B級ランク戦第3戦試合当日。玉狛第二は作戦室で作戦会議をしていた。
「那須隊が選んできそうなマップはこの三つ、展示場、河川敷、工業地区。開けた場所があって射撃の的になりやすい」
「なるほど」
空閑が適当に相槌を打つ。
「那須隊は多分、中距離戦メインで来るはずだ」
「ふむふむ、どうしてそう思う?」
宇佐美が試すように尋ねた。
「まぁ、そもそもエースの那須先輩が射手ってのもありますけど、先週土曜の試合で、鈴鳴第一が諏訪隊に負けてるんです。前回、諏訪隊の対策してる時に記録を見ました」
「ほう?すわ隊がむらかみ先輩を……」
「近付かないで距離を取って撃ってたんだろうね」
「そうだ。村上先輩がはっきり封じられたのは、最近の記録ではそのときくらいだ。中距離戦に分がある那須隊がそれをやらない手はないし……。僕が那須隊の立場だったら、射撃に徹した戦い方をすると思います」
「うんうん、なるほどね」
宇佐美がウンウンと頷く。
「前回と違って僕たちは対応する側、可能な限り4人揃って相手に当たる。どのステージが選ばれても、まずは全員で合流だ」
「「「了解」」」
*
『B級ランク戦第3戦、昼の部が間も無く始まります。実況担当は風間隊の三上、解説は……ナンバー1攻撃手太刀川さんと、「ぼんち揚げ食う?」でおなじみの迅さんです』
『『どうぞよろしく』』
その後ろの方では、やっぱり出水、国近、綾辻の3人が見に来ていた。
「いやー始まったね〜」
「河川敷か〜。まぁ伊佐ならどっちに残っても平気だろ」
「いやいや、ケンくん泳げないから」
「「……えっ」」
「うん」
「え?だって前に海に行ったんじゃ……」
「水着透けたんでしょ?」
「殺すよ出水くん」
「………さーせんした」
そんな話をしてると、三上の声がした。
『さあ、スタートまであと僅か。全部隊転送!』
それを聞いて全員がモニターを見た。
『各隊員、転送完了!マップ「河川敷A」!天候「暴風雨」!』
そう言う通り、風と雨がすごくて、川面には波のようなものができている。
『おっとマジか、こりゃ川を渡るのは難しくなったぞ。落ちたらヤバイ』
『さぁ、すべての隊が川によって分断された!各隊まずは合流を目指す様子!悪天候を仕掛けた側の強みで、那須隊の動き出しがやや早いか!』
そう言った通り、那須隊の動きは周りに比べて若干早かった。
「……大丈夫かな、ケンくん」
「? なんで」
綾辻の呟きに出水が反応した。
「ケンくん、雷ダメなんだよね」
「…………」
意外な弱点二つ目に出水も国近も邪悪に笑った。
「………ケンくん、いじめたら許さないから」
黙らされた。
*
全員が動き出す中、伊佐は通信した。
「雨取さん、橋壊して」
『………へ?』
「はやく。那須隊がこっちに来る前に」
『千佳、撃て』
修からも言われ、千佳は「了解」と呟いた。
「それと、三雲くん」
『どうした?』
「鈴鳴は頼んだよ」
そう言うと、伊佐は目の前の那須にハンドガンを向けた。
「………合流はさせない」
「……勝つ、一点でも多く獲って」
*
一方、反対側。那須隊狙撃手の茜が橋に向かう。だが、おそらく追い付かれると判断した熊谷は孤月を抜いて息を吐く。その直後だ。
橋が千佳によって破壊された。
「⁉︎ 橋が……!」
二発目の砲撃で、完全に落ちる橋。
『先輩……!』
「来るな、茜!」
すでに熊谷の元に村上が来てしまっていた。
(さすがに、そう都合よくはいかないか……)
『今撃っちゃダメだよ茜!クガくんに捕まる!』
茜の耳元に小夜子からの指示が入る。
『那須先輩!橋が落ちました!二人は来れません!』
『……そう、わかった。じゃあこっち側は、私が全員倒す。だからそっちも、二人で点を取って』
「了解」
熊谷が村上と相対した。
*
一方、伊佐と那須。お互いに黙って睨み合った。那須の周りにトリオンが浮かび上がった。伊佐に変化弾を飛ばす。伊佐はそれをアステロイドで撃ち落とした。
『伊佐隊員対那須隊長!激しい銃撃戦が繰り広げられています』
『おお……マジか。那須と正面から撃ち合ってるぞ。伊佐って強いのゲームだけじゃないんだな』
『何、太刀川さん賢介とゲームやったの?』
『ああ、ボコボコだった』
『二人とも。解説中です』
三上に注意され、二人揃ってコホンと咳払いする。
『にしても、やるなぁ伊佐の奴。変化弾が変化した直後を予測して攻撃を相殺してる』
『しかも、シューターの複数の弾丸をハンドガンで追い付いてる所が気持ち悪いですね』
太刀川、迅と言ったところで、新たな動きがあった。那須の足元からエスクードが現れた。
足元が崩れた直後、さらにアステロイドで襲撃、那須は退がりながら牽制の変化弾を放った。
『おお……那須を退けた。やるなぁ、伊佐の奴』
『那須隊員は他の隊員を狙いに行きましたね。こちらに一人で残った以上、取れる点から取りに行こうとしてるのでしょう』
その那須は、伊佐を鈴鳴にぶつけようとしてるのか、小夜子の指示に従いながら撤退した。