分岐点 こんごうの物語   作:スカルルーキー

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強き意思を持つ女性は、人生の先達であるその人へ向い、

「これは誰かがやらなければならない事です、誰かがやるならそれは自分でありたいと思っています」としっかりと語った。





37 弾丸3

 

パラオの海に陽が昇る。今日も人々に平穏な日常が訪れようとしていたが、ここパラオ泊地では非日常的な訓練が続いていた。

こんごう達、特殊作戦群のメンバーは3班に分かれ、最終仕上げ訓練を行っていた。

いずもが監督する輸送船強襲班は、桟橋に接岸している小型の輸送船を使い強襲、制圧作戦の訓練を実施していた。

 

ひえいの指揮する駆逐艦 曙保護班は、海上からの侵入訓練を実施していた。

駆逐艦 陽炎を使い、ゾディアックボートで海上より侵入、接舷し防衛体制を構築する。

無論、この訓練には随行員の 陽炎と すずやも参加していた。

ゾディアックボート2隻に姿勢を低くし、隊員妖精と一緒に乗り、海上を疾走しながら駆逐艦 陽炎に接近する。静かに接舷して梯子を掛け、まず隊員妖精がそっと乗り込み、小銃を構え周囲を見回し安全を確認した。

最初に乗り込んだ隊員妖精が持っているのは20式小銃を改良した短小銃だ!

20式小銃に8インチバレルを装備。こちらも銃口にサプレッサーを装備し、伸縮型のストックを採用している。

個人の好みでフォアグリップやホロサイトが装備できた。

当初H&KのMP7を採用する案も出たが、近年のボデーアーマーの強化を受け、5.56mm弾を使用した20式を改良する方向で決着がついた短小銃だ。

隊員妖精には評判で、今までの9mm機関けん銃よりは断然使いやすい。

続いて 陽炎、そして すずやが甲板上に乗り込む。陽炎は腰のホルスターから愛用のブローニング拳銃を取り出す。すずやも9mm拳銃を取り出した。

隊員妖精と警戒しながら艦内を進み、艦橋に入る。

誰も居ない艦橋の艦長席に座る一人の少女、

 

長波だ!

 

陽炎と すずやは、長波を 曙に見立て警備所から離脱するように説得する...という訓練をしていた。

最初は「はい、はい」と 陽炎の話を聞いていた 長波であるが、無線で ひえいから、

「長波ちゃん、それじゃだめよ。曙さんになりきりなさい!」と言われ、

「ひえいさん。長波、曙さんの事よく知りません」と返事をしたが 陽炎は、

「曙ね、まあひねくれ者で意地っ張りな子よ」と言うと、

「う〜ん」と考えて

「解りました」といい、陽炎に向い

「陽炎、なんで私があなたのいう事を聞かなきゃいけないの!」と返してきた。

ぴくっと 陽炎の眉がつりあがり、

「曙、いまなんて言った」

「だから、何で私があなたのいう事を聞かなきゃいけないのって言ったの」

とありったけの勇気をもって口に出す 長波。

陽炎は腰に手をあてがい、

「ほほ~、いいの?ここで横須賀時代のある事、ない事ばらしても」

すると 長波は、

「では 曙は 陽炎の横須賀時代のギンバエ前科を全部ばらす!」と答えた。

それを聞いた 陽炎は、

「ちょっと、なんであんたがそれを知ってるのよ、長波!」

長波は、

「今は 長波ではなく 曙です」と淡々と答えたが、

「あんた。その言い方、不知火そっくり」

「でも今は 曙です」と言い張る 長波。

 

結局その後「行く」、「行かない」の応酬となり、ひえいの

「はい、はい!状況終了!もう一度やりなおし!」という声で幕引きとなった。

因みに、陽炎と 曙(長波)の会話を横で聞いていた すずやが笑い死にそうになった事は秘密である。

駆逐艦 陽炎から離れるゾディアックボートを少し離れた高台から見る ひえい。

横にはペアを組むスポッター役の特戦の隊員妖精が高倍率の単眼望遠鏡を覗いていた。

「もう、全く。当日あの調子なら別に方法を考えないといけないかな」

とそう言いながらも、愛用のM40のスコープから目を離さない ひえい。

「困ったな」と頭を抱えた。

 

最後に こんごう率いる制圧班は、運動場のプレハブ小屋を使い突入訓練を繰り返していた。

「もう一度、やり直すわよ!」と こんごうの声が飛ぶ!

各隊員、既に数十回やり直していたが、誰一人文句を言う者はいない。

実際の作戦は夜間だ。攻撃対象施設の構造を頭に叩き込むまで、何度でも繰り返して行う。

 

その姿をじっと運動場の端で見る、泊地提督と自衛隊司令。

 

「かなりの回数をこなしているが、あとどれ位訓練をするのだい?」と提督が聞くと、

「はい、今日午前中はみっちり行います。午後機材の確認をして、明日朝出航の予定です」

「すると、作戦は明後日の夜中になるな」

「はい、明後日の夕刻にはルソン北部海域へ到達。その後待機し、夜中に作戦開始となります」

提督は、

「明日の朝出港なら、間に合うな」

「なんの事ですか?」と自衛隊司令が聞くと、

「いや、少し追加情報を頼んでいてね。今日の午後にも民間の空路で此方へ届くはずだ」

「追加情報ですか?」

「ああ」といい、双眼鏡で こんごう達のいるプレハブ小屋を見た。

そこでは陸自の隊員妖精が、新しい標的やドア代わりの板を取り付ける作業を行っていた。

 

提督は、

「今日は済まないね、はるなさんに 由良達の支援を頼んで」

「いえ、確かヒ12油槽船団の復路便ですね」と司令が問うと、

「ああ、彼奴が指揮してくるそうだ。またルソンの中部へ戻って、燃料と資材を積んでトラック泊地へとんぼ返りだそうだ」

それを聞いた司令は、

「向こうの資材もかなり蓄積されたのでは?」

「まあ、作戦自体を遂行するには今の量でも十分なんだが、今後戦域が広がる事も予想して、今のうちに蓄えておこうということらしい」

提督は続けて、

「マーシャルが安定化すれば、つぎは」

「ソロモンを抜けて、珊瑚海ですか」

「ああ、いまオーストラリアは瀕死の状態だ。制海権を失いつつある」

運動場の端に集まる こんごう達を見ながら、提督は

「スイスのジュネーブを舞台に各国の出先機関がオーストラリア救援の話をしたが、結局米国が“我々が何とかする”と言ってハワイの艦隊の一部をオーストラリアへ入れてしまった。こうなるともうわが海軍の出番はない」

自衛隊司令は、

「では、いまオーストラリアの制海権は米国が保障しているのですか?」

「表向きははね」

「では裏では?」

提督は顔をしかめ、

「どうもオーストラリアへ派遣されたハルゼー中将は深海棲艦との戦闘に消極的でね。結局、我々が定期的に周辺海域を航行して哨戒している。しかしオーストラリアの領海に入る事はできない。深海棲艦のやつらそれを知っていてな、深追いすると米軍が出てきて“領海侵犯”だといって、こっちを追いかけ回す事態が起こった」

「えらい、あべこべですね」

「ああ、以前うちの 睦月と 皐月がこの航行作戦に従事したが、米軍に終始追われて、深海棲艦どころの話ではなかったよ」

自衛隊司令は少し考え、

「やはりオーストラリアの世論を動かす必要があります」

「ああ、海軍省や外務省もそれに気がついて、ジュネーブで色々動いてはいるがな。オーストラリアとしては米国の顔色を見ながらの外交だ」

「厳しいですね」

「ああ」と呟く提督。

 

こんごう達はテーブルに集まり、各自、新しい20式用のマガジンや拳銃用のマガジンを補充していた。

既に数回の訓練で顔は埃だらけで、こんごう自慢の髪も砂にまみれていた。

そんな事にはお構いなしに20式小銃の点検をする こんごう。

「こんごうさん、どうぞ」と言われ振り返ると、鳳翔と 瑞鳳がヤカンとコップをもって立っていた。

「あっ、すみません」といい、コップを受け取ると、鳳翔は冷えた麦茶を入れてくれた。

少し口に含み、口を洗い吐き出し、残りを一気に飲んだ。

「まだありますよ」といい、大きなヤカンから冷えた麦茶を注いでもらう。

「ありがとうございます」とお礼を言いながらそれを呑む こんごう。

 

昨日も結局、艦へ戻ったのは夜の10時前だった。

特戦では、個人の火器は個人でメンテナンスする。火器整備担当の要員もいるが、装備が特殊な上、性格上機密部分もある。その上 フォアグリップやサイトなどは隊員妖精の私物であったりするので、原則自分で管理する必要があった。

こんごうも昨夜艦へ戻った後武器庫へ向い、すずやと二人して火器の手入れを行った。

就寝したのは日付が変わる寸前であった。

そして今日も早朝から艦内業務をこなして、9時からここで訓練。内心へとへとだったが、自分がきつい時は周囲はもっときつい、ここで耐えなけば 曙さんは救出できない。

飲み終えたコップをテーブルに置きながら、空の弾倉へ新しい5.56mm弾を装填して行く。

横で こんごうの作業を見ていた 鳳翔であったが、

「こんごうさん、なぜ陸戦指揮を?」と聞かれた。

すると こんごうは、

「私と ひえいは艦娘候補生の最終年度に、陸上自衛隊の特殊部隊の指揮教育課程を受けました」

「陸上自衛隊とは、陸軍ですか?」

「まあ、そんなものですよ。この特殊作戦群とは、敵地深く侵入して敵情を探ったり、人質救出、非正規活動などを行います」

「非正規活動?」と 鳳翔が言うと、

「今回の様に表立って行動出来ない軍事作戦です」

とあっさりと答えた。

「えっ!」と答える 鳳翔。

「敵性勢力とみなされる武装集団等の排除などの非正規軍事作戦です。今回のルソンは米軍の支配地域です。そこで戦闘をします。政治的に微妙な地域での戦闘です」

鳳翔は、

「かなり危険なのでは?」

こんごうは5.56mm弾をマガジンに詰めながら、

「これは誰かがやらなければならない事です。誰かがやるならそれは自分でありたいと思っています」と言いながら、弾込めの終わったマガジンをポーチへしまう こんごう。

再びテッパチを被り、あご紐をしめた。

「皆、準備はいい?」と聞くと、

「はい、こんごう小隊長!」と一斉に返事が来た!

