俺が綾辻さんの彼氏か   作:杉山杉崎杉田

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第15話

 

 

太刀川隊作戦室に、またノックの音が響いた。

 

「今度は誰だね……」

 

唯我がドアを開けると、目の前にいたのは綾辻だった。

 

「! あ、あやっ、綾辻先輩⁉︎僕に何か御用ですか⁉︎」

 

「あんたじゃない!ケンくんいる⁉︎」

 

質問した割に、唯我の横を通り抜けて作戦室の中へ。そして、目に飛び込んできたのは、

 

「うがぁああ!」

 

「おーい国近落ち着け〜」

 

「え、えげつねぇ……」

 

伊佐に跨ってる国近を止める太刀川と、ゲームの画面を引き気味に見てる出水だった。

 

「………何これ」

 

「あっ、綾辻。お前も国近止めてくれ」

 

「は、はいっ」

 

そのまま国近を落ち着かせること10分。ひっひっふーと息を整える国近を抑えながら綾辻が聞いた。

 

「で、どういう状況ですかこれ?いや、大体察しはつくけど」

 

「思ってる通りだよ」

 

出水に言われ、納得してしまう綾辻。ようは、ゲームで伊佐にフルボッコにされた国近が泣きながら逆ギレしたのだろう。

フゥーッフゥーッと猫の威嚇みたいな息をする国近に、伊佐が言った。

 

「まぁ、落ち着いて下さい」

 

「煽るな!」

 

「いや違うからハルちゃん。少しは俺のこと信用しろよ」

 

「出来ないよ!事ゲームに関しては!」

 

「今回は違うよ。これならまだハルちゃんの方が強いって言おうとしただけ……」

 

「それを煽るって言うんだよ!」

 

直後、ギョロン!と国近は綾辻を見た。

 

「な、なんですか……?」

 

「………綾辻ちゃん、強いの?」

 

「ま、まぁ……いつもケンくんとゲームしてますから。他の人とやったことないので分かりませんけど……」

 

「勝負!」

 

「な、なんでですかあ⁉︎大体、私まだ仕事が……!」

 

「いいから!」

 

で、国近と綾辻がゲーム開始。その様子を後ろで見ながら伊佐はホッと胸を撫で下ろしつつ、椅子に座り込んだ。

 

「ふぅ……」

 

「お前、今わざと綾辻の方に仕向けたろ」

 

出水に言われて、「うん」と答える伊佐。

 

「意外と黒いのな……。まぁいいや。それよりさ、おまえ一応新人なんだろ?」

 

「は、はい。そうですけど……」

 

「なら、こんな所でゲームしてていいのか?」

 

「はい?」

 

「スカウトだろうがなんだろうが、正式入隊日には出なきゃいけないんだぜ?」

 

「………えっ?」

 

「正式入隊日には訓練とかもあるから、今のうちにトリガーに慣れといたほうがいいんじゃ」

 

「帰ります」

 

「おーう、また来いよー」

 

速攻で出て行った。

 

 

玉狛支部に到着。

 

「遅かったな」

 

出迎えたのは、たまたまいたレイジだった。

 

「いや、あの……色々あって本部にいまして……」

 

「まぁいい。それより、お前も仮想訓練室を使え。正式入隊日にはお前も仮想訓練をするんだ」

 

「あの、俺に師匠は付かないんですかね」

 

「さぁ……?」

 

仕方なさそうに伊佐は一人で特訓した。

 

 

数日後。正式入隊日となった。

 

「さぁ、いよいよスタートだ」

 

遊真が拳をポキポキと鳴らしながら言った。

 

「ふー……なんだか緊張してきた……」

 

「なんでだよ、オサムはもう入隊してるじゃん」

 

「よし……確認するぞ。C級隊員の空閑と千佳はB級を目指す」

 

「俺たちがB級に上がったら、3人で隊を組んでA級を目指す」

 

「A級になったら遠征部隊の選抜試験を受けて……」

 

「近界民の世界に、さらわれた兄さんと友達を捜しに行く!」

 

「あの、いつの間にそんな話に……?」

 

「よし……!今日がその第一歩だ」

 

伊佐のことなど無視して修がそう言った。

 

(………あれっ?ってことは、俺って玉狛でボッチなんじゃ……いや、迅さんもボッチだし大丈夫のはず……)

 

すると、忍田が壇上に上がった。

 

「ボーダー本部長、忍田真史だ。君たちの入隊を歓迎する。君たちは本日、C級隊員……つまり、訓練生として入隊するが、三門市の、そして人類の未来は君たちの双肩に掛かっている。日々研鑽し、正隊員を目指してほしい」

