分岐点 こんごうの物語   作:スカルルーキー

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「海神の巫女として 恥ずべき行為です」



「黙っていろとは言わん、しかし言うべき相手を選びたまえ」




17.新たなる一歩

 パラオ泊地に 陽が昇る。 朝日の差し込む自室の窓をふと見上げて、

「う〜ん 今日もいい天気」と背伸びをしながら ベッドから起き上がった。

こんごうは 時計を確かめる、総員起こしまで時間がある事を確かめると、顔を洗い、

いつものように、運動着に着替え後部甲板へ出た。

 

 体をストレッチしながら、僚艦をみると ひえいときりしまの姿が見える。

はるなは、今日も対潜哨戒で早朝から出港準備をしているようで、甲板には数名の甲板員が 抜錨準備をしていた。

遠くには 鳳翔や由良が出港準備をしているようで ボイラーに火を入れているのか 煙突から 排気煙を上げている。

こんごうは、総員起こしがかかるまでの間 無心で後部甲板を走った、2度と昨日の様な事を起こさない為にも 出来る事をする。

そう心に決めていた。

 

総員起こしがかかり、艦内は一斉に息を吹き返した。

各科 宿直との引継ぎを終え、その後 幹部のミーティングをこなした。

司令からは 「今日は 休養日とする」と言われ、当直からも外されているが、そんな時こそ 日頃出来ない点検作業をしなくてはいけない。

 

とくに ここの所、主砲は酷使しているので念入りに点検作業が必要であった。

また 今回から燃料は泊地から提供された軽油を使用する事になり、機関長から納品に際しての手順の確認を行った。

 

今回は給油船からの供給であるが、まずあかしの要員が品質を確認、必要なら添加剤等を加え調整するとの事であったが,

先日貰ったサンプルを見る限り 大丈夫であるとの事だ。

但し異物混入を防ぐ為 濾過フィルターを通して給油する事になっている。

 

なぜ ここまで気を使うのか?

それはこの時代の日本軍の石油の品質の不安定さが原因であった。

今後、こんごう達が他の地域で給油を受ける際に注意して於かなければならない。

その為にも 品質管理を徹底する必要があったのだ。

これは パラオの主計を預かる鳳翔も見落としていたが、パラオの備蓄は確かに、この時代としては十分な量であったが、

品質管理がバラバラで規格統一できていない物もある。

軽油 一つにしても、精製所ごとで粘度が違う、これでは精密機械の塊であるイージス艦の運用は出来ない。

戦う前に 自衛隊には頭の痛い問題であった。

 

幹部との打ち合わせを終え、こんごうは 副長を伴って、艦橋へ入る。

戦術ディスプレイを起動し、イージス艦各艦を呼び出した。

 

いつもの様に、ひえい、はるな、きりしまが映る。

「おはよう みんな」と挨拶をしたが いきなりひえいから

「こんごう! さっき走り込んでる姿が 見えたけど起きて大丈夫なの?」

 

「ひえい 大丈夫よ、昨日はちょっと頑張りすぎただけだから」

 

「こんごう 無理しないでね」と はるなが優しく聞いてきたが、こんごうは

 

「まあ 無理してる訳でもないけど、気をつける」

 

「それより はるな、出港準備は大丈夫?」

 

「うん、副長達が頑張ってるから」

 

「はるなも 体調気をつけなさいよ」

 

「ありがとう こんごう」と静かに答えるはるな

 

「きりしま、対空警戒、押し付けてゴメンね。」とこんごうが言うと きりしまは、

 

「ふふ そこは大丈夫よ、私達の次元の時より楽かな。いきなりマッハ3で対艦ミサイルが飛んで来たり、衛星軌道からバラバラになった出来損ないの弾道ミサイルが降って来ないだけ気楽よ」

「それに副司令のCICも協力してくれるから処理は楽だわ」

 

「ねえ こんごう、少し聞きたいだけど いい?」とひえいが話を切り替えて来た。

 

「何?」

 

「いや 先日の打ち合わせで 確かルソン島には 日本軍の警備所が数カ所あるって聞いたわよね」

 

「ええ そうよ、だから今の所 まだ 海軍内に根回しが出来ていないから、不用意にルソン島などに近づかないようにと 司令からも指示が出てるわ」

 

「でも この海軍の海図を見ると、ルソンを始めフィリピンはアメリカ統治領、マレーシアはイギリス、インドネシアはオランダの統治領なのに、なぜその他国の統治領に日本海軍の警備所があるの?」

 

「その件ね、私も気になったから 昨日の帰りに三笠様に聞いてみたの、要約すると、歴史的な流れは1930年代頃までは私達の次元と同じだけど、事態が変わりだしたのが 深海凄艦の活動の活発化が進んだ30年代後半よ。」

 

こんごうは続けて、

「東アジア海域での、深海凄艦の活動は各地の海上交通路を遮断してきているわ、航空交通路が未熟なこの時代、あっという間に本国との交通、経済を遮断され各国の統治領は混乱状態になったそうよ、各地で独立の機運が高まると同時に宗主国との間での緊張状態となった。」

 

「東アジアの不安定化は日本にとっては大問題、それを危惧した海軍は安定化の為、深海凄艦の排除へ動き始めた、これは日本への海上交通路確保という目的があったわ、それにいくら各地で独立の動きがあるとはいえ 急速な独立は危険だと判断された」

 

「危険?」とひえい

 

「そうよ、まだ統治領から十分に脱却できないまま独立すれば、経済の混乱は避けられない、未熟な国家が独立すればどうなるか、私達の次元のイラクやアフガニスタンがいい例よ」

 

「そこで 日本政府と海軍は 海上交通路の確保を約束する代わりに 石油等の資源の供給を東アジア各自治政府と取り決めた、これには当初 アメリカなどが反発したけど、実際 深海凄艦に脅かされていた各国自治政府は藁にも縋る思いだった」

「そしてその交渉には 三笠様が長門に乗艦して各地を回ったそうよ、宗主国の現地代表、地元自治政府と膝を突き合わせて話をして、日本に侵略の意図がない事を説明したの」

 

「へえ~ でもよく宗主国側が折れたね」

 

「ひえい そこが三笠様の力ね、いまルソンなどにある警備所も 海上交通路確保の為の一時的な租借地として、日本が自治政府と契約したって言ってた」

「それに警備所だから、配置の船舶も 軽巡とか駆逐艦とが数隻程度、近隣の哨戒活動がメインだって」

 

「なにか 微妙ですね」とはるな

 

「だからルソンには 米軍の基地もあれば、日本海軍の警備所もあるそうよ」

 

「でもこの前 皐月教官は米海軍に追いかけ回されたって言ってなかった?」

 

「ひえい そこなんだけど、昨日聞いた話だと 主権に関する部分で 米軍はいまだに折れてないそうよ、フィリピンの主権は 米国にあると言い張ってる」

 

「だから 時折威嚇をしてるって事?」

 

「こちらが反撃しない事をいいことにね」

 

「なんか 酷い話」とひえい

 

「私もそう思わ、追う相手が違うのでは?」とはるなが言うと

 

「でも 計算してる。こちらが自衛の為に反撃すれば、約束を反故にしたといい、一気に追い出す計算かしら」

 

