分岐点 こんごうの物語   作:スカルルーキー

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遠くで声がする
「おばあさま 避けて!」

懐かしい声、叫ぶ声

そして彼女が見たものは



3.雷撃、被弾!

朝焼けを艦橋で受けながら、金剛は今日も元気だった。

「Follow me!皆さん、ついて来て下さいネー!」

 

「おい 金剛、そんなに急ぐとトラックまで燃料が持たんぞ」

 

「あらあら、金剛さん」

元気な 金剛の声に 長門、大和が答えながら、一路パラオ沖経由でトラックを目指す。

 

金剛は艦橋横の見張り所に出て見張り妖精と共に、ビッカースの皆さんが「よき進路が見えますように」と竣工記念に贈ってくれた愛用の双眼鏡を使い水面を監視していた。

 

呉鎮守府を 金剛、長門、大和、軽巡の 阿武隈、そして駆逐艦の 白雪、初雪、深雪の雪三姉妹で出港。一路トラック泊地を目指していた。

金剛は昨日の事を思い出していた。昨日、早朝に発生した超大型の低気圧により大しけ状態となり、阿武隈以下の艦艇を 長門の判断でルソン方面に避難させた。

戦艦の自分ですら翻弄されるような大波が数時間も続いたのだ。駆逐艦などはかなり危険だったでしょうネ。

本当ならルソン島から直接トラックへ向かう航路を取りたかったデスケド、駆逐艦がいなければ丸裸状態です。パラオの哨戒圏内まで逃げ込めば、あとは 由良達に応援頼む事もデキマス。

彼女達は急いでいた。昨夜遅く正体不明の電波を探知、対潜警戒の為の之字運動をやめ速度をあげて現場海域を突っ切ろうとした。

 

金剛は巫女服をあしらった戦闘装束のポケットから1通の指令書を取り出し、再度読み直した。

横須賀で艦体整備を終え、長門達と合流する為に呉に向かう直前に横須賀鎮守府の秘書艦 高雄に呼びだされた。

提督室へ挨拶を兼ねて行くと、提督と 高雄が出迎えてくれた。

 

「金剛、出港前の忙しい時にすまんな」

 

「ダイジョウブデス。提督と 高雄の頼みなら問題Nothingデス」

 

「早速で悪いが 金剛。今回のトラック行きだが、同行する 長門と 大和の護衛を頼む」

 

「ハイ、軍令部から聞いてマス。呉で合流してですね」

 

「実は 金剛、ここ数週間ルソンからパラオの近海で 深海棲艦の潜水艦部隊が遊弋しているとの情報が来ている」

 

「なんですって!由良達は何をシテイルノデスカ!」

 

「現在マーシャル方面への対応でルソン、パラオ間の哨戒網に穴があるようだ。そこを突かれた。彼女達に責任はない」

 

「金剛さん、これを」 高雄は1通の軍令部からの指令書を 金剛に手渡した。

そこには簡潔に 金剛に対し、金剛以下の軽巡、駆逐艦を楯としてでも、長門、大和をトラック泊地へ回航せよとの命令が書かれていた。

 

「提督。この 金剛がいれば、長門と 大和は必ずトラックへ送り届けるネ。では、そろそろ出港です。長門達が呉で待ってます」

「高雄、提督と早く“ケッコンカッコカリ”してね。応援シテルヨ」 一礼すると 金剛は静かに提督室を後にした。

 

 

 

 

金剛が去ったあと暫く黙っていた鎮守府提督は、

「高雄!」

 

「提督?」

 

「今すぐお前の船を出せ。軍令部の馬鹿どもの頭上に20.3cm砲をぶち込んでやる」

 

「提督、落ち着いてください!」

 

「ああ俺は冷静だ。奴ら山本長官や宇垣参謀長が居ないと思ってやりたい放題だ。いいか!艦娘は奴らのおもちゃではない。大事な日本の守護者、海の神が遣わした巫女だぞ!こんな命令がまかり通ってたまるか!」

