俺が綾辻さんの彼氏か   作:杉山杉崎杉田

36 / 43
第36話

 

 

翌日、ボーダー鈴鳴支部。

 

「昨日、玉狛第二の子と戦ったんだって?」

 

来馬が村上に聞いた。そう言う通り、伊佐が焼肉屋にいる間、遊真は村上とランク戦をした。

 

「やりましたよ。6-4で勝ちました」

 

「鋼相手に6-4か……!相手はまだ中学生だろう?すごいな……!」

 

「でも、鋼くんが勝ったんなら、もう一対一なら負けないわね」

 

オペレーターの今がそう言うが、村上は首を横に振る。

 

「そんなことはないよ。相手も学習して成長する。それに昨日の個人戦は、全力じゃなかった可能性もある」

 

「……様子見だったってこと?」

 

「かもしれない。戦い慣れしてる感じだったからな。一対一の場面があれば俺が倒します。でも、チームで仕留められればその方がいい」

 

「うん。そうだね」

 

「それと、俺はあの伊佐って方の奴も気になってます」

 

「? あのガンナーの子?」

 

「そういえば、笹森くんのこと背負い投げしてたっけ」

 

「接近戦もですが……荒船と空閑が戦ってる間の援護射撃、全部荒船に当ててるんですよね。空閑には当てずに」

 

「……なるほど。今までの2戦は実力をなるべく隠してるのかもって事か」

 

「見た感じ、随分と落ち着いてる様子でしたし、もしかしたら空閑と同レベルのエースなのかもしれない」

 

「と、なると空閑くんと、その伊佐くんっていうのを合流させるわけにはいかないね」

 

「転送位置にもよりますが、俺がどちらかを倒します。もう片方は任せますよ」

 

「うん。分かった」

 

この後、太一が来てカップ麺テロを起こした。

 

 

どっかの家。

 

「これ、昨日の村上先輩と空閑くんの10本勝負ね」

 

熊谷友子が記録を見せた。

 

「空閑くんの情報は少なかったから。データがもらえてよかったよ」

 

『村上先輩に前半4-1とか、相当ヤバいですね』

 

パソコンの向こう側から、那須隊オペレーターの志岐小夜子の声がした。

 

「荒船さんと駿くんにも勝ってるし、昨日のランク戦も見たけど、この子が間違いなく玉狛第二のエースだわ」

 

「……そうかな。この伊佐くんって子も、中々曲者な気がする」

 

「? でも、この子笹森くん相手に一点しか取ってないわよ。その前の試合は何もしてないし」

 

「だけど、荒船さんと空閑くんの時の援護は、空閑くんには当てずに荒船さんに当ててるし、この前の大規模侵攻の時は、米屋くんと出水くんと組んで人型を抑えて特級戦功もらってたよ」

 

「でも、その二人の力が大きかったっていうのもあるんじゃないの?」

 

「うん。それもあると思う。けど、それだけで特級戦功は取れないんじゃないかしら」

 

『あっ、伊佐くんの模擬戦のデータもありました。この子も緑川くんに勝ってますね。………なんか、すごいエゲツないけど』

 

「ちょっと見せてくれる?」

 

小夜子から送られてきた映像を、那須と熊谷は見た。直後、すごく嫌そうな顔をした。

 

「………何これ。私刑?」

 

「なんか伊佐くん、相当怒ってるみたいだけど……緑川くん何したのかしら」

 

「でもこの様子だと、下手したら空閑くんと伊佐くんのダブルエースって事もありそうね」

 

「鈴鳴もいるし……一番辛い戦いになりそうね」

 

『それなんですけど、今月1日のランク戦で諏訪隊が鈴鳴第一に勝ってるんですよね。二人残して』

 

「うちが防衛任務の時?」

 

『はい。見逃してました。その試合、諏訪隊はアタッカーの火力を捨てて、村上先輩の間合いには絶対入らない戦法でした。「村上先輩さえ封じれば勝てる」っていう判断だと思います』

 

「なるほど……」

 

『だから、うちも村上先輩と伊佐くんをぶつけて、空閑くんを那須先輩の間合で抑えられれば……』

 

「なるほど……そういうのもアリなのね」

 

「じゃあマップもそれ用のとこを選ばなきゃね」

 

「あとは……茜ちゃんがどうなるかね……」

 

「……そうだね」

 

 

と、いう具合に他の隊から思いっきりマークされている伊佐は、その頃、太刀川隊作戦室にいた。

 

「いやー、強くなりましたね国近さん」

 

「そりゃあ、毎日毎日賢介くんとゲームしてたらこうなるよ」

 

「出水さんも、サムスの使い方がなってきましたね」

 

「いやー本当はネス使いたいんだけどな」

 

「あれセンスなさすぎなんで。本当あれ使うとゴミなんで」

 

「いや言い過ぎだろお前それは……」

 

「ていうか、賢介くんのゼロスーツサムスがおかしいんだよ」

 

「は?何言ってるんですか。俺のさいつよはフォックスですよ」

 

「いやあれ使うとお前カスだから」

 

「うん。カス以下」

 

「………ひどい」

 

そんな話をしながらゲームをしてると、バンッ!と机を叩いて綾辻が立ち上がった。

 

「そうじゃなくて!何やってんのケンくん!」

 

「? スマブラ」

 

「もう直ぐランク戦始まるのに何でこんな所でゲームやってんの!」

 

「作戦は全部三雲くんに丸投げしたからねー」

 

「したからねーじゃないよ!あなたも部隊の一人ならちゃんと働きなさい!」

 

「働いてんじゃん。こうしてゼロスーツサムスと自分の動きを重ね合わせて、次の試合、どうやって戦うかを想像してるんだよ」

 

「いやいやいや!流石にその言い訳は無理あるよ!」

 

「大丈夫大丈夫、ちゃんとあとで玉狛にも行くから」

 

「玉狛に行くのついでなの⁉︎」

 

「そういや伊佐、昨日結局シたのか?」

 

「あーまたハルちゃんがチキって結局……」

 

殴られた。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。