「では、降下地点に防御円陣を組んだ所からはじめるわよ!」といい、20式小銃を抱えた。

歩き出す こんごうの後を他の隊員妖精が追う。

 

風にたなびく こんごうの髪を見ながら 鳳翔は、

「やはり、貴方は強いお方ですね」とその後ろ姿を見送った。

 

 

こんごう達が厳しい訓練をしている頃、トラック泊地の夏島にある帝国海軍トラック泊地司令部2階の連合艦隊司令長官室では、山本が朝から書類に目を通していた。

本来なら右横の席でふんぞり返っているはずの長官付の秘書艦 三笠は、今日も早朝から駆逐艦を引き連れ教練へ出た。

今日のお伴は 白露に 時雨、村雨、夕立、春雨という一癖あるメンバーで、トラック泊地の北の海域にある無人島に砲撃訓練へ出かけた。

ふと外へ視線を向けると、泊地の奥で大きな艦影が4つ移動しているのが分かる。

窓辺に置いてある双眼鏡で覗くと、金剛達第三戦隊だ!

 

「おっ、張り切っているな」といい、今日の教練課程が書かれた紙を見た。

「金剛達も 三笠と同じ海域で砲撃訓練か。どうせ 三笠の事だ、金剛達も一緒に鍛える気だな」といい、紙を机に置いた。

 

出港する 金剛達を見ていた山本であったが、コンコンとドアをノックする音がした。

「入れ!」と言うと、ドアを開け入って来たのは 大淀であった。

「ん、どうした?」と聞くと、

「はい、航空戦隊南雲司令がお見えです」

「南雲君かい?」

「はい、長官にお話があるという事です」

「分かった、通してくれ」山本はそう言うと、

「大淀、コーヒーはあるかな?」と聞いた。

「はい、少しお時間を頂ければ」

「じゃ、南雲君の分も頼む」

大淀は、

「長官は砂糖たっぷりですね?」と笑顔で聞いた。

山本は口元に指を当て、

「三笠には内緒だぞ」

一礼して退室した 大淀と入れ替わりに、南雲は一礼して入室してきた。

「おはようございます」と朝の挨拶をする南雲。

「おはよう、南雲君」といい、双眼鏡を窓辺に置く。

南雲は山本に近づきながら、

「先程湾内で 金剛達とすれ違いましたが、教練ですか?」

「ああ、無人島へ向け砲撃訓練だそうだ」

南雲は自分も横へ立ち、

「マロエラップへの攻撃訓練ですか」

「まっ、それを想定しての訓練だろう。金剛に搭載された新型の電探、フェーズドアレイレーダーというそうだが、対空、水上の警戒だけでなく、砲撃着弾位置の観測も出来る」

「ほっ、本当ですか⁈」と南雲が詰め寄る。

「まあな。俺自身パラオで見てきたが、彼女の孫娘はそれを使って 陽炎の砲撃を見事に躱して見せた」

「駆逐艦の砲撃を躱せる重巡ですか!」

「凄いぞ。大きさは重巡並み、機動性は駆逐艦以上、40ノットは出る高速艦だ。最新鋭の電探、航空防御兵器を搭載している」

山本は、

「艦長の 金剛の孫娘は、それこそ非の打ちどころのない娘だ」

南雲は少し微笑み、

「金剛、触発されましたか?」

「ああ、ぼやぼやしとると孫娘に置いて行かれかねない」といい、南雲をソファーへ誘った。

ソファーへ座りながら南雲は、

「赤城達にも、そのようないい意味での好敵手が欲しいものです」

「ほう」という山本。

「いえ、長官。赤城も 加賀も我が海軍、いえ世界中の海軍の中でも優秀な空母艦娘である事は間違いありません。彼女達はそれに見合う努力をして参りました」

頷く山本、南雲は続けて、

「しかし、一航戦として他の追随を許さない立場だからこそ、目指すべき目標が必要なのではと考えております」

「ほう」と山本、

南雲は、

「空母艦娘としては、やはり 鳳翔が彼女達の目標である事は間違いありません。自分もそれでいいと思っております」

「鳳翔かい?」

「はい。彼女の持つ柔軟性、応用力、そしてたゆまぬ努力、何より皆を惹きつける魅力があります」

山本は、

「君もその一人かい?」

「まあ、彼女の話なら聞いてもよいと感じております」

南雲は、

「艦娘としては確かに 鳳翔ですが、やはり艦としては旧式。より 赤城達が高みをめざす為にも彼女達と肩を並べる、いや一歩先ゆく者が必要なのではと感じております」

 

山本は席を立ち、机の引き出しから数枚の紙を出し南雲へ見せた。

「これは?」と南雲が言うと、

山本は、

「赤城達が目指すべき目標の子だよ」

そこには自衛艦隊旗艦 いずもの詳細なデータと写真が写っていた。

じっとそれを見る南雲。

ドアがノックされ、大淀がトレーにコーヒーカップを乗せ現れた。

そっと山本と南雲の前へカップを並べ、中央に砂糖を山盛りにした小皿を置いた。

「長官、余りいれないでくださいね」といい、離れる 大淀。

「すまんな」といい、砂糖をコーヒーへ入れる山本。

山盛り2杯は入れ、静かにかき回した。

その間もじっと いずもの仕様書を見る南雲。

「凄い!排水量8万トン級、赤城の倍ですな。全長320m、全幅72m、速力40ノットですか!」

「ああ、実際には短時間ならもっと出るそうだ」

南雲は護衛艦 いずもの写真を見ながら、

「これが80年後の空母の姿」

「そう言うことだ。本来なら俺達は拝む事が出来んな、墓場の中だ」

「長官は実際にその姿をご覧になったわけですな」

「ああ、あの衝撃は 大和を初めて見た時以上だよ。空母というものがここまで進化するのかと思った。そして」と言いながら山本は、

「その艦の艦娘はもっと凄い。艦娘の向うべき姿その物だ」

「この子がですか」といい、南雲は資料の艦娘 いずもを見た。

「そうだ、あの 鳳翔や 由良が認めた子だ。きっと 赤城達の目標になると思う」

じっと いずもの写真を見る南雲。

山本は、

「マーシャル諸島開放作戦では、パラオの特務艦隊も秘匿戦力として参加する。赤城達にもいい刺激になるだろう」

すると南雲が、

「赤城はいいとして、加賀は人見知りが激しいですからな」と少し笑った。

二人でコーヒーを少し飲み、

「それで、話があるという事だが」と山本が切り出した。

 

南雲は、

「昨夜、統帥部の参謀の接待を受けました」

「ほう」と答える山本。

既に山本は宇垣から、叢雲が聞いた接待の内容の報告を受けていた。

 

「軍令部総長からの手紙というのを渡されました」といい、ポケットから封筒を取り出した。

それを受け取り開く山本。

「総長の字だね」といい、文面を読み進めて行く。

読み終えた山本は、

「軍令部参謀にはなんと?」

「はい、即答は避けました。作戦内容が余りにも稚拙です」

「稚拙?」と山本が聞くと、

「はい。具体的な作戦内容はなく、単に“マジュロへ強襲上陸させよ”の一点張りです。作戦海域の状況分析や地形確認など初歩的な事を行った形跡がありません」

「やはり、具体性はなしか」

「突貫でなんとかなるとは、到底考えられんのですが」と困惑する南雲。

山本は腕を組みながら、

「それで、君はどうしたいんだい?」

「はあ、悩んでおります」

「まあ、仕方ないだろう。軍令部総長が直接君に手紙が寄越すくらいだ。俺や 三笠が絶対にウンと言わん事は百も承知という事か」

「はい、自分も総長の名前を出されては」

山本は暫し考え、

「分かった。本隊作戦に支障の出ない範囲で、陸軍師団の擁護を許す」

南雲は身を乗り出して、

「よっ、よろしいのですか!」

「ああ、総長の名前まで持ち出す位だ、幾ら俺達が止めても勝手にいくだろう。ここで見捨てたとなると後々問題になりかねん」

「はあ」と返事をする南雲。

「しかしこれだけは守ってくれ」

といい、山本はぐっと南雲を見て、

「マジュロの民間人には、絶対に被害が出ない事だ」

「長官!」と南雲は迫った。

「南雲君。今回の戦いは、既に全世界が知るところとなった。世界中の目がこのマーシャルへ向いていると言っても過言ではない。そんな所へ民間人を犠牲にして作戦を成功させたとしても、決して世論の賛同は得られない!」