「まあ そう言うことよ、きりしま」

 

「皆 この海域は、政治的に非常に微妙な海域よ、攻撃してくるからと言って 反撃できる相手と 出来ない相手がいるわ、気をつけておいて」

「それと、明日の予定は 変更なしだそうだから、皆よろしくね」そう言うと、

こんごうは元気よく、

「では、皆 今日も頑張りましょう!」

 

「あなたは お休みでしょ!」とひえいが突っ込み、

その会話を聞きながら はるなときりしまは笑顔で笑っていた。

 

 

パラオ司令部の近くにある宿舎では 山本と三笠が質素ではあるが、朝食を摂ろうとしていた。

山本は ちゃぶ台の上に出されたご飯と、近海で捕れたであろう魚の焼き魚と、味噌汁をじっと眺めていた。

ここに来て数日経つが、毎朝の食事は鳳翔が 作ってくれた、昨日は由良であったが今日は二人とも早朝から 対潜活動で出かけている。

艦娘寮で食べる事も考えたが、三笠が「儂が作るので大丈夫」といい朝早くから据え付けの台所に立っていた。

 

「一応 まともだな」という山本

 

「何を寝ぼけた事をいっておる、儂もこれでも女子じゃぞ」 といい

箸をとった。

一口 ご飯を口に運んでみる、固過ぎず柔らか過ぎずいい感じで炊けている。

 

「意外だな」と感想を言うと、

 

「こう見えてもな、三笠に居た頃は 時々皆に食事を作っておった」

 

「ほう 初めて聞いた」と山本

 

「お主とも 長い付き合いになるが、意外に知らぬ事も多いという事よ」といい 三笠も箸を進めた。

 

「しかし、この味噌汁は少し薄くないか?」と山本が言うと

 

「お主は そろそろ体の事を心配しても良い頃じゃぞ」

 

すると山本は

「海軍軍人としては 老い先短い身だからな 気にしてもつまらん」と答え、

「お前に心配されるようでは いかんな」と言うと

 

三笠は

「心配しとるのは儂ではない!本土に お主を待つ人がおろう!」

 

山本は

「ああ そうだな」と返事をするのが精一杯であった。

 

 

こんごうは 艦橋で、朝の課業を手短に終わらせ、副長に

「じゃ、艦長室で昨日の戦闘詳報まとめているから 何かあったらお願い」といい席を立ち 艦橋を出ようとした所を副長に呼び止められた。

「艦長! いずも副司令から呼び出しです」

 

何かしらと考えながら、再度艦長席へ着き 戦術ディスプレイから副司令を呼び出した。

「こんごうです、副司令 お呼びですか?」

ディスプレイ上にいずもが映る。

「こんごう お休みの所悪いのだけど、立会い頼めるかしら」

 

「立会いですか?」

 

すると いずもの横へ金剛が、現れた。

「ハ~イ こんごうちゃん おはよう!」と朝からやけにハイテンションである。

 

「おはようございます、金剛お姉さま」と 画面越しであるが一礼して挨拶した。

 

いずもは そんな金剛のハイテンションぶりにはお構いなく、

「昨日、金剛さんの船体修理が完了したから、今日、公試をする予定だけど、私は今から、鳳翔さんと出かけるし、あかしは 明日の準備でそれどころではないし、と言う事で こんごう、非番なんだけど、公試立会いお願いできるかしら?」

 

するとこんごうは、

「はい、副司令 了解しました。」と敬礼して答えた。

 

「こんごう、助かるわ、確認項目のスケジュールは 今あかしからそちらへ送ったから確認して於いて。」

 

即座にあかしから メールで確認項目が送付されてきた

「受領しました、主に機関関連と電探?ですか」

 

「そうよ、あとCICのレーダー士官も数人お願いね」

 

「はい? レーダー士官ですか?」と驚くこんごう

いずもは意地悪そうな笑顔で

「ふふ、まあ見てのお楽しみよ。じゃ お願いね」といい通信を切った。

 

こんごうは 艦長席で深く

「は〜、また何か悩みのタネを拾った気がするわ」と言ったが 副長は

 

「艦長、これも運命です」とあっさりと 主を切り捨てた。

 

こんごうは 艦内電話でCICの砲雷長を呼び出し、レーダー士官2名と念のため 先任伍長を呼んで 同行するように伝えた。

こんごうの勘が当たれば、こんな時は先任伍長の出番だ。

 

泊地司令部手配の内火艇に乗り、工廠横の桟橋に係留されている金剛へ向う。

数日前までは 浮きドックにいた金剛の艦体は、今は既に、浮きドックから離れている、遠くから見た感じでは損傷の傷一つ見えない。

その遠方には 工廠のスロープに目隠し用のシートに覆われた 新しい三笠の艦体が見える。

三笠は 遂に明日、進水式を迎えるのだ。

 

こんごう達を乗せた内火艇は ゆっくりと戦艦 金剛へ横づけされた。

乗艦用のラッタルを ゆっくりと登ると、甲板上には 金剛、副長、そして

あかしが待っていた。

こんごう達は、整列し

「こんごう 以下3名 乗艦を申告致します」といい 乗艦申告を金剛にしたが、

 

「もう こんごうちゃん、そんな固い事はいいデス、ここは貴方の家も同然デス、リラックスしてクダサイ」といい こんごうの手を取って 艦橋へ歩きだした。

 

ふと 頭上に見える艦橋構造を見て、横を歩くあかしに、

「ねえ あかし、21号電探が見えなくて、何かクルクル回る奴が見えるけど?」

すると あかしは

「もう こんごうさん、寝ぼけたらあかんよ?OPS-28水上レーダーですよ。」

 

「あっそうね、じゃ艦橋構造物の上にある 4面の白い奴は何?」

 

「あっ あれですか SPY-1F改ですよ、射撃管制装置は FCS-3のスペックダウン、ミサイル防衛システムを省略した簡易版を搭載しました。」

 

「ちょっと あかし、そんな物積んで大丈夫なの?」

 

「へっへー ちょっと魔改造しちゃいました、まあ今の金剛さんは 戦艦金剛改です、それに いざという時の為に 従来の測距儀も使えようにしてるし、但しレーザー併用タイプですけど。」

 

こんごうは 目まいを覚えた。どうりで 朝からお姉さまがハイテンションな訳だ。

「ねえ、他には何かいじってない?」とこんごうが聞くと。

 

あかしは目を輝かせて、

「えっと あとは、船体は修理の後、ナノマテリアルで表面コーティングして ピカピカにしといた。」

「甲板や艦橋も コーティング剤でコートしてるから、簡易ステルス性もばっちり」

「機関は各部の調整と部品の交換程度、本当はガスタービンへ交換したかったけど、時間が無くて断念。でもスクリューは、効率のいいハイスキュー・プロペラに交換」

 

「意外に 抑えたわね」と安堵した。

 

「まあ その分 船体の補修は手間がかかったよ、あちこち傷んでて。」

 

すると 副長が

「いや、あかしさんのおかげで、艦体はまるで新造当時の様です、軋み一つありません!」

 

