鳥の声を楽しみ、心地の良い風を受け、木々に囲まれながら鏡の付喪神はゆっくり歩きながら都を目指していた。
その途中で、人間の少年がいたので試しに驚かした。
いやー、面白かった!いきなり、自分と同じ顔が出てきて「え?」って固まったときの顔は最高だった。その後、「み~た~な~!?」ってニヤリと笑ってやると気絶したのは焦ったが・・・。
ほっておくのも危ないから元の姿に戻り起こしたのだが、取り乱し様が凄く少し大変だった。まあ、それでも妖力が回復したのでよしとする。
落ち着きを取り戻した少年と世間話をしながら途中まで彼の目的地まで着いて行った。
なんでも、姉が待っているという。少年は生まれつきあまり身体が丈夫でなく姉に迷惑をかけてしまい申し訳ないと思っているらしい。だから、姉の手伝いをしながらこうして修行しているそうだ。何度も挫けそうになるがそれでも姉の力になれるその日まで続けるそうだ。
「ふーん?なかなか、気概があるんだな。どれ、俺から一つ良い物をあげよう」
俺が生まれ寂れた都で見つけた短刀を渡す。一見すると普通の短刀だがあと少しで付喪神になる物だ。なんでそんなものを渡すか?俺たちは持ち主に必要とされなくなって妖怪になる。なら、新たな持ち主を与えるとどうなるか?それは、程よく呪いがかかった一品になり捨てず大切に扱えばそこら辺の弱い妖怪など一撃である。これからも、一人で修行するなら必要になるだろう。
「これは・・・。貰ってもよいのですか?随分と高そうな物ですが・・・」
「おう、貰ってやってくれ。こいつもそのほうがいいだろうからな」
青年はおっかなびっくり手に取り鞘から刀身を抜く。
「きれい・・・」
青年は気に入ってくれたようだ。どことなく、短刀も喜んでいる様に感じる。
その姿に満足しながらまた歩き出す。
・・・・・・付喪神と少年雑談中・・・・・・・
だいたい、二刻ぐらいだろうか。少年の姉らしき人物が見えたため別れる。
別れ際に名を聞かれたが旅の者だといって去る。名前などないのだから仕方ない事だ。
それに、あの少年の姉だが・・・あれはまずい。
とてつもない力を感じる。そんなときは、関わらずに去るのが良い。
最後に後ろを少し振り返ると少年が少し笑っているような気がしたがきっと気のせいだろう。
こうして、付喪神は再び歩いて都まで進むのだった
少年は自分から人を驚かしながらもその人間に全く危害を加えない不思議な妖怪を見送った。
「命蓮!また、修行にいったりしてなにかあったら大変でしょう!」
「あはは、ごめんなさい。でも、僧侶としてこれは欠かせないから。さあ、帰ろ?白蓮姉さん」
「はあ・・・。全く貴方という弟は・・・」
こうして、今日も無事に過ごせることに感謝しながら聖命蓮は自慢の姉である聖白蓮と自身が開いた寺に帰った。
・・・・懐にはこれから長い付き合いになるであろう短刀を持ちながら。