分岐点 こんごうの物語   作:スカルルーキー

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南の楽園を目指す、破壊の翼

それを打ち払う 光の巫女達

パラオの空の戦いは幕を開けた




30 パラオ防空戦3 B-17殲滅戦

 

 

パラオ泊地 早朝

朝焼けを受けながら、出撃する泊地艦隊

 

旗艦由良は、パラオ泊地外周部に艦隊を集結させ複縦陣を敷き、防空体制に入る。

鳳翔と瑞鳳は、自衛隊艦隊と合流して漂泊状態に入ったが、投錨する事なく、いつでも動ける様に体制を整えた。

 

鳳翔では、舷側に設置された14cm単装砲の砲術妖精がせわしなく動き、対空迎撃準備に入っている。

積み上げられた、真新しい木箱に収められた砲弾をみて、砲術妖精は手を合わせ、

「あかしさん、恩に着ます!」と砲弾を拝んだ。

木箱には、

「パラオ工廠製 新型対空砲弾 50口径三年式14cm砲用」と記載されていた。

話は数日に遡る、

当初、あかしとパラオ工廠妖精の共同開発の新型接近信管付破片調整弾、別名

“散弾砲弾”と呼ばれた対空砲弾は 由良と駆逐艦に優先配備される予定であったが、

その威力を聞きつけた鳳翔の砲術妖精は、足しげくあかしの元に通い、“50口径三年式14cm砲用を作ってくれ!”と懇願したのだ。

あかしは時間不足を理由に断ったが、砲術妖精が、「このままではお艦はまともな対空兵器を持ちません! お願い致します!」と土下座する事態になった。

それを見た、パラオ工廠妖精も、

「あかしさん、無理は百も承知だが、俺たちも手伝うから、何とかならんか?」

こう言われてしまうと義理と人情に弱い関西人気質な あかしは、

「実は、もう作ってあるよ」といい、後方の木箱の山を指した。

「本当ですか!」と驚く鳳翔砲術妖精。

「砲弾を作る事自体は、簡単なんやけど、配備するには自衛隊司令と管理者の鳳翔さんの許可がいるよ」と申請書をちらつかせると、砲術妖精は、

「すぐに貰ってきます」とそれを掴み、工廠から飛び出した。

提督執務室で、提督と懇談していた自衛隊司令の元へ駆け込み、拝み倒して許可を貰い、

お艦へ飛んで戻り、艦橋にいた鳳翔に事の顛末を話して、怒られながら、

「あかしさんが折角作って頂いた砲弾、無駄にしないと約束しますね!」と言われ、

砲術妖精全員で、

「はい、艦長! この鳳翔を守ってみせます!」と全員で誓い、ようやく許可をもらった。

そうして、砲弾は翌日、オスプレイにスリングされ空輸、無事鳳翔へ届いたのだ。

鳳翔砲術長は、配下の砲術妖精に、

「いいか皆、今まで空母の対空兵器は軽視されてきた。しかし空母が航空攻撃に弱いことは、自衛隊の資料からも分かっている。俺達が成功すれば、赤城にある20cm砲も有効である事が実証される。確かに両用砲でない点は不利だが、それを練度で補うぞ!」

「はい!」と元気な声が帰ってきた。

「お艦は俺達が守る!」

そう言い聞かせる砲術長であった。

 

ただ、それを聞いた瑞鳳の対空機銃妖精も黙ってはいなかった。

あかしの元へ行き、“俺達にも何かまともな対空兵器を!”と懇願したのだ。

あかしは仕方なく、自艦の武器庫から、

「個人携帯地対空誘導弾(改)」と書かれた木箱を持ち出し、陸自妖精に使い方を説明させ、

瑞鳳へもって帰らせた。

無論、司令の許可はしっかりと取ってある。

木箱を嬉しそうに担いで帰る瑞鳳の対空機銃妖精達を見ながら、あかしは

「ある意味、深海棲艦の艦載機が可哀想になってきた」と言いながらも、作業を続けたのである。

 

 

対空戦闘準備の整う泊地外周部の沖合では、いずもが単艦で周回巡行していた。

甲板上の駐機エリアには 第六飛行隊のF-35J、6機が対空フル装備で待機している。

胴体内部のウエポンベイには4発のAIM-120C。

主翼にも2発のAIM-9X

勿論GAU-22/Aにもフルに弾頭が搭載されている。

上空には同じ仕様のF-35が既に2機 CAP(戦闘空中哨戒)を行っており、防空体制を強化していた。

 

艦娘いずもは、CICの指揮官席に座り腕を組みながら、前方の大型ディスプレイを凝視して、動かない。

 

昔の空母では、CIC中央に設置された、透明なアクリル板に各種の情報を書き込み、それを指揮官が見て現状を把握するが、時代は流れ、壁面にセットされた大型ディスプレイに各種の情報が映し出される。

また、個別の戦術データは、指揮官席に付属するモニタ―にも表示されている。

少し機能が制限されるが、各艦娘が持つ携帯端末にも同じ情報が表示する事もできる、

いつ、どこに居ようとも、電波の届く限り、情報は手に入る、あとはそれを理解できるかが問題であった。

 

いずもは、普段は、由良司令が座る席に深く座りながら、じっと戦術データ表示する画面を見ていた。

 

パラオ北部およそ1、000kmの海域に集結していた深海棲艦の艦隊は、昨日深夜から、陣形を整え南下を開始している、現在はパラオから800km付近まで接近している。

先頭は重巡を中心とした少数の艦隊

その80km後方には3隻の空母を中心とした機動部隊

そしてそのさらに100km程の後方には戦艦ル級を中心とした艦艇群。

無論、その南下している深海棲艦の上空8000mにはMQ-9が張り付き、監視活動を行っており、その後方にはデータリンクポッドを装備したE-2Jが待機し、MQ-9の探知情報を刻々といずもへ送っていた。

既に彼らの行動はこちらの手の内にある。

 

戦術モニターにはもう一つ戦場、パラオ南東部海域が映っていた。

モニタ―上には、4つの光点

ひとつは護衛艦こんごう、もう一つはひえい

そして、上空で警戒活動を行うE-2Jと護衛のF-35J

 

いずもは、やや眉間に皺を寄せて戦術モニター見ていたが、急にサブモニターに司令が映った。

「そんなに、皺を寄せて見ていると“老けるぞ”」

「余計なお世話よ!」と返すいずも

 

「動き出したな」と司令は落ち着き払いながら言うと、

「そうね」そう言いながら、

「泊地提督は?」といずもは、続けて聞いた。

「ああ、さっきパラオの族長の長が来て、いまは会談中だ」

「じゃ、周りは自衛隊員妖精だけ?」

「ああ」

それを聞くといずもは、

「由良、この動きどう思う?」とそっと聞いた。

「予想の範囲だ、まず前衛艦隊でピケット偵察する、近海にこちらの艦艇が出て来ていない事を確かめ、艦載機の発艦海域をパラオの北600km以内に設定し、前衛艦隊と空母機動部隊を南下させる」

「由良、じゃ戦艦群は後から?」

「ああ、後方の上陸部隊を掩護する必要もある」

「じゃ、予定通りに、深海棲艦の第1次攻撃隊の発艦を確認して、敵対行為として防衛行動に移るで、いいのね」

「ああ」と淡々と超える司令

「ねえ、由良。もう少し早く攻撃できないの?発艦を許せばここに間違いなく100機近い艦載機がくるわよ」

「仕方ないだろ、俺たちは国民に愛される自衛隊員だぞ、問答無用で撃てない事位知ってるだろ!」

「じゃ、由良 あなたその100機のお、あ、い、て してよ!」

「お前、今それを言うか! 俺が防大の時、射撃で危うく落第しそうになった事をしらんわけじゃなかろう」

 

「コホン」と咳の音がした

 

いずもが振り返るとそこには 砲雷長が立っていた。

「副司令。その辺りにして頂かないと、CIC要員全員、笑い死んでしまいますよ」

いずもが振り返ると、CIC要員すべてが笑いを堪えていた

「もう! いいわよ」といずもが言うと、CIC要員は一斉に笑いだした。

砲雷長が、

「副司令、夫婦漫才も程々にして頂かないと、CICの機能に支障をきたしますよ」

「うう、うっさい!」と唸るいずもである。

因みに、泊地簡易指揮所でも同じ会話が交わされた事は内緒である

 

その頃、いずもCICでの騒動をしる由もないパラオ南東400km空域を飛行するE-2J“エクセル03”

遥か後方には護衛艦こんごうがいるが、目視は出来ない。

対空監視をするレーダー戦術士官は、じっとコンソール画面を睨んでいた。

「おっかしいな、そろそろ捕まってもいい頃なんだけど」とぼやいた。

発艦前のブリーフィングでは、今日の午前中にもラバウル航空隊のB-17が飛来する事が予想されているという話であったがまだ探知出来ない。

探知エリアを調整する為、サブコンソールへ視線を映し、再びメインモニターへ視線を戻した時、その複数の光点は現れた。

「よし! 来た!」と叫び、

「機長! アンノウン コンタクト! 方位122、高度6000、距離450km、速度350㎞、数30!」

操縦席の機長は

「よし、レーダー士官、頼んだぞ!」

「はい、機長」とレーダー手が次の手を打つ

監視エリアのセクター精度を上げる。

E-2Jは、360度全周警戒が可能な機体だ、海上、対空警戒能力があるが、普段はその360度警戒を行う関係上、精度が甘い、しかし一旦目標を探知すると、拡張セクタースキャンと呼ばれるモードに切り替え、追跡する。

場合によってはレーダードームを停止して、特定の方位のみにレーダー波を当て、高精度モードでスキャンする事もできる。

この様な柔軟な運用は、固定のレーダーサイトでは難しく、初飛行以来60年近く経っても 改修に改修を重ね現役に留まる理由の一つである。

ただいくらE-2Jといえども、地上の目標捕捉は苦手である、この手の作業にはE-8 ジョイントスターズクラスの機体が必要であった。

 

エクセル03の探知情報は、即座にリンク16を通じて いすも以下の自衛隊艦隊へと通知され、いずもCICで情報整理、分類、識別され、泊地司令部並びに泊地艦隊へ戦術コミニュケーションシステムを通じて送信された。

一気に緊張感が高まる!

 

いずもは自艦のCICで、

「ようやくお出ましね、要撃士官! アンノウンアルファ群 国籍確認急いで」

「はい、副司令!」と要撃担当士官が答えると、即座に

エクセル03の後方に待機していた2機のF-35へ、不明機の確認指示を出した。

レーダー画面上では、既に2機のF-35が、エクセル03の要撃管制の元、30機近い不明機の集団へ近づきつつある。

「15分で接敵します!」と要撃管制士官がインカムを通じ報告して来た

 

いずもは、

「こんごう、ひえいに迎撃警戒態勢を下命!」

「はい、副司令。こんごう、ひえいに迎撃警戒態勢を下命!」と士官が答え、

即座に艦娘専用C4Iシステムを通じて、迎撃警戒態勢が下命される。

いずもは間髪を入れず飛行隊司令妖精を呼び、

「第6飛行隊は、直ちにパラオADIZ(防空識別圏)まで進出! 要撃準備態勢に!」

飛行隊指揮所で待機する飛行隊司令妖精は、

「はい、副司令。第六飛行隊、直ちに発艦します!」と告げるとインカムを操作し、

「SCULL flight, mission start.」と叫ぶ!