皆で まずは戦闘艦橋へ 向った、そこで金剛が見たものは、簡易CICともいえる物であった。

戦闘艦橋奥には いくつかのレーダーコンソールや 各種の操作パネルがある。すでに金剛の兵員妖精が 簡易マニュアルを片手に操作の教練を繰り返していた。

 

あかしは 戦闘艦橋で こんごうに

「今回搭載した FCS-3は簡易版、火器類のコントロールを省いてるよ、主に 対空、対水上の測距を目的に特化したシステムにしてる。」

 

「という事は? いまこの世界で手に入る一番いいレーダーを搭載したという事かしら?」とこんごうが あかしに問うと、

 

「まあ そうですね、元々金剛さんの兵員妖精さんは 練度が高いですから、下手にシステム化するより、既存のシステムの精度をいかに上げるかというアプローチで組み上げた」

「今まで精度の悪かった、水上、対空レーダーの精度を上げ、主砲の測距を正確にする事で 面制圧の精度を上げるという事?」

 

すると金剛が

「こんごうちゃん達の様な ハイスペックなシステムは残念ですけど、この艦のレベルでは使えマセン、しかし正確なレーダーがあるだけでも全然違いマス、何が、何処から、どれだけ近づくかが分かるだけでも、十分戦えマス!」

既に こんごうのレーダー士官が 金剛の兵員妖精に色々アドバイスを始めていた。

その後方では先任伍長が メモを取りながら改善点を抜き出している。

彼は先代のこんごう、そして私と2隻のイージス艦の先任を経験し、この様な新しい運用で生じる問題解決には慣れているのだ。

 

その後、あかしは各種のデータリンクシステムが正常可動している事を確認して、退艦した。

金剛は 出港準備に入る、湾内からタグボートが2隻近寄ってきた、もやい綱を渡し、離岸準備に入った。

桟橋のもやい綱が放たれ、離岸作業が始まった、ゆっくりとタグボートに引かれ 横方向へ移動する金剛、十分桟橋から離れた事を確認すると、タグボートはゆっくりと回頭運動に入った。

こんごうは 見張所からこの作業をのんびりと見ていた、普段の自分の艦なら 指示や確認作業でてんてこ舞いの所だが、今日はお客さんだ、する事が無い。

 

回頭運動が終了すると、タグボートからもやい綱が投げ出され、艦内への巻き上げ作業が始まる。

甲板員が忙しく、巻き取り作業をしているのが分かる、やっぱりこの辺の作業は 80年たっても 変わりない。

 

艦橋へ移り、金剛の座る艦長席の横へ立った。

そうだ、この艦橋で お姉さまと会ってまだ 10日も経っていないけど、もう何年一緒にいる様な 感触を受ける、「不思議だな」とつい言葉にでてしまった

 

艦長席も今回の改修で、色々と弄られたようで、戦術ディスプレイや 航法データリンクの画面などがある。

私の艦の艦長席のスペックダウン版だ。

 

金剛は 器用に戦術ディスプレイを操作して、航法データを呼び出していた。

「では 副長、出港デス!」と金剛が言うと、艦内に号令ラッパが鳴り響き、

「両舷前進最微速」と航海長が命じ、ゆっくりと艦が動きだした。

金剛が

「操舵手妖精、舵の効きは?」

 

「はい 艦長、以前とはまるで違います、初動の効きも良く、回頭開始までの時間差が少なくなっています」

すると金剛は

「高速走行時の舵の効きについては未知数です、船速に注意シナサイ」といい 前方の監視をはじめた。

 

右舷には、対潜活動に出る由良と鳳翔、睦月、皐月が順次抜錨して、湾外で待機しているはるなへ向け、各艦移動を開始していた。

彼女達の後を ゆっくりと進み 湾外へ出た、目的地は パラオ西部海域、昨日戦闘があった海域よりやや北よりを進むコースだ。

こんごうは タブレットを操作して航法データを 呼び出し航路を確認した。

湾外で 由良達が はるなと合流し、鳳翔を中心に輪形陣を組み、目的海域へ向う。

航海の目的が違うが 彼女達もやや近い海域で対潜活動を行う予定なので、途中まで後方をついて行く形をとった。

 

こんごうのタブレットには 各種の監視データの情報が 刻々と記録されている、あかしが事前に 公試用に計測センサーを各所に搭載していたのだ。

 

こんごうが 

「お姉さま 計測機器の情報では、現在15ノットですけど、航法データの表示はどうなっていますか?」

 

すると金剛は、艦長席の戦術ディスプレイの航法データを読み

「こちらも、15ノットです。公試としては 順調な滑り出しデス!艦も喜んでいるのが 分かりマス」といい 嬉しそうに返事を返してきた。

 

その笑顔を見て 

「今日は 何もないといいですけど」と言う、こんごう

 

すると 金剛は、

「昨日は 大変でしたね、ああも早くル級達が出てくるとは 自衛隊司令も驚いていましたよ」

 

こんごうは やや膨れ顔で

「お蔭で、こちらは大変でした、三笠様の前で みっともない事になって仕舞いましたし」

 

「でも 私も見て見たかったですね、七人の巫女の力」

 

「七人の巫女? なんの話ですか?」とこんごうが 問いただした。

 

「こんごうちゃんは知らないのですか? こんなお話です」といい

昨日 三笠が話した 七人の巫女にまつわる神話を話した、それと同時に昨日戦闘で こんごうの青白く輝く船体を見た 陽炎や長波の兵員妖精達が、

「彼女達こそ“海神の遣わした、この国を導く七人の巫女に違いないと騒いでいましたよ」と話した。

 

するとこんごうは 少し戸惑いながらも、

「お姉さま、確かに私達は 艦娘、海神の巫女である事には変わりありませんけど、そんな大げさな者ではなくて 普通の艦娘です」

そして

「それに 私達は6人しかいませんよ、司令は男性ですしね」と言うと

 

「やはり、そうですよね、う〜んでも こんごうちゃんは どうやってそんな力を 手に入れたのデスカ?」

 

「それが、よく分からないです、ある日 突然 自由にコントロールできる様になりました」と無心で答えるこんごう

 

「でも、その力で 陽炎と長波は 大けがをぜずに済みました、ありがとう」と笑顔で言う金剛

 

「まあ 昔から 金剛家は面の皮だけは厚いと言われてますから」

 

「もう~」といいながら 笑って答えた

 

「しかし、ル級達は なぜあんなに早く姿を現したのでしょうか?」とこんごう

 

「それについては 自衛隊司令や山本長官は 多分“手柄欲しさ”に出て来たのではと分析しています」

 

「手柄ですか?」

 

「そうです、こんごうちゃん達 自衛隊がこの次元に現れて以来、あの通商破壊艦隊は いいところがアリマセン、前衛の潜水艦は2隻撃沈、空母艦隊も壊滅、そして私を取り逃がした。」

「ここで、巻き返しをしなければ 群体へ帰還した時の叱責は必至デス」

 

するとこんごうが

「そして 鳳翔艦隊がパラオから出て来た事を知り、鳳翔撃沈を目論んだ?」

 

「そうです、鳳翔は 旧式の空母ですが、お艦と呼ばれる空母型艦娘のリーダーです、彼女を撃沈できれば、空母艦娘への精神的ダメージは大きいデス!」

 

