伊佐と綾辻は相変わらずの射撃戦だった。ヒュースの磁石に弾を反射させて攻撃する伊佐と、機動力を活かして攻撃するヒュース。
(クッ……!中々面倒な攻撃をしてくる……!)
すると、ヒュースはギロリと綾辻を睨んだ。
「なら、こうすればどうだ?」
ヒュースは綾辻に砲門を向けた。
「!」
「エスクード」
発砲直前に盾を出した。ドスッとエスクードに突き刺さる磁石。その直後だ。真後ろからデッカい車輪に刃が付いた形の磁石が向かって来た。
「!」
「死ね」
「ハルちゃん!」
反射的に綾辻の前に立ち塞がる伊佐。その伊佐の前にエスクードが出た。
「っ!」
「⁉︎」
「待たせたな、賢介」
伊佐の横に迅が立っていた。
「! 迅さん……!」
「なんとか間に合ったぜ」
さらに、バゴッ‼︎と鋭い音がした。遊真がラービットのたちの一体を蹴り飛ばした音だ。
「空閑くん」
助かった……みたいなニュアンスで伊佐は息を吐いた。その伊佐に迅が言った。
「賢介、遊真と一緒にC級と綾辻連れてラービットを突破しろ。いけるな?」
「うい」
「よし、良い返事だ。あの人型は俺に任せろ」
伊佐は綾辻をお姫様抱っこして、走って遊真達に合流した。
「ヒュ〜、大胆」
テキトーにそう言いながら、迅はヒュースを見た。
*
「空閑くん!」
「おう、ケンスケ。と、誰?」
「俺の彼女。さて、突破するよ」
「了解」
遊真、修、伊佐は3人並んで、後ろにC級を並べさせた。修が声をはりあげる。
「全員ついて来い!新型の群れを抜けて一気に基地まで突破する!遊真、伊佐、援護してくれ」
「おう」
「了解」
修はレイガストを構えて先頭に立ち、その横を遊真と伊佐が付いた。そして、入り組んだ道を利用してラービットとの戦闘を極力避けていく。
だが、それでも数が多過ぎる。
「チィッ……!」
「全員追いつかれたら終わりだ!走れ!」
その直後だ。ドドドドドッと空からアステロイドが降って来る。
「⁉︎」
そこから遅れて米屋、緑川、出水が降って来た。ランバネインを撃退したようだ。
落ちて来るなり、緑川と米屋が一撃ラービットに食らわすが、ガードされた。
「硬っ、なにこいつ」
「噂の新型だろ。ウジャウジャいんなー」
「緑川!米屋先輩!」
「三雲先輩、お待たせっす」
「よう、伊佐。先輩が協力してやる。泣いて感謝しろよ」
「うわーん、有難うございます出水せんぱぁ〜い」
「気持ちのいいくらいの棒読みだな」
「俺の見立てだとあいつは足が脆いです。そこを撃ってください」
「了解了解。そーら、こっち来い」
返事をすると、出水はアステロイドでラービットの頭を撃つと、自分に引き寄せるように移動した。
「三雲くん。俺も残ってラービットを足止めする。ハルちゃんを頼む」
「わかった」
「了解」
そのままラービットに向かっていこうとする伊佐。
「ケンくん」
後ろから綾辻が声を掛けた。
「気を付けてね」
「うい」
そう言って、二人は別れた。
*
出水が引き寄せているラービットに、伊佐はアステロイドを放った。
「おっ、伊佐。こっち来んのか?」
「まぁ、上手くやれば全滅させられそうなので」
「了解。一応聞くけど、新型と戦ったんだよな?」
「はい。一応、三体殺しました」
「なら、頼りにさせてもらうぜ」
「では、援護お願いします」
言いながら伊佐はハンドガンを構えた。それを援護するように出水もトリオンを両手の下から出す。距離は25メートルほど。歯と歯の間の狭い所をすり抜け、アステロイドは弱点にうまく潜り込む。
「当てんのかよ!」
突っ込みながら、出水もアステロイドでラービットの足を狙い撃つ。
「お前の狙撃はヘンタイだな!狙撃手になれよ」
「前も誰かにそれ言われましたね。あの形のライフルは使ったこと無いので無理です」
