DARK SOULS The Encounter World【旧題:呼び出された世界にて】 作:キサラギ職員
もはや、猶予は無い。
呼び出されたものたちは霧の化け物と黒竜に立ち向かっていく。
Excellector
「なるほど……これは……匹敵するか……」
探求者は口から滲む血を手で拭うと、横で膝を付くハベルを見遣った。二人掛かりでもなお単純な力では押し負けているらしい。
探求者は霧に真っ先に潜った一人であった。竜を殺すという目的を持ったハベルと、この世界の為にと剣を振るう彼の目的は一致していたのだ。霧は二人にとって害毒にはならなかった。無数の亡者どもを切り抜けて街を探索していたのだ。
街は、もはや原型を失っていた。極東の土地で見られる木造建築の残骸があるかと思えば、地下墓地らしき構造物が広がっている。暗い塔が聳えたっているかと思えば、吹雪凍てつく土地まであった。距離や面積を無視してあらゆる世界が押し込められているとしか考えられなかった。
竜さえ殺してしまえば勝利が見えてくることは明らかだった。空を往く竜たちの額に植え付けられた赤い紋章は、一ツ目の黒竜の瞳と酷似していたからだ。この世界の住民が霧に対処できないというならば、自分達がやるのみだ。ハベルはうむと頷いて肯定した。人民の為に武器を振るうことは決して間違いではないと言い切れたからだろうか。
探求者の前に男がいる。屈強な肉体を薄い金の鎧で守った人物が。左手に握られるは円月刀の刃の部分のみを取り出し取っ手をすえ付けたような武器であった。リーチこそ剣には負けているというのに、男は苦も無く距離を無意味なものへと変えてしまうだけの実力があった。それこそ、探求者とハベルが二人で挑みかかっても一向に決定打を叩き込めないように。
男は両腕をだらりと下げた自然体で立っていた。
男の尋常ではない魔力で放たれる衝撃によって辺り一面の建物はことごとく崩落していた。大地はひび割れており、ひび割れの発生源はたった一人の男の足元へと収束していた。すなわち男が爆心地であると誰もが理解するだろう。
アースウェーブ。地属性魔術の一つ。もっとも男のそれは、魔術の作動と同時に大地を殴りつけ、発生する衝撃波に己の膂力を乗せるという独特なものだ。地さえ揺るがすほどの力を持った男を、探求者とハベルは知らなかった。これほどの戦士がいたならば名が伝わっていなければおかしいからだ。
二人が知らなくても当然のことだった。
探求者は両腕の武器を相手と同じようにだらりと下げた自然体の位置へと移動した。傍らでは膝をついていたハベルが腰を上げて武器を肩に背負いなおしていた。
彼我の距離は間合いではなかった。
左手に三日月の形状に似た武器を握った男がゆっくりと歩み始める。その額には赤い光が植えつけられていた。
探求者がエスト瓶を口にした。衝撃のあまりへしおれてしまっていた足の内部で骨がかちりと繋がった。
「……異世界の戦士か」
「だろうなあ……これほどのつわものがいたとはな、楽しくてたまらん」
ハベルが笑った。強者との戦いに焦がれた男の言葉らしさに探求者の口元が緩む。
二人の視線は、霧の中に輝く一振りの剣に注がれていた。霧の中でも霞むことのない圧倒的な輝きが、岩に突き刺さっていた。透き通った水晶でのみ構成された一振り。血の様に赤いルビーが鍔で輝いていた。およそ尋常ではない結晶の剣を守るようにして立つ男。間違いない。男が守る剣こそが、竜が隠し通したくてたまらなかったものなのだろう。隠し通したいものということは、竜にとって不都合な何かであることは明らかであった。
探求者は一振りを見ただけで、それが聖剣であるとすぐさま看破した。そしてその剣は己の見てきた剣に比肩するものがないことも。
――その剣は人の為に打たれ、人の為に振るわれた、最も貴き結晶の剣であった。