「まあ 司令としては、鳳翔さんを餌に ル級艦隊をおびきだして、金剛姉さまと 私、ひえいで叩くつもりだったのでしょうね。撒き餌を投げ込んだとたん 入れ食いだった訳ですね」

 

「そんな所です、ル級達が撃沈されたお蔭で この近海の安全は確保されましたが、まだ油断はできません」

 

「そうですね、カ級が 1隻どこかにいるはずです」

 

「気をつけましょう こんごうちゃん」といい 前方を見た

 

 

金剛は 途中で、対潜活動部隊と別れ、単艦で公試を続けた。

「副長、そろそろ予定海域ですね」と金剛

 

「はい 艦長 いつでも行けます」

 

「副長 艦内放送を」

すると 副長は、艦内放送のマイクを金剛へ渡した。

 

「総員、傾注、艦長の金剛デ〜ス、本艦は只今から パラオ改修後 初の機関全力航行を行います、各員 非常時に備えなさい」

 

こんごうは ポケットから小型ヘッドセットを取り出し、左耳へ装着した。

「こちら こんごう、はるな聞こえる?」と 20km程北よりを航行するはるなを呼び出した。

 

すると はるなから 音声通信で

「こんごう、 はるなです、感度5 データリンクシステム異常なし」

 

「そちらの状況は?」とこんごう

 

「今の所、静かよ、取り逃がしたカ級もいないみたい」

 

「じゃ、ゴメン計測おねがいね」と言うと、通信チャンネルを切り替え

 

「いずも副司令、こんごうです、これより戦艦 金剛の機関全力運転公試を開始します」

すると いずもから音声のみで

「いずもです、こんごうさん、改修後ですから 注意して下さい」

 

「はい、副司令、ではテストに入ります」

 

こんごう自身の艦ではないにしろ、同じ艦魂を起源にしている関係、戦艦金剛の高ぶりが伝わってくる。

「では お姉さま はじめましょう!」

 

「はい こんごうちゃん」と言うと金剛は 呼吸を整え、精神を集中させた、そして凛として

 

「機関 前進 強速!」と命じた 副長、航海長がそれを復唱した

機関室へ出力指示を出す テレグラフを機関手が操作し、出力を上げる。

ジワリ、ジワリと船速が上がっていく、艦首で波が砕ける感じが伝わる、パラオの海を切り分け 金剛が突き進む。

 

 

「お姉さま どんな感じですか」と聞いてみるが、返事がない

「お姉さま?」

 

すると金剛が 振り返り

「素晴らしいデス!普段ならぐずりだすロ号艦本式缶が 負けていません。まだ余裕があります!」

 

手元のタブレットを確認すると、速力は20ノットを超えて来ている、各所のセンサー類も 異常を検知していない

「いけるかな?」とこんごうは思った

 

金剛も 艦長席に設置してあるディスプレイに表示される速力表示を見ていた、現在 25ノット前後で安定している

「これだけの速度を この短時間で出せるとは素晴らしいデス、コーティングと新しいスクリューの効果ですか?」

 

「そうです、あのスクリューはあかしが この艦の機関出力のトルクカーブから算出したデータを使って設計した物ですから、この艦専用と言ってもいいです。表面コーティング処理は 漏水防止と表面抵抗を軽減しますし、船底付着物も付きませんから お肌もピカピカですよ」

 

「それで こんごうちゃん達の艦はいつもきれいなのですね」

 

「でも 掃除はきちんとしないと、埃はたまりますから手間は一緒ですけど」

 

暫し雑談していたが 副長から

「艦長 艦内異常なしです」

 

こんごうも タブレットのモニターを確認し、異常な数値が出ていない事を確かめた

 

金剛は

「では 副長 全力公試に入りマス!」

「機関 前進一杯!」と命じ 前方を睨んだ

 

副長が復唱したあと、機関手が テレグラフを操作し、機関室へ前進一杯を伝えた

 

じわじわと船速が上がる。

風を切る音が艦橋の中まで聞こえてきた、皆息をのんで 見守る。

金剛は 艦長席に据え付けのディスプレイを再度確認した。

現在  28ノット!

竣工当時なら ここでまで来るのがやっとであったが、今はすんなりと来た。

少しづつであるが、船速が上がる。

艦首が波を切り裂く 白波が白い航跡となって大きく左右に別れていく。

少し ピッチングを始めたが、まだ問題無い。

 

こんごうも モニター画面をじっと見ている。

機関、艦体共に振動なし、ピッチングも許容範囲内

「よし、行けるわ!」と思わず声に出た。

 

ディスプレイを見る金剛が、

「現在 29ノットデス!操舵手 舵に問題は?」

 

「はい 艦長、直進性も問題有りません!」

 

「よろしい、現在29.5ノット!」

 

金剛は 自身の霊力で感じていた、今まで以上の力を。

艦が補修、改修されただけでは 多分今日の様な 力を感じる事は無い。

 

これは 間違いなく、彼女が横に居るお蔭だ、彼女の力強い力を 私の艦魂も感じて反応しているのが分かる。

ふと、

「この艦霊力の強さ、貴方はやはり 七人の海神の巫女ナノデスネ」と思った瞬間に

 

「お姉さま、30ノット突破しました!」とこんごうから声を掛けられ、慌ててモニターを確認すると いつの間にか

 

「OH! 32ノットまで出てる!」

「副長! 32ノットデス!最高デス!」

 

「本当ですか⁉︎ 艦長!」

 

こんごうは 即座に はるなを呼び出した。

「はるな、現在 艦内データでは32ノットだけど、レーダー解析は?」

 

すると音声通信で

「こんごう、はるなです、レーダー解析だと 現在32.2ノット出てる」

 

「はるな、ありがとう そのまま解析お願い」

 

こんごうは 振り向き、皆に

「レーダー解析でも、速力32ノットを確認しました」

 

副長が

「艦長! 32ノットです! 最高記録です! やりました!」

 

「副長 艦内放送を」といい 金剛はマイクを受け取ると、

 

金剛は 落ち着いて

「皆さん 艦長の金剛デ〜ス、本艦は現在 32ノットで航行しています、記録更新デス!」

 

暫し静まりかえる艦内

そして 湧き上がる歓声!

