(ここでラービットを三体も投入してくるって事は……こいつらの狙いはC級隊員か!)
そう分析しながら、伊佐は距離を取った。直後、ラービットは三体掛かりで伊佐に襲い掛かる。
(やべっ、泣きそっ)
割と本気でそう思いながらも、伊佐は本部に通信した。
「度々すみません、玉狛の伊佐ですぅ」
『どうした?というか、口調』
「あの、俺軽くテンパると口調がおどけるのが癖でして…って、そんなのはどーでもいいやな。敵の狙いはおそらくC級隊員です」
『根拠は?』
「目の前に新型が3匹います」
『! 了解した』
直後、一体のラービットが飛んで伊佐に向かい、一気に距離を詰めた。伊佐は地面に手をついた。
「エスクード」
直後、地面から盾が出て、下からラービットの腹を打った。空中に舞い上がったラービットの口の中を、アステロイドをぶっ放しながらスコーピオンで斬り裂いた。その伊佐に別のラービットが殴り掛かる。
それを、殺したラービットの背中を盾にしてガードしたが、一緒に殴り飛ばされた。
「………ッ‼︎」
そこを追撃する3体目のラービット。殴り掛かって来たが、それもラービットの死骸でガードする。
(意外と便利だな……!)
そして、自分の方を向いてる腹にスコーピオンで貫通させて、外側のラービットにも突き刺すと、壁に固定させた。
(これで、あと1匹……!)
そう思って次の1匹に備えようとした時、ドスッと腹に衝撃が走った。
「ッ⁉︎」
黒いブレードが刺さっていた。死骸の奥にいるラービットの腕が、液状化してブレードになっていた。
(ロギアかよ……!)
慌てて腹を抑えながら後退しようとしたが、もう1匹のラービットが追撃して来ている。
自分の持ってるトリガーは、前と少し変更してある。それを踏まえて頭を高速で巡らせた。
(………エスクードで1匹目みたいに顎を打ち上げるか?いや、一度見せた技をもう一度使うなんて見切られるに決まってる。メテオラでカウンターを狙うか?あの速度で迫って来てる奴に撃っても、当たった頃には自分の眼の前で爆発して俺も死ぬ。建物を壊して瓦礫で道を塞ぐか?バカ、ここは警戒区域外だ。そんなこと出来るか。スパイダーでバリゲードを貼るか?ワイヤーだけで防げる相手じゃないし、流石にこの短時間でバリゲードは無理だ。スコーピオンで一騎打ちか?格闘で正面から勝てるか。アステロイドでも止められそうにない、バイパーでも同じだ。バッグワームじゃどうしようもない。………どうする、どうするどうするどうする!)
頭の中で考えを巡らせた結果、普通にエスクードで守れば良くね?となって、盾を出そうとした時だ。自分の真横を何かが通り過ぎた。それがラービットに直撃し、体半分を消し飛ばした。
「っ⁉︎」
振り返ると、千佳がアイビスを構えていて、その横には修が立っていた。
「無事か!伊佐!」
「! 三雲くん⁉︎何てことしてんだよ!」
「お前一人でラービット三体も防げるかよ!」
「バッカ野郎!そうじゃねぇ!敵はこの様子を見てんだ!今のバカでかい威力のトリオン量を見たら、敵に狙われるだろうが!」
そう言った直後だ。さらに新たな門が二つ開く。出て来たのは、人型近界民だった。
「! 人型………⁉︎」
「ったく……なんで俺ばっかこんな面倒臭ェのが来るんだよ!」
珍しく、伊佐が悪態をついた。その様子を見て、出てきたヴィザとヒュースが口を開いた。
「いやはや、子供をさらうのはいささか気が重いですな」
「これが我々の任務です。ヴィザ翁」
修が本部に通信する。
「こちら三雲と伊佐!人型近界民発見しました!片方は角付きです!」
『角付き……?了解した!もう少しだけ持ちこたえてくれ!今、ボーダー最強の部隊がそっちに向かっている』
「ボーダー最強の部隊……?」
「了解」
伊佐は修に言った。
