イルガーが思いっきり本部に直撃した。ドッと爆発したものの、本部はなんとか堪えていた。だが、それでも二体迫って来ている。
だが、片方のイルガーはバラバラになった。そして、残り1匹となったイルガーが本部に当たった。
「基地は大丈夫だ!太刀川さんが爆撃型を堕とした!」
「タチカワさん?迅さんのライバルだった人か」
「A級一位の……!」
すると、ようやく通信が復帰した。
『嵐山隊、通信が乱れてすまなかった。新型を仕留めたということだ?』
「いえ、仕留めたのは伊佐賢介です」
『伊佐くんか』
「それに、空閑・三雲両隊員もすでに交戦中でした」
『なるほど、先ほどの「人型近界民」というのは遊真くんのことだな?』
すると、修が声を出した。
「忍田本部長!玉狛支部の三雲です!僕達をC級隊員の援護に向かわせてください!」
『C級隊員の?』
「避難が進んでる地区の防衛は後に回されると聞きました!その地区にはぼくたちのチームメイトがいます!」
『そうか……よしわかった。玉狛の隊員は別行動で……」
『待て』
そこで、城戸の声が挟まってきた。
『C級の援護に向かうのは三雲隊員と伊佐隊員だけだ。空閑隊員には残ってもらおう』
「え……⁉︎」
『空閑隊員が黒トリガーで戦えば、茶野隊が適敵性近界民と誤認したように、隊員と市民に大きな混乱をもたらす危険性がある。それに、新型に対抗できる黒トリガーを遊ばせておくわけにもいかない。黒トリガーの独断での使用は、非常時ゆえ特別に許そう。だが、こちらの指揮には従ってもらう』
「黒トリガー使わなかったらオサムについて行っていいの?」
『無意味な仮定だな。ことを望めばお前は必ず黒トリガーを使う。そういう人間だ』
「………」
『お前は父親に似ている』
「……………」
「ほーい。了解です。三雲くん、行くよ」
伊佐が平気な顔で言うと、全員「空気読めよ……」みたいな顔をした。
「……でも伊佐!」
「仕方ないよ。俺と修しかいない。俺じゃ力不足かもしれないけど、こう見えて空閑くんと引き分けてるんだからさ」
「そうだ、行けオサム」
遊真にも言われ、修は覚悟を決めた。
「分かった」
「じゃあ、頼むぞ三雲くん、伊佐くん」
「はい!」
「あの、嵐山さん」
「? どうした、伊佐くん」
「ハルちゃんは、どこにいますか?」
「綾辻は学校だ」
「………そうですか。じゃ、行ってきます」
修と伊佐は援護に向かった。
*
移動中。街はトリオン兵で溢れていた。
「そこらじゅう、トリオン兵だらけだ……!」
「…………」
「どうした?伊佐」
「なぁ、レプリカはいるよね」
『呼んだか?』
「思ったんだけどさ、トリオン兵一体一体にトリオンが使われてるんだよね」
『そうだ』
「他のトリオン兵に比べて、ラービットは高性能過ぎる。おそらく、倍以上のトリオンが使われているはずだ」
『その通り、私もさっきのラービットを解析してみたが、相当の量のトリオンが使われていた。こちらの世界にこれほどのトリオンを注ぎ込めば、本国の備えが手薄になる』
「しかも、それを集中させずに分散して使っている。捕獲があるとはいえ、ラッドを使ってまでの調査をしていたのに、そんなことを見落とすかな」
『四方へのトリオン兵の分散侵攻、ラービットによる隊員の捕獲、本部基地への爆撃、それらの陰に、敵の真の目的が隠されている』
「『真の目的』?基地の爆撃も見せかけだったって言うのか?」
「そりゃそうだよ。あと一歩で落とせたのは明白だ。それを三発でやめた。本気で潰すためなら、ラービットを一体減らしてその分で拠点を潰した方がいい」
「じゃあ、敵は一体……!」
「そこで、別の目的を考えてみる。四方へのトリオン兵の分散はラービットを各地に運ぶため、ラービットによる隊員の捕獲は隊員の分散、本部基地への爆撃は、ギリギリ落ちるか落ちないかの寸止めで止めたのは、内部の人間を避難させて、人をあぶり出させるため」
「あぶり出させてどうするんだ?」
「指揮の一時的妨害か、あるいは……基地の中の人間の捕獲」
「それって……」
「追い付いたよ」
伊佐が睨んだ先には、ラービットがいた。そいつの口から砲撃が出て、街を思いっきり吹き飛ばした。
さらに二発目を放とうとした時、その口の中にメテオラが迫ったので、ラービットは慌てて口を塞いだ。直後、爆発したが、傷はほとんどついていない。
「! 正隊員だ!助けが来たんだ!」
C級が騒ぐ中、修と伊佐はラービットの前に立ち塞がった。直後、街をぶち壊してモールモッドが来た。
「三雲くん、モールモッドを仕留めてからC級、一般人をを連れて避難。俺はこの新型を足止めする」
「一人で新型とやる気か⁉︎」
「それが最善だよ。いい?モールモッドを倒したら俺を置いて先に行って」
「本気か!そんな事したら……!」
「このラービットには、遠距離攻撃がある」
「!」
「少しでも遠くに離れるんだ」
「………分かった」
修はモールモッドの方へ向かった。落ち着いてラービットと早退する伊佐。
「さて、どうしたもんかね……」
と、言ってる間に殴りかかって来るラービット。その一撃を落ち着いて伊佐は躱して、背後を取った。
(メテオラの直撃を受けても傷がほとんどつかない装甲に、地面を破るほどの攻撃力……18メートルのデストロイガンダムみたいなもんか。まだデータが足りない。初見の相手の時は、慎重になり過ぎても損はない)
そう思いながら、後ろに退きつつ、アステロイドを放つ。ラービットは伊佐に突撃した。伊佐はスパイダーを使って空中に逃げる。殴る目標が消えたラービットはバランスを崩して家に突っ込んだ。
「うわやっべ……」
口に手を抑えながら地面に手を付いて着地する伊佐。距離をとろうと2歩退がった所で、ガラガラッとラービットがバラバラになった家から顔を出した。そして、伊佐に向かって殴り掛かった。
だが、
「はいおしまい」
ラービットの足元で爆発が起きた。伊佐の仕掛けたメテオラが起爆し、ラービットはひっくり返った。その隙に、スコーピオンで脚を切断。
「やっぱり、あれだけのスピードがあるのに、脚に装甲が付いてるわけがない」
そして、最後に口の中にアステロイドをブチ込んだ。
「……えーっと、本部?伊佐です。ラービットを1匹倒しました。新型は脚が脆いっぽいです。スコーピオンでバラせます。あと、黒というか……グレー?のラービットは口から砲撃が出ます。以上」
『了解、報告ご苦労』
短い忍田の返答を聞いたあと、伊佐は修に連絡した。
「三雲くん?」
『伊佐!無事か?』
「うん。三雲くんは?」
『モールモッドを倒してC級と一般人を連れて逃げてる最中だ。そっちは?』
「ラービットは倒したよ。だから安心して逃げて……」
と、言いかけた直後だ。倒したラービットから出てきたラッドが門を開いた。そして、新たに色の違うラービットが3匹出て来た。
「………前言撤回。超逃げて」
嫌な汗が伊佐から流れ落ちた。