対潜、対空警戒を厳とせよ」

 

「はい 提督さん」

 

提督は数枚の 解読された暗号電文を持っていた

内容は

1枚目は出港直後に 受信した「深海凄艦 艦載機 当方へ向う」と言うものであった、雷撃で速力が遅くなっている所へ 艦載機に襲われれば 一溜まりもない

間に合うのかと思っていたが 次の電文は妙な電文であった

「我 所属不明の友軍 重巡洋艦4隻の援護を受け 深海凄艦艦載機をせん滅する 損害なし」

どういう事だ、友軍なのに所属不明? 金剛ほどのベテラン艦娘が 他の艦娘を識別出来ないはずがない、それが4隻 おまけに対空戦闘で無傷?

先程入電した次の電文も また奇妙であった

「我 速力低下するも航行に支障なし パラオ艦隊と合流を目指す」である

航行に支障なしと言うことは 転覆する危険性が少なくなったという事か

それより、まだこちらは電文を送っていないのに こちらが近づいている事が分かっているようだ、でも 金剛の水上電探は15km程度しか 索敵出来ないはすだ

とにかく 金剛は単艦ではなく 複数の艦とこちらへ向っている事だけは確かである

いったい何が起きているのだと 提督は考えた

 

 

 

自衛隊艦隊を離脱した こんごうは ひえいと一路 追撃艦隊へ進路を取っていた

相対速度 40ノットの高速で接近している

ひえいから

「こんごう 敵の大体の陣立てわかる?」

 

「う〜ん、レーダーエコーから 大体判別してる、先頭は重巡、次が軽空母、その次が駆逐艦が 3隻かな、クラスはわかんない」

 

「でもさ、eliteとかflagship級じゃないでしょう?」と ひえいが聞いた

 

「通商破壊艦隊とか 偵察艦隊なら 無印だと思うわ」

 

「で、どういう作戦で行くの?」

 

「まずは 反航戦で戦闘開始、砲戦でまず 先頭の重巡と空母を優先で叩く、駆逐艦は行きがけの駄賃よ、その後 急速反転して行き足が鈍った所を 最大戦速で 同航戦に持ち込んで けりをつける」

 

「一撃離脱法ね、了解」

 

「ねえ こんごう、お願いあるのだけど いい?」と ひえい

大体 予想がつく

 

「はいはい 重巡でしょ! 任せてあげるから」

 

「やりー、ありがとう こんごう」と嬉しそうに話す ひえい

 

「いい ひえい、リ級重巡は 装甲が固いから 速射砲で撃ち抜けない可能性があるから注意して!」

 

「うん、弾種 少し工夫してみる」

 

「私が 前方にフィールド張るから その間にけりをつけてね、精々もって 5分だからね、いくら足があっても 重量弾食らったら、こっちの装甲 紙ですからね」

 

「あ〜あ、私も こんごうみたいに フィールド展開できたら いいのにな〜」

 

「アレは アレで、結構大変なのよ 物凄く疲れるし、艦全体を覆うとなると 5分が限界よ、それ以上したら気絶しちゃうわ」

 

「ねえ、ついでに もう一つお願いしていい?」と ひえい

「12式魚雷も 使っていい?」

 

「ひとふた式は 対潜魚雷よ、使えるの?」と こんごう

 

「たぶん 大丈夫だと思う」と ひえい

 

「一度で いいから砲雷撃戦用意って言って見たかったのよ」

 

「あなた あの人の影響受けすぎよ」と呆れ顔の こんごう

 

「だってさ、いつも“僕はパラオで 降り注ぐ砲弾の雨の中 酸素魚雷を命中させた”って言ってたじゃん、やっぱそう言われるとヤって見たいでしょ!」

 

「じゃ 1発だけよ、駆逐艦なんかに もったいない」と こんごう

 

「ありがと」と嬉しそうに話す ひえい

 

「その代わり、戦闘報告書 よ ろ し く ね!」と こんごう

 

「うそ!勿論 手伝ってくれるわよね こんごう?」と焦る ひえい

 

「考えとく」とあっさりと見捨てる こんごうであった

 

 

 

 