山本は続けて、

「米国などは、ここぞとばかりに日本へ人道的配慮を求めてくるぞ。それだけではない、先の真珠湾攻撃の問題をぶり返す事にもなりかねん」

無言で聞く南雲。

「いいか南雲君。俺達は陸に上陸するなとは一言も言っていない、順番を守れと言っているだけだ。その順番を守らずに行くとなれば、それ相応の被害は覚悟する必要がある」

南雲は、

「陸が全滅する可能性があるという事ですか!」

「それだけではない、赤城、加賀も犠牲になるかもしれん」

「それは!」

「南雲君、既に敵は我々が攻める事を知っている。黙って“はいはい”といって通してくれるほど、お人好しではないぞ」

黙る南雲。

山本は、

「南雲君、おかしいとは思わんか?」

「おかしい?ですか」

「ああ、そうだ。なぜ陸はあれほどまでに上陸にこだわる。近づけば島を砲撃して住民を殺害すると敵が公言している所に」

南雲は姿勢を戻しながら、

「マジュロを奪還したい為ではないのですか、戦意高揚とか陸軍の沽券の為とか」

「しかし、それだけでそこまで危険を冒す必要はない。むしろその為なら我々と協力して海域開放を行ったと言うほうが、国民の受けもいいはずだ」

南雲は少し頭を傾げ、

「はあ」と返事をした。

山本は、

「実はな、パラオにいる自衛隊の司令と話している時にな、このマジュロの人質の件、本土でどのような扱いになっているのか?という事が話題になってな」

「本土での扱いですか」

「そうだ、1,000名近い民間人が深海棲艦の占領地域に取り残されたとなると、大騒ぎになっているのでは?と自衛隊司令から指摘されてな。今まで考えた事もなかったので、横須賀や海軍省へコッソリ聞いてみた」

「返事は?」

山本は、

「意外だったよ、人質の件の報道が極端に少ない。一般の国民はマジュロに大勢の人質がいる事を殆ど知らない」

「なっ!」と身構える南雲。

「正確にいえば、人質というか島民や一部の民間人が取り残されているという事は知っているが、それらは島の山岳部へ逃げ込んで安全だという事らしい」

「そんな!マジュロはラグーン地帯、礁湖です。身を隠す所は殆どないはずです」

「ああそうだ。実際少しの低気圧が来ただけで、島のあちこちで浸水が起こるような所だ」

山本は、

「実はその事で海軍大臣から手紙を貰ってな」

「大臣からですか」

「ああ、お上にはある程度正確な情報が伝わっている、というか大巫女経由で伝えているというのが正確なとこだそうだ。お上はこの情報の統制をかなり叱咤された」

南雲は、

「叱咤されるという事は、相手がいるという事ですか?」

「そう言うことだ。情報統制を引いたのは“統帥部”だ」

「大本営ですか!」

「ああ、やつら人質の件を過小公表している」

「どういう事ですか!長官!」

「南雲君。今回のマジュロの件、いやマーシャル諸島を深海棲艦に占領された経緯を想い出してくれ」

南雲は表情を厳しくして、

「申し訳ありません。あの時、自分達がもっと粘っていれば」

山本は、

「いや、そこを責めている訳じゃない。確かに君は真珠湾攻撃を中止して、南下した。あの時は俺もついカッとなって君を叱責したが」

「いえ、確かにそうですが、追撃してきた深海棲艦に対し逃げの一手しか打てなかった事は大いに反省しています。もし 金剛達が間に合わなかったら、自分達は今頃太平洋の海の底です」

「いいかい、その追撃部隊は何故か目前の君たちに止めを刺さず、転進してマーシャルへ逃げ込んだ。そして一気にマジュロを包囲して、島の住民を人質にした」

「はい」と答える南雲。

「そして、深海棲艦のマジュロ接近を知った陸軍の部隊は慌ててマジュロを放棄、一路台湾へ逃げた」

「はい、その通りです」

山本は南雲を見ながら、

「おかしいとは思わんか?」

「はっ?」

「君たちが追撃され南下している事は、海軍内部でも一部しか知らないはずだ。俺ですら後方で待機していた 長門の艦上でようやく状況を知ったぐらいだ」

南雲はしばし考え、

「そう言われれば、陸軍の動きが早過ぎです。撤退用の船舶まで用意していたとなると」

「何処からか、俺達以上の速さで情報を聞きつけたという事だ」

 

山本は続けて、

「それにだ。今回、やけに陸軍はマジュロ上陸を急ぐ」

「はい、それは自分もおかしいと思います。海域の安全を確保してからでも十分間に合います」

山本は静かに、

「こういう事はあまり勘繰りたくはないが、陸軍の一部の人間にとってマジュロの人質は都合が悪い存在なのではないかと思う」

「都合の悪い存在ですか!」と迫る南雲。

「ああ。陸軍はマジュロの撤退の際、民間人や島民を残していった。もしその事が国内で公になれば陸の権威は失墜する。マジュロの人質はその生き証人だ!」

南雲は目を見開き、

「長官!では!」

「ああ、奴ら最初からマジュロへ上陸する気などない。我々をけしかけて重巡艦隊を突き、深海棲艦にマジュロを砲撃させて民間人を抹殺する気だ。よしんば我々が重巡艦隊を蹴散らして進路を開けば、マジュロで戦闘を行い、住民を砲火にさらし口を封じるつもりかもしれん」

「何てことを!外道にも程がある!」と南雲は顔を真っ赤にし、そして、

「軍令部総長は何処まで知っているのでしょうか⁉︎」

「解らん。しかしこの手紙をよこしたという事は、一枚噛んでいることは間違いない」

「どういう事ですか」

「いいかい。もし作戦が失敗し住民に多数の死傷者が出た場合、無理に作戦を実行したと我々、連合艦隊が叱責を受けるだろう」

「はい」と答える南雲。

「その時、軍令部は正式にマジュロへの陸軍擁護を命令していない、南雲君の独断でやった事になる。その証拠にこの手紙には軍令部総長として命じるとは一言も書いてない」

「軍令部は責任を取らないという事ですか!」

「ああ、だからこんな手紙で内示するわけだ」

山本は静かに、

「いいか。軍令部も参謀本部も、それぞれの思惑があるとは思う。しかし一つ言える事は、“マジュロの人質の事を考えていない”という事だ」

黙る南雲。

「南雲君、そこはいよいよ慎重に頼む。もし危険と判断されれば直ぐに俺達を呼べ、大和や 長門を楯にしてでも君たちを守る」

「はい、長官」といい、強く頷く南雲であった。

 

 