 

そして、最後に敬礼をして言った。

 

「君たちとともに戦える日を待っている。私からは以上だ。この先の説明は嵐山隊に一任する」

 

そう言った通り、壇上には嵐山隊の嵐山、木虎、佐鳥、時枝が並んだ。

 

「嵐山隊……!本物だ!」

 

「嵐山さん!」

 

「相変わらず人気だなぁ、あの人たち」

 

伊佐が呟くと、遊真も「うんうん」と言った感じで頷く。すると、隣のC級隊員が呟いた。

 

「あーあー喜んじゃって……」

 

「素人は簡単でいいねぇ」

 

「? なぁ、それどういう意味?」

 

それに遊真が食いついた。

 

「なんだこいつ」

 

「頭白っ」

 

「無知な人間は踊らされやすいって意味さ。嵐山隊は宣伝用に顔で選ばれた奴らだから、実際の実力はたいしたことないマスコット隊なんだよ」

 

「?」

 

「ボーダーの裏事情を知ってる人間にとってはこんなの常識」

 

「知らなくても、ちゃんと見てれば見抜けるしな」

 

「本気かこいつら……?」

 

伊佐が呟いた。少なくとも、伊佐の指示に従っていたとはいえ、三輪と米屋と出水と当真を撃退したのだから、実力が大したことないなんて事はない。

さてはパソコン弄って変なのに踊らされたな……と、思ってると、嵐山が説明を始めた。

 

「さて、これから入隊指導を始めるが、まずはポジションごとに分かれてもらう。攻撃手と銃手を志望する者はここに残り、狙撃手を志望する者は、うちの佐鳥について訓練場に移動してくれ」

 

そんなわけで、千佳は佐鳥の方へ行き、遊真と修と伊佐は残った。

 

「改めて、攻撃手組と銃手組を担当する、嵐山隊の嵐山准だ。まずは、入隊おめでとう。忍田本部長もさっき言っていたが、君たちは訓練生だ。B級に昇格して正隊員にならなければ、防衛任務には就けない。じゃあどうすれば正隊員になれるのか、それを説明する」

 

と、説明を始めた辺りで、伊佐は少しその場を離れ、暇そうにしてる木虎の裾を引っ張った。

 

「? 伊佐くん?どうしたの?」

 

「ハルちゃんは何処ですか?」

 

「綾辻先輩はオペレーターだからいないわよ。あと、同い年なんだからタメ口で構わないわよ」

 

「なぁんだ……帰ろっかな」

 

「いや、あんた何しに来たのよ」

 

「あ、あと、俺ってスカウトされたんだけど……C級スタートなの?」

 

「スカウトされても免除されるのは面接と学力試験と体力試験だけで、訓練生にはなってもらうわよ。当たり前でしょ?訓練も無しにあなた戦えるの?」

 

「………なるほど」

 

「それより話聞いてなさいよ」

 

「いいよ、あとで三雲くんに聞くから」

 

「………そう。でも、意外ね」

 

「何がですか?」

 

「私はあなたはオペレーターだと思ってたわ」

 

「あのときは迅さんに頼まれてたから」

 

「ふぅん……まぁいいけど。それより、あなたは何を選んだの?」

 

「? 何って?」

 

「トリガー。やっぱりスコーピオンか孤月?」

 

「いや、アステロイドだけど」

 

「ふぅん、射撃が好きなんだ」

 

「近距離が嫌いなだけだよ」

 

すると、嵐山が動き出し、C級の群れもその後に続く。

 

「あ、行かないと」

 

一番後ろを歩いてると、木虎は続いて修に声を掛けた。

 

「三雲くん」

 

「! 木虎」

 

「なんであなたがここにいるの?B級になったんでしょ?」

 

「転属の手続きと空閑と伊佐の付き添いだよ」

 

すると、遊真も木虎に手を振った。

 

「おっ、キトラ。久しぶり。おれ、ボーダーに入ったからよろしくな」

 

「………まさか、こいつが迅さんの言う近界民だったなんてね」

 

隣の伊佐に木虎が言った。

 

「いい奴だよ。空閑くんがいなかったら、モールモッドもバンダーも倒せなかった」

 

「あなた、バンダーも倒したの?」

 

「いや、あれは倒したというより時間稼ぎをしただけかな」

 

「……………」

 

そんな話をしてる間に、仮想訓練室に到着した。今回戦うのはバムスターだ。五分以内に倒せ、とのことだった。

 

「バムスターっていうのは、まだ戦ったことないな」

 

「生身でトリオン兵と戦ったことあるのがおかしいのよ」

 

もっともだった。

 

 


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