 

「提督…」

 

横須賀での事を思い出していた金剛は見張り所でそっと、

「もう、横鎮の提督は心配性ですね」

「でも 金剛は嬉しいです。高雄、幸せになってクダサイ」

そう思って再度海を見直した直後、

 

誰かに 呼ばれた 「お祖母様! 避けて!」

 

咄嗟に声のする方を見た。

そこで 金剛が見たものは、傲然とこちらへ向かう6本の白い航跡。

熟練見張り妖精が「左舷、雷跡!」と叫ぶ!

金剛は回避の為、素早く自らの力で艦を操船した。

「取舵!間に合って!」 「機関、全速!」

排水量3万トンを超える巨体は、そう簡単には曲がらない。

最初すこし横に滑る。徐々に艦が傾斜してようやく舵が効き始める。

 

最初の2線は艦首方向へ抜けた。次は艦尾方向へ流れた。

「躱せる!」

そう思った瞬間、凄まじい爆音と艦橋を超える水柱が上がる。金剛の左舷艦首と2番煙突下に被弾したのだ。

衝撃で船体部品が飛び散る。被弾箇所付近にいた数名の妖精の姿が見えない。

巻き上がった海水をもろにかぶる 金剛。

 

「Shit!長官に貰った大切な装備が!」

悪態をつきながらよろける 金剛。左足と脇腹に赤く血が染みる。

 

「艦長!」 「大丈夫ですか!?」

副長妖精や参謀妖精が艦橋から飛び出してくる。金剛は彼らに捕まりながら艦長席へとたどり着いた。

「艦長、手当を!軍医を呼べ!」叫ぶ副長を 金剛は止めた。

「私はダイジョウブデス!それより被弾ヶ所付近の負傷者の救護、被害確認デス!」

「しかし艦長!」と心配する副長を 金剛は鋭い眼で睨んだ。

「私はこれ位で沈み(死)マセン!」 

 

「おい金剛、大丈夫か!?」

「金剛さん!」相次いで 長門、大和から問いかけられ、

「問題ナイネ、少し掠った位で!」と元気に答えて見せるが、長門は長い付き合いから こんな答え方をする時はかなりキツイ事を知っていた。

 

艦橋に応急修理妖精の伝令が飛び込んできた。

 

「報告します。艦首破孔、防水隔壁 一部損傷。浸水が止まりません」

「続いて2番煙突下被弾、缶室の一部に浸水です」

バイタルパートを突き抜けたか!

 

「伝令さん、修理班長に全力で浸水を止めるよう伝えて!」

 

「はい艦長!」

 

「長門、もうすぐ浸水も止まる。機関も無事。ノープロブレムデス!」

「でも少し速度が出ないから、長門と 大和は先に行ってください。私はパラオで修理してイキマス!」

 

長門は暫く考えそして、

「分かった。私と 大和はここからトラックへの最短航路を取る。お前はパラオでのんびりして来い」

 

「OH、長門。流石!長官と姫様に宜しく伝えてクダサイ」

 

「大和、機関最大で飛ばしていくぞ!」

 

「しかし 長門さん!」

 

「大和!」 長門は有無を言わさず増速して行った。慌てて 大和もあとを追う。

 

「金剛、何とかパラオへ向かえ。助けは必ず呼ぶ!」長門は呟きながら、ひたすら前だけを見て走った。

 

速度の落ちた 金剛を残し離れていく 長門と 大和を見ながら、

「これで終わりではありませんね?副長」

 

「近くにいる艦隊を呼び寄せられると、ちと面倒ですな。艦長」

 

「まあその時は、ヴァルハラが近くなるだけデス。殴り合いならマケマセン!」

 

長門と 大和の艦影が徐々に遠ざかると 金剛は、

「副長、次は何だとオモイマスカ?」

 

「たぶん先程雷撃してきた潜水艦は、通商破壊艦隊の前衛ですな。軽空母あたりがいると思いますが」

 

「艦載機を 長門達へ向かわせる訳にはイキマセンネ。副長、進路をパラオ泊地へ」

 

「羅針盤妖精、航路指示オネガイシマース」

 

「はっ、しっかり回していきます!」と元気に答える羅針盤妖精。

(あれはやっぱり回すものなのか?)

