俺が綾辻さんの彼氏か   作:杉山杉崎杉田

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第39話

熊谷が緊急脱出した。これで西岸は空閑と村上のみとなった。一方の東側は、伊佐が来馬、太一の二人を相手に射撃戦を挑んでいた。

二人の射撃を瓦礫を壁にして回避しつつ、撃ち返す。来馬と太一はシールドを張りながら反撃する。

 

『東側の伊佐隊員対来馬隊長、別役隊員!お互いに激しい撃ち合いとなっております!』

 

『なるほどな。いくら精密射撃っつっても、ハンドガンなら使える弾は一発ずつだ。シールドを張ってれば守れる』

 

太刀川が顎髭を触りながら言った。

 

『一度に撃てる弾の数も違う、こりゃ意外と伊佐厳しいんじゃないか?』

 

『なるほど……。迅さんはどう思われますか?』

 

『そうですね。射手以外の射撃勝負なら人数が多い方が有利ですから、伊佐隊員が不利かもしれません。でも、伊佐隊員には知恵がある』

 

『なに、お前なんか視えてんの?』

 

『どーだろうねー』

 

『うーわお前そういうとこセコイわ〜』

 

『そんなん言うけどさぁ、太刀川さんだって前さぁ、俺の3DS壊れてる間にハンターランク上げてドヤ顔してたじゃん』

 

『仏の顔も三度ですよ、二人とも』

 

次はない、と宣告されて二人は黙った。

 

「………あの二人仲良いな」

 

「ていうか、迅さんもモンハンやるんだね」

 

「今、ボーダー内で結構モンハン流行ってるよ?」

 

「絶対伊佐の所為だろうなぁ」

 

「この前、三輪くんがケンくんにタン掘れ一緒にやるの強請っててビビった」

 

「マジでwww」

 

「あ、そういえばいずみん。今度上位のタマミツネ手伝ってくんない?」

 

「タマミツネくらい自分で狩れるでしょ」

 

「いや面倒だからあんま行きたくない」

 

「あーわかる。タマミツネって外見とは裏腹にめんどいもんね」

 

そのまま3人はモンハン談義に花を咲かせた。

モニターの伊佐は、射撃を止めると小さく深呼吸した。そして、再びハンドガンを構える。

 

『変化弾』

 

そう呟くと、弾を乱射。銃口から出て来た弾丸は来馬と太一を囲むシールドの周りをグルグルと回り始める。

 

『おーっと、これは……⁉︎』

 

『変化弾で、囲んでるな』

 

『あーなるほどね……』

 

『何、お前なんか視えた?』

 

『いやーこれは言わない方がいいでしょ』

 

画面上の伊佐は更に変化弾をぶっ放し、来馬と太一を囲む弾の数を増やしていく。その数が20を超えた時、弾丸を全て二人の頭上に持ち上げたあと、まとめて真上から叩き落とした。

 

『! 来馬先輩!』

 

いち早く気付いた太一が、来馬を突き飛ばしながら横に回避した。二人の間にシールドをブチ破って弾丸が降り注ぐ。

二人とも横に逃げ、孤立したのを伊佐は見逃さなかった。アステロイドで太一の頭を狙撃した。

 

『伊佐選手、変化弾を巧みに使い、シールドを破り、そこから狙撃!別役隊員緊急脱出!玉狛第二2点目獲得!』

 

『おお……。まぁバイパーはリアルタイムで弾の軌道を変えられるからな……』

 

『とはいえ、アレだけの弾数を普通操れるか……?』

 

二人ともドン引きしていた。

 

 

(伊佐が一人落とした……)

 

那須の猛攻を凌ぎながら、修は心の中で呟いた。那須の放った弾丸を、自分に当たる分だけレイガストで防ぐ。

 

(僕も、ここで落とされるわけにはいかない)

 

そう心の中で呟いて、手元にアステロイドを出した。

 

(撃ち返さないと撃たれっぱなしになる……。伊佐が来るまで持ち堪えてやる……!)

 

直後、後ろからトリオンが修の体を貫いた。

 

「ーーーッ⁉︎」

 

放った何発かの弾丸は変化弾だった。修の後ろにわざと飛ばし、戻って来るように設定しておいたのだ。

修が緊急脱出したのを見ることもなく、那須は次の獲物を探しに向かった。

 

 

西岸では、千佳の援護射撃もあって、遊真は村上と川の中に一緒に落ちて、スコーピオンで倒した。

残りは、遊真、千佳、伊佐、来馬、那須の五人となった。遊真は川から上がろうとしていて、千佳は修の指示待ち、那須は来馬と伊佐の戦いに混ざって乱戦に持ち込もうとしていた。

その来馬は伊佐の攻撃をなんとか建物を盾にして凌いでいた。

 

(無駄弾は撃てない。あそこの壁からあぶり出す……!)

 

メテオラを放ち、建物ごとブッ壊した。

 

「!」

 

煙からほんの少し見えた来馬のあたまを狙撃しようとした時、別の弾丸が迫って来る。

 

「………ッ‼︎」

 

慌ててエスクードでガードする伊佐。那須が参戦して来た。

 

(このタイミングで……)

 

小さく舌打ちしながら那須を見上げると、さらに弾丸を飛ばして来ている。その弾丸をアステロイドですべて撃ち落とした。

が、さらに横から誘導弾が飛んで来る。

 

「ッ‼︎」

 

片方のハンドガンをしまって、レイガストのシールドモードを飛ばしてガードしつつ、後ろに退がって建物を盾に隠れた。

 

(2対1か……)

 

伊佐は残りのトリオン量を確認する。

 

(………面倒だな。空閑くんは川に落ちたっぽいし、雨取さん人撃てないし……)

 

内部通信をした。

 

『三雲くん、聞こえてる?』

 

『あ、ああ。すまない、僕が……』

 

『そういうのいいから。つか、どーでもいい』

 

『えっ?ど、どーでもいいの?なんか辛辣……』

 

『それより、雨取さんに援護させて。俺もうメテオラ使えないから。崩し役させて』

 

『わ、分かった……』

 

そう言うと、また伊佐はハンドガンを出した。

 

 




那須さんvs修はテキトーになってしまったわけではないんです。当時の修がどんなに頑張っても、那須さんには瞬殺される未来しか見えなかっただけなんです。

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