 

一斉に飛行隊待機室から、6名のパイロット妖精が駆け出し、自機へ向った。

自機へ駆け寄り、タラップを掛け上がる。操縦席に着くと、直ぐに機付長が上がって来た。

機付長に手伝ってもらいながら、腰ハーネスをきつくかける、ここで少しでも甘いと後で大変な事になる、肩のハーネスには少し余裕を持たせる。

但しこれはベイルアウトする際は、たるみは強制的に巻き取られるので問題ない。

少し体を動かして、後方がしっかり確認できる事を確かめる、いくら機首下のEOTS(電子・光学式照準システム)があるからとはいえ、目視確認が出来なくてはたまらない。

パイロット妖精は、

“昔乗った F-1は後方が見えなくて酷かったな”などと思いながら、特徴的な、

ヘッドマウントディスプレイシステム(HMDS)が採用された額の部分が少し膨れたヘルメットをかぶり、エンジン始動の準備に入る。

スクランブルではない、落ち着いて始動する。

まず周囲を確認。特にインテーク回りに誰もいないことを確認する。

ハンドサインで前方に待機する機付長へサインを送る、

“クリアーグランド”のサインが送り返された。

“JFS”始動のレバーを操作した、機内の高圧タンクに貯められた圧搾空気がJFSと呼ばれるエンジンを始動する為の小型ジェットエンジンを起動する為に流しこまれる。

フォオォオオオンと独特な音を立ててJFSが起動した、最低限の電源が確保されたことで、メインモニター等が点灯した。

F35Jのエンジン始動は、ほぼオートで始動する。まずJFSを起動、次にギアボックスを通じて発電機が駆動される。

発電機が安定的に回りだすと、各所へ電源を供給、油圧も安定化させる。

そして、ようやくF135エンジンを起動させるスターターが回り出し、本体エンジンが始動する。

ここまで、完全自動化されている、パイロット妖精は、最初のJFSの始動用圧搾空気のレバーを引くだけでいい、もし失敗するとすれば、最初のJFSの起動用圧搾空気が足らず、JFSが起動できないときだ、この場合は昔ながらのコンプレッサーホースを繋いで、

始動する。

電源が確保された事で、まず最初にコクピット回りのセットアップだ!

エンジン始動と同時に、メインモニター上では各種のオートプログラムが動き、セットアップが始まる。INSの初期化などを行う。

飛行隊指揮所より、各機にINS初期値が送信されて来た。

それを入力して、テストボタンを押すと、各システムのテストが始まるが、GPS関連だけはエラーが出る、解除のボタンを押してテストを続けるうちに、エンジンも始動がおわり、アイドリングに入る、JFSが停止し、F135エンジンは軽やかに起動した。

機外では、整備妖精がタラップを折りたたみ機体内へ格納、各所の点検口が外れていないか確認している、

しかし、2カ所ある、ウエポンベイはまだ開いたままだ。

操縦桿のトークスイッチを押し

「FE(機付長)、ノーマルエンジンスタート」と告げると、

「了解」と機体の前方で、専用の有線インカムを被った機付長が答えてきた。

機付長がハンドサインで、ピン抜けの合図を送る

火器担当の整備妖精が、ウエポンベイ、そして主翼下に吊り下げられたAIM-120及びAIM-9X、の安全ピンを抜き、各ミサイルに装備された安全装置を解除。

機内のマスターアームスイッチの安全装置を確かめる、オールグリーンだ!

整備妖精が機体の横に並び、抜いたピンを掲げる

「セーフティピンリムーブ! ウエポンベイクローズ!」と機付長がインカム越しに話しかけてきた。

「閉めるぞ」といいながら、兵装システムを操作してウエポンベイを閉じる。

すると、整備妖精が、グリースペンでウエポンベイの横にある、黄色と黒の縞模様で囲まれた部分、搭載兵装を記載する場所に、

AIM-120 ×4

AIM-9X ×2

GUN と書き、最後にこう書き加えた。

 

“見敵必殺”

 

最終確認をして、キャノピーを閉める。

ごとんと独特の音がして、キャノピーのロックがかかる。

F-35のキャノピーは前方にヒンジがある、最初に見た時は物凄い違和感を感じたが、慣れてしまえばどうでもいい、まあF-104の左開きのキャノピーよりはましだ。

 

「SCULLα 01, check in!」と無線に告げると、

「Two」、「Three」、「Four」、「Five」と続けて無線が入る。

少し間があいて、「Six back!」と最終機から無線が入った。

 

「スカルアルファ、いずもさくら、ミッション変更なし」と飛行隊指揮所から無線がはいった!

「α 01, roger.」

 

「グランド、インカム、チョークリムーブ!」といい、機付長へ有線と輪止めを外すように指示をしたが、

「飛行班長」と機付長が声を掛けてきた。

「どうした!?」

「キルマークは、ミサイル分用意しときますから」

「おう、たのむぞ」というと、機付長は機体へ駆け寄り、前輪格納庫内に繋いであったインカムのコネクターと輪止めを外し、そっと機体の横へ立ち、

「頼むぞ」と言いながらポンポンと機体を叩いた。

機体の左横に列線整備員妖精が整列している横に機付長が並び 敬礼して見送ってくれた、答礼して、軽くエンジンを吹かして前に出る、少しブレーキを踏んで効きを確かめ、

海自の甲板誘導員に従い、発艦位置へ向う。

「さあ、いっちょ、きめたろうか」といい、発艦位置へ向う。

ふと、飛行隊指揮所横の見張り所を見ると、待機中のパイロット妖精が並び、敬礼して見送ってくれている、そして先頭の隊員妖精二人が、第6飛行隊の隊旗と「見敵必殺」と書かれた旗をもっていた。

「縁起担ぎか!」と思いながら、右手の拳を上げて答えた

前回、あの旗に見送られたのは、昨年開かれた戦技競技会だった、第6飛行隊初の「対空戦闘、対地攻撃部門2冠!」という快挙を成し遂げた。

次々と機体が、動きだし、順次誘導されて位置へついた

いずもの甲板上は、ジェットエンジンの轟音で埋め尽くされた。

 

 

パラオ南東部

国籍不明機の集団に向け、進空する2機のF-35J

高度1万2千で、不明機集団の後方へ回り込んだ。

 

昔、要撃管制は無線でやり取りしていたが、遠方になると誘導管制が上手くいかず接敵まで時間がかかる事が多かった、最悪接敵できずに見失う事もしばしばであった。

機上の対空レーダーを使い探せばいいと思われがちだが、戦闘機の機上レーダーはさほど性能が良くなかったのだ。国産のF-1などは手動でレーダー波の照射方向を微調整する必要があるなど散々で、夜間に至っては飛ぶ事はできても、とても戦闘などは出来ない状態だった。

日本の防空体制はE-2CとF-15Jの配備でようやく世界に肩を並べる所まできた。

その後 要撃管制は進化をとげ、空自はリンク16の導入、自衛隊デジタル指揮システムの導入で飛躍的に向上した。

E-2Jからの要撃指示は、機上のMIDS(多機能情報伝達システム)を通じて、モニター及びヘッドマウントディスプレイシステムへ表示される。

ようは、音声会話を一切せず、誘導されるのだ。

 

最初の接敵を担当した、E-2J護衛機スカル03のパイロット妖精は、

「あれか」と眼下に見える、航空機の集団を見た。

 

シルエットからB-17である事が分かる。

「EXCEL 03, SCULL 03. Unknown α insight time at 20!」

即座にE-2Jより、

「国籍は分かるか?」とデジタル音声通信が入るが、

「この位置からでは厳しい、接近したい」

「了解した、1000m以内には近づくな、ステルスだって目視ではみえるぞ」

「SCULL 03 roger.」と返事をして

「04はそのままホールドしろ」

「04!」と僚機から返事がある

「03 master arm on!」

「04, fence-in.」と僚機も火器管制の安全装置を解除して、即応体制へ移行する。

そっと左手の親指をスロットルのHOTAS(兵装選択ボタン)へ乗せた。

「03, break...now!」といい、編隊を解き、ゆっくりとした降下旋回へ入る、

雲間を上手く使いながら、こちらが目視出来ないように注意する。

「護衛の戦闘機がいないとはいえ、結構難しいな」

普段の対領空侵犯措置では、国籍不明機に対して、言葉は悪いが“威嚇する”目的である程度こちらの姿をさらす。

向こうもそれは百も承知であるので、いきなり撃ってくるなどという事はない。彼らの目的は偵察であって戦闘ではないからだ。

しかし、いま眼下のB-17は、間違いなく“戦闘”を目的に飛行している。

こちらが、この時代の日本機の上昇限界を超えた遥か上空から降下しているとはいえ、見つかれば、1機当たり13丁ものブローニングM2機銃が唸る。

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるではないが、ここは慎重にいくしかない。

降下しながら、速度を合わせる。

「あの雲にするか」

都合のいい事に、やや大きめの雲海が前方に広がっていた。

雲に突っ込む。

不意に、スカル03のパイロット妖精は、

航空学生の頃、この雲中飛行が怖かった昔を思い出した。

雲中は予想以上に視界が悪い、暗中模索ではないが雲中模索である。

いきなり雲が切れた目前に山があったなんて事になれば最悪だ。

訓練機のT-7はレーダーを搭載していない、高度計と地上管制が頼りだった。

よく後席の教官から、

「おう! いまどこだ!?」と聞かれ、マップを見ながら答えに詰まると、

「おら! 山にぶつかるぞ!」と怒鳴られ、地上に帰ればデブリーフィングでこってりと絞られる。

 

時代は流れ、

今はデジタルマップを搭載し、機首下のセンサーが地上を感知し、警報を鳴らしてくれる。

地形追従型の自動操縦機能もある、高度さえ入力すればマッハ0.8近い速度で地上30m前後をオートパイロットで飛行する事もできる、ただ気分的にはいいものではないが。

雲間を利用してそっと不明機の集団へ近づく。

ヘルメット内に投影された赤外線映像が、ハッキリと雲間に見えるB-17を捉えた。

肉眼で、雲間から見えるB-17を凝視した、

「主翼、胴体に国籍マーク、及びレジスタコードなし、深海棲艦機だ!」

ヘルメットに装備されたカメラ映像がE-2Jを通じ、デジタル通信でいずもへ送信されている。

「SCULL 03, EXCEL 03. Climb angel 12, return to the escort.」

「SCULL 03! …04, join up.」 機体を翻し、一気に上昇し、僚機と合流、誘導指示に従い、再度E-2Jの護衛につく。

「あとは、班長達が仕上げてくれるか」と呟きながら、護衛任務を続けた。

 

 

 

いずも甲板上

B-17を迎撃するF-35Jスカルアルファ隊 1番、2番機はマーシャラーに誘導され、リニアカタパルトに付いた、後方にブラスト・ディフレクターがせりあがる。

右のカタパルトには1番機、左には2番機とセットアップされた、本来ならここで直ぐに発艦に入るが、今回は特別な儀式がある。

 

艦橋から、一人の女性が出てきた。

真っ白い弓道着を着て、赤い襷を掛け、手には大弓、そして1本の矢を持っていた。

 

いずもである。

 

ゆっくりと待機する2機のF-35の間のセーフティーゾーンに立った。

ただいつもと違い、その髪は白く透き通るように美しく、肌の色もいつもより白い。

そして、めがねを外したその瞳は、赤く輝いていた。

 

護衛艦いずものもう一つの顔、深海棲艦 北方棲姫 白き女王

 

普段はシルバーの髪留めで纏めてある長い髪が潮風に揺らいでいる

静かに、姿勢を正し、少し瞑目すると一気に精神力を高めた。

足踏みを添え、弓を構える、

ギリギリと弓弦が弓の力を蓄えていく、それと同調するように2機のF-35のエンジン出力も上がっていった!

弓を引き切った瞬間、1番機のF-35Jのアフターバーナーが点火された!

 

「エンゲージ!! 航空隊! 発艦!!」

 

いずもの左腕にある精神感応金属でできたリングが青白く光り、それに同調するが如く、

邪気を払う破魔矢は光輝きながら、いずもの手から放たれた!

甲板上を駆け抜け、宙高く舞い上がると、光を放ちながら、空中に溶け込むように消えた。

 

 

その瞬間、1番機担当のシューターが腰を落として片腕を力強く前に出す!

すると1番機が轟音を立て、いずもの真横をすり抜け、発艦して行く!