パラオ泊地 旗艦 由良搭載の零式水上観測機

水観妖精は やや焦っていた、そろそろ 金剛達が見える頃なのだが なかなか発見できない、すると漸く 眼下の雲間に 金剛らしき艦影を見つけ 機体を滑らせて降下した

「よし 見つけた、由良に電信頼む!」

「はい 機長!」と電信妖精が 金剛発見の短文をモールスする

おかしい、由良を出る時に聞いた話では 所属不明艦は重巡洋艦4隻の筈なのに

巡洋艦は2隻 残り2隻は空母だ、それもデカい 赤城以上か、見た事のない形状だ

小さい方は 瑞鳳クラスか、それにしても奇妙な艦影だ

「電信妖精! 由良に今の陣立ても報告してくれ、最初の話と違う!」

手短に 電文をまとめ モールスする 電信妖精

 

「お〜い 金剛聞こえるか?」と無線で問いかける

 

「OH! この声は 由良の水観デスネ! 私は元気デス!」と明るく 金剛の声が聞こえてきた

 

「金剛、この所属不明な艦隊はなんだ?」と 水観は尋ねた

金剛が この不明艦隊の人質なのではと 疑ったのだが、答えは意表を突いた

 

「彼女達は、私の新しい妹と その仲間デ〜ス!」と元気な返事が帰ってきた

 

「新しい妹?」と 水観妖精は?マークだらけであった

 

「水観、それより後方を見てきて下さい! 追撃艦隊が追って来てマ~ス!」

 

「なんだと! 追撃艦隊だと!」と慌てる 水観妖精

 

「はい 妹達が足止めに行きました、6時方向 距離およそ60kmです、急いでクダサイ!」

 

「分かった 金剛、このまま真っ直ぐ行け! 提督と 由良はすぐ そこまで来ている!」

水観妖精は 機体を切り返しハーフロールを打つと、今度は追撃艦隊の確認に向かった!

 

 

 

由良の艦橋では、提督と 由良が 水観から送られてきた 電文をみて悩んでいた

「由良 もう一度整理するぞ、水観は 金剛に接触できた」

 

「はい 提督さん」

 

「しかし、当初 所属不明艦隊は 重巡洋艦4隻だった筈なのに、水観は重巡2隻に 正規空母2隻と言ってきた」

 

「そうです」と電文を確認しながら 由良が答えた

 

「そして、今度は後方に 追撃艦隊が接近していると言ってきた」

 

「はい」

 

「そして所属不明艦隊から、足止めのために数隻向かったという事だな」

 

「はい、今の内容で間違い有りません」

 

「という事は、所属不明艦隊は 最低でも重巡4隻 正規空母2隻の艦隊か」

 

「深海凄艦 または米国でしょうか?」と 由良

 

「深海凄艦の線はない、実際 金剛を助けている、また水観が近づいても迎撃しなかった、それに 米軍なら 金剛を助けるどころか、これ幸いと沈めてしまうだろう」

 

「では、突然現れたこの艦隊は何なのでしょうか?」

提督は 暫し考え

「由良 理解できないものは 実際に見て判断するしかない」

 

「まあ 金剛を助けてくれたんだ、お礼の一言も言わんとな」

 

「はい 提督さん」と 由良は前方を見直した

 

 

 

 

こんごう達は、急速に追撃艦隊との距離を縮めていた

「そろそろ見えても いい頃なんだけど、CIC レーダーコンタクト出来てる?」

 

「はい ばっちり見えてます、やはり重巡1 空母1 駆逐艦3ですね」

 

「間もなく 重巡の射程内に入りますけど、ECM戦 どうされますか?」と 砲雷長

 

「う〜ん、電子戦妖精 深海凄艦のレーダー波 捉えてる?」

 

「まだ 微弱ですか捉えてます、水上レーダー波ですね 距離測定をしていると考えられます、ただ此方のステルス性を考慮するとエコーは小さいはずです」と 電子戦妖精が答えた

 

「艦長、アクティブステルスを使いますか?」と 砲術長が尋ねる

 

「いや やめておきましょう、次回の戦闘の為に 記録だけとっておいて、今回は足の速い船に 目視照準でヤられたと言うストーリーにしておきたいから」

 

「CIC了解しました」

 

「艦長、何時から日本海軍は神業的目視射撃が 出来るようになったんですかね?」と 副長がいたずらっぽく言うと こんごうは

 

「あら、今からよ」とあっけらかんと答えた

 

「ひえい そろそろ行くわよ」

 

「こっちは いつでもいいぞ!」と返事が帰ってきた

 

「では 副長行きましょう!」と こんごうが 号令をかける

 

