『さあ転送完了!各隊員は一定以上の距離を置いて、ランダムな地点からのスタートになります!』
ランク戦が開始、モニターでは狙撃手四人のアイコンが薄暗くなる。
『そして狙撃手四人がバッグワームを起動!レーダー上から姿を消した!狙撃手三人の荒船隊、やはりまっすぐ高台を目指します!半崎隊員が良い位置に転送されたか?』
モニターの選手達の動きを見ながら武富が実況する。
『諏訪隊もそれを追う!玉狛第二も……おっと、追わない!部隊の合流を最優先したようだ!』
そう言う通り、四人とも合流していた。
『転送直後は一番無防備な時間帯ですからね。合流するのはありです』
一方で諏訪隊。笹森が慌てた様子で街の階段を上がる。
(このままじゃ荒船隊に上を押さえられる……!急げ……!)
心の中でそう言い聞かせながら壁から出た直後、後ろから服をグイッと引っ張られた。
「⁉︎」
後ろに座り込み、直後目の前を弾丸が通る。
『笹森隊員間一髪!穂苅の牽制ですね。躱されましたが諏訪隊は進みづらくなった。いい仕事です』
『この隙に荒船隊長も脇をすり抜けて登っていく!荒船隊が完全に上を取った!』
荒船が狙撃位置を取った時だ。下から光が見え、その直後に自分の隣のビルがブッ壊れた。もはや砲撃ともいえる狙撃の飛んで来た方を見ると、4人集まった玉狛が見えた。
荒船隊の3人とも、玉狛に集中狙撃する。遊真と修と伊佐がシールドとレイガストで何とかガードする。
さらに千佳が荒船の立っていた位置を砲撃。
『この威力!もはや砲撃!玉狛第二意外にも撃ち合いを挑んだ!東隊長、この展開はどう思われますか⁉︎』
『玉狛第二の分が悪いですね。下からでは荒船隊の動きが見えない。そのうえ撃つたびに自分の居場所がばれる。逆に上にいる荒船隊からは的がよく見える。盾を何枚張っても、防御が崩れるのは時間の問題です』
「……負けそう?」
「いやー伊佐も一緒になってのってる以上は何か勝算があるんだろ」
「しかし、意外と大人しいなあいつ」
「このまま行けば私の貞操は無事……」
(勝ってもこいつチキりそーだな)
(勝ってもこの子チキりそーだね)
(勝っても100%こいつチキるわ)
出水、国近、米屋と腕を組みながらそう思った。
『東隊長の解説通り、玉狛第二が一方的にダメージを受けていく!本職相手に狙撃勝負は無謀だったか?』
武富の声が響く。だが、東がまた解説した。
『……いや、端から勝つ気はないようです』
『………え?』
直後、モニターで諏訪がショットガンを撃ちながら荒船に突撃し、片脚を削った。
『あーっと!砲撃の陰で諏訪隊が登ってきていた!』
『さっきの砲撃は諏訪隊の援護ですね。長距離戦で荒船隊に勝てないのは織り込み済み。ステージの選択から敢えて状況を荒船隊有利に偏らせることで、諏訪隊と玉狛第二の利害を一致させた。玉狛第二は、地形戦をよく練ってますね』
*
モニター。修が言った。
「荒船隊を捕まえた!このまま乱戦に持ち込むぞ!」
「OK。こっからは俺の仕事だな」
「了解」
「千佳はここからは別行動だ。絶対に顔は出すな!宇佐美先輩の指示を聞いて、もし僕たちがやられたら緊急脱出しろ」
「うん、わかった」
「空閑、伊佐!点を取りに行くぞ」
「おう!」
「うい」
一方で諏訪vs荒船。車を陰にして隠れる荒船に、諏訪が集中砲火する。
車とシールドで何とか凌ぐ荒船。すると、諏訪の顔面に狙撃が命中した。大きく後ろに仰け反る諏訪。
「………!」
「大当たりだぜ」
集中シールドを顔面の前に張っていた。
「げっ、マジ?」
「半崎の位置確認!」
堤が半崎を追い、諏訪は引き続き荒船を追った。途中、さらに狙撃が諏訪を襲い、脚を吹き飛ばした。
「諏訪さん、退がりますか?」
「アホ言え、こっからだぜ!」
「ですよね」
「見失うなよ堤!」
『もう追いつきます』
*
一方、半崎が退がりながら堤を見下ろした。
『下から来る!気をつけて!』
オペレーターの加賀美から声が聞こえた。
「見えてますよ。堤さんでしょ?」
『違う!玉狛よ!』
横から遊真が上ってきいた。
「!」
ズバッと遊真が一撃スコーピオンを振るうが、半崎は体を仰け反ってギリギリ回避した。
「うお、速っえ!」
(急所を外された。もう一発……!)
壁に手を付いて、もう一撃行こうとした時、堤が追い付いてショットガンを乱射した。
「ッ」
慌てて遊真は回避したが、半崎はバラバラにされた。
「こりゃダルいわ、すんません」
そう言うと、半崎は緊急脱出した。続いて堤は遊真に銃を向けた。それを左右に回避する遊真。
(速い……!でもそのくらい動けることは、もう知ってるんだよ!)
空中に上がった遊真に銃口を向けた。だが、グラスホッパーで急に死角に移動された。
「ッ⁉︎」
そして、堤を真っ二つにした。
*
その頃、荒船、諏訪、笹森。
『荒船くん、後ろ』
「⁉︎」
後ろから、弾丸が迫って来ていた。慌てて回避する荒船。
「見つけた」
現れたのは伊佐だった。シールドと建物を壁にして隠れる荒船。そこにハンドガンを向ける伊佐。狙いを定めたあと、シールドと壁の穴の隙間を抜けてアステロイドは荒船の肩を抉った。
「っ⁉︎」
さらにもう一発撃とうとした時、諏訪隊が追い付いてきた。諏訪が乱射し、伊佐は後ろに退がって回避した。
『伊佐くん後ろ!』
真後ろにカメレオンを起動した笹森が接近していた。
「ッ‼︎」
慌ててしゃがんで回避すると、孤月を振り抜いた笹森の両腕を掴んで背負い投げをした。
「ッ⁉︎」
笹森が落とした孤月を拾い上げ、倒れた所で喉を突き刺した。
「日佐人……!」
諏訪が声を上げつつ、荒船を追撃する。後ろから伊佐が銃口を向けた。直後、穂苅の狙撃で諏訪の片腕が吹っ飛ばされた。
「ッ……⁉︎」
さらに、荒船が孤月を抜いて、諏訪に斬りかかった。
「ッ!」
慌てて避ける諏訪。そのまま建物の陰に隠れた。
「チッ……!退くしかねぇ!小佐野!緊急脱出する!案内しろ!」
『ほーい』
退く諏訪。それを貰おうと伊佐はハンドガンを向けたが、その伊佐に荒船が斬りかかった。
「穂苅、諏訪さんを抑えろ。俺はこっちを取る」
『了解』
荒船が伊佐と相対した。