分岐点 こんごうの物語   作:スカルルーキー

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突如 海面から現れた正体不明の戦闘艦
迫る 深海凄艦 艦載機
守り抜けるのか
彼女達の 戦いが始まる


4、対空戦闘

「コ ン ゴ ウ ?」

 

「こんごうですか?」 副長?

 

「海軍内に 同一名の艦があるとは聞いてマセン!」

 

「自分も 初めて見ました 秘匿艦か何かでしょうか?」と困惑気味に答える

 

「どうやら 女性は 艦娘さんのようですね」と 副長

 

「分かるのデスカ?」

 

「はい 長年妖精をしていると雰囲気でわかるものです かなり強いですよ! それより 対空戦闘ですよ 対空戦闘!」

 

「21号電探 敵機の位置は?」

 

「方位変わらず 距離8万に接近!」

 

「砲術長 3万で三式弾で牽制します!」

 

「はい 艦長!」

 

「前方の不明艦より 発行信号です」と 通信妖精が叫ぶ

 

「コレヨリ ホンカンノリョウカンガフジョウスル チュウイサレタシ」 副長が信号を読み上げる

 

「僚艦?デスカ」 ややあきれ気味の 金剛

 

 

 

「どうやら 上手くいったみたいね」

こんごうは ポケットから手のひらサイズのヘッドセットを取り出してそれを左耳へつけた

 

「システムリンク! CIC、艦橋 聞こえる?」

 

「こちら CIC砲雷長 感度良好です」

 

「艦橋 副長です 同じく良好です」

 

「私は外で指揮を執ります」

 

「ひえい、はるな、きりしま 戦艦金剛を護衛対象に 輪形陣を形成して 順次浮上して」

 

「ひえい 上がるよ!」

 

「はるな 了解です」

 

「きりしま 準備 出来てます」

 

金剛は 驚きの連続であった

友軍と思われる船、たぶん大きさから重巡洋艦クラスの船が 海中から飛び出して来たかと思えば 中から出てきた艦娘とおぼしき女性は、自分そっくり!

 

そして今度は 見張り妖精から

「本艦 周囲に浮上する物体 右舷、左舷、後方にあります!」と報告が入る

 

「囲まれてイルミタイデスネ」

 

「本艦を中心に、輪形陣を形成しているのでしょうか」と 副長

流石に先程のように飛び出してくる艦はないが どの艦も素早く浮上すると 輪形陣を形成した。高い練度が伺える

 

金剛は 双眼鏡で左舷を並走する船を見た

全長は 180m位かな、妙高や 高雄より少し小さい、排水量は 1万トン位か それ以上か?

鋭い艦首 白く番号が 191と書かれています う〜ん 主砲は? 1門! それだけ?

オマケに 小さい。どう見ても駆逐艦の単装砲デス!

対空機銃らしき 白い筒の付いた機関砲が 全部で3カ所 いや4カ所ですネ

外部に 見張り妖精さんが数人見えますネ

しかし あの機銃や砲はどうやって動かすのデスカ?

それにしても 高い艦橋ですね しかも側面が平面でまるでBOXです!

見れば 見る程チグハグな艦デス。大きな船体の割りに兵装が少なすぎデス

 

金剛は 一瞬 横須賀で噂に聞いた、新型潜水艦を思い出した

アメリカ本土まで、攻撃できるよう長い航続距離をもつ、航空機搭載の新型潜水艦を建造中と聞きました。もしかしてこれがそうなのデスカ?