「対水上戦闘よ〜い! 第5戦速! 35ノット以上でぶっ飛ばしてイキマス!」

 

「両舷 第5戦速!」と 航海長が号令をかける

加速する船体、船首が海を切り裂き 白波が起こる

フィンスタビライザーが効き 高速走行にも関わらず揺れを感じる事が少ない

 

「距離1万5千で砲戦開始よ、第一目標 2番艦!」と こんごうが告げると

 

「CIC 了解しました、お任せ下さい!」と 砲雷長の元気な声が聞こえてきた

 

「艦長、後方から接近する航空機1 速力からプロペラ機だと思われます」

 

「何処から来たの?」

 

「方位は 艦隊とパラオを結ぶ直線上からですね、艦隊に接触した後に こちらへ向ってきました」

 

「う〜ん、問題ないなら ほっておきます」

 

「間もなく 2万5千、重巡射程に入ります」とCICの 戦術妖精が報告してきた

こんごうは前方へ意識を集中した

 

ウイングの 見張り妖精隊員が

「前方 艦影視認!」と告げてきた 

自分も 双眼鏡で確認すると、ぼんやりと艦影が見えている

 

 

すると、不意に無線で呼びかける声が聞こえた

「そこの所属不明の重巡 聞こえるか? こちらはパラオ泊地艦隊 由良搭載 水観だ!」

先程のCICから報告のあった不明機だ

 

「そんなに 怒鳴らなくても聞こえてますよ、こちらは海上自衛隊 護衛艦 こんごうに ひえいよ、よろしくね」

 

水観妖精は 一瞬聞き違いかと思ったが、確かに こんごうと ひえいと言った

「こんごうに ひえいだ? どうなっている、それに確か 金剛姉さんは妹とか言ってたな」

 

「水観さん 詳しい話は後でいい? いま取り込んでるの」と こんごう

 

「お前達、前方の艦隊が見えているのか!」と驚く 水観

 

「見えてるわよ、重巡1 空母1 雑魚3でしょ!」と ひえい

 

「とにかく 接敵してくる、回線を開けておいてくれよ」

 

「流れ弾に当たらないでね」と こんごうは答えた

 

 

 

 

 

そろそろかな

「副長 暫く戦闘に専念します、警戒お願いね」

 

「はい 艦長」

 

こんごうは 艦長席に座り直し、意識を集中した

そして こう呟いた

「エンゲージ!」

左手のブレスレットが 青く輝き その光が艦全体を覆い尽くす、艦の魂 艦霊がブレスレットを通して 彼女を包む、そう このブレスレットが艦娘の装着艤装の役割を果たすのだ、横須賀基地内の海軍神社に住まう大巫女が作りだした 精神感応金属である

 

「航海長 舵もらいます!」と こんごう

 

「ユーハブ コントロール」と 操舵妖精が言い、操舵輪から手を離した

 

「アイハブ コントロール」と答えながら こんごうは、意識の中で艦を操艦する

 

「敵艦 発砲!」と 見張り妖精が言うのとほぼ同時に、CICの戦術レーダーも砲弾を捉えた

 

即座に 「CIC レーダー解析!」

着弾予想位置が 網膜投影ディスプレイに表示される!

 

右舷 遠弾、このまま突っ切れる

「よし、一気に詰めるわよ!」

 

 

 

ひえいは 艦橋で仁王立ちになっていた

「副長、こんごうからの航路指示来てる?」

 

「はい 艦長、問題ありません」

 

こんごうが 前方で露払い役をしてくれる、こちらは こんごうからの戦術航法情報をもとに、操艦して追従していく

いわば こんごうが楯で 私が槍だ、はるなと きりしまが 艦隊の守りなら私達は切り込み隊と言うべき存在である

 

「副長、射撃に専念するから あとお願い」と ひえい

 

「艦長、一発決めてください」と 副長

 

「一発でいいの? 狙うなら全弾命中よ!」と意気込む

 

「砲雷長! 1万5千で砲戦開始、ひとふた式は 重巡にロックして!」

 

「はい 艦長、いつでも行けます トリガーそちらに渡します」

 

「弾種 徹甲弾、予備ラックに特殊徹甲弾を用意!」

 

「準備できてます!」と 砲雷長

 

「水上レーダーと FCSの連動確認!」

 

「はい 艦長、戦術射撃システム オールグリーン」

 

「では、始めます」と ひえい

 