 

「通信妖精、パラオへ救援要請デ〜ス。パラオでラブラブしている提督と 由良を叩き起こしマス!最大出力で派手に流しなさい!」

 

 

 

「由良秘書艦、ごめんなさい」と内心、手を合わせる副長妖精であった。

 

 

 

金剛は内心焦っていた。

皆の手前元気にふるまっているが、船体の破損は憑依している艦娘の身体に重く負担になる。場合によっては生命の危険すらあるのだ。

破損した艦首部分と第二煙突下の破孔は、走行の水圧で徐々に広がっていた。それに伴い 金剛自身の肉体的な傷も少しずつ増えていたのだ。

もしここで砲戦、対空戦どれをとっても致命傷になりかねない。

いや、もっと怖いのは浸水が止まらない事だ。

彼女はわかっていた。艦齢は既に30年以上、度重なる深海棲艦との戦闘で船体の各所に亀裂やひずみが生じている。今回の雷撃で各所のそうした歪みだけでなく、リベット等が吹き飛び手が付けられない状態である事を。

その証拠に徐々に艦体は左に傾斜している。パラオへ逃げ込むのが早いか、転覆するのが早いかである。

 

しかし、悪い知らせは続くものである。

 

「21号電探妖精より、報告です」

 

「距離およそ100km以上、方位080に多数の反応あり。数不明です」

 

「艦載機ですかね」と副長。

 

「もう少しすればハッキリするワ。向こうから来てくれるなら、やるだけデスネ」

 

「はい、総員対空戦闘よ〜い!」副長は凛と命じ、艦内に対空戦闘の号令ラッパが鳴り響いた。

 

「副長、艦内放送は生きてマスカ?」

 

「はい、艦長」とマイクを差し出す副長。

 

「総員、傾注!艦長の 金剛デ〜ス」

「皆さんにいい知らせと悪い知らせがありますが、どちらから聞きたいですか?」

 

艦内からいい知らせ派と悪い知らせ派が一斉に声を上げる。

 

 

「では、私の職権で悪い知らせから」と言うと、Boo!と言う声が聞こえた。

「現在本艦に向かって、深海棲艦の艦載機が多数向かって来ています」

 

各所から「え〜」とか「またかよ、シツコイね」とか声が上がっています…。

 

「では、いい知らせです」静まりかえる艦内。

「私たちはその艦載機を、すべて深海へ沈めてあげる事ができます」

「各員の奮戦を期待します!」と持てる力の限り叫んだ。

 

 

 艦内から声があがる!

「よし、やるぞ!」

「機銃弾もってこい!予備弾倉に弾込め急げ!」

「揚弾機、確認急げ」

「三式弾、準備だ!」と一斉に動きだす妖精たち。

「来やがれ。今日こそは目にもの見せてやる!」と息巻いて何処からか日の丸の付いた鉢巻を取り出し、しっかりと頭に巻き付け機銃に取り付く妖精。

 

 

「皆さん、気合がありますネ」

副長妖精はふと遠くを見ながら、

「思い出しますな。1912年ヴィッカースの工廠で初めて貴方を見たとき、こんな小さい子、可愛い子が我が艦の艦長かと驚いたもんです」

 

「副長?」

 

「大巫女様に仮召喚され、金剛建造の為イギリスに渡り、段々と形になるこの船体を見て、こんな立派な艦の艦長はどんな方だろうと期待したもんです」

「1912年、進水前の“神降ろし儀”の為に来られた、大巫女様がお連れになった艦長候補の貴方を見て、驚きましたね」

 