2番機も即座に続く、

 

ブラストで乱れる髪を抑えながら、彼女は、

「皆、無事に帰ってくるのよ」と囁いた

 

 

 

護衛艦こんごう CIC

 

「うそ! あの姿」 絶句するすずや

戦術モニターに映るいずも甲板上の女性、そこにはあの深海棲艦の強敵 北の姫君 北方棲姫の姿。

 

自衛隊艦隊と泊地司令部、そして旗艦由良だけがこの映像を見る事が出来た。

 

こんごう達は、B-17発見の報を受け、艦橋からこのCICへ移動してきていた。

砲雷長の管制卓のやや後方に艦長席があり、その艦長席の右隣に発令員席がある、今はすずやが座り、艦内放送用のインカムを被っていた。

よく画面を凝視すると、

「いずも副司令!」とさらに声にならない声をだした。

「こんごう艦長、どういう事ですか!?」と横にいる こんごうへ物凄い剣幕で聞いたが、

「あら、貴方なら気がついていると思ったけど?」

「気がつく?」

「心当たりがあるんじゃない」と言われ、少し考えた。

「じゃ、あの時 すずやが深層意識下で眠っている時に感じた気配!」

「そう、あの時は上手くいかなかったけど」と こんごうが言うと、

すずやは少し俯き、

「ごめんなさい。あの時 すずや、怖くて」

「まあ、仕方ないわ。いくら邪気を感じないとはいえ、深海棲艦と同じ波動で語りかけてくれば、混乱もするわよね」

すずやは恐る恐る、

「いずも副司令、北方棲姫なんですか?」と聞き返して来た。

「ええ、そうね。正確にいえば、次世代の北方棲姫」

「次世代の北方棲姫?」

「そう、深海棲艦の北方棲姫の娘として生まれ、横須賀の海軍神社、大巫女様の元で艦娘として育った、亡命深海棲艦の2世代目よ」

「亡命深海棲艦の2世代目!」

「詳しい話はこの戦いが終わった後、帰り道でもしてあげる。ねえ、普段の副司令を見て怖いと思った?」

「すっ、少しだけ」と遠慮がちに すずやが答えると、

「おっ、正直でよろしい!」と こんごうに肩を叩かれた。

「確かに上司としては、厳しく怖いわ。でも艦娘としては?」と聞くと、

「優しかったです」と答える すずや。

「どんな風に?」

「あの、いろんな事が相談できるお姉さまって感じです。司令といい感じですし」

こんごうは呆れながら、

「そういう所の勘は鋭いみたいね」

「じゃ、そうなんですか?」

「聞きたい?」と言うと、

「はい、はい!」と元気に すずやの返事が返ってきた。

「じゃ、無事に任務を終わらせてからね」

「ええ~」

こんごうは静かに、

「以前、私達の最終の目標は、深海棲艦の穏健派との和睦という話はしたわよね」

「はい、以前艦長室でききました」

「司令と副司令は、深海棲艦との和睦の行きつく先の答えなの」

「答え?」

「そう、深海棲艦と艦娘の未来の象徴」

 

こんごうは、そう言うと、姿勢を正し、

「さあ、始めるわよ」といい

「対空士官、アンノウンアルファ群は防空識別圏までどれくらい?」

「はい、艦長、おおよそ20分です」

「いずもへ通信、警告措置開始を通達」

こんごうは続けて、

「通信妖精、受信可能な全周波数を使い、アンノウンアルファ群へ警告放送!」

「はい艦長! 警告放送開始します!」といい通信妖精はあらかじめセットしてあった周波数全域に、英語、及び深海棲艦言語による、警告放送を開始した。

「こちらは日本海軍、パラオ諸島へ接近中の深海棲艦軍用機に告ぐ、貴機は間もなくパラオ防空識別圏に侵入する、転進せよ、転進なき場合は敵対行為と認識し、対抗措置をとる」という内容を繰り返して流している。

 

すずやは

「警告するのですか!?」と驚いていたが、

「ええ、日本海軍とは言っているけど、実質は自衛隊艦隊だからね、一応警告しないといけないのよ、まあ免罪符みたいなものね」

「もし、この警告を聞いて奴らが引き返した場合は?」

「無駄な犠牲が出ないだけよ」

「でも、脅威は残りますよ、ここで叩けば後の憂いが」

「すずやさん、私達が攻撃できるのは、あくまでも“防衛”が前提よ」

「難しいです」と言うと、

「難しくても、それを行うのが“自衛艦娘”です」

そう言いながら、こんごうは対空モニターを凝視した。

「対空士官、進路等に変化は?」

「進路、速度、高度ともに変化なし!」と大きな声で返事があった。

「仕方ないか」とやや肩を落とし、

艦長席のモニター画面を操作して、いずもCICを呼びだした

 

そこには、いつもと変わらない、いずもが青の艦内士官服を着て指揮官席に座っていた。

その姿を見たすずやの表情が少しこわばった、それを見たいずもが、

「すずやさん、驚かせたみたいね」

「いっ、いえ」と返事をするが、声が詰まった。

「こんごう、話したの?」

「はい、途中まで、残りは戦闘が終わってからという事に」

「じゃ、無事に終わらせないとね」といずもは笑顔で語った。

「副司令 対空警告措置を行いましたが、アンノウンアルファ群進路変更なし、当方の警告を無視して進空しています」

するといずもは、

「でしょうね、強硬派と見られるラバウルの指揮官は多分、離陸すれば成功間違いなしと思っているから、脅された位で帰る事なんてしないでしょう」

いずもは、

「防空識別圏に入り次第、対空迎撃措置、本来なら領空侵犯まで待ちたいけど、日本軍は深海棲艦とは戦時下という事で対応します」

「はい、副司令 ADIZに侵入次第、対空迎撃措置をとります」

こんごうは、サブモニターに映るひえいに、

「ひえい、準備は?」

「こんごう、いつでも行ける、気合も十分」

右手で拳を作り、ぐっと持ち上げ、気合をいれるひえい

後方に映るCIC士官も緊張の度合いを高めているのが分かる。

それを見たこんごうは、

「ねえ、ちゃんとレコーダー入れた?」

「へっ?」

「後で、後悔しても手伝いませんからね」

「うそ、うそ!!!」といい慌てて、ひえいは、

「艦内通達、対空戦闘準備最終確認急いで!」ドタバタとし始めた。

その姿を見たすずやは、

「あの、ひえいさん慌ててますね」

「もう、そうなのよ、気合は十分あるのは解るわ、射撃とか、艦隊運動は得意なんだけど、時々肝心な事を忘れてるの、前回はSM-2の攻撃訓練で、SM-2を発射する所までは良かったわ」

「良かった?」

「肝心の弾頭の安全装置の解除を忘れて、信管が作動しなかったの」

「は〜あ!?」

「まあ、SM-2本体が標的機に直撃したから良かったけど、後で、全員で副司令にこってり怒られたわ」

「全員ですか!」

「ええ、そうよ」

「でも、失敗したのはひえいさんですよね」

「そう、でもね当時 訓練指揮は私、射撃手順確認ははるな 対空警戒はきりしま、全員で分担していたわ、だれ一人として注意を促さなった」

「でも、射撃はひえいさんですよ、そこまで見る必要があるのですか?」

「本来はないわ、でもね」といい、すずやの前に投影モニターを起動し、

「これを見て」

「これは?」

そこには、ひえいの火器管制システムの運用状態が表示されていた。

「これは、艦娘専用のC4Iシステムの情報よ、配下の各艦の状態が表示できるわ」

「僚艦の状態ですか!」

「ええ、機関や各種レーダー、燃料、兵装の状態まで、私の権限で見る事ができる」

「じゃ、バレバレじゃないですか!」

「そうね、私達4隻は、この情報をお互いに共有しているわ」

「こんごう艦長だけでなく?」

「そう、ひえいでも、はるなでも、きりしまでも見れる」

こんごうはそう言うと、

「お互いに隠し事はしないという事もあるけど、クロスチェックをかけて、ミスを防止する意味が強いわ」

「間違いを防ぐ?」

「ねえ、すずやさん、この手の間違いが減らない理由は?」

「確認不足ですか?」

「そう、きちんとマニュアル通り確認しなかった。ではなぜ確認しなかったのかしら?」

「だって、毎日教練しているんですよ、しなくてもいつもと同じならいいのでは?」

こんごうは、右手の人差し指で、すずやを指し、

「ほら、そこよ!」

「いつもと同じ、そう重要な事よ、厳しい教練を繰り返して体に叩き込み、いざという時無意識に体が動くようにする、物凄く重要なことだけど」

「だけど?」

「その教練自体が間違っていないか、検証した事はある?」

「検証ですか?」

「そうね、以前にレーダー運用の話をしたわよね」

「はい、海戦時は積極的にレーダー探知を行って、いち早く敵の位置を知り、僚艦と連携を取って行動する、です」

「そう、米国や深海棲艦の艦艇のレーダー技術が急速に発展拡張されている事は、海軍首脳だけでなく日本軍全体の認識であるはずよね」

「はい、ルソンにいる時も注意喚起の文章を読みました」

「その対策は何だった?」

「見張員の教練強化、特に夜間見張り員の強化という事でした、鈴谷も見張り員をふやして対応しました」

「おかしいとは思わない?」

「おかしい?」

「そうよ、向こうは槍で戦おうとしているのに、此方は短刀よ、いくら短刀を磨いて切れ味を良くしても意味がないわ」

すずやは、少し考え、

「そっ、そうですよね」

「私達の常識が正しいという保証はないわ」こんごうはそう言いながら、

「いい、優れた指揮官というのは、現状の認識が優れている人の事を言う、今現在おかれている現状を理解し、如何に変革させていくか」

「変革ですか?」

「私達の間では、自己変革、“イノベーション”というわ」

「イノベーション」すずやは今、自分が目指すべきものを聞いた気がした

 

すずやが思考しはじめた瞬間

「アンノウンアルファ群! 防空識別圏に侵入!」と対空管制士官が報告をあげた。

上空で監視しているE-2Jも同時に深海棲艦機の防空識別圏侵入を報告してきた。

こんごうは艦長席で、姿勢を正し、サブモニターに映るいずもへ、

「対空迎撃行動行います」と静かに申告した。

 

いずもは、それを受け

「許可します」とだけ返事をした、それで十分であった。

後に幻のパラオ防空戦と呼ばれる戦いの始まりである。

 

こんごうは、横へ座る、すずやへ

「合戦! 対空戦闘!」と静かに下命

 

すずやは、右手に握ったインカムのプレストークボタンを押し、

「合戦! 対空せんと~う!」と独特の掛け声で艦内放送をかけた。

 

「対空戦闘開始します!」と砲雷長が言うと、自席の対空戦闘警報のボタンを押した。

すずやの放送に続いて艦内に警報の電子音が鳴り響く。

 

通路を駆け足で走る隊員妖精の靴音が聞こえる、既に最低限の防水扉は閉められている、

最終の確認作業に入る。

「艦橋、航海科、船務科準備よし!」と艦橋に詰める副長から報告が上がる。

「機関科、よし! ダメコン即応体制にはいりました」と機関長が報告を上げた!