――その剣はとある王子の手によって担われた、英雄の剣であった。
――その剣は闇を晴らし平和を齎した神聖の象徴であった。
名を―――……エクセレクター。
ムーンライトソードとダークスレイヤーが輝きを失った後もなお残り続けた第三の聖剣。
大地の神により聖なる無垢の光を宿された唯一つの武器。
だからこそギーラはこの剣を隠す必要があったのだろう。剣の力は自らを破滅されるに足りていたからだ。
理由こそわからなくても、黒竜が剣を隠そうとしていることがわかれば十分だ。剣を奪い取り振るえば何かが起きるかもしれない。
そうとわかれば探求者の取るべき選択肢は一つであった。
「ハベル。俺の持てうる最大限の一撃を喰らわせる。所詮借り物だが――探求者にはふさわしいだろう?」
探求者は自嘲の笑みを漏らした。多くの英雄達と異なり、探求者は様々な装備を使い捨ててきた。そのために一つの道を究めることはなかった。ファーナム騎士として二刀流を極めたことは確かだが、名の残る究極の一を編み出せなかったのだ。
対するハベルは対極の位置にあった。グウィンの盟友であり、はじまりの戦いに参戦した古戦士。聖職者達がメイスを振るうのは、ひとえに彼の影響が大きい。名も伝わらぬ探求者とは正反対であった。
ハベルは振り返らずに頷いてみせた。
「借り物でも使い方次第だ」
「時間を稼いでくれ……頼んだぞ」
「任された」
戦士の間に言葉は少なかった。ハベルが岩の大盾を壁として男へとにじり寄る。
男――かつて教王を名乗った
ハベルが駆け出した。動きは遅く、けれど大地を揺らしつつ迫る。壁が男と距離をゼロとする前に、男の手が動いた。魔力の塊が数発放たれるとハベルの足元に着弾する。
爆発。壁のような盾がかすかに動揺したと同時に男が踏み込んでいた。
フラッシュ。光属性魔術の一つ。炸裂する弾頭を射出し、着弾点を破壊しつくす。その威力たるや尋常なものではなく、盾こそ破壊できなくとも地面にクレーターを穿つほどであった。
ハベルの装備はいずれも魔力を極めて通しにくい。更に奇跡で防護を高めれば一切の浸透を許さなくなるのだが――衝撃までは殺せない。
「―――ぬうぅんッ!」
ハベル必殺のなぎ払いが振りぬかれる。竜の牙をそのまま武器にした大重量が空間をなぎ払った。
男がそれに合わせ身を反らすことで紙一重でかわすと、一歩踏み込んでいた。盾目掛け単純な前蹴りが放たれる。壁が僅かに動じた隙を突き、盾の縁に手をかけて回り込まんとした。例え壁とて別方向からの攻撃には無意味だ。
されるかとばかりにハベルが身を引くと盾で殴りつけた。
男が左手の三日月で斬り下がった。
ハベルは男に後退を許したことを後悔した。男が再び地面へと拳を叩き付けたからだ。男を中核に衝撃波が拡散して石畳を波打たせながら吹き飛ばしていく。足元に到達するや直立も難しい程の振動が襲い掛かった。
「ぬおっ!?」
男が壁へと到達すると、強引に刃を叩き付けた。男の握る武器は射程こそ剣や槍に劣るが、ナックルのように驚異的な切り返しの速さを誇っていた。男の膂力が合成することで、まさに暴風怒涛の重い連続攻撃が構築されるのだ。盾の表面に無数の火花の道筋が走った。右薙ぎ左薙ぎ袈裟懸けの斜め上方への斬り付け。最後は男の腰を落とした身のあたりで締めくくられる。
ハベルが踏ん張っているにも拘らず、数歩分足先が後退させられていた。男とハベルの体格差は子供と大人に等しいというのに、ハベルが押されていたのだ。
「あぁ―――……戦士よ、名を聞けんのが残念だが――!」
反撃の一撃が男の顔面紙一重を舐め上げる。
ハベルが岩槌をまるで槍のように突き出すことで牽制し、一歩踏み込み大地を擦らせつつ下から上へ抜けるカチ上げを放っていた。男がかわせぬと悟ったか武器で応じ、空中でくるりと一回転して後退した。