その頃パラオ泊地では、由良、睦月、皐月、そして はるなが護衛してヒ12油槽船団が入港してきた。

今回も、白雪・初雪・深雪の雪姉妹が護衛でついてきている。姉の 吹雪はトラックで 大和の直掩である。

油槽船団は自衛艦隊の直ぐ近くに投錨し待機、白雪達も湾の外周へ投錨した。

護衛の 由良、睦月、皐月はそのまま泊地内部へと入り、簡易桟橋へ係留された。

既にお昼を回っており、ひえい達の訓練も終了して、湾の中は閑散としていた。

油槽船団を指揮する船団長の元中佐は、

「航海長、すまんパラオ司令部へ行ってくる。停泊作業終了したら自由時間でいいぞ」

すると航海長は、

「おっ、まだ日が高いですね、釣りでもしますか」といい、竿を振る仕草をした。

「じゃ、晩飯は期待するかな」と元中佐が返すと、

「艦長は提督と一杯じゃないんですか?」

「さあな」といい、杖を突きながら鞄をもって舷梯をおり、待たせてあった内火艇に乗り込んだ。

自衛隊艦隊の前を通過する際に、先程まで殿で護衛してくれた はるなの前を通過した。

たまたま はるな本人がウイングに出ていたので敬礼して挨拶したが、綺麗に一礼して返答してくれた。

「ああいう綺麗な動作は 榛名だな」と思いながら、司令部のある泊地内部桟橋を目指した。

桟橋に着くと、丁度 由良や 睦月達が集まり、司令部へ向う所であった。

「およ!中佐!」と 睦月が気づき声を掛けた。

「中佐も司令部ですか?」と 由良が近寄ってきた。

「ああ、到着の挨拶と合流する船の確認だ」

「では、ご一緒します」といい、元中佐の持つ鞄を取った。

「済まん 由良」といい、鞄を渡し杖を突いて歩く元中佐。

横で 睦月がニヤニヤしながら、

「中佐、金剛さんじゃなくて、ざんね~ん」

うんうんと頷く 皐月。

すると元中佐は、

「でも、これはこれでいいぞ。綺麗どころが3人も介添えしてくれるんだ、両手に華だな」と笑いながら歩いた。

睦月や 皐月も笑顔で歩く。

由良達を従え泊地事務所へ入った。

一番奥の机を見たが 鳳翔はいなかった。地元島民の年配事務員が気づき、

「中佐。無事の御到着、お疲れ様です」と流暢な日本語で挨拶してきた。

「おう、爺さん元気か!明日の朝まで世話になるよ!」と手を上げながら答え、

「鳳翔さんは?」と聞くと 由良が、

「実は今日から 鳳翔さんの艦は大規模改修工事にはいる為に入渠しますので、その準備です」

「改修工事?」

「はい。船体寿命延長工事と近代化改修、いえ近未来化改修と言った方がいいです」と 由良が答えた。

階段を登りながら、

「まさか 三笠様みたいに新造艦じゃないだろうな!」と言ったが、

由良は笑いながら、

「それもいいですけど、鳳翔さんはあの艦がお気に入りですから。最新技術で次世代型の空母を目指すそうですよ」

それを聞いた元中佐は、

「赤城や 加賀が聞いたら青くなりそうだな」

そう話しながら2階の提督執務室の前に着いた。

ドアをノックする由良、中から提督の声で、

「入れ!」と返事が来た。

静かにドアを開け、

「提督さん、只今戻りました。それと」と言うと、

元中佐がゆっくり入ってきて、

「おう!元気か!」と声を掛けた。

「お前はいつ見ても回りに女性がいるな」

「ふ、羨ましいか?」と笑いながら話す元中佐。

由良達は提督の前に整列し、

「旗艦 由良、睦月、皐月、只今帰還致しました」と報告した。

提督は、

「お帰り、問題はなかったかい?」

「はい、はるなさんの援護も頂きましたので、艦隊合流も問題なく行えました」

「よし、じゃ 睦月と 皐月は戻って補給作業を行え。由良は執務を頼む」

といい、元中佐をソファーへ誘った。

ソファーに座る提督と元中佐。

「じゃ提督、僕達は失礼します」といい 皐月達は退室して行った。

「皆変わりないようだな」と中佐がいうと、

「ああ」と提督が答えた。

由良がお湯を沸かし、珈琲を入れてくれた。

「金剛さんの紅茶ほど美味しくありませんけど」といい、提督と元中佐へ差し出した。

元中佐は、

「いや、いい香りだよ」といい、

「トラックにいる時はずっと紅茶漬けだったからな」と笑いながら答えた。

「金剛は紅茶一辺倒だからな」と提督がいうと、提督の横へ座る 由良が、

「なぜあれ程紅茶派なんでしょうか?自衛艦隊の こんごうさんは珈琲も飲まれてましたけど?」

元中佐は、

「以前、比叡から聞いた話では、どうやらヴィッカースでの進水式後の祝賀式典で出された珈琲が当時の幼い 金剛には物凄く苦かったらしい。それ以来“あんな泥臭い物を呑む位なら水でいい”と言い張っている」

「意外と頑固なんだな」と提督がいうと、

「まあ、そこがいいんだが」と元中佐が答え、

「自衛艦隊の司令は留守かい?」と聞いた。

「いや、さっきまでいたが、明日の出港の件で自衛艦隊の司令部へ戻った」

「そうか、いや長官から伝言があったんだが」と言うと提督は、

「由良、自衛艦隊司令へ此方へ来られるか聞いてくれ」と言うと、由良はポケットからタブレット端末を取り出し、いずもへ電子メールを出した。

それを見た元中佐は、

「おっ!便利そうな物持ってるな」

すると 由良は、

「便利ですよ、携帯端末といいます。今は泊地内部だけですけど、音声と電文も送信できます」

提督は、

「条件さえ整えば、トラックとも電文や画像の送信ができる」

元中佐は、

「情報伝達の質が一気に跳ね上がるな」といい、

「その仕組みを使って戦ったわけか?」と提督を見た。

「ああ、我々は最初から最後まで完全に深海棲艦を出し抜いた。完全にこちらの手のひらの上で戦えたよ。確かに兵器の質の違いはあるが、情報戦があれほど有効とは思わなかった」

元中佐は、

「トラックで宇垣さんから逐一連絡を受けたが、快勝だったな」

「まあな、B-17を30機、深海棲艦ル級、ヲ級艦隊を完全撃破。おまけでラバウル奇襲までやった」

「お蔭でトラックは噂で大混乱だったぞ」と元中佐が言うと、

「大混乱?」

「ああ、深海棲艦の侵攻部隊の大艦隊がパラオを目指したという噂が流れてな」

「噂か?」とほほ笑む提督。

「事実を知るのはほんの一部の幹部だけだが、この手の話はかならず何処からか舞い込む」と元中佐は続けて、

「赤城達が 鳳翔さんの応援にとか、比叡達が援護にとか大騒ぎしたが、大淀の“パラオは今日も平常運転です”の一言で平静を取り戻したよ」

「赤城達は解るが、なんで比叡達が騒ぐ?」と提督が聞くと、

「多分、金剛経由で彼女達の事を聞いたんだろう。孫娘が危ないかもしれんと思えば、そういうわな」

すると提督は、

「心配するだけ、無駄だったな」といい、

「凄いぞ、あの戦闘力」

「ああ、俺も行きがけ見たが、正に神技だな」と元中佐。

提督は、

「問題は、その噂がどこから舞い込んだかだ」

元中佐は、

「実は今、トラックの司令部に大本営から陸海軍の連絡将校が来ている」

「ほう、統帥部か?」

元中佐は珈琲を飲みながら、

「ああ、その大本営の連絡将校が“パラオへマーシャルから大規模な部隊が向った。今ならマーシャルは手薄だ。ここは一気に攻め込むべし”と各艦隊の司令連中を焚きつけている」

 

提督は暫し考え、

「奴ら、何処からその情報を?」

元中佐は、

「今一番濃厚なのは、ルソンだ」

「確証は?」

「宇垣さんの話では、ルソン沖で無線傍受している 間宮から、ここ数日急速にルソンからの無線発信が増えている。全て宛先不明だ」

「他にも色々あるんだろ?」と提督が聞くと、

「ふふ」と不敵な笑いで元中佐は誤魔化した。

 

ドアがノックされて 由良が対応すると、自衛隊司令と いずもであった。

司令は元中佐の前までくると、

「中佐、お呼びと言う事で参りました」と挨拶した。

元中佐は、

「済まない、忙しい所を」といい、席を薦めた。

提督の横へ座る自衛隊司令、由良と いずもは別に椅子を出し腰掛けた。

「司令。前回のトラックへの輸送護衛任務、感謝している」

「いえ。こちらとしては、やるべきことを行っただけです」と返事をする司令、続けて

「明日は こんごう、ひえい、そして いずもが途中までご一緒します」

「ああ、期待しているよ」と元中佐は言うと、

「実はね、白雪達が こんごう君が一緒なら鬼に何とかで、“矢でも潜水艦でもかかってこい”と物凄い勢いでね」

いずもは、

「まあ確かに こんごうに ひえい、私も付きますから防御は万全ですね」

「それもあるが、白雪達もトラックでだいぶ教練したようでね。“光の巫女の御加護があるなら、自分達も頑張ります”と今回の護衛も志願してくれたんだ」と元中佐は話した。

「そうなのか」と提督が聞くと、

「ああ、前回の任務がかなりいい意味で起爆剤になっているようだ。あの 初雪でさえ、

“教練がんばる!”と言って動いていたからな」

「本当ですか⁉︎」と驚く 由良。

元中佐は笑いながら、

「あんまり 初雪が張り切るもんだから、吹雪が心配してな。パラオで変な物食べませんでしたかって真面目に聞くんだぞ」

「そりゃ、大変だな」と提督も笑顔で笑ったが、

 

「さて中佐、長官からの話ってなんだ?」と話を切り出した。

元中佐は鞄から書類を数枚取り出して、

「黒島作戦参謀が書いたマーシャル諸島開放作戦の作戦計画書だ」

そこには「最重要機密」と書かれた作戦計画書があった。

提督は、

「1通だけか?」

「ああ、これしか預かっていない」と元中佐が答えると、

提督は、

「自衛隊司令に渡してもかまわんのか?」と聞くと、

「泊地提督と自衛隊司令に見せて意見を、と聞いているが」

それを聞いた提督は、

「由良、下で複製を取ってくれ」と計画書を 由良へ渡した。

由良はそれを受け取ると、

「直ぐに戻ってきます」といい、席を外した。

元中佐が、

「複製を作るって、誰かに複写させるのか?機密書類だぞ」と言ったが提督は、

「いや、由良が自分で複製を作る。ほんの数分でだ」

「ほう、どんな方法だい」と元中佐が聞いたが、

「自衛隊から複写機という機械を借りていてね。書類を大量に複製する事ができる機械だ、便利だぞ」

元中佐は、

「そんな機械があるのかい?印刷じゃなくて」

「はい。コピー機といいますけど、私達の時代では一家に一台はある機械ですよ」と いずもが答えた。

「世の中、便利な道具がこれから色々と出てくるんだな」と感慨深げに元中佐が言うと、

「お前も長生きして、これからの世界を楽しめるようにならんとな」

すると元中佐は、

「提督、お前結婚してから、だいぶ丸くなったな」

「まあ、人生、そんなもんよ」と笑っているうちに 由良が戻ってきた。

「提督さん、これでよろしいですか?」と作戦計画書の原本と複製を渡した。

「司令、これを」とそのうちの一冊を司令に渡す。

「はい、確かに」といい受け取る司令。

「読んでも?」と聞くと、

「ああ」と答える泊地提督、自分も計画書に目を通し出した。

室内にページを捲る音だけが響いた。

読み進める泊地提督が、

「大きく作戦は三つか。一つ目がマジュロの人質の確保、二つ目が敵深海棲艦の主力艦隊を諸島部から引き剥がし、作戦海域まで誘因、包囲殲滅、三つ目がマロエラップの飛行場の破壊か」

自衛隊司令が、

「これに先立って、パラオ対潜部隊による作戦海域の掃海作戦がありますね」

「ああ、瑞鳳と 陽炎、長波、秋月を出す」

すると 由良が、

「あの提督さん、私は?」

「ああ、後発部隊としてパラオで待機だ。自衛隊部隊と一緒に行動してもらう。最終的には 瑞鳳と合流してパラオ艦隊として動く事になる」

提督は、

「掃海作戦には自衛隊は はるなさんで大丈夫かい?」

「はい、当初は はるなを出します。その後空母戦になった場合は きりしまを 瑞鳳さんの護衛につけます」と司令が答えた。

元中佐が、

「こんごう君は?」

すると いずもが、

「気になりますか?」と意地悪な目で聞いた。

「まあ、ならんという方がおかしいかな」

自衛隊司令が、

「こんごうと ひえいはマジュロの人質救出作戦を行います」

「二人だけかい?」

「はい中佐。現在計画段階ですが、立て籠もるか、それとも避難するかで参加艦艇は大きく違います」

「ほう」という元中佐。

自衛隊司令は、

「もし作戦中ずっと立て籠もるという事になれば、こんごうと ひえいは隣のマロエラップからの航空攻撃に絶えずさらされます。またヲ級6隻の空母群やル級flagship並びにelite級、リ級重巡艦隊などもいます。逆に撤退となると、撤退用の艦船をいかに相手に気づかれないように近づけるかが問題です。また撤退した事を悟られないように小細工も必要です」

