「あんたの名前は『八咫鏡』。人間が神器として崇めている道具の一つで、それも鏡だし丁度いいでしょ?それに、あんた付喪神だしね」
八咫鏡か・・・。今の説明を聞いていたが俺にぴったりだ。神じゃなくて妖怪だけど。
「・・・八咫鏡。うん、俺の名は八咫鏡だ。ぬえ、この名前気に入った。ありがたく貰うとする」
「ふん!当然でしょ、この正体不明が付けてやったんだからね。・・・それで、あんたはこんなところで何してんのよ?」
口では怒っているが何だか嬉しそうなぬえに今までの事を大まかに話す。
・・・・・・・付喪神説明中・・・・・・・
「なるほど。なら、私と行く場所は同じなんだ」
「ああそうだな。・・・ところで口調が少し変わったな?どうした?」
いきなり一人称が変わり困惑しながらも理由を聞くが、「気分よ。悪い?」と返された。
確かに、気分なら仕方がない。特に、疑問も抱かずに一人で納得していると、
「ねぇ、あんたも着いてくれば。どうせ、行き方も分からないんでしょ?私と私の友達の邪魔さえしないなら連れって行ってもいいけど・・・」
「ほんとうか!?ありがたい、俺も連れていってくれ。邪魔もしないしむしろ手伝うぞ?」
渡りに船とはまさにこのことだな。俺には断る理由もない。
「本当!?実はね・・・」
・・・・・・・鵺発表中・・・・・・・
「おお!面白そうだな!」
「でしょ、でしょ!これで世界を正体不明だらけにするんだ!」
ぬえの計画はやりがいがありかつ面白い。ぜひ、これは手伝いたいと心の底から思った。
都の奴らは、かなり怖がることだろう。ああ、凄く楽しみだ!!
「俺も混ぜてもらうことにする。いいよな?」
「うん、分かった!なら、はぐれない様についてきて。あ!あと、『私に』なってくること」
「?了解」
なんだか、ぬえの顔がまた悪戯する子どもになってきた。
「にひひひ!きっと、驚くだろうなぁ。にひ、にひひひ!」
・・・訂正。さっきより、酷い。たぶん、これから会う友達の反応が楽しみの様だ。
・・・・・・・付喪神鵺移動中・・・・・・・
「そういえば、ぬえの能力は何なんだ?相手に姿を誤認させる能力とかなのか?」
「うーん、近いけど違う。私の能力は・・・」
「能力は?」
「・・・」
なぜだか、分からないが歩みを止めてぬえが黙ってしまった。もしかして、体調でも悪くしたのかもしれない。心配になり近づこうと歩み寄ろうとして、
「おしえない!」
満面の笑みでこちらを振り返った。
人が心配していたのにこいつときたら!
「おまえなぁ・・・」
「にっひひ、いきなり黙るから心配したんでしょ?あんた本当に面白いね。私の正体いきなり見破るし、頭撫でてくるし、しまいには名前を付けてくれなんてさ?・・・他の奴らは、どいつもこいつも私の考え何て相手にしなくて動こうとしない腰抜けばかりでさ。・・・ねぇ、もう一度聞くけど、本当に手伝ってくれるの?」
ぬえの顔は少しだけだが緊張しているように見える。
「当たり前だろ?こんな面白そうな事乗らなきゃ損だ」
側に近づきぬえの頭を撫でながら肯定する。それにしても、撫でやすいな。
「頭を撫でるな!でも、そうだよね・・・。きっと、たのしいよね!じゃあ、これからよろしく、八咫」
「おう、こちらこそ頼む、ぬえ」
ち、逃げられた。まぁ、ぬえも元気なったことだしぬえの友達と合流するか。
それに、八咫か。確かに、八咫鏡じゃ長いよな。うん、これからは、あだ名で呼んでもらうとしよう。
月夜に照らされた森の中を俺たちは進んで行った。
「それにしてもさ、何で私の姿なのに服は男なの?」
「そこまでは、真似したくない」