「我から逃れられるなどと思うなよ――!」
ハベルが吼えた。盾を前にひたすら距離を詰めていく。
男が無感情に左手の武器を盾にぶちかます。
探求者は底無しの木箱から苦闘の末にそれを引き出していた。
底無しの木箱――すなわち貪欲者は富を持つものに対し特に反抗的になるのだという。多くの財宝を得てきた探求者と貪欲者はもはや敵対者に等しい仲であり、手を差し込んで武具を取り出すのも一苦労であった。
自らの二振りの得物を大地に突き刺し、正眼に構える。
歪に溶けた剣身。鍔も既に形状が歪み、優美な意匠は失われていた。身の丈もあろうかという武器を探求者は易々と担いでいた。重量はたいしたことが無いかもしれない。手の内にある武器はそれ以上に、歴史と思念による重みがあった。
それは自らの土地、自らの臣民、愛する者たちの為に振るわれた強い意志の力を宿した剣であった。
例え混沌に溶かされようとも、決して折れず、決して歪むことの無かった王の剣であった。
混沌の火に飲まれたエス・ロイエスを治めた白王の偉大なソウルがもたらした産物。
名も無い無銘の剣――探求者はこれを白王の特大剣と呼んでいた。
意思の力は、時に全てを変えてしまう。
白王は信念故に全てを犠牲にしてしまった。守るべき民の為に。
特大剣を地に突き刺すと、屈み込みタリスマンを握り祈りを捧げる。
探求者の足元に光の円が展開すると、全身を温かい輝きが包み込んでいく。太陽の王たる資格を蹴った男は同時に信仰に精通した戦士でもあった。なんという皮肉だろうか。太陽の恵みを拒絶した男が、太陽の光の恩恵に与るなど。
太陽の光の恵みと呼ばれる奇跡が探求者の体に栄誉ある輝きをもたらした。戦いで負った傷口が煙を上げて再生し始めた。伝っていた血液でさえ消えてなくなっていく。タリスマンを懐に仕舞い込むと、剣へ力を込め始める。
――あの男は恐ろしく強い。二人で挑みかかって力負けするくらいなのだ。大威力の一撃でなぎ払うほかに無い。
男が奇妙な装備を取り出した探求者目掛け攻撃を――仕掛けない。卓越した戦士であれば一人が足止めをし、一人が別の攻撃手段を用意しているならば、足止め役を強引にでも押しのけてもう一人へと攻撃するであろう。男は爆発する魔術を放てるはずというのに、全く手出しをしなかった。
探求者は自らの力を剣に注ぎ込み始めた。特大剣が俄かに沸き立つと白い靄のようなオーラを纏い、地面一体を凍結させ始めた。混沌の火を鎮めるは秩序の氷であったという。焼け焦げ灰の混じった氷が地面から男の手さえも凍らせていく。
「……ッ あ、はぁっ………」
探求者が苦痛に呻いた。握る手が凍傷を負い壊死していく速度と、回復する速度が拮抗していた。骨まで凍らせんとする力と、太陽の温かさを同時に味わっていたのだ。
男――ダイアス・バジルの視線が探求者の背後に向けられていた。
「ぐっ」
探求者は突如として放たれた矢雨に背中と腕を刺され苦悶の音を漏らしていた。
気が付けば白い仮面を被った暗殺者風貌が瓦礫の合間に現れているではないか。皆一様に武器を握っていた。あるものは矢を。あるものはシミターを。あるものは槍を。霧に飲まれたのか、召喚された後も本来の仕事をこなそうとしているのか。いずれにせよ男が動かなかった理由がはっきりした。総勢数十人が探求者を囲んでいた。
振り返った探求者の胸元に矢が突き刺さった。今度は息も乱さない。矢を折り捨てて自らの二振りを地から引き抜いた。そして挑発するかのように首を傾いでみせた。
「来い。夜盗崩れめ」
探求者の挑発に乗った迂闊な一人は繰り出した刃を剣で受け止められ、カウンターで放たれた槍に腹を抜かれ地面に転がっていた。踊るように探求者が攻撃を開始した。