 

金剛は ふと横に立つこんごうに 、

「こんごうちゃん、ありがとう」手を差し出した

 

こんごうは 満面の笑顔で

「お姉さま 正式記録ではありませんが、おめでとうございます」と手を差し出し、しっかりと握手をした、暖かい手の温もりが伝わってきた。

 

そのまま 船速が安定するまで待ったが 結局 32ノットで安定した。

船速が安定した所で、機関の負担を考慮して、副長が

 

「機関 強速、もど~せ!」と号令をかけ減速に入った

船速が 20ノット前後で安定した所で、取り舵、面舵の舵の効きを試験してみたが これも 問題なく非常にいい結果を出した。

 

金剛は 由良達からおよそ30km程離れた海域を航行していた

 

金剛は 満面の笑みだった、公試の結果は 予想をはるかに超えて 速力は32ノット、おまけに その船速が出るまでの時間も短縮されている、舵の効きも良く文句のつけようが無い。

 

「こんごうちゃんやあかしちゃんのお蔭で、いい艦に仕上がりました。レーダーも問題ないようです」

 

すると こんごうは

「あかしは もう少し手を加えたいような感じですけど、まあ三笠様の艦の建造もありますので、この辺りで妥協したのでしょう」

 

金剛は興味深く、

「三笠様の艦の進水式は明日ですね、どんな艦に仕上がっているのでしょう?」

 

「はい 当初は私の艦に似た艦影にする予定でしたけど、三笠様が“三笠の艦影に意味がある”と言って、結局 横浜にある三笠様の艦をスケールアップした感じになる様です」

 

すると金剛は

「それはそうですね、あの方は その存在に意味のある方です、長門に乗って東アジア歴訪した時に現地の方々から あの歴戦の三笠を見たかったとの声が多かったそうです」

 

「それもそうですけど、大巫女様の艦が呉にあるのでは?」

 

「そうデス、今は副長さんが指揮して、士官候補生の訓練艦として現役です、厳しい訓練で有名デス」

 

「そう言うお姉さまは、“鬼金剛”と呼ばれているそうですね」

 

金剛は

「コホン、こんごうちゃん、こんな綺麗な女性にそれは無いのデハ?」と鋭く睨んだ

 

「でも 私も“金剛力士”と呼ばれていますよ、まあ名は体を表すと言いますから その名に恥じないよう頑張りましょう」

 

「でも こんな美人な金剛力士は、男性なら大歓迎でしょうね」

 

すると こんごうは

「あの、その、私 余り男性の方と個人的にお話した事が無くて、実は苦手なんです」

 

「そっ そうなのデスカ?」

 

「まあ子供の頃は 近所の男の子達とも 良く遊びましたが、12歳の頃から、艦娘の子息として 一定の保護下に入りましたから、言いよって来るもの好きな男性も居ませんし、それに 御祖母様があの戦艦 金剛ですよ!もうそれだけで十分です」と必死に訴えた。

 

「こんごうちゃん、それは“彼方の次元の私が問題児だった”と言う事デスカ?」

 

「もう逸話を言い出したらきりがありませんけど...」と言いながら 回りを見た

すると 二人の会話を聞いていた 艦橋の全員が目をそらした

 

「皆さん 職務中によそ見は、NOデス!」と金剛は 勢いよく注意し、一斉に視線を前方へ向けた。

 

暫し、そんな艦橋要員の動きを見ていた二人だが、急に可笑しくなったのか 笑って

「もう 皆さん」と言いながら 場の雰囲気を笑顔で和らげていたが、

 

突然 艦橋据え付けのインターホンが鳴った。

あかしが 今回の改修で各主要部署を繋ぐ 艦内用のインターホンを組み込んだのだ、今までの伝声管に比べれば 雲泥の差だ!

 

「戦闘艦橋です、方位280 距離120km付近に 小型艦艇 3の反応を探知」

 

すると 金剛は

「深海凄艦デスカ?」

 

「お姉さま このレーダーでもそこまでは分かりませんよ、敵味方識別装置が普及していないこの時代では 目視するのが一番です」とこんごうが意見具申し、自身のヘッドセットで 戦闘艦橋を呼び出した

 

「先任伍長 聞こえる?」

 

「はい こんごう艦長」と先任伍長が返答して来た。

 

「詳細を教えて!」

 

「はい艦長、方位280 、距離120km ほぼ真南へ向け南下しています、速度15ノット、エコーの大きさから 軽巡クラスの艦艇と判断されます」

 

こんごうは 横から艦長席のコンソールを操作して 戦況プロットを呼び出した。

自身の艦の物よりは 数段劣るが、そこには水上レーダーの捉えたエコ―が表示されている、不明艦船には既に アンノウンアルファと識別番号が振られていた。

 

こんごうは

「お姉さま とにかくこの不明艦隊を確認しましょう」

 

「では 私の水観を出して リサーチさせます」

「副長、水観、行けます?」

 

副長は インターホンのチャンネルを切り替え、

「こちら艦橋! 水観妖精 行けるか⁉︎」

 

「はい 副長! 準備出来てます、ご命令あれば、発艦可能です!」

 

「水観!発艦 戦闘指揮所の誘導に従い、所属不明艦隊を確認せよ!」

 

こんごうは 音声通信でいずもを呼び出し、

「いずも副司令、こんごうです」

 

「こんごうさん、いずもです、此方でもはるなが レーダーコンタクトしました、今 はるなスワローが AEWとして前進します」

 

するとこんごうが、

「こちらは 水観を出して 目視確認させます、不明艦隊に艦載機がいる可能性がありますので、水観を前に出してもよろしいですか?」

 

「ロクマルだと艦載機は振り切れないからお願いできる?」

 

すると 返事は こんごうではなく

「いずも、私の水観に任せてクダサイ!」と金剛から帰ってきた

その返事と同時に 後部甲板から 水観が打ち出された

 

金剛は

「副長、戦闘に備えます、警戒態勢に移行」

 

「はい 艦長!総員 戦闘準備」と下命し、艦内に号令ラッパが鳴り響いた。即座に各要員が配置に着く。各所の水密扉が閉鎖され、対空機銃、高角砲等の銃座に兵員妖精が取り付き、弾薬ケースが運び出された。

 

しかし20分後、金剛搭載の零式水上観測機が見たものは、

 

艦橋に入室してきた通信士官が差し出した、水観からの電文は

「所属不明艦隊は 中型の貨客船3隻の船団、艦尾、およびマストにオーストラリア国旗を視認、上空を通過するも 攻撃は無し」

 

こんごうは

「お姉さま 民間の船団のようですね」

 

「ええ、オーストラリアの民間船団ですが、このような海域を 民間船団だけで航行するとは危険です、米海軍は何をしているのデスカ!」

 

「米海軍ですか?」とこんごう

 

「そうです、オーストラリア海軍は 深海凄艦との戦闘でほぼ壊滅状態です、在豪米海軍が オーストラリアの海上安全を担っているハズデス!」

金剛は

「通信妖精、水観に電文! 周囲に米海軍の護衛艦艇がいないか 確認させて!」

 

水観に再度電文が送信されるが、返事は

「目視範囲内に 船団以外の艦艇を認めず」であった。

 

こんごうは 艦長席のディスプレイを操作して 検索レンジを拡大したが、映るのはオーストラリアの船団と やや北側を航行する由良艦隊であった。

 

こんごうは

「いずも副司令、こんごうです。 水観の電文はそちらにも届いていますか?」

 

すると

「ええ こんごうさん、先程届いたわ、今、旗艦の由良さんや鳳翔さんと話をしたけど、この海域は 先日 戦闘があった海域に近い、残存艦艇やあのカ級が居る可能性が高いという判断になりました」

 

すると 横で聞いていた金剛へ

「戦艦金剛さん、旗艦由良さんから お願いなのですけど、いいでしょうか?」

 

「由良からですか?」と眉を顰める金剛

 

「はい、この海域の公海上の安全は 周辺各国の自治政府との取り決めで日本海軍が担う事になっています、オーストラリア船団に接触して頂いて、インドネシア近隣まで護衛をお願い致したいのですが?勿論 こちらも転進して護衛に入ります」

 

すると金剛は

「まあ 由良の頼みなら致し方ないデス、まあここは貸、一つデス」と言ったそばから 突然 由良が通信に割って入った

 