「え〜へ、そんなに美人でしたか?」

 

「逆ですよ。本心こんな子供に艦長が務まるのかってね。てっきり 三笠様とか、敷島様のような方を期待していましたからね」

 

「どうせ私はガキでしたからね」

 

「しかし我々の期待は、良い意味で裏切られました」

「こんな美人で勇敢な艦長になって、我々乗員妖精一同、嬉しく思っております」

 

「副長!」

 

「さあ、パラオへ行きましょう」

 

満身創痍な 金剛であったが、本人、そして妖精たちの士気は否応にも高かった。

金剛はできるなら この優秀な妖精たちだけでもパラオへ届けたい、そう願っていた。

度重なる戦闘で熟練妖精の数は日増しに減っていっている。新しく召喚した妖精たちもいるが練度不足は否めない。「経験は 一日では身に着かないのデス」

 

そっと海を眺め、無意識のうちに声にする。

 

「願わくば 金剛山の麓に広がる高天原に住まわし神々よ 我の願いを聞き届け給え」

「海神の巫女たるこの金剛に仕えし妖精たちに 未来を!」

 

普段では決して思いつかない祝詞とも思える言葉を発し、自らも驚いていた。

 

ふと、頭の中で何かが叫んだ。

 

「その願い 私たちが叶えて見せます お祖母様!」

 

 

 

「えっ!何だったのでしょうネ?」と声のする艦首を眺める。

 

突如、前方の200m程先の海面が白く盛り上がった。最初に目に飛び込んで来たのは尖った灰色の物体。

 

「船の艦首?」

 

続いて目に入ったのは艦橋と思える四角い物体。

物凄い角度で浮上してくる。赤い船底色の一部がせり上がり 大和のようなバルバスバウが見える。

 

「戦闘艦!」

 

「なっ、なにあの船は?」

 

まるでクジラがジャンプするように、いきなり海面に飛び出してきた。常識では考えられない。一瞬頭が真っ白になり、ぼーと眺めてしまった。

 

 

「撃ちますか?」と副長に聞かれ、何故か咄嗟に、

「まって、ダメデス」とつい答えてしまった。金剛は本能的に懐かしいものを感じていた。

 

 

 

 

 

最初の2線の雷撃を躱したとき、

「いける」と一瞬 こんごうは感じた。しかし予想以上に 金剛の動きが遅い。

「駄目。低速で舵が効いてない」

そう思った瞬間、こんごう艦橋に鋭い雷撃音が響いた。

艦長席の監視カメラの映像には、2本の魚雷を受け黒煙を上げる 金剛の姿が映しだされた。

「お祖母様!」 艦長席で叫ぶ こんごう。

「CIC、被害状況わかる⁉︎」

「詳細は不明ですが左舷、艦首と中央に各1発ずつ被弾した模様です」

「機関、推進音、共にしていますが艦内で爆発が起こっています」

 

「司令、直ぐに救助を!」 こんごうは司令と いずもを睨んだが、

 

「こんごう、堪えろ!」 司令は冷たく命令した。

 

俯きながら こんごうは、

「はい、司令」と返事はしたが、声は涙声であった。

 

追い打ちをかけるように副長から、

「長門と 大和、離脱します!」

 

「えっ、嘘でしょう…」

「長門さん、大和さん。なぜ!お祖母様を置いて行くのですか!?」

「見捨てるのですか、お二人とも!」こんごうはただじっと耐えていた。

 

いずもCICでじっと司令席に座る彼は、黒煙を上げている 金剛の映像を見ながら、自衛隊とはいったい何なのだと自問していた。

カ級が雷撃する事は分かっていたはずなのに、結局 金剛さんを救う事が出来ないでいる。専守防衛とは結局、犠牲の上に初めて成り立つのか?

2025年に至るまで、我々は交戦規程を明確に出来ないままでいる。

専守防衛の理念は、世界の現実の中では無意味なのだろうか?