「エンゲージ!」

ひえいの意識の中に 艦の兵装システムが流れこんでくる

射撃情報、各種解析情報、彼女は 今 艦と一体となって 獲物に牙を向けようとしている

 

「砲雷撃戦 よ~い!」と ひえいは張り切って言った

 

 

 

 

 

こんごう達は、一気に追撃艦隊との距離を詰め 残り2万を切った

リ級重巡は 散発的に砲撃を加えてくるが、すべて遠弾である

彼女達の速度に 射撃計算が間に合わないのだ、オマケに頼りのレーダー射撃もステルス性で エコーが不十分でうまく映らない、光学照準では精度が落ちる

オマケに、こんごうのスムーズな操艦で 着弾位置が躱されている

夾叉がまだ出ていない、重巡は ようやく3射目で 近弾を出したがそれ以降は全く追い付けない

本来なら、こんな砲戦はイージス艦の戦闘ではない

遠距離から 90式艦対艦誘導弾改で攻撃するのが一番いい、しかし こんごう達のチームはなぜか 士官候補生時代から指導教官に徹底的に艦砲を叩き込まれた

絶対的な速力で 敵陣に切り込み 一撃離脱するその戦法は他のチームから異様な目で見られたが、今に思えばこの時の為だったのかもしれない

 

「艦長、間もなく 1万5千 砲戦開始距離です!」と 副長が叫ぶ

 

「ひえい 始めるわよ!」と 落ち着いた声でいう こんごう

 

「了解!」 ひえいの元気な声が帰ってきた

 

「フィールド展開 艦首に形成!」と こんごうが気合を込めた

艦首部分に 青白くハニカム状の力場が形成され 一枚の透明な楯となってイージス艦隊を覆った、その時 リ級の8inch砲弾が ついに こんごう達に降り注ぐ

しかし、リ級の砲弾は フィールドに弾かれてあらぬ方向へ跳弾した

 

「よし 行ける、行けるわ!」と こんごう

 

「こんごう! 射線確保するから 少し右にでるよ!」

ひえいは こんごうの右舷へ ほんの少し軸線をずらした

こんごうは直ぐにフィールド位置を調整して ひえいをカバーする

 

 

「艦長、砲撃開始位置です!」

 

「CIC 指示の目標 軽空母! 弾種 徹甲! 主砲撃ち~方 始め!」と こんごうが命じた

CICで 砲雷長が静かに ピストル型のトリガーを引いた

 

 

「撃ちます!当たってぇ!」と ひえいも射撃を開始した

こちらは 艦長席に付属した射撃トリガーを 自分で操作していた

 

射撃開始と同時に、こんごうは ほんの少しフィールドにすき間を開けた

自分の射撃システムと ひえいの射撃システムを同期させ、砲弾の通るすき間を計算したのだ、後に「奇跡の5分」と言われる砲戦が始まった

 

約3秒間隔で 主砲が発射される、戦艦クラスに比べれば 可愛い音だ

しかし、確実に目標艦に向かい飛翔する砲弾

ほぼ同時に リ級重巡と空母に弾着した、立て続けに弾着する!

リ級は 初弾で艦橋を撃ち抜かれた

集中的に艦橋部を撃たれている、まずは艦の射撃統制機能を奪うのが目的だ

ひえいは 艦橋の機能が消失したと思うと、次の目標を艦首兵装に切り替えた

 

「弾倉ラック、特殊徹甲弾に切り替え!」

 

「CIC 弾種変更完了、行けます!」と 砲術長か返信してきた

 

「よし、射撃再開!」と次の目標に向け 再度トリガーを引いた

 

「弾着 今!」と 見張り妖精が大声で伝える

 

軽空母に次々と弾着する、やはり リ級ほど装甲が厚くない右舷側に集中して弾着している

不意に 軽空母から巨大な火の手が上がった

どうやら、艦内の可燃物か弾薬庫を 砲弾が直撃したようだ

急速に 右舷側に傾斜しているのが 望遠カメラ映像からも分かる

慌てて 後続の駆逐艦が楯になろうと前進してきたが

 

「もう遅いわ 次は貴方の番よ」と こんごうは、砲撃照準を駆逐艦へ切り替えた

 

「CIC 目標変更、3番艦 砲撃始め!」

 

「目標変更! 砲撃始めます」と 砲雷長が冷静に対応する

 