「飛行科、航空機発艦即時待機です!」と飛行班長が報告する。

 

こんごうが座る艦長席の艦内状況を確認するモニタ―には、各所からあがる“準備よし”の表示が列記された。

最後に、

「CIC 準備できました」と砲雷長が振り向きながら報告してきた。

 

「対空士官、アンノウンアルファ群をエネミーコードへ変更、攻撃対象とします」

「はい、アンノウンアルファ群、エネミーコードへ変更!」

「管制士官! 対空目標選別いい?」とこんごうが確認すると、

「はい、当艦8機。ひえい7機です」

 

こんごうは自席の対空モニターを確認した

30機の深海棲艦のB-17は、高度6000から6500前後の高度に 3つの群れを作りながら進空している。

位置情報は、E-2Jからリンク16を通じ、刻々と通知され、自艦のSPY-1も目標全機の位置を捉えていた。

モニタ―上には、既にエネミー識別され、トラックナンバーが振られ対空攻撃担当別に色分けされ表示さている。

「ひえい、データは?」

「こんごう、此方も行けるわよ!」とひえい

 

こんごうが、

「艦橋! 第3戦速!」と言うと

すずやが復唱、インカムを通じ、艦橋の副長へ下命された。

船体が加速するのが分かる。

 

こんごうは、一呼吸置き、静かに、

「SM-2攻撃はじめ」

「SM-2攻撃始め!」とすずやが復唱する。

砲雷長が、

「トラックナンバー 4001より4008 SM-2 攻撃始め!」と号令した

センサー員が

「4001から4008 諸元入力完了! リコメンスファイア」

VLS発射警報が艦内に鳴った!

砲雷長は、淡々と、

「SM-2 8発、サルボー!」

SM-2管制士官は、

「コメンスファイア!」といい、タッチパネルの発射ボタンを操作する。

 

護衛艦こんごうの艦橋前方のMk41VLSから、轟音を立て、4発のSM-2が数秒間隔で撃ちだされた。少し間を置き、後部VLSからも4発撃ち上った。

 

新こんごう型のVLSは あたご型と同じMk41、前甲板64セル、ヘリ格納庫上の後甲板に32セルとなっている、合計96発のミサイルが搭載できる。

今回の戦闘では、07式アスロックは1モジュールの8発のみで残りはすべてSM-2だ。

 

新こんごう型は、設計思想をあたご型から色濃く受け継いだ。

装備品も公開されているものは、ほぼあたご型と同等もしくはバージョンアップだが、艦影は、かなり違う。

これは新こんごう型独自の機能「潜水待機機能」の付加により、艦外装備品があまりなく、殆どが艦内収納されているためである。作業艇やクレーン、救命艇なども艦内装備だ。

スッキリした艦橋回りにステルスマスト、小型の衛星アンテナなどがある。

外見上の特徴として、SM-2誘導用のイルミネーター、AN/SPG-62が見当たらない。

これは、あきづき型で国産のイルミネーターを採用した経験から、SPY-1の横に誘導用レーダーを装備している。

とにかく出っ張りがないように、点検用の梯子すら、格納もしくは取り外し可能という細心の注意を払い設計された。

しかし、どこにでも落とし穴はある。

大型化した艦橋構造の為、前方と後方に装備されたCIWSの射角に隙が出来たのだ。

建造にあたり、設計部署から、

「問題ない範囲です」と説明を受けた、防衛庁艦娘運用課こんごう課長は、

「ダメです、射角に隙がないよう左右にもう1機追加しなさい!」と強く要望(強要?)した。

理由を聞かれ、こんごう課長は、

「あの子、隙が多いから」と訳のわからない返事をしたが、何処でどういう手を使ったのか、設計が修正され、護衛艦としては異例のCIWS4機装備という重武装だ!

ある内局組は、

「第二次大戦にでも行く気か?」と言ったそうだが、現実そうなってしまった。

 

こんごう艦内に、轟音が立て続けに響いた!

初めて見るSM-2の発射に、ぽか~んと口を開け、見入るすずやに、

「どうしたの?」

「すっ、凄いです。あれが対空ミサイルですか!」

「そうよ、SM-2よ」

「これですよね」といい、手に持ったファイルを捲り、SM-2の諸元ページを見た。

「それね、今回の任務では88発搭載してきているから、残弾80発よ」

「残弾で正規空母1隻分の艦載機が落とせますね」

こんごうは、

「でもね、SM-2で 戦闘機落とすには、勿体無いかな」

「もったいない?」

「だって、SM-2 1発2億円ですものね」

「へっ・・、2億円!」と絶句するすずや

「やっ、大和さんが作れる値段ですよ!!」と言葉を失ったが、

「安心しなさい、それは2025年の価格で、そうね今なら...」

「今なら?」

「大体 6万って所かしら」

「六万! それでも六万ですよ! 酸素魚雷6本分! たか~い!」と驚くすずや

「そっ、だから艦載機位には使えません」

そんな会話をしていたが、

 

SM-2管制士官が、

「SM-2 全弾正常飛行確認! 弾着まで3分!」と報告してきた。

こんごうは、艦長席のモニターを凝視する。

既に、ひえいからも7発のSM-2が発射され、指定目標へ飛翔していた。

じっと、120km先の標的に向かうSM-2の光点を睨んだ。

 

 

深海棲艦 ラバウル航空隊 B-17隊長機

深海棲艦 B-17隊長は気楽に飛行を楽しんでいた。

「ラクな仕事だ」

距離はあるが、パラオへ行って爆弾をばらまいて来ればいいだけの話だった。

飛行場姫からは、

「滑走路、重油タンクを除く港湾施設の破壊、機雷を使い湾の封鎖」と3つの指示があった

操縦を副操縦士に任せ、のんびりと飛んでいた。

パラオまで、およそ残り500kmだ、もうすぐ変針点、ここで北よりに進路を替え、パラオ上空を北から侵入通過し、再び同じコースで帰投する。

「ふん、これまで3回の夜間偵察、数日前の昼間強行偵察でもまともな対空迎撃を受けなかった、やつらには地上配備のレーダーはない、幾ら零戦が優れていても、6000まで上がるのに発見から15分は掛かる、その間に事を済ませればいい」

そう思いながらも、

「ミッドウェイの司令部はやけに急かす、あの姫はせっかちだからな」といい横の操縦士を見た、操縦士も、

「まあ、それにしてもさっきの放送は何だったのですかね?」

「知るか。どうせはったりだ。もしかしたら哨戒艦に見つかったかもしれんが、今からパラオに通報されても、パラオまでは1時間と少しだ。索敵している間にこちらはパラオだ」

機体は少し気流に揺られながらも、飛行を続けた。

 

もうすぐ変針点だ

「航法士、変針点間違いないな!」

「はい!」と返事がきた。

「通信、爆撃部隊、変針点通過だ!」

「はい、隊長!」と言うと、トントンと電鍵を叩く。

隊長は、

「これで、南下中の空母艦載機とタイミングを合わせ パラオをせん滅できる」と笑みを浮かべながら、

「さあ、パラオの連中に一泡吹かせ…」と思った瞬間、機体に物凄い振動が伝わった!

「なっ、どっ、どうした!?」ときょろきょろと回りを見回した!

 

直ぐ右手で大きな火の玉が上がった!

「2番機、爆散しました!」副操縦士が叫ぶ!

「なっ!」と思い咄嗟に操縦桿を握り、エンジン出力を上げたが、今度は左後方で火球が上がった!

操縦席の窓からのぞくと、火だるまになりながら右主翼を折り真っ逆さまに落下する3番機が見える。

「敵襲だ!!!」

「どこだ! 見えんぞ!!!」と機内で声がする!

操縦席から、やや右前方を飛んでいた、第2小隊にも敵が襲いかかった!

「第2小隊、1番 爆散! 2番もやられました!」

「編隊乱すな!!!」と声に出すが、すでに残存機はバラバラに編隊を崩していた。

「どこだ! 敵は!!」と隊長は思ったが、

突如機体に凄まじい振動が加わり、いきなり右横方へ横転しはじめた。

「うおおおおおお」

咄嗟に操縦桿を左に切り、ラダーペダルを左一杯に踏み込むが、反応がない!

左翼を覗き込むが、その瞬間彼は自分の置かれた状況を理解した。

そこには、あるべき左主翼がもげ、火災を起こしていたのだ!

「なんだ!!!」と叫ぶが、そこで意識も切れた。

次の瞬間、隊長機は右に横転しながらきりもみ状態となり、落下しながら爆散した。

 

 

こんごうはCICで、深海棲艦のB-17へ向け飛翔するSM-2、15発の航跡をモニターで見ていた。

 

迎撃管制士官が、

「インターセプト 10秒前!」

暫し、CICに沈黙が流れる

「マーク、インターセプト!」

遂に、SM-2が目標群に達した!

 

対空監視士官が、

「トラック! 4001、ロストコンタクト。 02、03もロスト!」

続けて、

「04、06、05 ロスト!」

「07、08 ロストしました!」

 

こんごうも、自席の戦術モニターに映る対空目標の光点が次々と消えてくのを確かめた。

 

迎撃士官は、

「オールターゲット、キル!」

モニタ―には、ひえいが担当した7機のエコーも消えていた。

砲雷長は こんごうへ振りかえり、

「対空脅威目標、全目標撃墜しました」と静かに報告してきた。

 

「レーダーオペレーター、残存機は?」とこんごうが聞くと、

「はい、現在 編隊を再集結させつつあります」

「転進はしていなのね?」

「はい、艦長、パラオを目指しています!」とレーダー士官は報告してきた。

 

砲雷長は、

「再度迎撃しますか?」と聞いてきたが、

「いえ、残りは第6飛行隊が仕留めます」といい

艦隊コミニュケーションシステムを通じ いずもを呼び、

「副司令、第1次迎撃、終了しました、残存機15機、依然パラオを目指しています」

 

戦況はいずもCICでもモニタリングしているので、詳しい報告は無しだ

「お疲れ、こんごう、ひえい」いずもはそう言うと、

「こんごう、ひえいと合流して、第2段階へ移行しなさい、艦隊迎撃戦へ移ります」

「はい、副司令、ひえいと合流後、パラオ北部海域へ進出、敵前衛艦隊迎撃へ向います」

すると、いずもは

「こんごう、陽炎さんと長波さんはこちらの防空戦が終了次第 合流させます」

「はい、副司令」とこんごうは返事をしたが、少し元気がない。

横に座るすずやが、

「こんごう艦長?」と声を掛けたが、それにはこんごうは黙ったままであった。

モニタ―が閉じ、暫し沈黙が流れたが、不意にこんごうは、

「すずやさん、航空機、準備でき次第発艦を下命」

「はっ、はい」とすずやが返事をし、

「艦内通達! 航空機、準備でき次第直ちに発艦!」とインカムで放送を流した。

こんごうはモニターに、飛行科班長を呼び出した。

「班長」と言うと こんごうが用件を言う前に班長が、

「解っています、捜索ですね。希望は持てませんよ」

「ええ」と言いながら こんごうが返事をすると、

「もし、収容できない人数だった場合は?」

「サバイバルキットを投下して」

「はい、航空機直ちに発艦、撃墜機乗員の捜索を行います」

こんごうは小さな声で、

「おねがい」とだけいい、モニターを閉じた。

 

「レーダーオペレーター! 残存のB-17は?」

するとオペレーターは

「はい、残存機15機は、再集結を行い、パラオへ向け進空中です、あと5分で当艦の対空警戒エリアを抜けます」

「こちらへの転進は?」

「確認できません」とオペレーターが返してきた。

 

こんごうは、艦橋にいる航海長へ

「航海長! ひえいと合流します、進路算出、操艦任せます」

「はい、承りました」と航海長が元気な返事を返してきた。

 

戦術コミニュケーションシステムに映るひえいに

「ひえい! 合流してパラオ北部海域の敵 前衛艦隊を叩くわよ!」

画面に映るひえいは、

「了解! 砲戦なら私にまかせてよ!」と元気な返事が帰ってきた、そして

「こんごう」

「なに? ひえい」

ひえいは珍しく静かに、

「悩むときは、4人で悩もう。今は“戦い”に集中しよう」

それを聞いた こんごうは、

「ありがと、そうね」といい 元気に、

「じゃ、次の戦場へいきましょう」

「よし、行こう!」とひえいも返事をした。

 