だとしたら 対空戦闘は期待デキマセンネ

 

ふと艦橋を見ると 先程の女性と同じ様な服を着た別の女性が手を振っています

 

「あれは 比叡ではナイデスカ!」

 

「ほう 比叡艦長も遂にケッコ…」 再度 金剛の右ストレートが 副長の顔面をヒットした

 

「比叡も 独身デス!」

 

「失礼しました ではもしかして」 二人は右舷を航行する艦へ視線を向けた

 

艦橋横の見張り所にいる特徴的な長い髪を風に揺らす一人の女性

綺麗なお辞儀をして挨拶しています

 

「OH! 榛名デス! どうなっているのですか。では後方の艦は 霧島デスカ?」

 

「まあ 普通に考えると そうなのでしょうね 艦長」

 

海中で待機中の いずもCICで 司令と いずもは成り行きを見守っていた

「上手く 接触できたみたいですね 司令」

 

「ああ これが 那智さんみたいな血の気の多い方だったら 問答無用で撃たれたな」

 

「まあ しかし何でいつも こんごうは浮上するとき ああなんだ?」

 

「あれですか? なんでもお気に入りのアニメで ヒロインの潜水艦娘が登場する場面がアレらしいですよ」

 

「ほ〜 あれなら俺も見たな、タカオなんか良かったな」

 

「司令は 胸の おおきな方が好みみたいですね…」 

いずものヒールが 司令の足を直撃した事は CIC要員一同の秘密である

 

 

 

金剛の 21号電探妖精が叫ぶ

「間もなく 距離3万です!」

 

「砲術長 諸元計算 よろし?」と尋ねる 金剛

 

「何分 距離がありますから、まあ初弾は様子を見ましょう」

 

「やはり 対空戦闘は 高角砲と機銃が頼りデスカ」

 

「こればかりは 統制射撃の難しい所です」

 

金剛は 分かっていた

本来なら 対空戦闘で威力を発揮するはずの三式弾があまり役に立たない事を

対象の航空機が 集団で進空してくるなら効果が期待できるが、最近は三式弾の威力を警戒して分散してくる 散開して来られると効果が薄いのである

牽制程度にしかならない、おまけに主砲は一度発砲すると次弾装填まで時間がかかる

結局 射程の最低距離を割り込まれ、副砲 高角砲 機銃の出番となるのである

 

 

「測的 及び射撃計算 よろし!」

 

ゆっくり 一番砲塔が旋回を始める

 

「距離 3万切りました!」電探妖精が再度叫ぶ

 

「では 一番砲塔から 撃ちます!Fire!」金剛は力の限り命じた

 

 

こんごうは 後部のヘリデッキに立ち 戦艦金剛を見ていた

左耳につけたヘッドセット これは単なるヘッドセットではなく 左目にリンクしている網膜投影型のディスプレイである

CICの戦術情報、艦橋の船体情報を見る事ができる

コマンドを入力すれば 詳細な情報の伝達もできる動くCICでもある

AN/SPY-1D(Ⅴ)が進空してくる航空機 40機を捉えている

距離 3万メートル

速力 300kmちょっとか?だとしたら艦爆はSBD ドーントレスと雷撃機TBD デバステイターあたりかな?

既に きりしまにより、各艦に対空識別の振り分けが行われている

 

不意に 「ねえ こんごう、まだ?」と ひえいがせっついて来た

 

「まだ ダメだって!この時代のこの120mmクラスの砲射程は 15000m程度だもん」

 

「え〜 いいじゃん、ケチ!」

 

その時である 金剛の第一主砲が旋回を始めた

「皆! お祖母様が 三式弾を打ち始めます!音 デカいから気を…」

と言いかかった途端 遠くでブザーの鳴る音が聞こえた

 

「まだ 早いのでは?」と思ったが 、その瞬間 金剛の45口径35.6cm砲が火を噴いた!

