俺が綾辻さんの彼氏か   作:杉山杉崎杉田

17 / 43
第17話

 

 

急に決まった修vs風間。遊真と伊佐を除くC級は、時枝によってラウンジに向かった。

 

「今のお前じゃ勝てないぞ」

 

「分かってます」

 

「無理はするなよ」

 

「はい!」

 

烏丸に言われ、威勢良く返事をすると、風間と一緒に修は訓練室に入った。

 

『模擬戦開始』

 

(風間さんの武器はスコーピオン。それも二刀流、間違いなくアタッカーだ。この場合は距離をとって射撃で……)

 

修がレイガストを盾にしつつ、アステロイドを手元に出して下がろうとすると、風間の姿が消えた。

 

「⁉︎」

 

その直後、正面からスコーピオンを刺された。

 

「な………‼︎」

 

『トリオン供給機関破壊、三雲ダウン』

 

その後も、何度か戦うが、カメレオンによってボッゴボコにされていく。

 

「姿を消すトリガーか……。ボーダーには面白いトリガーがあるな」

 

「『カメレオン』。トリオンを消費して風景に溶け込む隠密トリガーだ」

 

「ふーむ……。俺ならどう戦うかな……」

 

烏丸と遊真が話しながら観戦する。

 

「うーわ……俺、風間さんと個人戦したくない」

 

「まぁ、伊佐には相性悪いだろうな」

 

そんな会話をしてる間にも、修は何回も死んでいく。

 

「烏丸先輩」

 

すると、木虎が声をかけてきた。

 

「どうした?」

 

「もうやめさせてください。見るに堪えません」

 

「キトラ」

 

「三雲くんがA級と戦うなんて早すぎます。勝ち目はゼロです」

 

「なんだ、修の心配か?」

 

「なっ……ちがいます!」

 

「オサムだって別に今すぐ勝てるとは思ってないだろ。先のこと考えて経験を積んでんだよ」

 

「『ダメで元々』『負けても経験』、いかにも三流の考えそうなことね。勝つつもりでやらなきゃ勝つための経験は積めないわ」

 

言うと、遊真と烏丸は少し目を見開いく。

 

「なるほど……」

 

「お前いいこと言うな」

 

「いえ、それほどでも……」

 

烏丸に褒められ、顔を赤くして咳払いする木虎。

 

「しかしまあ、いつ終わるかは始めた二人次第だからなあ」

 

だが、ちょうどそのタイミングで風間がスコーピオンを引っ込めた。

 

「お、終わったっぽいよ」

 

中では、風間が倒れて息を乱してる修を見下ろして言った。

 

「……もういい。ここまでだ。時間を取らせたな」

 

「ありがとう、ございまし、た……」

 

「……迅め。やはり理解できない……黒トリガーを手放すほどのことなのか……」

 

「え……⁉︎黒トリガーを……⁉︎」

 

「……? なんだ、知らないのか?」

 

聞き捨てならない、と言った様子で修が聞くと、風間は親指で外の遊真を指しながら説明した。

 

「迅はあいつをボーダーに入隊させるのと引き換えに、自分の黒トリガーを本部に献上した。お前たちの部隊を本部のランク戦に参加させるためだそうだ」

 

(迅さんが……僕たちのために黒トリガーを……⁉︎)

 

膝の上のこぶしをギュッと握りしめ、修は帰ろうとする風間に言った。

 

「風間先輩、すみません」

 

「?」

 

「もうひと勝負、お願いします」

 

「………ほう」

 

風間はニヤリと微笑んだ。

 

 

「あれ?まだやるみたいだぞ?」

 

中の様子を見ていた遊真が声を上げた。

 

「なんで……⁉︎もう充分負けたでしょ……⁉︎」

 

「さぁ……なんか喋ってたっぽいけどな」

 

中の様子を、烏丸は黙って眺めていた。

 

 

頭の中で修は自分の武器を確認しながら、風間を睨んだ。

 

『ラスト一戦、開始!』

 

開始した直後、修の手から放たれたのは光の粒だった。

 

「………なるほど。超スローの散弾」

 

「風間さんは透明のままじゃ弾丸を防御できない。考えたな修」

 

伊佐、烏丸と呟いた。

 

「けど、カメレオンなしでも風間さんは強いぞ」

 

そう言った直後、風間はスコーピオンで散弾を切り落とす。そして、修に正面から突っ込んだ。

すると、修はレイガストを構えて、反対の手で大玉のアステロイドを出す。

 

(弾丸の壁で動きを制限して、大玉で迎え撃つつもり……⁉︎)

 

(やりたいことはわかるが、そう簡単には当たらないぞ。視線で狙いが丸わかりだ)

 

風間がそう思いながらどう対処するか決めてる時だ。

 

「スラスターON‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

修のシールド突撃で風間に一気に間合いを詰める。

 

「シールド!」

 

ばら撒かれた散弾を防ぐため、風間は背中にシールドを張った。壁に追い込まれた。

 

「ッ」

 

スコーピオンで修に反撃するが、レイガストの盾モードで壁に閉じ込められる。

 

「っ‼︎」

 

そして、風間の顔の目の前に穴が空いた。

 

「アステロイド」

 

(ここで、ゼロ距離射撃か……‼︎)

 

レイガストに閉じ込められた小さな空間が大きく光を放った。

舞い上がった煙が晴れ、決着が露わになる。だが、修の首にスコーピオンが突き刺さっていた。

 

『伝達系切断、三雲ダウン』

 

(作戦はこれ以上ないくらいうまくいったのに……!)

 

ガクッと膝をつく修。

それを見て、木虎が呟いた。

 

「惜しかったわね……」

 

「いや、そうでもないよ」

 

遊真の言った通り、ドサッと腕が落ちる音がした。煙が完全に晴れ、出てきたのは体の左半分を失った風間だった。

 

『‼︎ トリオン漏出過多!風間ダウン‼︎』

 

「え……それじゃあ……」

 

「最後は相打ち、引き分けだ」

 

風間がそう言った直後、周りから声にならない歓声が上がった。

 

『模擬戦終了』

 

その声と共に、風間と修が訓練室から出てきた。

 

「風間さんと引き分けるなんて……!」

 

「勝ってないけど、大金星だな」

 

「オサム、やったじゃん」

 

「やった……のかな?」

 

パンッと手をあわせる修と遊真。

 

「うちの弟子がお世話になりました」

 

「烏丸……そうか、お前の弟子か。最後の戦法はお前の入れ知恵か?」

 

「いえ、俺が教えたのは基礎のトリオン分割と射撃だけです、あとは全部あいつ自身のアイデアですよ」

 

「……」

 

「どうでした?うちの三雲は」

 

「はっきり言って、弱いな。トリオンも身体能力もギリギリのレベルだ。迅が押すほどの素質は感じない」

 

「……………」

 

「だが、自分の弱さをよく自覚していて、それゆえの発想と相手を読む頭がある」

 

「!」

 

「知恵と工夫を使う戦い方は、俺は嫌いじゃない」

 

そう言うと、風間は修に背中を向けた。

 

「邪魔したな、三雲」

 

風間はどこかに行ってしまった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。