「三雲くん、奴らの狙いは十中八九雨取さんだ。僕がその最強の部隊が来るまで抑えるから、二人は逃げて」
「一人で抑えられるのか⁉︎」
「瞬殺されないように頑張るよ。最悪のケースは雨取さんが捕まることだ」
「…………わかった。気を付けろよ」
「あいあい」
退く修と、前に立ちはだかる伊佐。
「自分が目標を捕らえます。ヴィザ翁には援護をお願いしたい」
「よいでしょう。しかし目標も強力なトリオンの持ち主だという話だ。用心なさいヒュース殿」
「注意します。殺してしまわないように」
すると、ヒュースの周りに黒い鉄のようなものが生え、細かい破片のようなものはうき始める。
(………浮いてる?風に吹かれてるって様子でも無さそうだし、あの塊の方も地面に落ちないで形を保ってる。一つ一つにブースターが付いてるわけでもなさそうだし、どっちかっつーとくっ付いてる感じだ。あれは、)
断定は出来ないが、考えられる事を口にした。
「……磁力か?」
「!」
「ほっほっほっ……姿を見ただけでそこまで分析してしまうとは……中々落ち着いている」
「良かったよ、超電磁砲読んでて。同じようなことやってたからな」
そう言いながらも頭の中の分析は続く。
(しかし、本当に御坂と同じ原理で動いてるなら奴の能力は磁力というより電気のはずだ。つまり、中とって電磁石ってことだな)
雑に分析してると、ヒュースは鉄を固めて小さな矢を作り、飛ばした。エスクードを出して、伊佐はガードする。そして、横からアステロイドで反撃した。
その弾丸をデカイ盾がガードし弾き、空中に浮いてる破片に当たって帰って来た。
(なるほど……そんな事も出来るんだ。なら、)
アステロイドを敵の破片に向けて撃った。それが跳ね返り、ヒュースに向かう。
「!」
それを首だけ避けて回避した。
「も少し試すか」
さらに、メテオラを破片に向けて放った。それは跳ね返らずに爆発し、周囲の破片を破壊した。
「奴め……!」
「落ち着きなさい、ヒュース殿」
「ヴィザ翁……!」
「相手は自分からは攻めてこない。後ろの金の雛鳥を逃がすために、完全に受けに回るつもりだ。それでいて、こちらの武器を分析し、利用してくる頭もある。自分の身体能力を使わずにここまで対抗して来る、強敵ですよ」
「…………」
「ですが、こう読むこともできる。敵は、元々身体能力が低い」
「!」
「それに、こちらは二人。後ろのラービットを合わせれば3人。数の上では有利です。そこで崩すとしましょう」
そう言う通り、串刺しにされていたラービットが脱出し、二人の後ろに着いた。
その直後だ。そのラービットが真っ二つになった。
「「っ⁉︎」」
「⁉︎」
ヒュースを後ろから斬ろうと、誰かが迫った。
「!」
それをカバーするヴィザ翁。
「!」
「小南さん……!」
伊佐が安堵したような声を漏らす。
「ヴィザ翁!」
援護しようとしたヒュースの顔面に拳が直撃した。
「ッ⁉︎」
「遅くなったな、伊佐」
伊佐の隣に烏丸が来た。
「木崎さん……烏丸さん……。助かりました」
「こいつらは俺たちがやる。お前は修を援護しろ」
「了解です。あ、俺の推測ですが、あの角付きのトリガーの仕組みは、おそらく電磁石です。弾丸が跳ね返されます。おっさんの方は分かりません」
「分かった。ご苦労だったな」
それだけ言って、伊佐は修たちを追い掛けた。
*
基地南部。人型近界民のランバネインが降り立った。
「んー?二人だけか?拍子抜けだな」
「ひ、人型近界民⁉︎」
「距離を取れ太一。この間合いはまずい、退がって警戒区域に誘い込むぞ」
別役太一と東春秋の前に現れた。
*
基地東部。
「チッ、ガキばっかかよ。ハズレだな」
「うわあ、人型来ましたよ、風間さん」
「ああ、しかも黒い角、俺たちは当たりのようだ」
風間隊の前にエネドラが降りてきた。