DARK SOULS The Encounter World【旧題:呼び出された世界にて】   作:キサラギ職員

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The end of the world

 竜の群れが吼え狂いながら空を往く。

 霧から出現した彼らは一様に赤い瞳の呪いによって魂を捕らわれていた。あらゆる強者を喰らい、あらゆるものを破壊しつくす存在。これを世界の終わりと嘆くものもいたが、違いなかった。違うとすれば異界からやってきた神が猛威を振るっているということであろうか。

 竜はこの世界においても強者であることは変わりなかった。鳥よりも早く飛び、火を噴けば戦列もろともなぎ払われる。生半可な矢や魔術受けても強固な鱗はびくともしない。それが、雲霞の如く湧き出てくるのだ。

 更に霧に侵され正気を失った兵士達が無差別に侵略を繰り広げていた。彼らが領域を拡大するたびに霧が広がっていく。住民達さえ正気を奪われ恐怖を一切感じない兵士と化して領土を拡大していくのだ。大軍を差し向けたところで無駄であった。霧を防ぐ手段が無かったのだ。

 悪いことは続いた。総勢数百人から成る軍団が各国を蹂躙していたからだ。

 尖った帽子と薄手の鎧にチェインを着込んだ姿。独特な形状の大剣と短剣を手に狼の狩りを彷彿とさせる剣技を扱う兵士たち。彼らは恐怖など無く、しかし士気など感じさせない鉄面皮を被った兵士であった。たとえ胴を打ち抜かれようとも起き上がり剣を振るう。少数混じった魔術師たちは詠唱など悟らせない早業で魔術を行使し、剣術士たちを助けていた。

 ファランの不死隊。深淵に落ちた騎士アルトリウスの後継者たちがそこにいた。彼らは霧に飲まれているとはいえ、巧みな戦闘技術を忘れていなかった。

 ファランの不死隊は深淵の兆しがあらわれるや、必要とあれば国でさえ滅ぼしたという。たとえ霧に飲まれ意思がないとはいえ国をも滅ぼす戦闘能力は健在であった。

 ファランの不死隊に対抗せんと戦力が結集させた国があった。国は、リューベーンという城塞都市を要に反撃に出ようとしていたのだ。この世界側の軍勢と不死隊が死闘を繰り広げる最中。一時拮抗したと思われた戦いは竜の群れが無数に出現したことで総崩れになった。城塞都市は死体だけが転がる都市と化してしまった。

 

 霧の中には、ファランだけではなく無数の怪物共が徘徊するようになっていた。

 霧の怪物が呼び寄せたものたちを片っ端から自らの傀儡へと変える神の片割れがいたからだ。

 

 もはや霧の都市と化したラグズバードへと足を踏み入れるものはいなくなっていた。

 別の世界から呼び寄せられた一握りを除けば。

 やがて世界は霧に覆われるであろう。静観と共に運命を受けるものも少なくはなかった。

 

 

 異界の神の片割れギーラは傷を癒すべく人を喰らいはじめた。

 この世界の強者を呼び寄せては喰らっていた。違う世界から呼び寄せたものでもかまわずに喰らっていた。

 傷を癒し片割れに復讐するのだ。たとえ片割れがいようがいまいがかまわない。元の世界に戻る術をいつか手に入れることができると信じていた。人の争いを鎮めるために生み出された竜の思考に浮かぶのは憎しみのみであった。

 

 霧に足を踏み入れるものたちは知るのだ。

 様々な世界、時代、人、土地、モノが呼び寄せられ混沌としたその場所は、言わば墓場に近いのだと。

 打ち捨てられ、忘れ去ろうとしていたものたちが集うその場所の意味を。

 古い王が英雄の道を阻むことの理由を。

 王を殺し、資格を持ったもののみが霧を鎮めることができるのだと。

 

 

 

 

 

 王都ラグズバードは次のように呼ばれることになる。

 

 無数の王たちが霧の最中を徘徊する土地。

 

 

 

 すなわち、王の土地(キングスフィールド)であると。




2章完。かなり短めになりました。


次章、タイトル『King's Field』

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