右の刃が迸るや、仮面の暗殺者の首が宙を舞う。左の槍が盾ごと二人纏めて貫通せしめた。返り血を浴びた探求者が相手の手から武器が零れるのを見逃さず、槍を死体から抜き地に刺して、無手で奪い取った。シミターを弓を構える一人目掛け投げつける。弓を構えていた暗殺者は次の瞬間脚部をもぎ取られていた。
探求者は槍を足で蹴り上げると、逆手に持ち、背後から襲い掛かってきていた一人の首を貫いた。
背後で死に切れず震える暗殺者に快活に笑った。
「―――は、はははっ! それが、どうした?」
探求者目掛け矢が無数に放たれる。肩に、腹に、足に突き刺さるそれを一笑した。奇跡の力が探求者の傷を癒していた。
一気呵成に攻撃を仕掛ける傍らで奇跡の力で回復し続ける。まさに悪魔染みた戦闘方法であった。
探求者の死の舞踏が再開した。剣を突き出そうとした一人は、逆に剣で武器を弾かれ無防備な胸元に槍を植えられた。探求者が両腕の武器を振るう度に暗殺者の一角で血しぶきが上がって死体の数が増えていく。戦神に例えられるファーナムの騎士の伝承に違わぬ攻勢であった。
しかし探求者は焦りの色を隠せなかった。見ているとハベルが盾を弾き飛ばされ腹部に一撃を喰らう様が見えていたのだ。あの男の能力は底が知れない。何者かに力を強化されているような直感はあったが、それを遮断する術など無いに等しい。短期に決着を付けなければ、仮面の暗殺者に加えてあの男が参戦することは遠くない未来である。ちらりと白王の特大剣へと目をやる。中途半端に力を注がれた剣は白い靄を吐き出していた。
再び特大剣に取り付くと、力を注ぎ込み始める。腕が、胸元が、首元さえも凍り付いていく。肉が温度差に耐え切れず割れる。鎧の表面に氷の結晶が花咲いていた。
「邪魔をするな!」
探求者の腹に槍が生えた。あろうことか振り返らずに前進することで抜くと、左手の槍で槍の刺突をいなし、懐に潜り込み頭を掴むと同時に足を払い地面に叩きつけて血の塊に変えた。
槍を地面に突き刺すと、特大剣の柄を握り締め屈む。槍が四方から探求者を包囲しつつあった。次の瞬間槍衾が探求者の全身を貫いていた。
「穿て」
暗殺者たちの意識が一瞬にして刈り取られる。大地から生えた氷の剣山が肢体を血濡れの布切れに変えていた。氷の領域が爆発的に拡大していくと暗殺者だったものを塵に変えるばかりか、地面や、瓦礫さえも吹き飛ばす。凍てつく衝撃波が晴れた後に残ったのは両腕を氷の鱗に包まれた探求者のみであった。
剣を地面から抜く。高温に晒され溶けてもなお冷たさを失わないそれを大上段に掲げる。
白い奔流が立ち昇ると辺り一帯を照らしていた。
闇の欠片から生まれた恐怖の仔と、偉大なる白王の魂を込めた輝きであった。
「ハベル!」
「早く……しろ」
ハベルは盾を剥がされ左腕を切除されていた。岩のような鎧とて、男の刃を防ぐには足りなかったらしい。右腕で担いだ大竜牙を懸命に振り回してはいたが、動きが鈍っていた。切断された箇所からはどす黒い血液が滴っており、命の灯火がつき掛けていたのだ。
男――闘技場の主、ダイアス・バジルが探求者目掛け魔術を放つべく手をかざし、腕ごとハベルに掴み取られた。
ハベルが物言わずに男の体を地面に引き倒していた。
「すまない」
探求者は瞬時に悟る。自分ごと撃ち貫けと言っているのだと。重傷を負ったハベルは特大剣がもたらす大破壊に耐えられないであろう。命を懸けてでもこの男を倒せと言っているのだ。
構え。大上段に握った剣の反動を抑えるべく腰を落とす。
腕どころか腹までも凍結していく。火にせよ、氷にせよ、強い力は使用者をも飲み込んでしまう。
振りかぶり。剣をやや傾けた。
大気中の水分が凍りつき煌く粒子となって渦巻き始めた。
振りぬき。腕に力を込めた。
――ばきりと嫌な音が体から伝わった。
「消し―――飛べ!」