距離があるにしても 体を揺るがす凄まじい振動である

 

「あ~ 始めちゃったね」と ひえい

 

「凄い音で ビックリしました」と耳をふさぐ はるな

 

「後ろから全然 見えません~」と きりしま

 

「CIC レーダー解析出して!」

 

「あ~ かなり遠弾ですね。炸裂時間の補正が間に合ってないみたいです 艦長」

 

「やっぱりこっちの出番かな」

 

「では 皆始めましょう! 対空戦闘開始!」と僚艦に命じた

 

こんごうは 左手を真っ直ぐ頭上に伸ばして 意識を集中した、そして一言 呟いた

 

「エンゲージ!」

 

彼女の左手にある銀色のブレスレットから 青い光が煌めく

彼女の意識の中に艦の魂が吹き込んでくる。艦橋、CIC、機関室、艦内各所の妖精もその力の恩恵を受け活気づく。

 

「全力でイキマス!砲雷長 イクワヨ!」

 

「はい艦長!対空信管弾頭弾および諸元準備よし、ご指示を!」

 

「CICの指示の目標、トラックナンバー 8001から8009、主砲打ち方 始め!」

そう言うと 左手を 目標に指示した

 

オート・メラーラ 127mm砲が唸りを上げて 素早く旋回する

当初こんごうは、改あたご型として設計された事から Mk45 5インチ砲を搭載する予定であったが、設計段階で母である艦娘運用課長の鶴の一声で オート・メラーラになった

 

理由を 担当から聞かれた母は 一言

「あの子 射撃、下手なの。数撃たないと当たらないわ!」

 

確かに2025年 対空戦闘は音速を超える対艦ミサイルが主流だ

もともと 遠距離でミサイルキャリアーの戦闘機を撃墜し、うち漏らしは数機 10発程度の対艦ミサイルならスタンダードで対応できる。主砲の速射性能はそんなに早くなくて良い。しかしこの時代は別だ

何せ数が違う。相手が正規空母なら100機近い航空機がウンカのごとく襲ってくる

素早く見つけ 高い速射性能と冷却 高度な統制射撃。これが艦隊防空の要となる

こんごうは 内心「お母さん 感謝してます」と思った

 

CICでは こんごうの号令と共に 砲術士妖精がピストル型の発射トリガーを引く

ダン、ダンと小気味良い音と共に 主砲の射撃が開始される

1発撃つごとに 主砲の前方に空薬莢が排出されていく

 

当初、集団で飛行して来た敵集団は三式弾の牽制射撃前に、低空の雷撃隊と艦爆隊に分離し、やや分散しながら進空してきた。

その数!40機!

練度はやや高いようで、雷撃隊は進路を二手に分け、また高度もやや散開している。

こんごう、ひえいの担当は主に 左舷に向け低空を侵入して来た、この雷撃隊だ!

艦爆隊は はるな きりしまに振り分けられている。

彼ら艦爆隊は、高度を稼ぐ為に上昇していた所を、はるなと きりしまの対空射撃をモロに食らった!

 

 

「焦るな 距離は十分にある、確実に当てていけば間に合う」

 

「最初は 8001。次は05 07 08」と順番にターゲットを確認する

 

CICの戦闘射撃コンピューター情報だけでなく 自分の艦娘としての目で目標を追う

対空情報が 逐次更新されてくる

 

「僚艦とのデータリンク 問題ない?」

 

「はい 艦長。システム正常です!」

 

「ターゲット 8001 05 撃墜!」と 射撃管制妖精から報告が入る

遠くで ぽっと火の手が上がるのが分かる

 

「次 07 08 09です」

 

「手を緩めないで、確実に落とすのよ!」

 

「えぇーい、後何機いるの?」と ひえいが叫んでいる

どうやら彼女の位置では 上手く射点が合わないらしく、なかなか射撃できないようだ

 

「こっちは 後5機よ」と こんごう

 

「私は 後2機!」と きりしま

 

チラッと はるなの方を見ると 艦爆隊へ向け きりしまと射撃を続けている

「07 08 09 撃墜!」

 

 

ようやく 機体の形状がハッキリ、見えだした

対空弾の直撃を受けて 主翼や胴体から真っ二つに折れて 爆散する機体

近接信管が作動し炸裂した火玉の中にとびこむ機体、どの機体も黒煙を吐きながら落下していく

 