 

思考を巡らせていた時対空要員から、

「きりしま、対空レーダーブイに感あり」

「方位080 高度4500ft 距離150km 約40近い移動目標感知」

「対地速度300kmで当海域に接近中です」

 

続いて 金剛達を監視していた要員から、

「長門及び 大和、金剛を残し海域を離脱します!」

 

「なに!金剛は追従しているのか?」

 

「いえ、進路転進しました。方位的にはパラオ方面です」

 

通信士官から、

「金剛からの無線、傍受しました」

 

「内容は?」

 

「はい、司令。『ワレ ライゲキヒダン センタイケイシャゾウダイ ソクリョクテイカ パラオヘムカウ キュウエンネガウ』 これを平文で繰り返してます」

 

いずもは考えながら司令に「平文とはどういう事でしょうか?」

 

司令は暫し腕を組みながら考えていた、金剛の人となりを。

そして急に立ち上がる。

「まずい。囮りになるつもりだ」

 

「囮りですか?」

 

「そうだ。長門達を深海凄艦の艦載機から引き離す為に、わざと平文で目立つようにしている」

 

「なぜです。長門や 大和がいれば、対空戦闘も余裕があるのでは?」

 

「逆だ。長門はまだしも 大和は就航してまだ間がない。対空戦闘には不安がある」

「それに艦載機がいるということは、近くに戦闘艦がいる可能性もある」

「もし 大和に傷でもつけば、それは海軍の威信に関わる。たぶん 金剛さんの事だ。自分が犠牲になれば、二人を助けられると思ったのだろう」

 

いずもは冷静にあの方ならやりかねないと思った。

 

「なあ、いずも?」

 

「はい、司令?」

 

「2025年、金剛さんの戸籍は?」

 

「はい。軍籍離脱後、艦娘特例法及び保護法により日本国籍に復権しています」

 

「では、日本人だな」 「はい」

 

「金剛さんの船舶艤装の資金は何処から出た?」

 

「当時の日本国の国庫です」

 

「では、日本の資産だな」 「はい」

 

「先程の 金剛さんの電文は、救難要請として記録しろ」 「はい」

「何とか名目はたつか…」 「司令?」

 

「各艦に通達!」

「現時刻をもって、本艦隊は海外で活動する邦人救助の為、戦闘行動に移行する!」

「保護対象は、戦艦金剛およびその乗員」

「イージス艦総括 こんごうは、直ちに指揮下部隊を率いて戦艦 金剛及び乗員の擁護を行え。以上!」

 

いずもは静かに、

「はい、司令」と答えた。

 

こんごうの艦長席で俯きながら泣いている こんごう。不意にアラームが鳴りディスプレイに いずもが映った。

 

「こんごうさん、泣いている暇があるなら行動しなさい」

 

「いずも副司令?」

 

「司令命令を通達します」

「現時刻をもって、本艦隊は海外で活動する邦人救助の為、戦闘行動に移行します」

「保護対象は、戦艦 金剛およびその乗員です」

「こんごうは直ちに指揮下部隊を率いて、戦艦 金剛及び乗員の擁護を行いなさい」

 

「!」

 

「復唱は?」

 

「はい。こんごう以下、イージス艦は戦艦 金剛および乗員の擁護を行います!」

 

「こんごう」

 

「司令!」

 

「待たせたな」

 

 

こんごうはポケットからハンカチを取り出すと涙を拭き、そして

戦術ディスプレイを起動し、僚艦に命じた。

「ひえい、はるな、きりしま。これから浮上して戦艦 金剛を擁護します」

 

「よっしゃ、やったるぞ」 ひえい

 

「がんばります」 はるな

 

「対空戦闘指揮、任せてもらいます」 きりしま

 

「いい皆。まず私が 金剛の前に浮上して、金剛の保護を通達します」

「その後浮上して、浮上後は即時対空戦闘用意よ」

「対空当直艦を きりしま、お願い!」

 