「撤退した事を気づかれないとは?」と提督が聞くと、

「はい、深海棲艦には人質がまだ島に残っていると思わせる事です。そうすることで島の周囲の重巡艦隊をくぎ付けにする事ができますし、敵の裏をかく事も可能です」

提督は、

「ドンパチせずに、全員を救出する必要があるという事か」

「はい。この作戦計画書では、大和さん達を囮にル級達をおびき寄せる作戦ですが、人質がいないとなればマロエラップへ引きこもる事も考えられます」

「敵が出て行きやすい状況を作るという事か」

「はい、人質がいれば連合艦隊はうかつに攻撃できません。相手はそこを突いてくるはずです」

司令は続けて、

「逆に立て籠もり作戦となると、重巡艦隊だけでなくマロエラップの航空機の攻撃などの波状攻撃を受けます。本隊の突入が遅れれば こんごう達でも長くは持ちません」

すると元中佐が、

「実は、その辺りの詳細を検討したいので、泊地提督と自衛隊司令に一度トラックへ来て欲しいとの事だ。机上演習を交えて作戦の詳細を検討したいそうだ」

提督は、

「おれは構わんが、自衛隊司令は?」

「はい。一度はトラックを訪問する必要がありますので、この機会に」

それを聞いた いずもが、

「私の艦で乗り付けますか?司令」

「いや作戦前だ、ここは穏便に行こう。最小の人数で良いだろう」

「司令、じゃ決まりだな」と泊地提督が言うと、

「由良、済まないが 三笠様経由で報告しておいてくれ。日程の調整は任せるが、ルソンの作戦が終了してからにしてくれ」

「はい、提督さん」と返事をしながら 由良はタブレットを取り出し、三笠へ送信するメールをしたため始めた。

「ほう、ここで電文ができるのか?」と 由良の作業を見る元中佐。

「はい、泊地内部と自分の艦の中ならどこでも電文を送れますよ。ただ中継用の航空機が飛んでいる時だけですけど」と 由良が答えた。

「たしか、金剛も似たような物をもっていたな」と元中佐がいうと、

「はい、金剛さんと 三笠様には端末をお渡ししています」と いずもが答えた。

すると提督は、

「由良は俺にも持てってうるさいんだよな...」

由良はタブレットを操作しながら、

「提督さんは、時々行方不明になりますから」と返事をする 由良。

 

提督は、

「この端末はな、常時居場所を送信しているから、これを持つ限り首輪がついているのと同じだよ」と笑いながら話した。

「そりゃ、大変だ」と元中佐はいい、

「そう言えば、金剛も俺に持たないかと言っていたのはそのせいか?」

「多分な」と答える提督。

笑いが室内に広がった。

 

 

こんごう達は午前中の訓練を終え、運動場のプレハブを解体して再び元の状態へ戻した。

作戦行動自体を隠蔽する必要がある。全ての痕跡を残さす消す必要があった。

綺麗に整地して、ローラーで鎮圧して整地した。

それを見た管理担当の泊地妖精兵員は、

「こんなに綺麗にしていただけるなら、今後もどんどん使ってください!」と喜びの声を上げた。

 

こんごうは合流した すずやと 陽炎、長波を伴って工廠のある区画へ向った。

そこには、既に浮きドックから工廠横の大型スロープへ移動した重巡 鈴谷の姿があった。

すずやの姿を見た 鈴谷副長達が手を振っていた。

「お疲れ!」といい大きな声で返事をする すずや。

重巡 鈴谷の船体は既にスロープに盤木で固定され、大型のクレーンで主要部品の取り外し作業が本格化していた。既にスクリューも外されスロープ横に鎮座していた。

そっとその大型のスクリューを触る すずや。

あちらこちらに傷やひずみが見える。

「頑張ったね」とそっと撫でた。

 

「そのスクリューは形成し直して再利用するんよ」と声をかけられた。

振り返ると、白いヘルメットに作業着姿の あかしであった。

こんごうが、

「お疲れ、あかし」というと、

「こんごうさんも大変やな、ほぼ徹夜状態やろ」といい、こんごうを見た。

「まあ、もう少し頑張れば、曙さんも救助できるし。もうひと頑張りかな」

と言いながら続けて、

「スクリュー再利用するの?」

あかしは、

「正確に言えば、ナノマテリアルの形成技術を応用して、素材分解して原材料レベルまで戻して、成分調整して再利用という形かな。主砲とか壊れた対空砲とかもこれで殆ど再利用するから、重巡 鈴谷さんの資材を余す事なく使うのよ」

すずやはぱっと明るくなり、

「じゃ、あかしさん。今までの 鈴谷の船体の部品もまた使われるのですか!」

「そう言うこと、形は変わるけどね」

じっと 鈴谷の艦体を見る すずや。

「また、一緒だね」と囁いた。

 

こんごうは、

「鳳翔さんの艦の方は?」

「いま、浮揚が終わった所」といい、こんごう達と工廠横の埠頭へ歩き出した。

「ごめんね、手伝えなくて」

「まあ、しゃないね。そっちも重要な任務やし、こっちは任しといて」と言いながら、

「パラオの工廠の妖精兵員さんも、パラオの島民職員さんもみんなだいぶ手慣れてきて、これ位ならもう自分達できる様になったからだいぶ楽やわ」といい、埠頭に係留された 鳳翔を指さした。

正確にいえば浮きドックに固定され、既に浮揚して船体底部を露わにした 鳳翔であった。

埠頭の横には大型のテントが幾つかならび、そこでは作業の進捗を管理していた。

テントに入ると、鳳翔や 鳳翔副長が作業の様子を見守っていた。

「鳳翔さん、先程はお茶の差し入れありがとうございました」

「あら、こんごうさん。訓練は終わりですか」

「はい、先程終了しました」といい、浮きドックに固定された 鳳翔の艦体を見た。

「ねえ、あかし。どんな改修になるの?」と こんごうが聞くと、

「大きい所はまず船体の強化、バルジの増設で船体復元力の強化、機関の交換、甲板の補強、対空水上レーダーの搭載、ヘリリンクシステムの搭載とまあ色々あるけど、一番大きく変わるのは格納庫かな?」

「格納庫?」と聞く こんごう達。

「実は私の艦は、格納庫が前部と後部に分離していて、それぞれエレベーターがあるのですけど、片方が壊れると壊れた方の格納庫から艦載機が出せない欠点があったのです」

「ええええ!」と驚く すずや達。

「まあしゃあない、初期の空母ですから。昔の一〇式戦闘機などでは問題にならない事でも、零戦では手狭です」と あかし。

「そこで あかしさんと相談して、格納庫を全通させる事にしました」

「強度、大丈夫なの あかし?」と こんごうが聞くと、

「そこは問題あらへん!ばっちしや」といい、

「まず甲板を全て剥ぎ取って、その後胴体を真っ二つに前後に分断する」

「輪切りにするの?」

「そう。そして機関を抜き取って、格納庫を全通して、再び接合する」

すると すずやが、

「あの、キールとか切って大丈夫なんですか?」

「そこは任せといて」といい、そして

「すずやさんも似たような事するわよ」と あかし。

「えええ!」と声に出す すずや。

にこにこしながら あかしは、

「お尻をばっさり切り落とします」

「うっ、うそ~!」と自分のお尻を押さえた すずや。

「トランサム・スターンを採用するの?」と こんごうが聞くと、

「はい、まあ後部に大規模な飛行甲板を設けますから、トランサム・スターンの方が何かと便利なんです」

すると 鳳翔が、

「私の艦も、いずもさんみたいに艦尾を角型へ変更して内部空間を確保する予定なんです」

こんごうは、

「後ろ姿がかなり変わりますね、鳳翔さん」

「はい、いい意味で大きくなります」と少し顔を赤くした。

あかしは すずやへ向い、

「ルソンから帰ってきたら、艦霊力の精密測定するからね」

「艦霊力の精密測定?」

「そう、以前 いずもの艦内で、高速補修材の入ったカプセルに浸ったの覚えてる?」

と あかしが聞くと、

「あの時の?」

「そう、あの装置で艦霊波を測定するの。その結果で最終的な改装計画が決まるのよ」

すずやは、

「うう、頑張ります」と気合を入れたが、

「頑張るって言っても、浸って寝てるだけだもんね」と あかしが括った。

 