こんごうは 再度対空モニターを確認し、B-17がこちらの迎撃圏内を抜ける事を確かめると、

「対空戦闘、用具収め、艦内警戒配置を下命」とすずやに伝えた。

「はい、艦長」と元気にすずやは返事をすると、インカムを操作し、

「艦内通達! 対空戦闘用具収め! 艦内警戒配置へ」と放送をかけた。

同時に砲雷長が、

「対空戦闘用具収め!」と号令を掛ける。

各セクションの士官が管制機器の安全装置をかけ、待機状態へ移行した。

状況表示モニターに、次々とスタンバイの表示がされる。

艦内の緊張度が一瞬下がった。

 

こんごうは迎撃管制士官へ、

「迎撃管制士官、エネミーアルファ群への対空迎撃指揮、E-2Jへ移譲します」

「はい、艦長! 迎撃指揮、移譲します!」

 

こんごうは横に座る すずやに向けへ、

「どう、初めての護衛艦の対空戦闘は?」

すると すずやは興奮気味に、

「すっ、凄すぎです、遥か120㎞先の目標を迎撃、それも複数同時なんて こんな芸当、摩耶さんでも出来ませんよ」

するとこんごうは、

「そうね、でもあなたの艦も修理が終われば、護衛艦としてこれ位の能力をもつわよ」

「そっ、そうなんですか!」

「ええ、そうね」

そう言いながら、

「ほんの数分の戦闘で 15機のB-17を撃墜、1機当たり10名の搭乗員妖精がいたとすれば、150名の深海棲艦の妖精が黄泉の国へ旅立ったわ、この数字が重いのか、軽いのか、私にはまだ答えが出ないわ」

 

「こんごう艦長?」

 

こんごうは深く艦長席に座り直し、

「すずやさん、私達、自衛隊のいた世界は、80年近く戦争の無い世界だったの」

「80年!」と驚くすずや

「正確に言えば、周辺国では、戦争はあったわ。でも日本は耐えに耐えて、80年どこの国にも警告以外の砲弾を撃った事はないわ。でも今 私達は戦場にいる。現実は厳しい物だわ」

「こんごう艦長」と静かに言うすずや

「さあ、いま悩んでもしかたないか! 艦橋に行きましょう、次の戦いがまっているわ」

「はい! 艦長」とすずやは元気に返事をして、席を立った。

 

艦内廊下に二人の靴音が響いていた

 

 

こんごう達の遥か後方を飛行するE-2J エクセル03

レーダー士官は、こんごうとひえいの第1次の迎撃を監視していた。

「流石、こんごうさん達だな」といい、

「15機 全機撃墜か、いくらSM-2の性能がいいとはいえ、あれだけ密集した編隊によく当てるな」と感心していた。

「こんどは、こちらか」といい、

デジタル通信でいずもCICを呼びだした。

「いずもCIC、エクセル03 エネミーアルファに対し第2次迎撃 誘導開始します!」

「エクセル03、迎撃を許可」といずも迎撃管制士官から通知された。

レーダー士官は、

「機長、エネミーアルファへ第2次攻撃開始です」

 

「分かった、此方の進路はこのままだな」

「はい、そのままでお願いします、間もなくスカル来ます!」

「分かった、進路保持する」

 

E-2Jのレーダー画面には急速に空域へ進出するF-35Jの部隊が映っていた

レーダー士官は、

「さて、識別、開始するか」といい、タッチペンを使いながら、レーダーコンソールを操作し、対空識別、要撃目標の振り分け作業を開始した。

 

パラオ南東部空域へ急進する 6機のF-35J

2機のエレメント(編隊)を組み、3小隊で飛んでいた。

各小隊は間隔をあけ、やや分散気味に飛んでいる。

1番機を預かる飛行班長は、体を左右に振って、各機の位置を再度確認した。これから行う攻撃ではあまり密集していては、発射後のAIM-120が接触する可能性もある。ここは無理に密集体型をとる必要はない。

既に、センターコンソールには目標となるエネミーアルファ群の残存機15機のエコーが映っている。

自機のAN/APG-81 レーダーの情報ではなく、E-2Jの探知情報をリンク16で経由した情報を表示していた、すでに各目標は識別されて、自分の担当分の位置情報が送信されている。

リンク16で送信されたデータは火器管制装置を経由して、既にウエポンベイ内のAIM-120Cに入力完了していた。

既に、各機の発射諸元入力を確認し、

「All pilots, SCULLα 01. Master arm on! I say again, master arm on!! Fox 1 ready.」

「Two, master arm on. Fox 1 ready!」

と次々と火器管制装置の安全装置の解除を報告してきた。

何時でも発射できるが、相手との相対距離は100km。まだ射程外だ。

そのままの体形を保つ。

レーダー画面上の目標のブリップが発射可能圏に近付く。

独特のマスク越しの呼吸音だけがコクピットに響いている。

相対距離80kmを切った、攻撃開始だ!

サブモニターに映る、火器管制装置の情報を再度確認、各ミサイルの状態を確かめた。

不意に、

「何度やっても緊張するものだな」と口に出してしまう。

考えれば実弾を、フル搭載して、一斉に3発も発射する事など初めてだ。

そもそも 実弾のAIM-120を撃つ機会なんて、余りない。

いつも訓練では、弾頭のシーカーだけ本物の模擬弾ばかりだ、実弾演習が頻繁にできる米軍とは訳が違う。

そもそも国内には、実弾演習の場所が少ない。

対地攻撃訓練では青森か北海道の演習場位だ、対空射撃となれば 硫黄島まで行くなんてことはざらで、グアムでは思いっきり撃てると評判がいい。

今回の攻撃では、各小隊のエレメントリーダーは飛行時間2000時間以上のベテランを選んだ、ウイングマンも同じだ。

まず間違いないメンバーで臨んでいる。

それでも、緊張するときは、するものである。

 

間もなく、相対距離80kmだ、そう思った瞬間、ヘルメット内のヘッドマウントディスプレイシステムに、E-2Jからデジタル通信で、

「攻撃開始せよ!」と文字情報が流れてきた。

サイドステック型の操縦桿にあるプレストークスイッチを短く2回押し“了解”を送信した。

 

再度、火器管制装置、各種入データを確認、静かにそして

「α 01, Fox1.」といい、サイドステックの発射ボタンを押し込む!

 

ウエポンベイが開き、胴体内部に内蔵ざれたAIM-120、4発の内、3発がゆっくりと投下されていく。

発射は自動だ。事前に目標をスロットルに付属するジョイステックで選択しておけばいい。あとは必要弾数をセットすれば、発射ボタンを押すだけで、自動でAIM-120は連続で発射される。

投下されたAIM-120は数メーター落下した後、ロケットモーターに点火、一気に加速して飛行して行く。

自機の目前を3本の白煙が目標に向かい伸びて行く。

「02, Fox 1!」という無線が聞こえる

横を飛行する僚機もAIM-120を発射した

こちらは 2発だ、左右のウエポンベイから2発のAIM-120が空中へ放り出され、そして、白煙を上げて猛進する

右後方を飛行する第2小隊も攻撃を開始したようだ。白煙の筋が遠方へ伸びて行くのが分かる。

少し間をあけ、第3小隊も同じ要領で攻撃を開始

合計15発のAIM-120がエネミーアルファ群の残存機15機へ向って行く。

まるで音速の矢だ!

「All pilots, SCULLα 01 join up!」といい僚機に空中集合をかけた。

AIM-120は、撃ちっぱなしが出来るとはいえ、本来は中間誘導が必要なミサイルだ、

今回は、その誘導をE-2Jで一括して行っている。

こちらの火器管制装置もバックアップしているので、間違いなくそのまま終末誘導に入る。

飛行班長は

「相手がB-17なら、レーダー警戒装置もない、フレアーやチャフもない、これで当たらいなら、開発メーカーの怠慢だな」と呟いた。

気が付くと、僚機が右アブレスト体型を整え集合してきた。

「06, join up complete!」と最終の6番機が集合してきた

「SCULLα, 01 standby formation.」といい編隊を保持したまま、目標へ接近する、アムラームが外れたら、サイドワインダーで仕留める、ダメならGUNだ!

「まあ、そこまでならん事を祈ろう」と班長はつぶやいた。

 

 

深海棲艦のB-17残存機をまとめた第3小隊の隊長は、

「何機残った!?」と後方の機銃員に機内電話で叫んだ!

「15機です!」と強張った声で返事がきた。

「半分か! たった1撃で半分が撃墜されただと!」と唸ったが、事実は事実だ。

先頭を飛ぶ第1小隊、その右を飛んでいた第2小隊よりやや遅れて飛んでいたB-17の第3小隊10機は、距離が少し離れていた事で最初の攻撃は少なかった。

それでも2機が突然爆散し、墜落した。

その後ちりじりになった編隊再集結させ、再びパラオへ向けてコース変更し、飛行を続けた。

副操縦士が、

「機長、やはりパラオへ向うのですか!」と聞いて来たが、

「当たり前だ。それ以外の選択肢があるか!」と怒鳴り返し、そして、

「いいか、もしここで作戦を中止して引き返してみろ、マーシャルから来た連中に笑われるぞ! 第一、うちの姫がそれを許すか!俺達は間違いなく敵前逃亡でこうだ」といい首を切る仕草をした

それを見て震える副操縦士

「だが、このままパラオへ行ってもまともに帰れるか怪しい、奴らは何か新兵器を持っている、だから俺達に警告したんだ! “帰れ”と、くそ! 最初と話が違うぞ!!」と

悪態をついた、機長はようやく自分達の置かれている状況に気がついた。

「奴らは、何処から攻撃してきた! ジークは見えなかったぞ!」

「解りません、いきなり次々と爆散しました!」回りを見回しながら操縦士妖精が答えた

 

すると第3編隊隊長は、

「騙された、俺達は騙されたんだ!」

「騙された?」

「ああ、さっきの攻撃 あれは確実に個別の機体を狙った攻撃だった! 砲弾をまぐれ当たりで打ち上げたんじゃない、それだけ優秀な兵器があるという事は、レーダーだってあるはずだ!」

「対空レーダーですか!」

「そうだ、この距離で見つかったのだぞ、艦載レーダーかもしれんが優秀なレーダーを日本海軍が装備したんだ」

「では!」

「そうだ、事前の偵察もばれていたんだ、やつらわざと見逃して、俺たちをおびき出したんだよ」

「くそ!!」と言いながら副操縦士は操縦桿を拳で叩いた。

 

突然 後方の胴体内部の機銃が唸った!

「うわあああああ!!!!」といい、機銃員がM2機関銃を雲間に向け撃っている

「どうした!! 何事だ!!!」と機内電話を使い、他の機銃員に聞く!

「すみません、誤射です!こいつ錯乱して雲に映った機体の影を敵機と錯覚したようです!」

錯乱した機銃員は、

「俺たちも落とされるんだ、皆落とされる!」と呻いていた。

機内の空気が凍り付く、

「まだ、そう決まったわけじゃない、奴らのジークはこの高度までは上がれん、さっき攻撃があってから、まだ追撃がない、いまの内にパラオへ」と言いかけた時!

直ぐ左を飛ぶ僚機が、火球に包まれ爆散した。

「敵襲だ! どこだ!」と周囲を見わしたが、

「2番機やられました!!」右を飛んでいた2番機の主翼に何かがぶつかり、2番機は主翼を折られて爆散した。

「くっ!」そういいながら、咄嗟に、操縦桿を押し込み、4本あるスロットレバーを押し込み、エンジンの回転を上げた!

4発あるエンジンが唸りを上げている、機体がガタガタと小刻みに震え、聞いた事もないような音を立て急降下を始めた。クルクルと高度計の針が回り、猛スピードで降下する。

雲間に突入した!

「きっ、機長! 分解します!」と副操縦士が叫んだが、

それでも機長は構わず、機体を降下させた、頭上では、次々と僚機が爆散し、空中に黒い花びらを咲かせていた。

雲間を抜けた瞬間 ゆっくりと操縦桿を戻し、引き起こしを掛けたが、急降下したせいで引き起こしができない。

「くっ」とうなった瞬間、機体の後部で大音響がした!

