博麗の神主?夢だろただの   作:ぬんちゃくティッシュ

34 / 39
※今回のトークは割愛!


初の依頼は一筋ではあらず

 

───幻想郷、人里───

 

─side 風籟寺グラン─

 

つい最近まで博麗の神主だったのを引退して、人里にてよろず屋にを開くことになったグランは、人里の中心外れにポツンと店を構え、依頼を待っているところだが、開店祝いとしてなのか霊夢と魔理沙が遊びに来ていた。

なぜよろず屋を始めようかと思ったか、話すと長くなるが、話が拗れる可能性があるために話しておこう。

元々、幻想郷には博麗の巫女がいて、その巫女が自堕落な物だから補強材として連れてこられたのが俺だ。そして色々霊夢と接して博麗はかなり強大なものとなり、幻想郷のパワーバランスが崩れるのも時間の問題だったのだ。そこでだ。俺が博麗の名を下ろし、よろず屋として、一般の幻想郷住民として生活するならばパワーバランスは安定し、今一度博麗は均衡を保たれている。

自堕落だった霊夢も俺と接することでかなり更正できたらしく、紫も霊夢に任せることに心配をしなくなったという。俺としては少し寂しい気もするが、これが霊夢のためというなら仕方があるまい。

 

そうこう祝われて、無事によろず屋『風籟』がオープン。実際によろず屋ってどういう事をするのか?大体は依頼主に雇われる事だ。つまりは何でもやりますよ屋…と言うこと。

一般なよろず屋としては、人里外れに香霖堂があるが、あれば依頼されて動く物ではなく、幻想郷でも珍しいものを売ることでよろず屋の看板を掲げている。ウチとしては商品は物品ではなく俺の労力が金となるのだ。

 

大体の店の概要が説明出来たところで、1つ言わせてもらおう。

 

「店の片付けくらいして帰ってくれよ!」

 

開店祝いとして小さな宴が開かれたのだが、片付けもせず霊夢と魔理沙は帰っていきやがった!初っぱなからこれとは…先が思いやられる…。

 

 

 

やっと片付けが終わった…思ってた以上にアイツら店内汚して帰っていきやがって…今度神社に行ったら暴れてやる…!

はぁ…まぁ無事によろず屋を始められたのもあの二人のお陰でもあるし、不問としてやろうか。あとは記念すべきお客様第1号を待つのみだ!

 

 

 

『ガラガラガラ…』

 

ん?お客さんかな?

 

「ごめんください。あら、本当にやってるのね」

 

「その件、春雪異変の時もあったよな…咲夜、どうした?依頼か?」

 

店を開いて一番最初に来たのは紅魔館のメイド長、咲夜であった。どうやら一人できたようだが。

 

「いえ、依頼じゃないわ。お嬢様があなたが店を開いたのが本当なのかを知りたいそうで、こうやって様子を見に来ただけよ」

 

「なんだ客じゃねぇのか?気を使って損したぜ」

 

「あれで気を使ってたの?思いっきりタメだったじゃない」

 

「客に敬語は使わない主義なんでね。ささ、依頼じゃないんなら営業妨害になる前に帰った帰った」

 

「ひっどーい!一応これでも客なのよ!」

 

さっきは客じゃないって言ってたじゃねぇかよ…依頼がないんなら本当にお引き取り願いたいんだけどなぁ…。

 

「ごめんください、ここなら何でも依頼を受けてくれるって聞いたんですけど…」

 

「お、いらっしゃい!見ろ、これが正しい客だ。分かったら冷やかしは帰ってくんな」

 

「まぁ…分かったわよ。お嬢様の命令は遂行できたわけだし。また来るわ」

 

また来るのか…出来る限りはこれっきりにしていただきたいんだがな…。依頼があるならいくらだって相手してやるが冷やかしはやめていただきたいもんだ。言うなれば博麗神社に賽銭入れに来たんだと思いきや鐘鳴らすだけで帰っていく参拝客を見た霊夢のような感情だな。

 

「ったく、待たせたね。…んで、依頼だったね」

 

改まってお客の方に顔を向ける。さっきは咲夜がいて気にしてなかったけど、ご来店したのはまだ幼さを感じる少女だった。まさか第1号が子供になるとはな…。

 

「はい…実はお願いがあって…」

 

─少女説明中─

 

「…と言うことなんです」

 

「なるほどねぇ…」

 

つまる話、このお客さんの依頼というのは、妖怪の山付近で友達と毬で遊んでいたとき、強く蹴りすぎて何処かに行ってしまったっきり分からないらしい。

…いやいや、っちょっと待て!