深海凄艦 雷撃隊 隊長は焦っていた

「コンナハズデハ!」

早朝 カ級が 金剛型の戦艦に雷撃を加え 足を止めたと連絡してきた

同行していた 長門型と新型の超弩級戦艦は 仲間を見限って戦域を離脱したようで取り逃がしたが 金剛型だけでも沈めればまあ お釣りがくる。

軽空母ヌ級の艦載機 40機で襲えば 楽な仕事のはずであった

しかし 戦闘海域にきてみれば、金剛型以外に数隻の重巡洋艦クラスがいるではないか!オマケに奴らのこの正確な砲撃はなんだ

雷撃位置に着くために 海面近くまで降下した所 突然砲撃が始まった

最初は 遠いと馬鹿にしていたが、僚機の2番機が直撃 3番も爆散 4番は右翼を撃ち抜かれて キリモミしながら落下して行った ほんの数秒の間に

「ナンダ コイツラハ!」と咄嗟に機を海面スレスレまで落とした

頭上では 次々と 艦爆隊が撃ち落とされている

 

しかし 彼の意識も そこまでであった

目前で突如 開いた火球に飲み込まれ、彼も また僚機の後を追った

 

「いい 絶対守りきるのよ」

 

「残り 02〜04です!」

 

「ひえい 全機撃墜!」

 

「きりしま 全機撃墜!」

 

「これで 終わりよ!」こんごうは最後の1機を撃ち落とした

 

不意に

「はるな!頭上 艦爆、頭 取られてるよ!」

きりしまが 叫ぶ!まずい艦爆2機が すり抜けて来た!

 

「CIWS 叩き落として!」

後部CIWSが 唸りを上げて タングステンの20mm弾を数秒弾き出した

きりしまの 前部CIWSも作動している

金剛への投弾コースに乗った 艦爆であったが、こんごうと きりしまの CIWSの十字砲火であっという間に撃墜されたが!

 

「きゃ!」と はるなが悲鳴を上げた

こんごうが撃墜した艦爆の機体は、コントロールを失い爆散しながら はるなの後部ヘリデッキへ墜落した、ヘリデッキ上で燃え上がる残骸!

 

「はるな!」 「はるな 大丈夫か!?」こんごうは慌てて彼女の艦を見た

 

艦内から 消火要員が出て消火に当たっている

 

「はるな! はるな!」こんごうは慌て連呼した

 

「こんごう ごめんなさい。でもそんなに慌てなくても大丈夫です」意外に はるなは冷静だった

「どうやら 落ちたのは主翼の一部みたい。火の割りには被害がないわよ」

 

「脅かさないでよ」と こんごうは 胸を撫で下ろした

 

「フィールド張って無かったの?」

 

「無理言わないでよ。対潜しながら対空して オマケにフィールド張るなんて芸当、貴方しかできないわよ」と少し拗ねている

「でも ちょっと困った、ヘリデッキ使えないわ」対潜番長の はるなに取っては少し痛い

 

「あかしに 修理してもらうしかないわよ」と言いながら

 

「きりしま 周囲に敵性航空機は?」と問いかけた

 

「今の所 200km圏域には敵性航空機なしよ!」

 

こんごうは 再度自分の戦術ディスプレイを確認して

「司令 対空戦闘 終了しました。周囲制空権確保です」

 

「皆 ご苦労様、はるな 消火は?」

 

「現在 鎮火しましたが、残骸の撤去には時間が掛かる見込みです。艦の機能は問題ありませんが ヘリの発着が出来ません!」

 

司令はあっさりと

「まっ仕方ないな はるなは対潜警戒しながらだし」

 

「以後 気を付けます」と一礼する はるな

 

いずもが

「各艦 対空用具収め、引き続き きりしま 対空警戒お願い」

 

「はい 副司令」

 

 

 

数分前の喧騒とは裏腹に、今は波の音だけが聞こえている

 




こんにちは
スカルルーキーです

実は我が家の近くに 某航空自衛隊基地があるですが、上空を飛ぶF-2を見ながらイメージを膨らませました。
次回は 狩りのお時間です はい


2017年8月12日 一部描写を修正しました。

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