「なっ」と声に出したが、機長の意識もここで途切れた。

機体の後部から凄まじい炎が操縦席を襲い、一瞬にして機長達を燃やし尽くした。

AIM-120は、急降下する第3小隊隊長機を確実に捕捉し、その動きに追従した。

ほぼ真上から胴体中央部に弾着したAIM-120は、瞬時に胴体を二つに切り裂き、胴体内部で信管が作動、爆散した。

破片は機体内部の乗員を襲い、また弾倉にあった自由落下爆弾を誘爆させ、隊長機は自身が投下するはずの爆弾の誘爆で瞬時に粉々に爆散したのだ。

 

 

爆散して、黒煙を吐きながら墜落するB-17の遥か前方50kmの空域で、アブレスト隊型で周回待機をしていた、スカルアルファ隊の1番機、飛行班長はE-2Jから送信されてくるエコー情報をメインモニター上で確認していた。

次々と反応が消える、エコーを見ながら、

「やはり、そうなるか」と諦め顔であった。

最後のエネミーコードのブリップが画面上から消えた、つい数分前までそこには15機のブリップが映っていたが、今は何もない。

 

「SCULLα Leader, EXCEL 03. All bandit splash.」

E-2Jから、監視報告が来た。

全機撃墜だ。

 

「01」といい返答すると、いずも飛行指揮所から

「スカルアルファフライト、いずもさくら ミションコンプリート、 RTB」と指示が出た。

飛行隊長の声だ。

「SCULLα 01, roger.」と無線越しに返事をすると

飛行隊長は、無線で、

「ターキー、帰り道も気を抜くなよ」

「ああ、ありがとう」と返事をして、

「SCULLα flight, RTB.」といい、機体を右に捻り帰路へ就いた。

進路を決めながら、

「次もこんな戦いならいいが、そうもいくまい。奴らは賢い」と唸りながら、高度を上げた。

 

 

泊地司令部の簡易指揮所内の大型ディスプレイには、いずも経由で送信されてくるE-2Jエクセル03の監視情報が投影されていた。

次々と画面上から、消えるB-17のブリップ。

全ての対空脅威目標が消え、画面上には友軍機のブリップだけが残った。

「終わったな」と呟く自衛隊司令

司令はいずもを呼び、

「状況は?」

「はい、司令 パラオ南東部 対空脅威目標全機撃墜を確認しました」

「こちらの被害は?」

「ありません」と静かに答えるいずも

「では、E-2Jには引き続き対空警戒、戦闘機隊は帰還命令を」

「はい」そう答え、画面が消えた。

 

「実感が湧かないな」と泊地提督が言うと、

「実を言えば自分もですよ」と自衛隊司令もそう答えた。

「そうなのかい?」

「ええ、モニター越しの戦闘です。爆音も硝煙の匂いもない、叫び声や呻きも聞こえない。30機撃墜という数字だけの世界です。実感がないというのは事実です」

黙る泊地提督

「30機撃墜 約300名の妖精兵員が黄泉の国へ旅立ちました、しかし、それは自分達には単なる数値です、作戦指揮官とは、兵の命を数字として受け止める事ができる者です」

「君は出来ると?」

「まだ自信はありませんが」

「もし、その数字に彼女達が入っていたとしても、それを受け入れることが出来るのかい?」と鋭い眼で泊地提督は聞いた。

司令はその眼を見て、

“この人がこの眼で人を見る時は、試している時だ”

「時間はかかるかもしれませんが、それを受け入れるのが自分の役目です」

 

泊地提督は口元に笑みを浮かべ、

「君は強いな」とだけ答えた。

 

戦場は、パラオ北部海域へと移りつつあった

こんごうは、ひえいと合流後、15ノット近い速度で、パラオへ向け南下する敵、前衛艦隊を迎撃する為に航行していた。

先程、こんごう艦載機のロクマルが帰還したが、結局生存者は発見できず、海面には無数の航空機の破片、そしてこと切れた妖精兵士の亡骸だけが確認できた。

艦橋の艦長席で飛行科班長から報告を受けたこんごうは、

「班長、お疲れ様です、次に備えてください」と労をねぎらった。

 

こんごうは 左腕にはめたブレスレットの時計を見た、10時半を回った頃だ。

「少し早いけど、お昼にしましょう」とすずやを見た。

「10時半ですけど、いいんですか?」

「ええ、多分前衛艦隊とぶつかるのは、お昼過ぎになるかもしれない、そうなると食事する時間がないわよ」

「食べます、食べます!!」というすずや

「副長、おねがい」といい、操艦を任せ後方のチャートデスクの後にある雑用デスクへ向う、前回はここに戦闘糧食を隠してあったが、今日は艦橋とCICを行ったり来たりする可能性がある、予め調理員長が、簡単な昼食を二人の為に用意して艦橋へ運んでくれていた。

透明なフードパックの中に塩おにぎりと海苔おにぎり、ゆかりご飯のおにぎり、3個セットにからあげ、卵焼き、漬物といった感じだ。

すずやが、据え付けの電気ケトルでお湯を沸かして、お茶を入れ、紙コップへ注ぎ、こんごうへ差し出しす。

「便利ですね、電気でお湯が沸くなんて、それも物凄く早いし」

と話すすずやへ、

「まあ文明の利器ね」

「それに、この紙コップとか驚きました、紙ですよ、紙!」

「ふふ」といいすずやを見るこんごう、同じ反応をした三笠を想い出した。

「それにこの透明な容器なんか、もうびっくりですよ、セルロイドかとおもいましたが、違うんですね」

「プラスチックというわ、まあ原理は同じよ」

「でも、これ使い捨てってもったいないですね」

「私もそう思うわ、出来るだけ使わない様にしてるけど、今回の様な戦闘中は、調理班も行動が制限されるから仕方ないのよね」

すずやが席につき、二人で、手を合わせ、

「頂きます!」といい、フードパックの蓋を開け、おにぎりを頬張った。

慌てて食べた すずやは喉につまりそうになったのか、慌ててお茶を飲んだ。

「そんなに慌てなくてもいいわよ」

「でも、急に“敵襲”とかで食べられなくなると、辛いですよ」

「まあ、今はまだ大丈夫よ、周囲に脅威目標はないわ」

すると、すずやはおにぎりを食べながら、

「次は艦隊戦ですよね」

「ええ、多分泊地の防空戦と同時に仕掛ける事になりそうね」

「え! それだと 陽炎と 長波の応援なしで、前衛艦隊と対峙ですか!」

「時間的には、その可能性が高いわ」

「重巡1に軽巡2 駆逐艦4ですよ、数ではこちらの4倍ですよ」

「まあ、何とかなるんじゃない?重巡は無印みたいだし、軽巡も同じく無印2隻、駆逐艦4隻は少し厄介ね。チマチマ動かれると大変ね」

こんごうは海苔おにぎりを食べながら答えた。

「どういう作戦でいくんですか?」

「まず、先手で重巡と軽巡を叩く」

「どうやって?」

「90式対艦ミサイルを使いましょう」

「ミサイルですか?」

「そう、敵の前方120㎞で ひえいと合わせ4発発射して、重巡と軽巡を航行不能にします、駆逐艦は砲戦で仕留める、その前に敵が撤退すれば深追いせず、泊地艦隊と合流して、敵機動部隊を叩くわ」

「もし、駆逐艦が撤退しない時は?」

「仕方ないけど、撃破ね、駆逐艦とはいえピケット能力があると面倒だわ」

「あの、そのピケットってなんですか?」とすずやが聞いてきた、

こんごうはお茶を飲みながら、

「正確には、レーダーピケット艦というわ、駆逐艦等に小型の対空レーダーを装備して、艦隊の進行方向に前進配備するの、敵の空母群がいると思われる所などにも配備されるわ、

その対空レーダーで探知した敵航空機に対して、自陣の航空機を無線で誘導して、効率よく迎撃するのが目的よ」

「早期警戒艦というやつですか?」

「よく勉強してるわね、そうよ」

「じゃ、いくら空母艦載機の足が長くて、向こうの攻撃可能圏外から発艦しても、相手の索敵範囲が広ければ!」

「そういう事、待っていれば来るという事、今回の作戦は、それを逆にして私達が相手を早く見つけ、パラオで待ち構えるというのが基本よ」

「じゃ、瑞鶴さんがよく“アウトレンジで決めたい!”とか言ってますけど、全然ダメという事じゃないですか!」

「そうね、確かに相手の航続距離外から攻撃すればこちらの空母は助かるけど、行動を読まれて、迎撃された艦載機群はたまらないわね、まず敵艦載機群の要撃を受けて、それをくぐり抜けてたら次は、対空駆逐艦の対空砲火、そして本陣の対空砲火と3段構えで待ち伏せされたら 何機もたどり着けないわ」

こんごうは続けて、

「そしてまず、相手の制空戦闘機を排除し、丸裸状態になったところで、こちらの艦載機を飛ばして、防御力の弱くなった空母群を叩き潰す」といい、紙コップを握りつぶした。

息を呑む、すずや

「空母は、航空機があって初めて、その防御力が最大になるわ、航空機の無い空母なんてただの箱舟よ」

こんごうはそう言いながら、潰した紙コップを睨んだ。

“そう エンガノ岬で、その瑞鶴さん、瑞鳳さんにまともな艦載機を持たせず囮として突入させるなんて無謀な作戦、二度と起こさせないわ!”

そのこんごうの形相をみたすずやは、

「こんごう艦長?」

「ん、ごめん」と言いながら、残りのおにぎりを食べ、

「さあ、今日はまだまだ忙しくなるわよ」といい、すずやの肩を叩いた。

 

 

いずも上空では、南東空域で戦闘を終わらせた、F-35Jが着艦体制に入っていた。

右アブレスト体型でイニシャルポイントへ帰ってきたF-35Jは一旦そのまま いずもを右手に見ながら上空を通過、一、二番機から編隊を解き着艦コースへ乗った。

 

2機同時にVTOLモードで着艦する、2機のトレイル隊形に編隊を組み換え、ゆっくりといずものアングルドデッキへ近づくF-35J

着艦点の真横へ着くと、ゆっくりと機体を右横へスライドさせ着艦点付近へホバリングした。正確にはいずも自体が20ノットで航行しているので少し前進している。

相対位置を合わせながらゆっくりと降下し、位置が決まった瞬間、ドンと一気に着艦した。エンジンをアイドリングにセットして、VTOLモードを解除、機体上下部のドアが閉まり、エンジンノズルが通常位置へ戻る。

マーシャラーに誘導され、駐機エリアへ進み、停止、パーキングブレーキを掛け機体を固した、2番機も続いて駐機エリアへ入る、既にデッキ横には3、4番機がホバリングモードで待機し、着艦許可を待っていた。

 

機体が停止すると、即座に機体に機付長が駆け寄り、機体に異常がないか確かめる、火器担当妖精が、ウエポンベイ内の残弾にセーフティピンを指し、安全装置を掛ける、同じく主翼下のAIM-9Xにもセーフティピンを掛け、ミサイル側面にあるレバーを操作して、セーフティモードへ変更した、これで暴発する恐れはない。

その間に、パイロットの飛行班長は 各モニターを確認し、異常が出ていない事を確かめ、キャノピーを開き、燃料をカット、エンジンを止めた、先程まで独特のエンジン音がしていたF-35Jも静かになり、カラカラとファンの回る音が聞こえてくる。

機付長が機体に収納された、ステップを引き出し、駆け上がってきた。

「お疲れ様です」といい、ハーネスを外すのを手伝ってもらう。

「おう、無事に帰ってこれたぞ」

「3機撃墜ですか?」

「まあな」

「マークは後で入れておきますよ」

「まあ、それはいいが俺の専属機じゃないからな、俺としては無事に機付長に返せただけで十分だよ」

そう言うと、席を立った、機付長は一時的に機体のインテークの上に上がり、場所を譲る、開いたステップを使い甲板上に降りた、操縦席には機付長が座る。

フライトバッグから、この機体のログを取り出し、近くにあったトーイングタグの上に広げて、確認事項にチェックサインをいれ、最後に飛行時間と自分のサインをして整備員に渡した。

