分岐点 こんごうの物語   作:スカルルーキー

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海の中で じっと息を潜める悪意

そっと忍び寄る 影

耳を澄まして 聞く彼女

戦いは 見えない所でも始まっていた


5、対潜戦闘

金剛は 副長妖精のほっぺたを摘まんでいた

 

「艦長!痛いですよ!」

 

「やっぱり 夢ではなかったのデスネ」

 

「ご自分で 確かめてはどうですか?」と怒る 副長

 

「私は タダでなくても雷撃の傷で痛いのに、これ以上 痛いのはゴメンデス!」

 

「しかし あの対空射撃はナンナノデスカ? あんな芸当は“アキジキ”ではなくて 秋月でもデキマセン!」

 

「自分も 副長を長くやっていますが、艦載機40機を数分で撃墜できる艦隊など初めて見ました!」 

 

「やはり彼女達は 我が海軍の特務艦なのでしょうか?」と 副長

 

突然 前方の不明艦から 再度発光信号が上がった

「ワレ コレヨリタイセンセントウヲ カイシスル」副長が 読みあげる

 

「対潜戦闘デスカ?」

 

「駆逐艦も 軽巡も居ないのにどうするのでしょうか?」

 

「全く 想像デキマセン!」

二人は 揃って何が起こるのか 興味津々であった

 

 

司令は はるなに対して

「さて はるな 名誉挽回といこう」と 切り出した

 

「名誉挽回ですか?」

 

「しつこく 付きまとうストーカーを沈めてくれ、ここでまた雷撃されたら回避もできん」

 

「はい 分かりました、エネミーアルファ 撃沈します!」

「司令 ヘリが出せないので アスロックと12式短魚雷がありますが、どちらで?」

 

「いずも 周囲にはアルファだけだな」

 

「はい 司令」

 

「確実を期す アスロックを使え!」

 

「はるな 了解しました」

 

はるなは まるでお使いを言われた子供のようにスキップしながら 自身のCICへ入ろうとした時 中から大きな声がした

「撃ってくる!」

 

「そんなに 俺たちの力が見たいのか?」

 

「ど~ん」

 

「貴様! ひとりで戦争を始める気か〜!」

 

「こいつを CICから叩きだせ!」

 

「お〜!」

数人の妖精隊員に担がれて、砲雷妖精が出てきた

 

「何やってるの?」と はるな

 

「やっぱり アスロックといえば お約束でしょ 艦長!」

 

「ああ あれね、儀式ですね…」

 

ややあきれモードで CICの艦長席へ座り、笑顔で

「では 皆さん」 静まり返る室内

 

「狩りの時間です」とにこやかにほほ笑む

 

すかさず 砲雷長が

「総員 対潜戦闘用~意!」と号令 一斉に席に着く妖精隊員

 

はるなは 艦長席の肘かけに手をかけ 深呼吸をすると 一言

「エンゲージ」と囁いた

瞬時に 彼女の様子が豹変する

いつも穏やかな目は 既に獲物を捕らえた狼の目である

直接探知距離 18kmのSQS-53改ソナーを通して、海中に潜む カ級の姿が脳裏に浮かぶ

 

「砲雷長、使用弾頭 アスロック ひとはつ、諸元入力後 発射!」と はるなが命じた

 

「ソナー アクティブピン 周囲に他の艦が居ないか再度確認、カ級に最後の音色を聞かせてあげなさい」

アクティブピンが 放たれる!

潜水艦にとっては死の音色だ

 

「距離 5200 方位122 深度30m、周囲 他の反応ありません!」

 

「諸元入力 よし!」

 

「VLS ハッチ開放!」

 

「アスロック 撃~て!」砲雷長の号令と同時に CICにアスロックの発射音が響いた

 

金剛は何が起こるのか見ていたが どうやら対潜戦闘は右側を航行する 榛名(金剛が勝手に決めた)がやるようで 少し距離を取り始めた

我々の駆逐艦の対潜戦闘と言えば 大体このあたりにいるだろうとか 潜望鏡が見えた付近とかへ爆雷を落として探りながら撃沈するものである 要は勘である しかしこの娘は動かない

すると突然艦橋の前方で 大きな爆音がしたかと思うと、一筋の白煙が大空へ上がり 一気に上昇していった

 

「ナっ ナンナノデスカ⁉︎」と 驚く 金剛

 

「誘爆では なさそうですね」と 副長

 

二人は 白煙が向かう方向を 双眼鏡で眺めた

どうやら 白煙の先に 白い棒状の物が見える

白煙が止み 数秒後 棒状の物が前後二つに分かれた

そして 後ろの物体はよろよろと海面に落下

先端の物体は 突然落下傘を開いて ゆっくりと落下し始めた

落下傘の下に 何かぶら下げている、あれは?

 

カ級は 理解できないでいた

「ゼンメツダト!」

金剛級を含む 戦艦3隻に対して6本の雷撃を加えて 2本が当たった

後1本当たれば 撃沈できたのだが、でも金剛級は傾斜して足が遅くなった

10ノットも出てない 仕上げはヌ級の艦載機に任せればいい

そう思って 戦果確認の為に潜望鏡深度で近づくと、単独でいるはずの金剛型の回りには見慣れない艦影 それもクルーザー級が4隻だ

艦載機が攻撃を始めたとたん、瞬く間に艦載機群は 撃墜されてしまった!

なんと言うことだ 練度不足か?

まあいい ここで再度 雷撃すれば 足の遅い戦艦など 単なる硬い標的だ

 

潜航し、予想進路を計算 再度雷撃ポイントに向かおうとした途端、頭上から 探信音を浴びせられた!

 

「デストロイヤークラスガイタノカ?」

 

「ソナー ナニヲシテイル!」

 

「シュウイニハ スイシンオンハアリマセン」

 

暫し 悩む カ級艦長、何かおかしい!

