東方忘鏡録   作:雨の日の河童

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忘れ鏡は今どこに・・・

「・・・ん」

 

夏の蒸し暑さと木陰に吹く心地よい風で目が覚めた。

って、目が覚める?

 

「ここは・・・。何処だ?」

 

確か、神器の『八咫鏡』と契約して全てを失ったよな?

なのに、目を開けると森の中って・・・。

 

「そうだ!真は!?」

 

いきなりの出来事で真に説明できずに消えてしまったのだ。

しかも目の前で、だ。

全くもって最低な奴だな、俺は。

 

自己嫌悪しつつ直ぐに行動を開始する。

 

「って、あれ?」

 

走ろうとして力が入らないことに気づく。

まるで、錆びついた歯車の様に上手く身体が動かない。

無理矢理動かそうとするがそれでも身体全体の反応が鈍い。思考だけが正常。

 

こんなときに・・・!

 

思わず歯ぎしりをしてしまう。ただでさえ場所が分からず、真の安否さえ確認できない状態に加え、身体の不調。あまりにもついていない。

 

辛うじて、歩くことが出来る為歩いて周囲を探索しながら考える。

 

まず、真だが最悪、八雲が保護しているはずだ。

俺には、道具の価値しかなかったが真は神様。アイツが作る楽園には、人が縋るべき神がいない。

それなら、成りたてとはいえ神である真を見捨てる事はしないだろう。

次に、今の俺の状態。

能力が制限されているうえに身体の不調。まぁ、何とかなる。

最後に、真と合流する方法だが今のところいい案が浮かばない。それにしても・・・

 

「あれ、此処なんか見覚えが・・・」

 

ひとまず考えをまとめ、移動しているとあることに気づく。

そう、俺のトラウマになりかけた場所にすご~く似ている気がするんだが・・・。

い、いや!気のせいだろう!確かに、似ているがあの森は深く、暗かった。それに比べるとまだこちらの森は明るい。

 

自分を無理矢理納得させた。

させたのに・・・

 

「おい!そこの人間、止まれ!!」

 

鋭い声に足が止まる。冷汗が止まらない。

 

ゆっくりと後ろを振り返った。

 

狼の尻尾に耳。手には剣と盾を構え、此方を睨む白髪の少女。

間違いなく『白狼天狗』だと悟り泣きそうになる。

 

ここ、天狗の里かよ!!?何でこんなところで目覚めたんだ、俺の馬鹿!!

 

「ここまでどうやって入ったが知らんがそこまでだ。大人しく縛につけ」

「・・・はぁ」

 

そうして、逃げる事も戦うことも出来ずに捕まった。

 

「貴様、ここまでどうやって入った?とにかく、大天狗様の所まで連行する」

 

真、すまない。お前を迎えに行くのは時間が掛かりそうだ。

 

心の中で真に謝る。

そして、縄で縛られたまま幹部の天狗に処罰してもらうため天狗の里に入る八咫鏡であった。

 

 

いやはや、縁とは奇妙な物です。天狗を助け、天狗に追いかけられ、天狗に捕まる。

八咫鏡はどうなることやら。無事、真と再会できるのか・・・。

いや、それにしても直観とは案外馬鹿にできませんね。

 




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