「きりしま、了解!」

 

「よっしゃ、久しぶりの対空戦闘!スタンダードぶちかますぞ!」と意気込む ひえいに司令は、

 

「皆、すまん。今回は主砲とCIWSで対応してくれ」

 

「えっ、どうしてですか司令?」と尋ねる こんごう。

 

「こちらの近代兵器を深海棲艦に見られたくない」

 

「はい。こんごう、了解しました」

「皆、わかった?」

 

「は〜い」とややテンションが下がった ひえいが答えた。

 

「じゃ、先に上がるね」

 

「航海長。重力子フロート、オンライン!メインタンクブロー!」

「みんな、派手に行くわよ!」

 

「はい、艦長!」

 

 

 

 

 

金剛はやや呆然としていた。

接近する深海棲艦の艦載機に対応する為に構えていた所に、あろうことか船、それも戦闘艦とおぼしき船がいきなり海中から飛び出して来たのだ。

驚くなと言う方がおかしい。

 

「深海棲艦ですかね?」と問う副長に、

 

「この距離で何もしないならドウデショウカ?」

 

「それに」

「それに?なんですか、艦長」

 

「何か見た事があるような気が…」

 

 

 

 

前方の不明艦を監視していた参謀妖精が、

「不明艦後部の出入り口らしきハッチが開きます!」

 

慌てて双眼鏡で前を見る。

ハッチが開き、中から青い作業服を着た妖精らしき影が、二人出てきた。

素早く船尾とおぼしき位置にあるポールに走り寄り、何かを掲揚した。

「旭日旗です。海軍の旭日旗を掲揚してます」

 

「前方のマストとおぼしき部分にも、日の丸と旭日旗が上がりました」

 

「艦長、友軍艦なのでしょうか?」

 

「私の知る限り、潜水できる戦艦なんかアリマセン」

 

「海底軍艦ですかね…」副長も困惑気味である。

 

「前方の不明艦より、発光信号!」

 

「副長、読んで!」

 

「ワレ コレヨリキカンヲ ヨウゴスル タイクウセントウ ジュンビサレタシ」

 

「どうやら敵ではないみたいデスネ」

 

すると副長が、

「艦長、先程のハッチから人が出てきます」

 

「妖精ではないのですか?」

 

「女性です!同じ様な青い作業服を着ていますね」

 

金剛は自らも艦橋の窓側に向かい、双眼鏡を構えた。

そこで声を失った。

 

「えっ、あれは私デスカ?」

 

そこで見たのは自分そっくりなもう一人の自分。

上下の青い服、米海軍の士官艦内服をもっと洗練した感じの服をまとう女性。

腰まで伸びるブラウンの髪、大きなくりっとした目、日本人離れした顔つき、そして特徴のあるあほ毛。左手には少し大きめなブレスレットが見える。

 

「艦長?」

 

「何、副長?」

 

「どこかの提督さんとケッコンカッコカリをして、娘さんが…」 バキ…

 

そう言いかけた所で 金剛の右ストレートが副長の顔面をヒットした!

「副長!私はまだ独身デス!」

 

「失礼しました、しかしそっくりですな」

 

前方の不明艦の女性はゆっくりと艦尾まで歩きながら青い帽子を被った。

そして艦尾まで来ると見事な海軍式敬礼をした。

思わず答礼してしまう 金剛。

その時初めて気がついた。前方の不明艦の船尾に白く書かれる“こ ん ご う”の文字を。

 

 

 

 

 




こんにちは
スカルルーキーです

戦闘シーンが今後出てきますが 私ははっきり言って ミリオタではないので 用語とか機能なんか 全然分かりません まあ雰囲気で勝ってに解釈してきださい。

せっかく こんごうネタを書いているので ハセガワの1/700 こんごうのプラモを買ってきましたが、あのマストはどうやって組み上げるの?

エッチングパーツですか? いらない子ですね

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