 

「するってぇと、お前さんは妖怪の山まで行ったのか?」

 

「えぇっと…ぅん…」

 

『ポカっ』

 

「あいたっ!」

 

俺は少女に対して軽く拳骨を一発下した。いきなり何をしているか疑問に思うだろうが、子供だけで妖怪が屯う所に行くと言うのはどれだけ危険なことなのか、よく考えれば分かることだ。

 

「あれだけ子供だけで妖怪の山に行くなって言ってるだろう。妹紅ら自警団とか博麗の巫女も注意を呼び掛けてるだろうが」

 

「ふぇーん…ごめんなさい…」

 

「分かれば良いんだ。今度からは気を付けて、他の場所で遊ぶんだぞ?毬は見つけてきてやるからさ。依頼はしっかり承ったぜ」

 

子供にはきちんと叱って分かったらきちんと優しく、特にお客さんである以上は教育も依頼のうちだ。もちろん、子供からお金を請求する事などするはずもない。当たり前の話だ。

ところで…今一度仕事内容を確認しよう。

依頼主は人里の少女。依頼は妖怪の山で無くしてしまった毬を探してほしいという至極簡単なもの。初めてのお客さんが随分楽な仕事というのも乙なものだな。

 

ただ…1つ問題がある。妖怪の山は名の通り、妖怪が住まう山。故に他の種族、言うなれば部外者の侵入をこれでもかと言うほど警戒しており、山の衛兵である白狼天狗が先頭に迎え撃ってくるはずだ。常に千里眼を持つ天狗の見張りにより隠れ進むのは無理だろうから、予めアポを取っていかないと厳しいだろうな…。

 

…とは言うけどさ、毬無くして探したいから山に入れて~っつって入れてくれるだろうか?恐らくだが無理だろうな。うぅむ…どうしたものか…。

 

「…悩んでも仕方がないか。博麗の神主だった俺に不可能はねぇ!」

 

 

───妖怪の山、見張り丘───

 

─side 射命丸文─

 

「……」

 

お、椛も真面目に見張りやってますねぇ。精が出ますね。私もネタがないかとウロウロしてたところですけど、収穫なしですねぇ。気晴らしに椛でも驚かしてあげましょうか…にひひ…。

 

「……(そろ~そろ~…)」

 

「何をやってるんですか?私をビックリさせようとしても無駄ですよ」

 

「あややや!気付いていたんですか!さすがは椛ですね」

 

「まったく、あなたも自分の仕事に就くことを…ん?侵入者です」

 

およ?こんなときに侵入者なんて珍しいですねぇ。アポが来てるわけでもありませんし、誰が来たんでしょうかね。

 

「侵入者は私が迎え撃ってきます。文さんは上へ報告をお願いします」

 

「分かりましたよ、気を付けてくださいね」

 

「ありがとうございます」

 

 

───妖怪の山、入り口付近───

 

─side 風籟寺グラン─

 

少女は大体入り口辺りみたく言ってたけど、結構な力で蹴ったんなら変な所に飛んでいった可能性があるな。これはくまなく探さなければならないかもな。まったく骨が折れる…。

 

「そこまでだ!」

 

「…?」

 

何だ?と言ってももう予想はついてたよ。白狼天狗のお出ましだ。幸い一人しか来なかったけど、天狗は結団性の塊だからな…すぐに応援が来るだろう。面倒な事になったぜ…。

 

「ここからは妖怪の山のテリトリーだ。部外者はお引き取り願おう」

 

「なぁ椛、そんな堅いこと言わんとさ、俺はただ探し物に来ただけであって決して荒しに来たわけじゃない」

 

「黙れ。いくら相手が元博麗の神主だろうと、承諾有るものでないなら早急に立ち去れ」

 

まったく相変わらずというか、お堅いねぇ。真面目なのはとても良いことなんだけど、これじゃいつまでたっても依頼が片付かねぇ。絶対失敗に終わりたくないからな。

 

「あややや、誰かと思えばグランさんじゃないですか」

 

上空から明るい声が聞こえる。ふと見上げるとそこには…。

 

「お、文、久しぶりだな。ちょっとお前からも頼むよ、よろず屋の仕事が片付かねぇんだ」

 

「…!(キラッ)よろず屋…ですか?」

 

「あぁ、博麗の神主を引退してよろず屋を始めたんだ」

 

「(ネタ来たー!)椛、このグランさんには私の監督の下で行動させます。それで文句ないですね?」

 

「は…何をいきなり…そもそも上への報告は…」

 

「大丈夫ですよ。私が保証します。椛はゆっくり休んでてください」

 

「…。まぁ良いでしょう。でも、少しでも不審なことをするとすぐに天狗を向かわせますからね」

 

「感謝します、椛」

 