地上では、機体は彼ら整備員の物だ。俺たちは飛ぶ間だけ借りているに過ぎない。

「さあ、報告して次に備えよう」そう言うと飛行班長は後部艦橋の飛行隊指揮所へ向う、甲板上には次の攻撃へ向う数機のF-35Jが待機していた。

主翼下に飛び魚のごとく海面上を這う矢を抱いたまま。

 

 

いずもCICでは、次の戦いに向け、状況把握の真っ最中であった

パラオ北部海域には大きく分けて3つの艦隊がいる

重巡を旗艦とした前衛艦隊

その後方80km程の場所には空母3隻の航空機動艦隊

そしてその後方100km前後には 戦艦ル級を中心とした打撃艦隊と上陸部隊

 

空母機動艦隊と打撃艦隊の上空7000mにはMQ-9が張り付き、監視を継続している、そしてその上空1万2000には E-2Jが護衛機と共に周回飛行をしてレーダー監視を継続していた。

いずもは 指揮官席に座りこの艦隊の動きをじっと見ている。

「そろそろ動き出すころね」といい、自席にある小型モニターの画面で空母艦隊を映し、拡大表示した。

空母3隻を取り囲むように、先頭は重巡、空母の左右には楯になるように軽巡2隻が囲み、

その回りに駆逐艦が6隻取り囲む まさに輪形陣のお手本のような陣形で進んでいた。

「まあ、合格点な陣形かしら」といいながら、いずもは空母を拡大した。

既に甲板上にはF4Fや、雷装備のTBD、別の艦には爆装したSBDが見える。

「F6FやTBF、SB2Cじゃないところを見ると、3隻とも無印空母ヲ級、とはいえ、米海軍のヨークタウンクラスが3隻か」

そう言いながら、画面をスクロールさせ他の艦を見た

「動きがあるのは2隻だけね。後の1隻は時間差をおいて第2次攻撃隊用かしら。だとすると、やはり第一波は100機近い数が押し寄せるわね」などと考えている時、呼び出し音が鳴った。

モニタ―を操作すると、航空偵察隊からの呼び出しであった、この部署は主にF-35Jなどで収集した偵察映像の解析や評価を行っている、現在はMQ-9の運用も手掛けている

偵察隊の班長妖精は、

「副司令、お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしいでしょうか?」

「なに、偵察班長?」

「実は面白い写真が手に入りました」

「面白い?」

何だろうと思いながら、いずもは転送されてきた写真をモニターに映した。

そこには、並走しなら航行する2隻の貨物船らしき船

ドライカーゴを補給しているのか、両艦の間にはロープらしきものが渡され、何かを渡していた。

いずもは、そのうちの1隻を見て、

「これ! もしかして」

「ええ、写真解析もしましたが、間違いなく日本国籍艦です」

「どこで撮影したの?」

「現在パラオへ向け侵攻中の打撃艦隊の後方の補給船団です」

よく見ると、もう1隻の甲板上には上陸用舟艇などが乗っていた。

「どこの船?」

「船名等は確認できましたが、手持ちの資料では判定が難しいので、先程泊地簡易指揮所へデジタル通信で送信いたしました」

「そう」と答え、いずもは、

「同じ写真を、トラックの三笠様宛に解説を付けて、送信して」

「了解致しました」といい、航空偵察隊班長はモニターを閉じた。

いずもは、

「鈴谷さんの件で、御咎めがなかった事で油断したのかしら、ぼろが出始めたわね」

ルソンを追い詰める駒は揃いつつあった。

 

いずもは続けて、戦術コミニュケーションシステムを起動し、こんごう、ひえいを呼び出した。

「こんごう、現在位置は?」

「はい、パラオの北東350km程の所です あと1時間半で戦闘予想海域へ突入します」

「そちらにも、情報が行っていると思うけど、前衛艦隊はパラオの北500km程の付近を航行しているわ、もう少しこちらへ引き寄せる必要があるわね」

戦術コミニュケーションシステム上には、3波に別れた敵艦隊と、その前衛艦隊へ向け接近中のこんごう達の艦隊が映っていた。

「こんごう、陽炎さんと長波さん、其方の攻撃に間に合わないかもしれないわね、二人で何とかなる?」と聞かれ

「何とかします」と答えが返ってきたが、その声は自信に満ちていた。

「では、全火器の使用を許可します、敵艦載機第1次隊の発艦、通過を待って、前衛艦隊を撃滅しなさい」

「はい、副司令」こんごう、ひえい、そして すずやが敬礼して答えた。

いずもは、

「いい、その後の流れについては、都度状況を見ながら進めていきますが、前衛艦隊を撃滅、そしてパラオ泊地で艦載機群を迎撃して、空母群のエアーカバーが弱くなった所へ、

空母3隻に対艦ミサイル攻撃を仕掛けます、空母群の残存艦艇については、間に合えばこんごう達で迎撃します」

「はい」

「多分、それで日中の戦闘は終わりね、あとは本隊については、泊地艦隊と合流して、夜戦になるかもね」

「やっ! 夜戦ですか 副司令!」と驚くすずや

するとこんごうは

「好都合ですね、あれだけの数です、動きも鈍くなりますから、機動力で押し切れば夜明けまでには、かなり削り落とせます」

「そうなるといいけど、夜明け後は、私と鳳翔さん、瑞鳳さんの航空隊で残りを叩くわ」

「へへ、夜戦、夜戦!」と嬉しそうなひえい

「ひえいさん?」とすずやが不思議がると、こんごうが、

「ひえい、結構夜戦得意だからね、どこぞの方以上かもよ」

「あのもしかして、第3水雷戦隊旗艦ですか?」

「まあね」とこんごうが返し、

「それにしても、深海棲艦の艦載機の発艦が遅れているようですが?」

「ええ、当初、もう少し早いかなと思ったけど、どうやら情報が混乱しはじめたようね、無線傍受でも、しきりにB-17部隊を呼び出しているわ」

「傍受可能なんですか?」とすずやが言うと

「ふふ、ちょっとね」といい いずもがほほ笑んだ。

“そうだ、この人は元深海棲艦の姫の家系だ、なにか情報をもっていてもおかしくない!”とすずやは思った

「では、此方の思惑通りに?」

「まあ、この間に敵艦隊との距離を縮めて、間合いをはかりましょう」

「はい、副司令」とこんごうが返事をした

 

 

こんごう達が、こんな会話をしている頃、深海棲艦マーシャル分遣隊空母ヲ級指揮官は、パラオから500kmほど離れた海域で、パラオを目指す自艦の司令室で、幹部を怒鳴りつけていた。

「なぜ! ラバウルの部隊と連絡がつかないの! これではラバウルの爆撃隊に先を越されてしまう!」

副官の悪霊妖精は

「ヲ級司令、落ち着いてください、先程から各周波数で呼びかけています」

ヲ級指揮官は、暫し考え、

「もういい、攻撃隊を出す! これ以上待っても、時期を脱するだけよ」

「しかし司令、ル級艦隊司令からは、ラバウル隊の援護をせよと」

「ふん!そもそもル級の奴が艦隊司令なんておかしいと思わない?あたしも彼奴もマーシャルでは同格の無印よ。この戦いで戦果を挙げた方がeliteに昇格するの。この戦いでミッドウェイの姫が認めてくれれば、flagshipだって夢じゃない!」

ヲ級指揮官は、

「いい、もう待てない、始める、制空戦闘機隊、発艦はじめ!」と命じた

副官は、

「仕方ありません、制空戦闘機隊発艦はじめます」といい、艦内電話をとり、艦橋へ

「戦闘機隊、発艦はじめ、続いて艦爆隊も出して、2番艦にも発艦はじめ信号旗上げ」

艦内に

「発艦はじめ!」と艦内放送が入る

甲板上で待機していた F4Fの深海棲艦コピー機が発艦を始める

「フフフ、パラオの娘ども、このヲ級艦隊の威力思い知るがいい」と、デスク上の作戦ボードを睨んだ。

甲板上で滑走を開始した戦闘機隊のエンジン音が艦内に響いていた。

 

 

その発艦する艦載機をはるか上空で監視するMQ-9リーパー

その映像データは後方を飛行するE-2Jへ送信され、泊地の司令部、並びに洋上で待機する いずもへ即座に転送された。

 

その転送された偵察映像を見る、泊地提督、と自衛隊司令、そしていずも

 

発艦するF4Fのコピー機を見ながら、自衛隊司令は、

「本家のF4Fより動きが良いみたいだな」

するといずもは、

「初歩的なナノマテリアルでの複製機ですが、エンジン等一部改良を加えてあります、性能では、少し上を行く感じでしょうか」

「あかしの作った標的機と同じくらいかな」

「いえ、あの機体は、パワー的にF6Fをシミュレーションできるようにしてありますから、あかしの機体の方が上です」

司令は、画面を見ながら、

「ん? オリジナルが混ざっているみたいだな」

明らかに、発艦後の上昇力の弱い機体が数機いた。

「そうですね、今のはオリジナルですね」といずもが答えた

それを聞いた泊地提督が、

「今の話はなんだい?」

自衛隊司令は、泊地提督に

「提督、深海棲艦の運用する兵器は その大半が米国、もしくは英国のコピー、即ち複製品という事はご存知ですね」

「ああ、今発艦している空母は、外見はヨークタウンだ、艦載機はグラマンF4Fの複製だな」

「深海棲艦は、優秀な兵器の外見を複製して、自分達の知識を組み込み、それを運用していると思われていますが、本当にそうでしょうか?」

すると泊地提督は、厳しい表情で、

「どういう意味だ?」

「幾ら外見をコピーしても、所詮は皮を作っただけです、中身がない、真面な兵器とするためには、中身をコピーする必要がある」

「では、奴らは何処からか本物を手に入れていると?」

「ええ、数は少ないですが、オリジナルを手に入れているはずです」

「どうやってだ」

自衛隊司令は意外な事を言った。

「アメリカから買うのですよ」

「買うだと!」

「ええ、複製した兵器の中には、今まで戦闘で鹵獲した物もある筈ですが、大半のオリジナル、元の素材はアメリカから購入したと見るべきですね」

「しかし、現在アメリカと深海棲艦は戦闘中だぞ、購入できるはずは! なっ」と言いかけ、提督は黙った

「南米の深海棲艦の群体か!」

「そうです、頂いた資料によれば、南米の各政府は、自国領海内の通行権と引き換えに南米群体と一時的に休戦していると聞きました」

「そうだ、カリブ海諸国を始め、南米の国々は海軍力が殆どない、深海棲艦に抵抗するより、航行権を認めて、安全を優先する政策を取っている、まさか!」

「可能性としては一番高いですね。深海棲艦の南米群体は、そのカリブ海諸国や南米の弱小国を通じて米国企業に戦闘機や爆撃機、軍艦の建造情報を流させ、表向きは南米諸国へ輸出したという事にして、実体は深海棲艦へ転売する。南米諸国はその中間利益で多少は懐が暖かくなるという構図です」

司令は続けて、

「日本の機体や軍艦が複製されないのは、情報が入手できないのと、大巫女様達の結界のお蔭です」

「ああ、そうだ」

「しかし、米国にもし、日本の零戦が捕獲される事態になり、内部情報と構造が米国で暴露されれば」

「零戦の複製を作られる可能性があるという事か!」

「そういう事です」

泊地提督は、

「不時着機の破壊は、確実に行う必要があるな」

「はい」と自衛隊司令は答えた

そう言う会話をしている内に、深海棲艦艦載機群は次々と発艦する。

内容は、戦闘機:F4Fワイルドキャット30機、爆撃機:SBDドーントレス40機、雷撃機:TBDデバステーター12機と82機である。ほぼ1隻が丸ごと出撃した。2番艦、3番艦の空母でも、後続の2次、3次攻撃隊が甲板上にデッキアップされ、整列し始めた。