言いながら、次のラービットに狙いを定め、狙撃。だが、ラービットは口を閉じた。
「! 学習してる……?」
「OK、俺が口を開かせてやる」
言うと、出水はアステロイドとアステロイドを足した。
「ギムレット」
言いながら飛ばす。それを両腕でガードするラービット。その時、ほんの一瞬、腕の中で開いた口の中の目を狙撃した。
「うおお……気持ち悪ッ」
「出水さん、俺も傷つく事あるんですよ?」
一方で、米屋と緑川側。
「うおお、やるなあいつ。彼女ができるのもわかる気がする」
「俺らも負けてらんないね」
緑川と米屋もラービットに突撃した。米屋が孤月のリーチの長さを活かして距離をとりながらラービットと攻防し、隙を突いて緑川がラービットを崩す。
「確かに硬いけど、」
「崩せばこっちのもんだ」
早速、1匹撃破した。このまま行けばラービットを全滅させられる。そう思った時、どっかの屋根の上に白い鳥が集まっていた。その中央に、人影が見える。
「………」
「どうした伊佐?」
「新手です。人型」
「………あらら」
*
警戒区域外。ヴィザvsレイジ、烏丸。
「そろそろあいつら基地に着きましたかね」
「少なくとも、こいつの足止めは成功したと見てもいいだろう」
「了解っす」
その時だ。ヴィザの横に黒い穴が開き、黒い角が付いた女が現れた。
「「⁉︎」」
狼狽える二人を差し置いて、女は言った。
「ヴィザ翁、足止めご苦労様です」
(! まさか、足止めされていたのは俺たち……⁉︎)
「待て……!」
京介が突撃銃を向けた直後、ヴィザの杖が光った。
「! 京介!」
レイジが京介の頭を掴んで、しゃがもうとした。直後、頭上に斬撃が走る。
「さようなら、玄界の戦士たちよ」
そのままヴィザは消えて行った。
*
出水、伊佐、米屋、緑川側。屋根の上に降り立ったハイレインの周りに生き物の形の弾を米屋と緑川に飛ばした。
「生き物の形か、動きは複雑だけど……!」
「落とせねー速さじゃねーな!」
弾を弾き落とす緑川と米屋。直後、武器がキューブになった。
「「⁉︎」」
直後、二人にラービットが襲い掛かる。米屋はギリギリ躱したが、緑川は上から叩き潰された。
その緑川に飛んで来る魚の弾。
「! シールド!」
張ったが、シールドもキューブにされ、緑川の顔がグニャッと変形する。
「⁉︎」
「まさか……!」
直後、伊佐がアステロイドで緑川の頭を吹っ飛ばして緊急脱出させた。
「ナイス、伊佐」
「新型と連携して来ますね……。三雲くん、状況が変わった。さっさと逃げて」
通信してそう指示した。だが、
『無理だ!こっちも白髪の黒トリガーに囲まれた!』
「はぁ⁉︎」
声を上げたのは出水だ。
「白髪……?もしかして、杖を持った爺さん?」
『そうだ』
「そいつはさっき烏丸さんと木崎さんと戦ってた奴だよ。気を付けて、そこにいるってことはあの二人を……」
『落ち着け、二人とも』
そこで、レイジの声が割り込んできた。
『俺たちはやられていない。逃げられただけだ。今から全速力でそちらに向かう、修は遊真と協力して持ち堪えろ。黒トリガーの情報は宇佐美から聞け』
その声に、伊佐も修も「了解」と短く答えた。
「さて、伊佐。やるぞ」
「米屋さん、出水さん。偉そうにするつもりはありませんが、俺に従ってください」
「はぁ?」
「何言ってんだ。こんな時に」
「この前の黒トリガー争奪戦の嵐山隊の指揮を取ってたのは俺です」
「「………!」」
「お願いします。力を貸してください」
「ああ、分かった」
「アレをやる側になるのか俺たちは。少し楽しみじゃねぇか」
3人は構えた。そして、内部通信に切り替える。
『まずは、敵のデータを集めます、俺が突撃するのでお二人は援護お願いします』
『『了解』』
戦闘開始だ。