都。それは、煌びやかで活気が溢れる人々の街。
毎朝、街では野菜や果物、獣の肉や魚が売っている場所では大きな人だかりが出来る。
しかし、今朝は違った。一人を囲んで人だかりが出来る。
「おい、聞いたか?『件』が現れたって」
「またかよ・・・。今度の予言は何だって?」
「『都にこれから、不吉な者が現れる。その者、様々なものになる。気をつけよ、汝らのすぐそばまで来ておる。帝は病に伏し、都は暗雲に包まれるであろう。』」
「最悪だな。何とかならんのか。その続きはないのか?」
不安そうに男は中央に立っている男に話しかける。
「なんでも、いずれ去ると言われている。帝様が何とかしてくださるはず・・・」
男は曖昧に答えそのせいで、よりいっそうに不安が周りに広がる。
人々は怯えながらも予言が外れるように願った。
しかし、その願いは届かない。
・・・・・・・夜・天皇清涼殿・・・・・・・
「うん、ううむ。寝苦しい。それにこの声は何だ?うるさい」
寝間着で外に出るのは良くないがこの音が気になって仕方ない。襖を開け、外を見る。
だが、何も変わらず外は静まっている。疑問に思いながらも襖を閉じる。
すると、
「ヒューヒューヒューヒューヒュー」
「うるさいわ!誰ぞ、余の眠りを妨げる者は!」
勢いを付けて襖を開ける。そこには、
「な、なんだ?あれは?」
月を隠すように黒い雲が周りを漂いこちらを見下ろしている。
「ヒューヒューヒュー!!!」
それは、三度、先ほどよりも大きな声で叫ぶと黒い雲が剥がれその姿を現す。
それは、サルの頭、タヌキの胴、トラの手足を持ち、尾はヘビの化け物が姿を現した。
化け物はこちらを一瞬見て、笑いまた黒煙に戻り去っていった。
「あ、あ・・・!?」
その瞬間、彼は理解する。このままでは死ぬと。だが、このような話誰が信じようか。愚かな父の跡を継ぎ、民の信頼に答え今まで頑張ったのに妄言を吐く帝と言われるのは我慢ならぬ。だが・・・しかし・・・。
彼は自分が倒れるその時まで恐怖と不安に苛まれながら夜を過ごすことになるのだった。
そしてある夜、遂に二条天皇は倒れてしまった。
これにより、都は混乱の渦に飲まれる。
「おい!帝様が倒れられたぞ!?」
「ああ、どうすればいいんだ?」
「化け物が襲ってくるかもしれん」
人々に癒しを与える茶屋からは不安の声があちらこちらであがり、人々は、目に見えぬ化け物を各々が勝手に想像してより恐ろしくより凶悪な化け物が人々にまことしやかに語られていく。
それを、茶屋の端の席でにやにやと笑っている三人に気づかずに・・・。