その後、こんごう達は あかしや 鳳翔と分かれ、トボトボと歩きながら泊地司令部へ向う。

司令部へ入り、2階の提督執務室へ向う。部屋の前までくると、中で笑い声が聞こえた。

「誰か来ているみたい」と 長波がいい、ドアをノックした。

「提督! 長波です訓練終わりました!」と外から声を掛けた。

「おう、入れ!」と提督の声がして、ドアが開いた。

由良さんが立っていた。

「皆さん、お疲れ様です」と 由良が声を掛け、

こんごう達が中へ入るとソファーに誰か座っていた。

司令と いずも副司令、泊地提督、そして元中佐。

「おっ、おじ…」と言いかけて、声を殺した。

こんごうは内心、

“あっちゃ~!御爺様がいるなら着替えてくるんだった!”と思った。

それもその筈だ。突入訓練を終了して、訓練施設の解体と清掃で迷彩服は埃まみれである

それでもきちんと整列して、

「こんごう以下、午前中の訓練を終了いたしました」と司令と提督へ報告した。

「お疲れだったね、こんごうさん」と提督が返し、

「準備は?」と司令が聞いた。

ちらっと元中佐を見た こんごうであったが、司令達が何も言わないので、

「はい、全て完了しました。ひえいと特戦は現在 いずも艦内で最終の火器点検中です。その後、特戦は私の艦へ移乗し、明日の朝には準備を整えます」

すると いずもが、

「オスプレイは洋上でいいのね」

「はい、私のロクマルが ひえいへ移乗した後に収容します」

司令は、

「分かった、今日はゆっくり休んでくれ。明日は予定通りマルハチマルマルに出航して、ヒ12油槽船団の復路便の護衛だ」

すると元中佐が立ち上がり、

「こんごう君、前回は本当に助かった。今回もよろしく頼む」と右手を差し出した。

「あっ、はい」と右手を取り、しっかりと握手した。

 

“ああ、こんな優しい手なんだ”と一瞬思った。

少し顔が赤くなる こんごう。

その表情をニヤニヤしながら見る いずも。

「お前、またそんな顔してると、こんごうに意地悪って思われるぞ」とそっと耳打ちする司令。

「いいじゃない、それ位」

こんごうの表情を見た泊地提督が、

「おっ、少尉の時とは、やけに対応が違うな」と言うと、

「少尉って、岡君帰ってきてるのか?」と元中佐が聞いた。

それを聞いた こんごうが急に表情を厳しくして、

「少尉とお知り合いですか?中佐!」

すると元中佐は、

「ああ、以前泊地の正面海域に深海棲艦の打撃艦隊が現れた事があってな。俺が 金剛と 赤城を連れて応援にきたんだが、その時、周辺の島で地上戦があってね。一緒に戦った事がある」

提督は、

「あの時は、たまたま諸島の端の島に偵察に出ていた少尉の部隊と、深海棲艦の前衛偵察隊が鉢合わせになってね。島の住民を守る為に少尉達が必死に応戦したんだ。急を聞きつけ、金剛と 睦月達が駆けつけ海上から砲撃してようやく深海棲艦の陸戦隊を排除したが、少尉も腕に怪我をしてね。大変だったよ」

こんごうは、“あの腕の怪我はその時の怪我ね”と思った。

元中佐は座りながら、

「少尉は元気かい?提督」と聞くと、

「ああ、あいも変わらず朴念仁だがな」といい、続けて、

「こんごうさんの水着姿を見ても、ちっともなびかん」

「ほう、それは」と言うと、元中佐は こんごうを見た。

「提督さん!」と横に座る 由良が“きっ”と睨んだ。

当の こんごうは、

“ああ、もう御終いです”と言わんばかりに顔を真っ赤にしていた。

 

元中佐が、

「女性になびかん彼奴が こんごう君達を監視するという事は」

「まあな。駐留部隊の中隊長の指示だが、元は参謀本部の意向らしい」

すると元中佐は、

「やはりな、動きだしたか」と呟いた。

 

その後、元中佐と こんごう達は揃って司令部を後にした。

元中佐も自分の輸送船へ戻り、明日の準備をする為である。

すずやと こんごうを従え歩く元中佐。

元中佐の鞄は すずやが持っていた。

「すまんね、すずや君」と声を掛ける。

「いえ、これくらい」といい、笑顔で答える すずや。

それもその筈だ。こんごうの横には、パラオの虎と呼ばれ第三戦隊を率いて暴れた指揮官が並んでいるのだ。優しい言葉とは対照的に鋭い眼光が光る。

元中佐は、

「自衛隊の仕事にもだいぶ慣れたようだね」と聞くと、

「はい、こんごう艦長のお蔭です」と返事をした。

すると元中佐は、

「以前あった時は“中佐じゃん”とか言ってたが、変われば変わるもんだな」

「中佐、それは言わないでください!」と顔赤くする すずや。

「おっ、そう言えば 熊野に、“鈴谷はちゃんとしているか見てきてください!”って言われてたな」

「熊野ですか!」と すずやは元中佐を見た。

「ああ、最上達と次の作戦に向け猛訓練中だ」

「次の作戦と言うと、マーシャル諸島開放作戦ですか?」と こんごうが聞くと、

「そうだ、マーシャルとソロモンを抑える。特に両作戦とも諸島部が多い、小回りの利く重巡艦隊は重宝されるぞ」

すずやは、

「熊野、頑張ってますね」

「お前も負けんようにな」と元中佐が言ったが、

「すずやの艦はまだ修理中です。早く治らないかな」とぽつりと言った。

こんごうは、

「マーシャルは間に合わないけど、ソロモンまでには直るわよ。あそこは諸島部で大型艦は動きにくいから、私達の出番ね」

「はい、こんごう艦長!」と元気に返事をする すずや。

三人で笑いながら内火艇を係留している桟橋にくると、一台の自転車が停めてあり、その横には“あの男”だ!

こんごうはその男性を見た瞬間、目を吊り上げ、

「出たな、のぞき魔!」と呟いた。

 

少尉はきりっとした姿勢で元中佐に敬礼をし、

「ご無沙汰しております、中佐!」と挨拶した。

元中佐も答礼しながら、

「久しぶりだな、少尉!腕の具合はどうだ!」

「はい。あんなのは、中佐に比べればかすり傷であります」そう言うと こんごう達へ。

「先日はどうも」と当たり障りのない挨拶をした。

やや目のつりあがる こんごう、これから何か起こるのか期待が半分、恐怖が半分の すずや。

元中佐は、

「目当ては俺じゃなくて彼女か?」といい、こんごうを指さした。

「流石です」といい、少尉は こんごうへ向い大き目の封筒を差し出した。

「贈り物だ、使ってくれ」

「贈り物?」と言いながら、封筒を開いて中身を見た。

数枚の写真と図面があった。

写真には数人の海軍軍人が写っていたが、横からその写真を見た すずやが急に表情を厳しくして一言、

「クソ司令!」と腹の底から唸った。

すずやは こんごうの持つ数枚の写真の中から一枚を取ると、

「こいつです!ルソン北部のクソ司令は!」といい、写真に写る男性を指さした。

「ホント⁉︎」といい、写真を覗き込む こんごう。

「はい、間違いありません。横にいるのが副官です!」

そこには、ルソン北部警備所の主要者の写真が入っていた。

写真の中には埠頭を歩く、少しやせた 曙が写っている物もあった。

その写真を無言で見る すずや。

同封の図面は近隣の見取り図だ。

図面を見る こんごうに少尉は、

「米軍の監視員がいる、注意しろ」

「米軍?」

「ああ、警備所の動向を探っている。ただ厳しい監視じゃない、深夜は手薄になる」といい、図面の一部を指した。そこには米軍の監視体制が記載されていた。

「これ、どうしたの?」と こんごうが聞くと、

「先輩に頼まれただけだ。ルソンの知人に頼んで調べて貰った」といい、元中佐を見た。

再び図面と写真を見る こんごうと すずや。

 

少尉は元中佐と少し離れ こんごう達に聞こえないように、

「中佐、東京は動きだしました」と告げた。すると元中佐は、

「そちらの仕切りは剃刀親父か?」

「はい、あの芝居が予想以上に上手くいきました」

すると中佐は、

「後で歴史家が知ったら世紀の大芝居というだろうな」そして、

「大掃除も間近か?」

「多分。ただ不安要素もありますので、トラックの親父殿と連絡を密に」

「分かった」といい、少し声を大きくして、

「今晩、提督と一杯やるから、どうだ?」

「先輩とですか?」

「ああ、艦娘寮の食堂で、鳳翔さんの手料理がつくぞ」

それを聞いた少尉は笑顔で、

「ぜひ、ご相伴させてください」

元中佐は こんごうを見て、

「こんごう君もどうだ?」と聞いたが、

「すみません作戦前なので。それと私、お酒はちょっと…」と言葉を濁した。

元中佐は、

「仕方ないな、新妻 由良の酌で我慢するか!」と言うと、

「それ、先輩が聞いたら怒りますよ」と少尉。

「それは勘弁してくれ。彼奴意外と嫉妬深いからな」と笑って誤魔化した。

図面と写真を見ていた こんごうであったが少尉に近寄り、

「情報提供感謝するわ。でも、よくあんな情報手に入ったわね」

すると少尉は意味深に、

「あそこを疑っていたのは君たちだけじゃないという事だ。米軍も、我々もだ」

それを聞いた こんごうは鋭い目つきで、

「へ~、高い情報料になりそうね」

「いや、君には借りがある」といい、こんごうの耳元へそっと、

「目の保養をさせて貰ったんだ、これは利子として受け取ってくれ」

こんごうは少尉を睨み返し、

「じゃ、元本はいつ返してくれるのかしら?」

「それは俺が一生貰っておく」

こんごうは少尉をぐっと睨んで、

「貴方、只の偵察小隊の小隊長ってわけじゃなさそうね」

少尉は、

「そこはお互い様だ」と言葉短く答えた。

 

そんな こんごうと少尉の緊迫するやり取りを横で聞いていた元中佐は、すずやへ、

「なあ、すずや君」

「はい、中佐」

「あの二人、どう思う?」

「すずや的にはいいと思いますけど」

「う〜ん」と唸る元中佐。

 