「金剛さん! 私は貴方に貸しは有っても、借りはありません! この位で、あの事を忘れると思って!」

 

「由良、そんなに怒ると お肌に皺が増えマス」

 

「金剛さん!」と由良が怒鳴るが、

 

すると 落ちついた声で

「皆さん、それ位にしましょうね 任務中ですよ」と鳳翔が 優しく言い放った。

声は 優しいがその響きでかなり怒っているのが 音声通信を通してでも分かる。

 

金剛も由良も、いやパラオ艦隊の全員が知っている、パラオで一番怒らせてはいけない人が誰かを

 

「では 宜しくね」と 意外に冷静ないずもの声が聞こえた、あの重圧に負けてない。

 

「はっ はい いずも副司令!」と敬礼してしまったが、音声通信だ、見えるはずもないが、ニコニコと重圧感を放つ鳳翔と 横で冷静沈着に立ついずもの姿が見える気がする。

 

ちらっと横を向くと、鳳翔のその声を聴いた金剛が 顔面蒼白でフリーズしていた

「お姉さま?」と言って 顔前で手をちらちらさせて見るが、完全に固まっていた。

 

こんごうは 深くため息をついて

「副長、会合点を算出、羅針盤妖精 進路指示を」

 

「はい こんごう艦長」と副長も 呆れ気味に復唱した

 

金剛は 変針後、船速を25ノットまで増速し、オーストラリア船団を追った、船団の上空では水観が対空警戒を兼ねて待機している。鳳翔からも 零戦21型3機が 船団の直掩に発艦し、水観と合わせて対空警戒を行っていた

水観によれば オーストラリア船団からはこれと言った反応が無い。

 

1時間ほど経過した頃、遠方に船影を見た

「2時方向に 船影!」と見張り妖精が報告してきた、双眼鏡で確認してみるが まだはっきりとしない。

 

こんごうは 艦長席のディスプレイを見て、相対距離が3万前後である事を確かめた。

このままいけば 船団の直前を横切る形になる。

「副長、オーストラリア船団の後方から接近します」

ゆっくりと 金剛は オーストラリア船団へ向け 舵を切った

 

 

オーストラリア輸送船団 先頭船 船橋

船団の団長を兼務する先頭船の船長は 先程、飛来した航空機を見て安堵した。

「航海長! 日本の海軍の観測機に間違いないな!」

 

「はい 船長、間違いありません!」

 

「通信士 後続船へ 発光信号、飛来機は日本海軍、対空警戒継続」

通信士は 手早く文面を作成すると 発光信号を後続船へ送った。

 

今 この船団は、3隻の船に200名近い民間人をのせ、オーストラリアへ向っていた。

出発地は満州。旅順、黄海を抜け、深海凄艦の巣のある済州島をかすめて 東シナ海を抜け ようやくここまで来た。

乗客は 満州を脱出したオーストラリア国籍の民間人、軍靴の足音が近づく満州、現地法人は家族の帰国を急いだ。

しかし 深海凄艦が黄海の一部を封鎖しており、中々脱出できないでいたが、今回はなんとかうまくここまで来た。

 

彼らは知っていた 日本海軍は我々を攻撃しない事を。

 

船団長は 上空を飛ぶ 零戦を見て、

“先程の観測機に加えて、今は 零戦が3機も追加で来てくれている。

観測機が呼んでくれたのか?“

 

「船長、日本のゼロ戦が3機も来てくれましたよ!」と 航海長が言うと

 

「ああ 言うだけのアメリカ海軍とは大違いだな」

上空を見上げると ゼロ戦が 主翼を振りながら周回飛行して上空を警戒してくれている

 

「米海軍との約束だと、台湾沖から、軽巡を1隻つけてくれるはずだったのに 待てど暮らせど連絡なしだ、フィリピン沖でもだ、ここまで 結局 要所、要所で現れるのは日本海軍の船だけか」

 

「でも 船長、ありがたいじゃないですか、黄海では 日本海軍のクルーザーが先導してくれたお蔭で、無事脱出できましたから」

 

「ああ 航海長、あの“ハグロ”というフリートガールには感謝だな、彼女が 安全な航路を案内してくれなければ、我々は間違いなく深海凄艦の艦隊に捕まっていた」

 

「ええ、でも船長 日本のフリートガールは皆 可愛い子が多いですね」

 

「航海長、そう言う目で見ては 失礼だぞ、彼女達は 日本では 海の神に仕える使者として尊敬されている、あの東郷提督が率いた三笠など 既にフリートガールになって40年近くなるが、いまだに 見た目は 14歳くらいの少女だそうだ」

 

「船長 フリートガールは歳をとらないですか?」

 

「さあ詳しくはしらんが、普通の人の数倍は 長生きするようだ」

 

航海長は暫し考え 

「ねえ 船長、人として普通に生きるのと、フリートガールとして崇めれるのと どちらが幸せなんでしょうか?」

 

すると船長は

「それは どちらも幸せだと思うぞ、我々も彼女達も 時間の差こそあれ、今を一生懸命生きている事には 変わりない」

 

航海長が何かを言おうとした瞬間 船橋横の見張り員が

「後方 大型艦影視認!」

二人は慌てて、見張り所へ出て、双眼鏡で艦影を見た、高い構造物が見える、どうやら軍艦のようだ、船内に緊張が走った。

 

 

戦艦 金剛 艦橋

 

偵察に出ていた水観を一旦回収し、再度 船速を上げて、船団を目指した金剛は 先程の鳳翔からの圧力から ようやく回復した。

「副長 そろそろ向こうでも こちらが見えている頃デハ?」

 

「はい 通信しますか?」

 

「国際周波数で 呼び出してクダサイ 私が話します」

暫く待つと 通信妖精が

「オーストラリア船団、船団長が出ました」とマイクを渡してくれた

 

金剛は

「こちらは、日本国海軍 戦艦金剛デス、前方を航行中のオーストラリア船団 聞こえますか?」

 

すると 暫くして やや雑音交じりで

 

「こちらは オーストラリア船団、船団長です、民間の非武装船団です、満州からの帰国者を乗せています、敵対行為をするつもりはありません」

 

「こちらも 近隣諸国との条約により、民間船団を攻撃する事はありません、ご安心を。この海域では 昨日 深海凄艦と日本海軍の戦闘がありました、まだ残存艦艇がいる恐れがありますので、安全海域まで日本海軍が お伴します」

 

「ほっ 本当ですか?我々オーストラリアは日本の同盟国ではありませんよ!」

 

すると金剛は

「いえ 構いません、周辺各国との取り決めで、この付近の公海上の安全は我が軍が負う事になっています、それに こんな所で非武装の民間船団を見捨てたとあれば、海神の巫女として 恥ずべき行為です」

 

「ありがとうございます 戦艦金剛」

 

「デハ、後方から 船団に追いつきます、あと私以外にも 数隻の艦艇が こちらへ向かってきていますので ご安心くださいネ」

 

金剛は 無線を下すと、前方の船団を見た、間もなく合流だ、

 

金剛はそのまま 船団の左舷側に位置し 船団の先頭艦の横へ並んだ、

予め 船団には進路を自由に変えていいと伝えてある、金剛が追従する形をとった

 