「トニカク ライゲキポイント二ムカウ」

 

すると 

「スイメンニ チャクスイオン」と カ級ソナーが言う

 

「チャクスイオン?」

 

「スイシンオンガシマス!」

なんだ 何が起こっている!カ級艦長は今までとは違う恐怖を感じていたが意識もそこまでだった

次の瞬間、凄まじい轟音と 海水が流れこんでくる感触だけがあったが、すべては手遅れであった

 

 

 

「エネミーアルファ 爆発音及び破砕音確認、撃沈です!」と ソナー妖精が報告する

「よ〜し」それぞれガッツポーズを決める妖精隊員たち!

 

砲雷長が

「対潜用具収め、艦長終わりました」とあっさりと言う

 

「うん やったね!皆さん お疲れさま」と笑顔で笑う はるな

 

こんごう始め 他のメンバーが

「やっぱり はるなは怒らせると怖い」と再認識した瞬間であった

 

金剛は 今度は自分のほっぺたを摘まんでいた

「やっぱり 痛いデス!」

 

「さっきのは ロケット爆雷でしょうか?」

 

「たった 1発で撃沈できる?」と不思議がる 金剛

どうやら 爆発の規模から撃沈できたようであるが、なんとも不思議な対潜戦闘であった

 

金剛は 直ぐに我に返り

「参謀妖精!戦闘詳報を直ぐに書きなさい!」

 

「今すぐですか?」

 

「そうです こんな戦闘めったに見られません!」

 

「はい 艦長!」

これが 後にトラックで話題になった 金剛レポートとなるのである

 

同時刻 パラオ泊地提督私邸

パラオ泊地提督は 秘書艦の長良型軽巡4番艦 由良の作った朝ご飯を食べ、食後のお茶を飲みながら のんびりと過ごしていた

泊地提督私邸と言っても、6畳2間 台所がある位の質素な家だ

 

「由良 ごちそうさま、毎朝 悪いね」

 

「いえ お粗末様でした、これも秘書艦の仕事ですから」と嬉しそうに答える 由良

台所で 食器を片付けている

まあ これだけ見れば 新婚の朝の風景である。

 

「由良 昨日の低気圧の被害は?」

 

「はい 飛行場の滑走路が一部傷んでいますが 午前中に修理可能です、格納庫の一部の屋根が 飛びましたが、こちらは軽微です」と答える

 

「船舶に被害が無かっただけでも 良しとするか」と言いながら

 

「しかし、昨日の低気圧はなんだったのでしょうか?」と 台拭きでちゃぶ台を拭く 由良

 

「よくわからん 気象隊も初めての経験らしい」

 

「パラオは比較的 天候が安定した地域ですけど」

提督は 新聞を開いて読みだした

二日前に トラックから届いた 「週刊 青葉新聞」である

各地で 活躍する艦娘の活動報告から、ちょっとした噂話まで多彩である

やはり一番人気は 新任艦娘紹介とゴシップ記事であるが…

よっぽど 大本営発表などいう誇張表現より信頼度が高い、但し 一般販売は無く艦娘限定の販売である、提督は これを 由良経由で入手して読んでいる

 

「やっぱりか…」

 

「どうされました?」と覗く 由良

 

「マーシャル方面の戦果報告だが、深海凄艦の撃沈や大破報告は多いが 海域を確保したという話がない、戦術的には勝っているようだが 戦略的に防戦一方だな」

 

「負けているという事ですか?」と 由良

 

「今は 均衡状態だと思うが、今後の展開では一気に押し込まれる可能性があるな」

「金剛さんと 赤城さんを こちらから引っこ抜いてでも 足らないのでしょうか?」と不安がる 由良

 

「今の所はいいが今後のカギは やはりアメリカとオーストラリアの出方次第だ、トラックの長官も厳しい立場なんだよ」

 

「難しいですね、でも 提督さんを信じていますから、パラオは大丈夫です」

 

「由良 頑張るよ」と 照れながら話す 泊地提督

その和やかな朝を ぶち壊す足音が庭から聞こえて来た

 

「おっ あの足音は 瑞鳳か?」

 

「たぶん そうですね、何かしら?」と庭へ出る 由良

 

そこへ、全力疾走してきた 瑞鳳が縁側に駆け込んで来た!

「おはよう 瑞鳳ちゃん どうしたの? そんなに慌てて!」

息も絶え絶えで 声が出ない 瑞鳳

由良が慌てて 水が入ったをコップ差し出した

一気に飲む 瑞鳳

「どうした 瑞鳳?深海凄艦でも攻めてきたか?」と冗談ぽく聞く 提督であったが

瑞鳳は真顔で コクコクとうなずいた

 

「らっ 雷撃されました! こっ!金剛さんが近海で雷撃されました!」

 

「雷撃だと!どういうことだ?」と慌てて縁側にでる 提督

 

「詳細は 不明ですが、パラオの北 120km地点で深海凄艦の雷撃を受けて被弾、救助を求めています!」

 

「由良 直ぐに出られるのは!」と慌てる 提督

 

「はい、私に哨戒予定の 陽炎、皐月、防空当直の 秋月です」

「よし直ぐに出る、瑞鳳と 鳳翔は 滑走路が修理出来しだい直衛だ!」

 

「残りは 泊地警戒!」と手早く指示

 

急いで 上着を取ると司令部へ駆け出した

「待ってろ 金剛、今いくぞ」

 

「提督さん!」と 由良も後を追った

 

 




こんにちは
スカルルーキーです

昔 一度だけ 潜水艦のトイラジコンを買いましたが、やっぱり沈んでしまうと 動きが見えないのですぐ飽きてしまいました

次回は 少しほのぼのです

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