 

発艦する艦載機をカウントするいずも

「戦闘機が30機、爆撃機が40機、雷撃隊が12機ですか、まあ豪勢な攻撃部隊ですね」

「まあ82機だ。なんとかなるかな」司令は椅子に掛けながらそう答えると、

「雷撃隊が少ないな」と泊地提督

「多分、湾内が浅いせいでしょう、B-17の閉塞作戦が成功しているという仮定で、浅い湾内では雷撃より、艦艇用爆弾で攻撃する方が有利と考えたのかもしれません」

司令は、

「通信士官、各部隊へ通達、深海棲艦艦載機群、発艦開始、数82機、 到達予想時刻ヒトフタサンマル」

「はい、司令」と通信担当士官は、基地各地に分散配置された防空隊へ警報を流し始めた

泊地提督も、

「参謀妖精! 泊地防空警報発令、近隣集落並びに自治政府へ避難勧告 いぞげ!」

「はい、提督!」と司令部付きの参謀妖精が、通信機を取り警報発令を下命した

「ウッ、ウウウウー」と空襲警報のサイレンが鳴り響き、泊地内部の緊張感が一気に高まった。

泊地提督は、司令部1階の事務所へおりた、既に現地女性職員は自衛隊の施設部隊が作った強固な防空壕へ退避しており、男性職員が数人残っていた。

提督は、古株の職員を見つけ、

「さあ、君たちも防空壕へ避難しなさい」と声を掛けた。

「はい、提督」と初老の現地男性職員が答えた、提督は小さな声で、

「爺さん、済まない、もしもの時は、現地職員の指揮をして泊地外部へ避難してくれ」

「お任せください」と返事をする男性

男性は、振り返ると、

「よし、皆いくぞ!」といい、一礼して退室して行った。

いつもは、人でごった返している事務所も、誰も居なくなり、伽藍としている。

「人がいないと、ここも広かったんだな」と意外な事を思った。

 

泊地は、緊張感漂うなか、静かにその時を待っていた。

 

 

トラック泊地 戦艦三笠 士官室

 

三笠士官室では、テーブルの上にパラオ近海の海図や衛星写真が並べられ、木製の船の形をした青や赤い駒が海図上に並んでいた。

「いや。あのモニターという装置もいいですが、我々にはこういう物の方が理解し易いですな」と宇垣が言うと、

「まあ、俺もそうだ」と山本が笑いながら答えた。

「お主達は、もう少し順応力を持たんと、時代についていけんぞ」と 三笠はいったが、

「お前が柔軟過ぎるんだよ」と山本が返した。

 

早朝、敵重爆撃機発見との報を受け、山本、宇垣、三笠達は戦艦三笠の士官室へ集まり、状況分析を行っていた

先程いずも経由で、こんごう隊並びに いずも艦載機隊でB-17、30機をパラオ南東部海域で、全機撃破したと報告があった。

戦況は いずもからC4Iシステムを通じて、戦艦三笠、金剛にはリアルタイムで報告されている。ただ困った事に宇垣や 長門、大和などが戦術モニターの情報の多さに自身の処理が追いつかず、結局、いつもの海図の上に駒を並べて、机上演習の如く戦況を見ていた。

三笠と金剛は自身のタブレットでモニターしている。

「こんごう君達は転進したようだな」

「ああ、敵前衛艦隊へ向け進行中じゃな。あと数時間以内に射程に捉える」

「しかし、たった2隻の艦艇でB-17を15機撃墜、6機の戦闘機で同じく撃墜、此方に損傷なしとは、凄い戦闘力ですな」

「宇垣。本来なら こんごう君1隻で、全機落とす事も可能だったはずだ」

「1隻ですか!」

「そうじゃな。確か こんごう殿の艦には80発近い対空噴進弾が搭載されておるはずじゃ。まあ、あとの事もある。無理に全機撃墜して残弾不足になる事を恐れたのかもしれん」

と三笠は返した。

「しかしまあ1発で1機撃墜とは、どんな兵器なんでしょう」と 大和が興味深く聞くと、

「これデ〜ス」と 金剛が壁面にSM-2の3Dデータを映し出した。

「正式名称は、スタンダードRIM-66M-5ブロックIIIB 射程はおよそ100km 速度は音の2倍です」

「音の2倍?」

「そうです、大和。大体時速2,000kmです」

「2,000km!」と驚く 大和であるが、

「大和、お主の砲弾もそれぐらいの速度は出るであろう。そんなものが寸分たがわず命中するのじゃ。幾らB-17とてかなうまい」

すると突然 大和は、

「あの 三笠様、このSM-2という兵器、私の艦に搭載できないのですか?」

「大和にか!」と慌てる山本と宇垣。

「はい、長官」そう言うと 大和は、

「確かに私は大艦巨砲主義の申し子。46cm砲9門という重厚な装備です。しかしその装備が災いして、中々使いどころの難しい艦であるという事も自覚しています」

「大和」と声を掛ける宇垣。

「参謀長、お聞きください。先日、この護衛艦 こんごうさん達の資料や先の戦闘の資料を拝見いたしました。やはり今後の戦闘は航空機が主体となるのはもはや間違いありません」

大和はそう言いながら、

「私の特徴は、この重厚な防御力です。この防御力と特務艦隊の航空機迎撃能力で空母群の前衛に出て、防空戦艦としてお役に立つべきではないかと考えております」

「防空戦艦!」

「はい、長官。私の第2、第3主砲を下して、この特務艦隊の誘導噴進弾や長10cm砲などの機動力のある高角砲等を装備。速力を強化して、赤城さん達の前衛となります」

「大和、そこまで」と 長門も声を掛けたが、

「分かった」と 三笠が答えながら、

「お主の心意気は十分わかった。直ぐは無理じゃが、パラオの あかし殿に相談して、大和の対空能力強化について考えておこう」

「ありがとうございます」と一礼する 大和。

「おいおい、いいのかそんなに安請け合いして」

「そうですよ、三笠様!」と山本や宇垣は慌てたが、

「相談するだけなら、安い事。問題はそれが今の戦局に有利に働くかじゃ」

「どういうことだ、三笠」

「良いか、イソロク」といい席を立ち、壁面にある世界地図の前に立った。

「奴らは、ある時期から急速に空母群の建造ペースを早めておる。今月だけでも、マーシャルには新造のヲ級が3隻配属された。今回出て来たのはその3隻じゃ」といいマーシャル諸島を指差した。

「確認された情報では、ミッドウェイ方面でも数隻新造の空母群が確認されておる。新型の艦載機も未確認ながら目撃されておる」

「ああ、その情報は俺も目を通した」

「イソロク、奴らはいつから空母を急造し始めた?」

暫し考える山本。

「昨年の末あたりか!」

「そうじゃ、儂らが真珠湾攻撃に失敗したあとじゃ」

宇垣が、

「どういう事でしょうか?」

「宇垣、分からぬか。奴ら航空戦略思想に大幅に方向転換しつつあるという事じゃ」

「航空戦略思想?」

「そうじゃ。奴ら儂らが失敗と位置付けた真珠湾攻撃を、研究したに違いあるまい。空母機動艦隊を使った制空権の確保、複数同時攻撃の可能性、高い機動力と即応体制。それらを兼ね添えた航空戦力こそ、今後の海戦の主役になると踏んだのじゃ」

「やはり、今後の戦いは空母対空母の戦いになるか」と山本がいうと、

「じゃが、そうは問屋がなんとかだ」

「どういう意味だ、三笠」

すると三笠は意地悪そうに、

「なあイソロク。あの自衛隊司令が、この“パラオ防空戦”をただの戦いと思っていると思うか?」

暫し考える山本。

「それは、無いな。あの男は先を見る漢だ」

「そう言う事じゃ。奴はな、この深海棲艦の空母群、艦艇群を情報網をもって封じ込め、

この時代の航空優位論を打破しようとしておる」

「航空優位論の打破」と唸る宇垣。

「そうじゃ、宇垣。よいか?いくら空母艦載機の機動力があっても一つだけ“のろま”がおる」と机の上の駒を指さした。

「空母本隊ですか!」

「そうじゃ。奴は艦載機群をパラオの防御力で受け止め、手薄になった空母群を こんごう殿達で叩く。そうすれば、帰る場所のない敵艦載機群は」

「海で海水浴デス!」と金剛が答えた。

「あ奴は、空母艦載機の弱点を突いた作戦で、深海棲艦の航空優位論に一石を投じる気じゃ」

「一石を投じるとは?」と 長門が聞いてきた。

「我々帝国海軍もそうじゃが、深海棲艦は艦艇派と航空機派に分かれて、主導権の奪い合いをしておる。急増する空母群に古い戦艦派は脅威を感じておるに違いないが、

そこで空母派が大敗したとなれば、どうなる?」

「内紛ですか」と宇垣が顔をしかめた。

「その通りじゃ。奴はそこを狙っておるの」といい、席へ戻った。

そして前に座る宇垣と山本を睨み、

「お主達も仲良くせんと、自衛隊司令に突っ込まれるぞ」

渋い顔をする二人。

「まあ、あの漢の事じゃ。まだ色々と考えておるのであろう」

 

その時、士官室のドアを叩く音がした。

末席にいた 大淀が対応すると、三笠戦闘指揮所付の通信妖精であった。

「失礼します。護衛艦 いずもより、航空偵察写真が転送されて参りました。電文も付属しております」といい 数枚の写真と電文を 三笠へ渡し退室した。

写真を見る 三笠。別の写真を手に取る山本。

「おい、これは!」といい驚きを隠せない山本。

「奴目、引っかかりおったな」といい写真を宇垣へ回し、電文を見た。

その写真を見た宇垣は即座に、

「大淀! ルソン北部所属の補給艦の行動を秘密裏に確認させろ!」

「はい、参謀長」といい 大淀は席を立った。

宇垣は、

「どえらい物を釣りましたな」といい、

「友軍を攻撃中の深海棲艦に物資を横流しするなんて、前代未聞です」

三笠は腕を組み、

「これで奴も言い訳できまい。いや、もはや人としての意識があるか怪しい物じゃ」

「では、仕掛けるのか?」

「イソロク、曙の件もある。そろそろ頃合いじゃ」

「また、自衛隊に借りができるな」

「借りれるうちは、借りておこう。ある時払いの催促なしでな」

「高い利子になりそうだ」

 

その時 三笠、金剛のタブレットが同時に鳴った。

画面を見る二人。

金剛が自分宛のメールを大型ディスプレイへ投影した。

「深海棲艦の艦載機が発艦を開始シマシタ! 数は82機です。内訳は、F4F30機、爆装SBDドーントレス40機、雷装TBDデバステーター12機デス」

「第1次攻撃隊だな」そう言うと山本は壁面の大型ディスプレイを見た。そこには、空母群からパラオへ向う第1次攻撃隊のブリップが表示されていた。

 

「では、新装備のパラオ泊地のお手並み拝見といこうかの」と戦況ディスプレイを睨む 三笠達。

 

 

パラオへ向う82機の航空機は今まさに集結を終え、パラオへ向かっていた。

迎え撃つパラオ泊地艦隊、そして泊地防空隊。

深海棲艦 前衛艦隊へ向け急速に距離を縮める こんごうと ひえい。

その後ろの空母群へ向け海面を這う矢を抱え待機する いずも艦載機F-35J。

戦場ではせわしなく動き、刻々と変化している。

ただ一人、それを画面で冷静に見る漢。彼は何を思うのか。それが分かるのは後日の事である。

 

 





こんにちは
スカルルーキーです

分岐点 こんごうの物語を読んで頂きありがとうございます。

う〜ん 次回は泊地防空戦だ、VADS活躍できるか?
いや、SAM-2Bの場面はあるのか?
盛りすぎた!

では


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