金剛は こんごうと二人揃って 右舷側の見張り所へでて来た

双眼鏡で、横を並走する民間船団をみたが、甲板を見て驚いた

 

「お姉さま、乗客の殆どは女性や子供のようですね」

 

「ええ、今 満州は近隣諸国との緊張状態が続いています、現地の外国籍企業は 家族を安全地域へ疎開させていると聞いていますが、よく黄海を無事に抜けてきましたね。」

 

「黄海から 東シナ海は そんなに酷い状況なのですか?」

 

「そうです、こんごうちゃん、 済州島に出来た深海凄艦の巣は 棲鬼クラスがいるようで、攻略が進んでいません。」

 

「そうなのですか?」

 

「過去、数度に渡る陸軍の上陸作戦、海軍の艦砲射撃に対しても、深海凄艦の修復が早く 効果が薄い事が分かっています、ですから、最近は彼らを海に出さないように包囲網を形成し、にらみ合いが続いています」

 

「では 対馬が防衛線ですか?」

 

「そうです、対馬を前線拠点にして、佐世保鎮守府の陸奥を旗艦に皆 頑張ってマス」

 

「では この船団もその危険地帯を抜けてきたのでしょうか?」

 

「ええ 後少し行けば インドネシア近隣です、そうすれば 島伝いにオーストラリアへ向う事もできます、安全な海域も増えマス」

 

「では ここはしっかり送り届けなければいけませんね、お姉さま」

 

「はい こんごうちゃん、改修後の初任務デス」

すると金剛は 横に並ぶ副長に対して

「副長、各部署に通達、この戦艦金剛の名に懸けて 彼らを安全海域へ送り届けます、総員 警戒を厳とシナサイ!」

副長は 伝令妖精を呼び 金剛の命令を各部署へ通達し 士気を高めた。

 

暫く並走していたが、後方より 由良率いる対潜部隊が合流してきた、由良は 民間船団の右舷側に位置し、その後方には 駆逐艦 睦月、そして金剛の後方には 皐月が付いた。

鳳翔は 船団の後方、その後方やや離れた所を はるなが追随した。

 

こんごうは タブレットを取り出し、いずもとはるなに通信を繋ぎ、

「副司令、はるな、合流お疲れ様です、民間船団ですが、オーストラリア国籍の満州からの疎開船の様です、ここから見える船体には武装はありません。甲板上の乗客も 婦人や子供が目立ちます」

 

すると いずもは

「こんごう、了解したわ、このまま3時間ほど南下して 安全海域の手前までお送りします、その後変針し パラオへ帰還します、はるな、各スワロー隊を 前衛哨戒へ出して」

はるなは

「了解しました、あの副司令、 ロクマルを見られる恐れがありますが 大丈夫でしょうか?」

 

「それも 検討済みです、戦場では常に新しい兵器が出てきますから、新兵器の一つや二つ出ても問題ないでしょう」

 

鳳翔から 2機のロクマルが相次いで 離艦していくのが見えた、2機とも船団の横を低空で通過し、機体を左右に振ってバンクを取りながら 各々の担当空域へ向け 展開していった、それを追うように 数機の零戦が護衛の為に追従していく。

 

こんごうは 船団の甲板上を双眼鏡で見た、先程より出てきている人が増えている、やはり女性や子供が目立つ、時より子供達が手を振っているのが見える。こちらも手を振って それに答えた。

金剛でも、銃座に待機する兵員妖精が 手を振っているのが見える。

それだけ 切り取ってみれば 普通の風景、しかし ここは戦場 それが現実であった。

 

 

民間船団の船団長は 船橋の上にある展望台で 驚きながら回りを見回した。

左舷を並走しているのは、日本海軍の歴戦の勇士 戦艦金剛、右舷は 長良型4番艦 由良 それに駆逐艦が2隻、そして 後方にはあの空母型の代表 鳳翔、その後方には 初めて見る 新型の重巡。

それらが まるで船団の楯に成るかのように しっかりと護衛してくれている。

非同盟国の民間船団に こんな護衛をつけてくれるとは!

近くを航行していたとはいえ 有難い!

 

 

ふと 後方から声を掛けられた、

「船長、日本海軍は 大盤振る舞いですね」

 

「ふん、役に立たん米軍より、数段有難い」と返事をした

 

声の主は 30代の男性、乗船名簿上は 新聞記者となっているが、本当は オーストラリア海軍の大尉だ、船団が戦闘に巻き込まれた場合のアドバイザーとして乗船している

大尉は ショルダーバッグから、小冊子を取り出して、パラパラとページを捲った、冊子の表紙には“日本海軍 艦艇、艦娘識別表”と記載されている

「左舷の戦艦は 金剛ですね」といい 冊子を見ながら 双眼鏡で金剛を見た。

鉛筆を走らせ、冊子に何かを書き込んでいる。

 

船長が

「大尉、仕事柄仕方ないとはいえ、護衛してくれている方々の情報を盗むのは感心できんな」

 

「船長、まあこれも職務ですから、ご勘弁を」といい 金剛を見て

「この識別表の物と少し違いますね」といい

「21号レーダーが廃止されている、その変わり新型のレーダーが見える、アンテナが回転している所を見ると新型のスコープを開発したのか?」

大尉は 艦橋へ目を移した、艦橋構造物の側面に何か 白い大きな板の様な物が貼り付けてあった。

「あの 板の様なものはなんだ? 見たことがない」

その板の様な物の上の見張り所に目を移して 驚いた!

 

「金剛のフリートガールが 二人いる?」

双眼鏡の倍率を上げて、再度見ると やはり良く似た フリートガールが二人見張り所にいるのが分かる。慌てて識別表にあるフリートガールのページを開き、二人と比較したが、

服装以外に区別できる所がない。

「どういう事だ?どちらが金剛?」と考えたが 日本の伝統的な衣装を着ている方がどうやら 戦艦金剛のようだ、ではもう一人は?

 

視線を後方の駆逐艦へ移した

「あれは 睦月タイプか」側面に書いてある白字の日本語をみて

「サツキだな」と確認した 右舷へ目をやると

「長良タイプ、この近海だとパラオ旗艦の由良か?」

その後方は

「睦月の一番艦 ムツキ」とページにメモを取った

この3隻は 見た目に新しい所がない、後方の艦へ視線を移す

 

「ほう これは珍しい!世界最初の本格的な航空母艦 鳳翔、日本海軍の空母のリーダーですか」といい 空母型のページを開いた

「旧式ですが、練度は日本海軍でも頭一つ抜けていると言われていますね、横須賀で予備役扱いとなっていますが、どうやらパラオへ転属になっているみたいですな」

「船長、この艦隊は凄いですね、金剛に鳳翔ですか、パラオは意外に艦隊が充実しているようで」と大尉が言うと

 

「大尉 私はその鳳翔の後の艦が 気になるのだが?」と言われ 視線を鳳翔の後方へ向けた、そこには 今まで見たことがない新型の重巡がいた。

 

「しっ 新型の重巡じゃないですか!」

慌ててバッグから ライカのカメラを取り出した。

 

「この距離で写るのかね?」と言われたが

 

「ぼんやりですが、それでも無いよりはマシですよ」とシャッタを切った

 

「それにしても 高い艦橋だね、よく転覆しないものだ」と船長が言うと

 

「艦橋を高くするのは 日本のお家芸ですよ、扶桑や山城がいい例です」

 

「ああ あの二人の艦橋は ある意味芸術的だな」

 

大尉は カメラを仕舞うと、冊子の空きページにその新型重巡の特徴を記入しはじめた。

「前方から見える 主要装備は、120mmクラスの単装砲、機銃らしき物1 外に兵装がない? なにか隠しているのか?」

「艦橋上部にレーダーらしきもの多数、もしかして これは今米国で 研究しているというレーダーピケット艦ではないのか!だとすると日本はこれを独自で開発したのか!」

大尉は 急に焦りを感じていた、なにかとんでもない物を見た気がしてきたのだ。

そういえば 金剛も新型のレーダーが搭載されている、日本海軍はもしかして!