こんごうが、

「情報は有難く貰っておくわ」と言うと少尉は、

「では、そう言うことで」といい、元中佐へ向い、

「中佐、夕方また出直してきます」と敬礼し、再び こんごうへ向い、

「戦闘服も似合ってるな」とさりげなくいい、踵を返すと自転車にまたがり去って行った。

こんごうは、

「やっぱり変な人」といい、その姿を見送った。

 

その後 こんごうは、元中佐を油槽船へ送り届け、ようやく自分の艦へ帰ってきた。

既に自分の分の火器は届けてもらっていたので、武器庫で点検、清掃を済ませた。

20式小銃のバレル内部は特に綺麗に磨いておく。ケミカル剤を使い、バレル内部に残った弾頭のカスやパウダーの残りカスを溶かして専用の清掃用具で綺麗にしておかないと、動作不良を起こしかねない。可動部にはシリコンスプレーを吹いて、動作を確認しておく。

ついでに9mm拳銃も同じ要領で清掃して、点検しておく。暗視装置や予備弾倉などを確認して、全てベストとバッグにしまい込んで準備を整えた。

一旦私室へ戻り、ここでようやくシャワーを浴びる事が出来た。

埃まみれの戦闘服を脱いで、私室に隣接するシャワー室へ駆け込んだ。

シャワーを浴びながらふと少尉の言葉を思い出した。

“米軍も、我々もだ”

「我々も?すると陸軍がかんでいるのかしら?」と思いながら、シャワー室を出て新しい制服に着替える。

鏡の前で髪を乾かし整え、自分を見て、

「戦闘服もいいけど、やっぱりこの服の方がいいわ」と言いながら、艦長公室へ向った。

すでに艦長公室には すずやと副長が待機していた。

「ごめん、遅くなって」と言いながら こんごうは席に着いた。

副長と すずやも椅子を出し、こんごうの前へ座る。

「副長、訓練中の艦内指揮を任せてごめんなさい」と こんごうが言うと、

「大丈夫です、その為の自分ですから」

「じゃ、打合せ始めましょう」と こんごうが切り出した。

すずやが書類を数枚配る。

「ヒ12油槽船団の復路便はこのようになっています」と すずやが こんごうに報告した。

そこには泊地司令部から報告された、油槽船団護衛の内容が記載されていた。

「復路便は空という訳じゃないのね」と言うと、

「はい艦長。一部の機材の本土修理等で、零戦などの破損機を搭載しています」と すずやが報告した。

「まあ、これも あかしの陸上工廠が本格稼働すればここで修理できるから、だいぶ楽になる筈よ」

すずやは、

「でも、あの再利用機構は驚きました。あんな事ができるのですね」

「驚いた?あれが あかし最大の売りの前線修理技能よ。ある資源を最大限に使い、補修、修理する技術。まあたまに元の性能を超えてしまうのが玉に瑕なんだけどね」

「でも、それはある意味嬉しい誤算ですね」と すずやが言うと、

こんごうは書類に目を通しながら、

「そお?この前なんか艦霊力を使った重力砲なんていう、トンデモ兵器を考えてたわよ」

そう言うと、

「油槽船団を私と ひえい、いずもで護衛します。6隻ずつの複縦陣の露払いを 白雪さん、左右を 初雪、深雪さんで固めて、その後ろに私と ひえい、殿は いずも副司令です」

「はい、艦長」と副長と すずやが返事をした。

「船団の指揮は中佐が行います。対潜警戒は いずも航空隊、戦闘指揮は いずも副司令です」

そう言うと、

「ここまでで質問は?」と聞き返した。

「ありません」と答える副長、すずやも頷いた。

「私は作戦行動に専念しますから、船団護衛中の指揮は すずやさんにお願いしますね」

「えっ!」と驚く すずや。

「対潜ヘリを使った作戦行動を学ぶ丁度良い機会よ、やってみる?」

すると すずやは、

「いいのですか?」

「ええ、副長が補佐してくれるから、心配ないわ」といい、こんごうは副長を見た。

「任せてください、ビシビシ指摘します」と答える副長。

「よっ、宜しくお願いします」と副長に一礼した。すると副長は、

「思い出しますな~、艦長の新人時代を」

それを聞いた こんごうが、

「なっ、なによ」と副長を睨んだ。

すると副長は真面目な顔をして、

「自分は先代 こんごうから副長をしています」

「先代 こんごう?」と すずやが聞くと、こんごうは後から1枚の写真を取り出した。

「護衛艦 こんごう、艦番173。日本初の本格的な艦娘イージスシステムを搭載した護衛艦よ。私のお母さんの艦」

「これが艦長のお母様の艦!」といい、写真を見る すずや。

副長が、

「先代もそうでしたが、皆最初はよちよち歩きです。しかし場数をこなす事でそれが成熟し、一つの体系となります。先代はそれを身をもって証明しました」

「証明って?」と聞く すずや。

副長は、

「はい。当時イージスシステムは米国の有人艦、アーレイバーク級を元に設計されましたが、先代は日本独自の艦娘イージスシステムを初めて搭載しました。当初は不具合だらけで真面に動かない事が多々あり、問題視されました。しかし、先代艦長は粘り強くそれを克服し、システムを開発していきました」

こんごうも、

「お母さんはそれは日々大変だったわ、家族の私が見ていられない程に。でもお母さんは負けなかった。世論の批判を浴びながらも着実にシステムを物にしていったわ」

副長も続けて、

「その甲斐あって、艦娘イージスシステムは完成し、その後の あたご型、そしてこの新こんごう型へと受け継がれています」

こんごうは、

「私が使うシステムは、お母さんの努力の上に築かれた物なの。勿論その後の あたごさん達の経験も付加されているわ。そういう人達の経験が私のシステムなの」

そして、

「すずやさん。貴方の使う予定のシステムは先代 こんごう、その後の あたごさん、そして私の経験を全てつぎ込んだ、新すずや型なの」

 

「すずや型!」と唸る すずや。

 

こんごうは、

「新しいシステムは、最初から上手く動くとは限らないわ。上手くいかない事の方が多い。でも上手くいかないからと言って、直ぐに別の物に手を出すのではなく、じっくり仕上げるのも重要な事なの。経験は買えない、積み重ねて行くしか方法はないわ」

こんごうは続けて、

「私も色々と失敗したわ。中には国防機密扱いの大失敗もあるわ」

「機密扱い?」と すずやが聞くと、

「そのうち話してあげる」といい、

「今回の護衛任務も経験よ、頑張りなさい!」

それを聞いた すずやは、

「はい、頑張ります!」と元気な返事をした。

 

外は夕闇が迫りつつあった。

 

そんな夕刻の頃、

ここ泊地艦娘寮の食堂は大盛況であった。

普段は 睦月達艦娘と、泊地内部に居住する単身者向けの食事を提供しているだけであったが、今日はヒ12油槽船団の船員や 白雪達もこの食堂で夕ご飯を食べていた。

「美味~い!」と言いながらご飯をかき込む 深雪を見ながら、

「深雪ちゃん、もう少しお行儀よく食べないと 吹雪姉さんに言いつけますよ!」と 白雪が言うと、

「本当に美味いんだもん。やっぱり 鳳翔さんのご飯は最高!」といい、魚の煮つけを貪った。

その横では、初雪が無言で黙々と食べている。

流石に普段食欲旺盛な 睦月達も一歩引いた!

「おう、食べてるか!」といい元中佐と提督、そして少尉が入ってきた。

「中佐、このお魚の煮つけ美味しいですよ!醤油とショウガが食欲を!」と言いながら口をモグモグさせる 深雪。

「はい、皆さん。今日は 瑞鳳ちゃんの卵焼きもありますよ」と言いながら、白雪達のテーブルへ特大の卵焼きを置く 鳳翔。

「鳳翔さん、この横についている物は?」と 白雪が聞くと、

「これは はるなさんに教わった“マヨネーズ”というお酢とたまごの卵黄で作った調味料ですよ。卵焼きにつけて食べるととても美味しいですよ」

じっと初めて見るマヨネーズを見る 白雪であったが、初雪はお構いなく卵焼きを一つお箸でつまむと、マヨネーズをたっぷりとつけて口へ放り込んだ!

むしゃむしゃと無言で食べる 初雪を見る 白雪と 深雪。

「どっ、どう?」と聞く 白雪。

初雪は一言。

「美味しい」

それを聞いた瞬間、白雪達も卵焼きにマヨネーズをつけて口へ含んだ。

「美味し~い!!!」と声に出した!