振るった。
刹那、白い津波が発生すると大地ごと進行方向に存在する全てを凍結させながら砕いていく。ハベルと男の姿が白亜に飲み込まれた。地に切っ先を振り下ろした姿勢のまま、震えてあらぬ方角へと逃れんとする剣を押さえつける。凍結し言うことを聞かぬ腕に命じて強引に振り上げた。津波が怒涛の破壊流となり前方を染め上げていく。
反動に探求者の体が跳ね飛ばされ地を転がった。剣が宙で回転しつつ地面へと突き刺さった。
「………やったか」
濛々とした白い煙が晴れていく。何も残っていなかった。人だった湯気が立ち昇っているだけであった。
探求者はよろめきつつエストを口にした。体が修復されていくが、半分飲んでもなお癒えることがなかった。凍結の余波で生命力そのものが削り取られていた。
剣と槍を抜くと、咳をした。ハベルと男がいた痕跡を乗り越えて歩む。申し訳ない気持ちと敵を倒したことによる爽快な気持ちが同居していた。
そして探求者はその武器の前にたどり着いた。
「美しい。これを打ったものはどのようなものだったのだろうかな」
惚れ惚れとするような結晶の剣を前に呟いた。尋常ではない結晶の武器といえば、古代から伝わる白き偉大な竜の作り出した結晶の武器が挙げられる。だが目の前に刺さっている武器は結晶でありながら結晶のようではなく、剣のようで剣ではない、何か別の存在が剣の形状を保っているように感じられた。
柄に手をかけると―――抜けない。
「ふふ………そうか。俺にその資格は無いか」
剣は抜けず、岩に刺さったままであった。
苦笑する探求者の足元が炸裂した。探求者は地面を転がりつつも反撃に出ようと地に手を付き立ち上がった。情け容赦なく魔術弾が放たれる。かわす暇も無く跳ね飛ばされ、階段を転がっていった。階段の終点に鎮座する大岩に背中を打ちつけ止まる。
黒竜が赤い瞳をぎらつかせつつ滑空してくると、爆発によって弾き飛ばされ瓦礫に背中を預けた格好の探求者の目の前に着地した。
白王の特大剣を放った反動で衰えた体力が、爆発によって瀕死の状態に持ち込まれていた。竜に追従する黄金の球体が無数に降下してくる。球体から魔術が放たれることは承知していた。両手の武器は爆発でどこかに飛ばされてしまっていた。
竜が口にエメラルドグリーンの火炎を宿す。
探求者は抵抗することはなかった。もはや間に合うまい。仮に間に合っても一人で竜を討伐できるとも考えていなかった。
懐に手をやり、地面に文字を書き記す。
『汝 すべてのエネルギーを我に捧げよ』
竜の言葉に探求者は首を振った。
答えは決まっていた。
「いやだね」
探求者の姿は火炎の中に消えた。
探求者は残念に思った。所詮自分は不死。元の世界で蘇生できるだろうが、この時間、この空間へ馳せ参じることはできないだろうと。後は、この世界に残された者たちに掛けるしかない。あの遠い時代の薪の王に。
ただ、地面には次の文字が残されていたことを黒竜ギーラは見逃していた。
『霧と竜に挑むなら、貴い結晶の剣が必要だ』
【エクセレクター】
「その資格は無い」
大地の神ヴォラドが生み出した
エルフ族の末裔、水晶職人レオン・ショアによる武器
持ち主と共に「成長」する第三の聖剣
一見するとただの短剣であるが、
使用者によって姿を変えるために形状に意味は無い
戦技は「 」
闇を祓い、世界を救済する導きの光を放つ
最も尊いとされた「人の聖剣」の本質を引き出せるのは、
ヴォラドの意思に献身できるものだけであるという。
【ダイアス・バジル】
ダイアス・バジル/マスターオブアリーナ
教王を名乗った最強の戦士。
もはや意思はなく操り人形と化している。
【刻の振り子】
渇望の王が求めてそして手に入れられなかった宝具の一つ
二つの秘宝を材料に、時間の歪んだ巡礼の道を跳躍することができるという