 

大尉の豹変ぶりをみて 艦長は

「どうしたのかね 大尉?」

 

「いえ、この艦隊はもしかして 日本海軍の最新鋭艦隊なのではないかと思いまして」

 

「最新鋭? どういう事だね」

 

「ええ 戦艦金剛ですが、新型のレーダーを搭載しています、近代化改修されて、対空機銃等も強化されているようです、そして殿の新型重巡 艦橋に多数の新型のレーダーやアンテナを装備している様です、これは今 米国で研究している防空用レーダーピケット艦ではないでしょうか?」

 

「しかし 君。そんな最新鋭艦を こんな民間船団の護衛に付けるかね?」

 

「そこは 良く分かりませんが、金剛や後方の新型艦が 今までの日本海軍のコンセプトから 外れている事は確かです」

 

「コンセプト?」と船長。

 

「ええ 今まで日本海軍は、レーダー開発に多大な功績を出した八木アンテナの発明者が居る国家にも関わらず、レーダー技術を軽視してきました。しかし ここから見るあの新型重巡は 多数のアンテナやレーダーを搭載しているようです、彼らも情報戦の重要性を認識しはじめたという事です」

「これだけでも 本国へ持ち帰れば、大成果です」

 

すると船長は しずかに

「大尉、勘違いしてはいかん、彼女達が矛先を向けるのは我々ではなく、深海凄艦だ」といい 続けて、

「今 本国海軍は危機的状況だ、あてにしていた米海軍もこのざまだ、そうなればもう答えは一つしかない、今は日本海軍の力を信じるしか我々には道はないのだ」

 

すると大尉は

「では この情報をどうしろと?」

 

「黙っていろとは言わん、しかし言うべき相手を選びたまえ」

 

大尉は 暫く考え、

「ご忠告は 真摯に受け止めておきます」といい後方を見た。

すると上空から 聞いた事の無いパタパタと言う音を響かせながら不思議な形をした航空機が近づいてきた。

「新型の航空機!」と大尉が唸る、

大きな回転式の翼の様な物がみえる、ジャイロコプターと呼ばれる物が一番近い。

大きく 鳳翔の横で旋回した どうやら鳳翔に着艦する様だ。

ジャイロコプターなら 以前見たことがある、観測機などに使える機体であるが、運動性が悪く、また搭載量が少ない事からあまり普及していない、確か日本陸軍で カ号観測機というのがあった事を思い出していた。

双眼鏡で 興味深くそれを見ていたが、次の瞬間 目を疑った!

「甲板上で 止まっている!」

 

その新型機は 鳳翔の甲板上で 空中停止していた、実際には 15ノットで航行しているので 艦と速度を合わせているに違いない、甲板上では日本の妖精兵士が何やら誘導しているようだ、そしてゆっくりと着艦した。機体の回りに数名の妖精兵士が見える、相対的に少し大型の機体だ、暫くすると 兵士が機体から離れていった。

そして 今度は なんと

「なに! 垂直に発艦しただと!」

その機体は まるでごく自然に 垂直に浮き上がり、そのまま船団の横をすり抜けて行った。 胴体側面に 日の丸が見える 間違いなく日本海軍の機体だ!

 

すると船長は、

「今日の日本海軍は 最新兵器のオンパレードだな」と笑って言い放った

 

「ええ 凄いです、どう表現すればいいのか」と大尉も声を無くした、そして

「日本海軍は 進化している」と一言 呟いた

 

 

戦艦 金剛 艦橋

並走する 民間船団を双眼鏡で見ながら 金剛は

「どうやら 皆さん ロクマルに驚いているみたいデスネ」

 

「まあ 本来なら ロクマルの原型機は後30年経たないと 初飛行しませんからね」

 

「艦長、そろそろ護衛限界点です」と副長が報告してきた、本来ならもう少し先まで見送りたいのだが、今日中にパラオへ帰還する必要があった。

 

いずもから

「金剛さん、いずもです 今、由良さんが船団に 護衛の終了を通知しています、確認後 減速して 船団から離脱します」

 

「はい 仕方ありませんね、ここまで来ればインドネシアは目前ですし、深海凄艦の出現率も低い海域なのでno problemデス」

 

金剛は、副長に

「副長、手すきの兵員妖精は 右舷登舷、マストに国際信号旗、UWを掲揚シナサイ」

 

金剛達も右舷見張り所に出た、すると甲板上には大勢の兵員妖精が一列に登舷していた、どうみても 砲塔要員や機関要員もいる、高角砲や、対空機銃要員もそれぞれの持ち場で整列しているのが分かる。

ふと 後方の皐月をみると、金剛の意図をさっしたのか 同じように右舷に皐月を筆頭にみな 登舷していた、鳳翔では 甲板上に鳳翔、いずもと兵員妖精が整列している、後方のはるなも 隊員妖精の姿が見える、船団の右舷側の由良、睦月も信号旗を揚げた。

上空には ロクマル、零戦隊が旋回しながら 待機している。

 

副長が 艦橋から艦内放送で

「総員 気をつけ!」と号令し、

「オーストラリア船団に 海神の御加護があらんことを願い 敬礼!」

金剛達は 一斉に敬礼し オーストラリア船団を見送った、

 

船団の各船のオーストラリア国旗が半旗になり 答礼があった、各船からUW1の信号旗があがる。

 

「総員 なおれ!」と副長が号令すると みな各々に 船団へ帽フレをしている、船団の甲板上には 乗員や乗客が皆出て 手を振りながら別れを惜しんだ。

 

その後 減速し 船団から離れたパラオ艦隊は 由良を先頭に 単縦陣を組み、パラオへ帰還した。

 

オーストラリア船団はインドネシア近海でも日本海軍の駆逐艦の護衛を受け、その後無事、 アラフラ海へ抜け、そしてダーウィンへ入港した。

 

後日、船員、そして帰国者から、

「日本海軍は 誠心誠意 我々を擁護してくれた」と口々に語られたが、オーストラリアのメディアは それを報じる事はなかった、

しかし、これはある事件の序章であり、その後 オーストラリア国民を動かすきっかけになるのである。

 

 

 

 




こんにちは スカルルーキーです。

分岐点 こんごうの物語を 読んで頂き 有難うございます
お気に入りに登録して頂いた 皆さまありがとうございました
次回も 頑張って書いて行きます


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