おぉ、文の言うことを聞いたのか剣を仕舞って去っていった。たまには良いことやるじゃないかと感心したいのだが、目的は嫌でも分かってしまう。

 

「はぁ…一応礼を言うが、お前が恩を売るマネをしてるときは大体悪巧みしてるときだったりネタ欲しさだったりするよな」

 

「あややや!酷いじゃないですかグランさん。私ってそんなに信用ないんですか?清く正しい文々。新聞がそんな風上にも置けない精神なワケないじゃないですか~嫌だなぁ~」

 

「どうだか?まぁ俺は別に新聞のネタに使われても良いんだよ。ポジティブに考えれば良い宣伝になるしな。だけど仕事の邪魔だけはしないでくれよ?」

 

タダでさえ妖怪の山は広くて困るのにどこにあるかも分からない毬を一人で探すってんだから邪魔はごめんだ。

…ん?一人?いや、一人じゃねぇな。

 

「そうだ。ネタはやるから仕事手伝えよ」

 

「…え?」

 

「一人でやるよりは随分時間の短縮になるし、お前どうせ暇だろ?」

 

「えぇ…」

 

と言うことで文も快く手伝ってくれると言うので有り難い話だ。本当に持つものは友達ってやつだな。

手伝ってくれるに当たって文に探すものを説明すると、何か心当たりがあるらしく、この山の神社の巫女さんが信仰集めも兼ねて山麓の清掃に勤しんでいたところ、まだ新品のように綺麗な毬が捨てられていたから拾った…と言っていたらしい。恐らく…いや、確実にその巫女と言うのは守矢のアイツだろう。この山で神社を建てるなんて変わった考えを持った奴と言ったらアイツらしかいねぇ。行き先は固まったね。

 

 

───守矢神社───

 

 

「おーい!誰かいるか?」

 

……。返事がない…屍ではないようだ。

しかし本当に返答も何もない。依頼された以上はクリアする義務があるわけだが、こんなしょうもない所で躓いてしまうとは…どうしようか?

 

「なぁ文、本当に守矢が毬を拾ったのか?」

 

「確証がないんですよね。私は真実ではなく情報を集めるだけですから」

 

「それもそうか、無駄足だったな」

 

「あ、グランさん!」

 

帰ろうとしてお社に背を向けた瞬間に声をかけられた。この声は紛れもない、早苗だ。

 

「ん?なぜさっき返答がなかったんだ?」

 

「いやぁ…神奈子様と諏訪子様とで人生ゲームやってましてね。ちょうど私に子供ができて二人に借金したところで外から何か聞こえたんで、良いところを断つのはちょっと…と思いまして」

 

「あのなぁ…何で人生ゲームなんて生々しいゲームをこの幻想郷でするんだよ…。それに子供ができてって…ギリギリだよ。と言うか、普通に参拝客を無視しようとしてのな?」

 

「初めはそう思ってたんですけど、神奈子様がさすがに神社側としてどうなのか?と言うことで…」

 

「お前ら霊夢よりたち悪ぃな…。まぁ良いや。さっさと依頼を終わらせて帰ろう」

 

「そういえばグランさん、博麗の神主を引退してよろず屋を開いたんですよね?今度依頼に行きますよ!…で、要件は?」

 

「お前はメリハリが極端なんだよ…。…ダメだ、早苗さんのペースにはまりこんでる…苦手だわ…やはり。で、お前、毬を拾ったか?」

 

「毬をですか?」

 

「あぁ、人里の子供らが遊んでて無くしてしまったらしくてな。文情報でお前らが新品のような毬を拾ったとか」

 

「あぁ、アレならこれですよね?」

 

パッと早苗が手をかざすと毬がパッと現れた。便利なものだな…。

 

「おぉそれだ!たぶん」

 

「そうだったんですね。常識に囚われてはいけないと言う教訓のもと奇跡をこの毬に染み込ませたんですけど…」

 

「…お前は一体何がしたいんだ?まぁとにかく、そいつをあの子の元へ届ければ依頼クリアだな」

 

 

───人里、風籟───

 

「ほれ」

 

「わぁ!ありがとう!」

 

「今度からは妖怪の山近くで遊ぶんじゃないぞ。…と言うか、奇跡を染み込ませたって、どう言うことなんだ?」

 

「ん?どうしたのお兄さん?」

 

「いや…ちょっとその毬蹴ってみてくれ」

 

「え?…うん、こぅ?」

 

と女の子は軽く俺の方に蹴ったのだが、その毬は豪炎を纏ってシュートとして飛んできた!!ファイアトルネードだ!!トルネードしてないけど。

…ギリギリかわしたんだけど、後ろの木に激突し、凪ぎ倒れてしまった。

 

「ちょっと守矢に文句言ってくる!」

 

               終わり

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。