不意に リ級重巡の後部から巨大な水柱が上がった

ひえいの放った ひとふた式短魚雷が リ級の船底に命中したのだ

機関がいかれたのか 急速に速力を落とす リ級、もう殆ど戦闘能力が残っていない

ゆっくりと船尾から沈み始めている

 

「ひえい リ級はもう大丈夫?」

 

「こんごう ほとんど戦闘能力はないと思う」

 

「砲撃目標を 駆逐艦 4番艦へ変更して、5番艦は私がやるわ」

 

「あれ 3番艦は?」と ひえいが問いただすと

 

「3発撃ちこんだら、真っ二つに折れて轟沈したわ」と こんごう

 

「りょうかっ あっ」と ひえいが叫んだ

1門生き残っていた リ級の副砲が火を噴いた、予想していなかったので二人とも対処が遅れ、ひえいの マスト付近に着弾した、

 

「副長 ダメコン指揮お願い! この死にぞこない! 食らいなさい!」と ひえいが、最後の抵抗をする リ級に止めを刺した

 

「ひえい! 損害は!? 大丈夫!?」

 

「こんごう マストに被弾! 水上レーダーとタカンがやられた! でも戦闘には支障なしよ、ケリをつけよう!」

一方的な戦闘で 逃げ場を失った2隻の駆逐艦に 次々と砲弾が叩き込まれついに行き足を止めた

ほぼ 両艦隊がすれ違う時、先程まで数で優っていたはずの深海凄艦艦隊は 一方的に叩れて海の中へ消えていった

 

「よし、ここまですれば 反航戦は要らないわね、艦隊に合流します」と こんごう

 

「ひえい 了解です、は〜あ 疲れた」と ひえい

 

「第3戦速で 海域を離脱、ひえい タカン壊れてるなら後についてきて」

 

「助かる こんごう」

 

「フィールド解除、対水上戦闘 用具収め!」と こんごうが命じ

「航海長 舵お願い」と ぐったりする こんごう

 

「大丈夫ですか 艦長」と 副長が、ミネラルウォーターのペットボトルを差し出した

 

「ありがとう 副長」

 

「暫く指揮を変わります、休んでください」

 

「うん そうする」と こんごう

あと少し 戦闘が長引けば、精神力が切れていたかも知れない

 

「さあ、副長 帰ろ」と こんごうが優しく呟いた

 

「はい 艦長」とだけ答える 副長

 

水観妖精は 言葉を失っていた

実際、どう表現したらいいか 分からないのだ

リ級艦隊の上空に到達した時、すでに リ級は砲撃を始めていた

遠くに先程の2隻が見える、急速に距離を詰めている

「35ノット以上でている? ぜかましより早いだと!」

 

「それに あの機動力はなんだ、戦闘機じゃないか!?」

 

まるで 砲弾の着弾位置が分かっているかのように 見事に操艦し躱している、後続艦の動きにも無駄がない

そして次の瞬間 目を疑った

「弾いた!? リ級の砲弾が空中で 弾かれた!」

 

彼女達に降り注いだ リ級の砲弾が、いきなり跳弾して変な所へ着弾した

見えない壁があるようだ

そうしているうちに、1万5千まで 距離が詰まった

彼女達も砲撃を開始したようだ

「なんて 早さの単装砲だ、まるで高角砲じゃないか?」

まずは 着弾観測だ、アレだけ早いと観測できるかと思っていたが

「初弾から 命中だと!次弾も!」

ほぼ命中弾か 至近弾だ、外れている弾がない あの距離からだぞ!

次々 命中する砲弾、圧倒的な戦いだ 深海凄艦が全く反撃できない

リ級は 戦闘能力を消失、魚雷が命中したのか艦尾から沈没している

空母は 右舷に傾き 転覆寸前だ

駆逐艦は 3隻とも轟沈

「機長、どう報告します?」と 通信妖精

彼も、現状を理解できないようだ

「由良に電文 “敵追撃艦隊 壊滅 不明艦隊2隻 ほぼ無傷で そちらへ向う” それだけでいい、詳細は口頭で言わなけば 理解してもらえん」

水観は 急ぎ帰路へついた

 

彼女達が去ったあと、波音だけが 響いていた

 

 

 

 




こんにちは
スカルルーキーです

やっぱり戦闘描写は 難しいですね、まあ雰囲気でてればいいですが
こんな未熟な作者ですが 宜しくお願いします

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。