それを聞いた 睦月達も、

「鳳翔さん!こっちも下さい!」と声にした。

「はい、お待ちどうさま」といい、瑞鳳が特大卵焼きを 睦月達の前に置いた。勿論マヨネーズもしっかり盛ってある。

 

既に駆逐艦娘のテーブルでは卵焼き&マヨネーズ争奪戦が始まったようだ。

それを見ながら元中佐は、

「はは、皆元気があっていいな」といいながら、鳳翔の案内で端のテーブルへ座った。

椅子に座りながら提督が、

「戦艦級の御淑やかな雰囲気もいいが、やっぱりああいう元気な所は駆逐艦娘だな」

鳳翔が魚の煮つけや野菜の炒め物、お新香、そしてジャガイモと豚肉を炒め、マヨネーズを絡め、オーブンで焼いた物を置いた。

「おっ、美味そうだな!鳳翔」と提督が言うと、

「はい、色々と はるなさんから教わりましたので」

後に冷えたビール瓶をトレーに持った 由良が待っていた。

提督の横へ座り、グラスを元中佐と少尉へ差し出し、

「どうぞ」といい、元中佐のグラスへビールを注いだ。

「おっ、新妻 由良のお酌か」といい、

「お前、高くつくぞ」と提督が言うと、

「いいな、お前。毎日こんな美人にお酌してもらって」と返した。

少し顔を赤らめる 由良。

「少尉も」といい、ビールを注いだ。

「あっ、すみません」

「ふふ、こんごうさんのお酌じゃないですけど」と 由良がにこやかに言うと横の元中佐が、

「少尉は こんごう君狙いかい!」と言うと、

少尉は、

「狙うというより、狙われているという方が正解かと」と返した。

提督が、

「大体、お前が こんごうさん達の水着姿を覗くからこんな事になるんだ」と言いながら、

由良からビールを注いでもらうと、

「提督さん、それ位で」と 由良が停めた。

元中佐が 由良へコップを渡し、

「由良さんも」といい、ビールを注いだ。

4人揃ったところで、

「では」と提督がいい、4人でグラスを鳴らしてビールを飲みこむ。

 

元中佐は、

「少尉。それで、どうだった?」

「どうと言うと?」

「いや、こんごう君の水着姿だよ。だいぶ目の保養にはなったろう」とにやけ顔で聞くと、

「中佐もいじめんでください、自分は任務で監視しただけです。おまけに見つかって、張り倒されましたし」

「ほう~」という泊地提督、そして 由良へ、

「少尉の隠匿術を見破るとは、由良お前できるか?」

すると 由良は、

「厳しいですね。気配を隠すというより、少尉の場合、すり替わるという感じですから」と答えた。

提督は、

「由良の対潜能力も持ってしても発見が難しい少尉を簡単に見つけるとは、流石イージス艦娘だな」

「イージス艦娘?」と元中佐が聞くと、

「彼女達の火器機構の総称だそうだ。その鉄壁の防御力から、ギリシア神話に出てくるアテナが用いるどんな攻撃も跳ね返す楯から取られた名前だそうだ」

すると中佐が、

「光の障壁の事か?」と聞いたが提督が、

「いや、それは こんごうさん独自の技能だそうだ。イージスシステムは彼女達全てに搭載されている」

横の少尉が、

「やはり彼女は“光の障壁”が使えるのですね」とぐっと身を乗り出した。

中佐が、

「おっ、元陰陽師の家系としては血がうずくか」と聞いたが、提督は 由良が注いだビールを飲みながら、

「こいつ昨日、危うく こんごうさんに記憶を消される所だったよ」

「記憶を!?」元中佐は驚くと、

「お前、よっぽどいい物みたんだな」と少尉を見たが、

「中佐、それ以上は聞かんでください。今度は存在自体が消される可能性があります」と真顔で答えた。

提督が、

「俺も生まれて初めて魔法陣を見たが、空中で霊力が集約するのを初めて見たぞ」

由良も、

「短時間にあそこまで霊力を集約できる能力は凄いです。とても私達には真似できません」

それを聞いた元中佐は、

「なっ!こんごう君は空中に魔法陣を描いたのか!」と驚いた!

由良が、

「ええ、とても綺麗な魔法陣でしたよ。いずもさんが止めなけば、術式は完成していたでしょう」

元中佐が、

「確かに 金剛の家系は、元をたどれば英国の魔術師、ウィッチの家系だ。戦艦 金剛も多少は魔術を使う事ができる」

提督が、

「本当か!俺は見た事がないぞ!」

「ああ、本人は遊びの延長のような感覚だ。例えば 比叡に想いと反対の事を言わせるとか、榛名の声を猫の声にするとか、霧島の計算を全て間違わせるとかな」

「本当に子どもの遊びですね」と 由良は笑ったが、

「由良よ。そう言うが、被害にあう俺達の身にもなってくれ」と元中佐は言いながら続けて、

「但し、あくまで遊びだ。戦艦 金剛の場合は、術式を書いた魔法陣の紙を艦霊力で具現化する程度で、それ以上の事は出来ないと言っていた。精々効力も30分程度だ」

「じゃ、こんごうさんの様に記憶を改ざんするというのは」と提督が聞くと、

「かなり、いや非常に高度な魔術だろう。魔法陣の術式も複数同時に発動する必要がある」

と元中佐が答え、そして

「それを空中に艦霊力だけで描いたとすると、物凄い力だぞ!」と言いながら横に座る少尉を見て、

「お前、とんでもない娘に睨まれたな」

少尉はそれを聞いて、

「勘弁してください」と頭を抱えた。

 

 

 

「うん?誰か噂した?」と一瞬感じながら、こんごうは艦長室で昼間少尉から貰った資料を検討していた。

既に写真や図面はスキャンして、いずもや ひえいにも送信している。

図面を見ながら地形図と合わせ、

「降下地点を少し変える必要があるわね」と唸った。

当初は駆逐艦 曙に近い埠頭付近へ降下する予定であったが、図面によると 曙の近くに監視とみられる悪霊妖精が配置されていると記載されていた。

また、米軍の監視員にも見つからないように降下する必要が出て来た。

じっと図面と地形図を見て、

「仕方ない。この警備所外周の草地へ降りて、敷地内へ侵入するしかないか」といい、タブレットの図面に×印をつけ降下地点と記入した。

「ひえいに突入までにこの 曙を監視している悪霊妖精も排除してもらわないと」といい、タブレットに排除する悪霊妖精の位置を書き込んだ。

じっとターゲットとなる警備所司令の写真を睨み、

「待ってなさい!!」と睨みつけた!

 

静かにパラオの夜は更けて行った。

 

ルソン北部警備所 指令室

警備所司令の体と意識を乗っ取った悪霊妖精は、コツコツと机を指で叩きながら同じく精神を乗っ取った副官に向い、

「パラオの状況は?」と問いただした。

副官は、

「はい。各所へ問い合わせしましたが、皆“特別な事態は起こっていない”との事です」

すると警備所司令は、

「そんなはずはない、ル級侵攻部隊が向ったはずだ。ラバウル基地のB-17の猛爆撃を受けたはずなのに、一切被害がないとはどういう事だ!」

副官は困惑しながら、

「確かに数日間、民間航空路が閉鎖されましたが、それ以外はほとんど動きがありません。空襲など存在しなかったと言わんばかりです」

警備所司令は机を叩き、

「では、ル級やヲ級、そして上陸部隊は何処へ消えた!」

既にこのような問答を数回繰り返していたが、一向に結論が出ないままだった。

警備所司令は顔を青くして、

「このままでは、本部から何がしか言ってくるぞ!!」

「既に侵攻部隊の戦果について問われていますが、未確定という事で返事を出しています。しかし、このままでは!」と副官が答えると、

「我々も、怠慢という事で処分されかねん」と警備所司令は唸った。

その時、ドアがノックされた。

声を潜める警備所司令と副官。

「入れ」と副官が言うと静かにドアが開き、曙が入って来た。

数枚の紙を司令の机へ投げ込み、

「今日の哨戒報告よ!感謝しなさい!」と言ってはいるが、いつものように声に覇気がない。姿勢もやや猫背になり、健康的な肌の色も色褪せて、目には隅が見て取れた。

その姿を見た司令はそっと席を立ち、曙に近付き優しく、

「曙、だいぶ疲れているようだな」と彼女の頭を撫でようと手を差し出した。

 

“パシッ!”

 

しかし、その瞬間 曙の右手が無意識に動き、差し出した司令の手を叩き落とした!

「気易く触るな!このクソ司令!」と眼光鋭く睨み返した!

まるで獲物を狙う獣の目だ!

「いい、私達艦娘は、陛下から地位と名誉を保障されているの。あんたみたいなちんけな司令に触られるほど、お安くないのよ!」といい、司令と副官を睨み返し、

「失礼するわ!」といい、ドアを蹴り倒して外へ出た。

それを見た副官は、

「強情ですな、気を許せば楽になるのに」

「まあ、あれだけ強情なら、飼いならせばいい戦力として使えるだろう。しかしその時は既に“曙”ではなく“駆逐棲姫”かもな、ふふ」と不気味な声で笑いだした。

 

真っ暗な中、トボトボと自分の艦へ戻る 曙。

小さいながら、駆逐艦が係留できる桟橋がある。前任者の堀司令が、“せめて駆逐艦が係留できる場所を”という事で無理して建設した簡易桟橋だ。

桟橋の入口付近に、見た事のない小銃を持つ妖精兵員が立っていた。

最近就いた歩哨だ。

ぎっ!と睨んで横を過ぎる。別段気に留める事もなく無言でこちらを見ている。

まるで死人が立っているようだ。

 

「以前いた人たちなら、“元気かい”とか“頑張るね”とかの一言もあったのに」と呟きながら、またトボトボと歩いた。

 

ふと頭上に見える月を見ながらそっと、

「あたし、どうしちゃったんだろう。何でこんな所に」と呟いた。

 

静かに波の音だけが響く港、今はただ波の音だけが響いていた。

 

 

 





こんにちは スカルルーキーです

分岐点 こんごうの物語 第37話です

毎回 多くの方々より、誤字報告やご感想を賜り、御礼申し上げます
処女作でもあり、作風が安定しておらず大変読みにくい文章であるとは思いますが、
今後ともよろしくお願いいたします

今回の弾丸(ルソン強襲編)は、マーシャル諸島解放戦の前編を兼ねておりますので、
ルソンとトラックのお話が交互に進む展開です。

さて、今回の文章の中の
「これは誰かがやらなければならない事です、誰かがやるならそれは自分でありたいと思っています」
これは友人の自衛官の方が私に語った言葉です


次回は
「護衛艦こんごう! いっくよー!」です
では





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