ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです!

誰がリーダーになるのか、空也がいることでどんなことになるのか。この作品だからできることをどうぞご覧ください!

それでは、今回も緊張して初々しい彼女を見ていってください!


初めての練習

空也side

 

 穂乃果のもとに来た絵里からの連絡でμ'sの代理リーダーをどうするか、そんな相談をしていた。最初に、音ノ木坂のほうで状況を見ることのできる絵里たちに誰がいいのかを考えを聞いてみる。

絵里『私と希で話し合ったけど、凛がいいと思うの。どうかしら』

 その結果返ってきたのは、1年生である凛の名前だった。……空也が考えていたのも凛であったためここで一致したことにより深く話し合いをする重要度が低くなった。

 

 絵里たちの考えを聞いた穂乃果は凛の名前に快く聞き入れ、頷いた。

穂乃果「いいと思う。凛ちゃんならできると思う!」

 現リーダーもそう言っていることからここにいる全員、凛がリーダーになることに賛成したことになる。

 

 ただ、その場合問題点が浮上してくるのは仕方のないことだった。

空也「凛か……。俺も凛だろうなとは思ってたんだが……。う~ん。あ! カウントは凛には難しいと思うが……。確か部室のロッカーに『Love wing bell』のカウントのCDが入ってるからそれ使うように言ってくれ。それともし嫌がってどうしようもなくなったときは体育祭の時のあれを全部使ってやってほしい。じゃあな。俺は戻るから」

 

 空也たちが修学旅行中の間はダンスの練習をする際にカウントを経験があるのは絵里のみ。生徒会の手伝いをすると申し出てくれた絵里はおそらくフルで練習に参加できるわけではない。だからそのためにあらかじめ用意していたものを使ってほしいと告げる。

 

 空也の言葉を聞いた穂乃果は電話の向こうにいる絵里にそのことを伝える。

穂乃果「あ! うん……。じゃあまた夜ね。絵里ちゃん、空也君が楽曲練習のCDを部室のロッカーにしまってあるからそれ使ってだって。それと凛ちゃんが嫌がったら体育祭の時の命令権を全部使ってって」

 まぁ、あまりに早く空也が立ち去ってしまったことに驚いて急ぎ足になってしまう。そしてしっかりと体育祭の時の約束の件を伝えた。しっかりと穴の内容に説明したからこれでしっかりと伝わるだろう。

 

 空也の言った内容をしっかりと伝えられたようで何も不思議がらない声で絵里が返してくる。

絵里『そう。部室のロッカーね。わかったわ。空也にお礼行っといてもらえるかしら』

 直接はお礼できないから、絵里は穂乃果に伝言を伝える。

 

 声からして空也のことを追いかけようとしたのが先ほどの話で絵里に伝わったようでスムーズに話を切ってくれる。

穂乃果「うん! じゃあ、がんばってね」

 最後に穂乃果は練習に関して今の自分ができることを最大限にするためにエールを送った。

 

絵里『えぇ、それじゃあね』

 穂乃果の言葉を受けた絵里は電話を切り、そして穂乃果は通話の終了したスマホを姉妹先に行ってしまった空也を追いかけた。なぜ空也があんなことを言い出したのかを問いただすために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空也を追いかけて少し駆け足の穂乃果がやってくる。幸いすぐに追いつくことができて後ろからやってくる穂乃果を迎えるべく空也は振り返った。

穂乃果「空也くーん!! 待ってよ!」

 トテトテと走ってくるのを振り返りざまに眺めていた。

 

 しかし、追いかけられるとは思っていなかった空也はここに穂乃果がやってきたのは少しだけ驚いていた。

空也「ん? どうした?」

 ただ、オーバーに驚く必要がないため『あ、来たんだ』という感じで受け答えをする。

 

 ここに穂乃果が来たのは1つの確かな理由がある。それは良い理由ではなくどちらかといえば悪い理由で。

穂乃果「どうしたじゃないよ!! あっさり流しちゃったけど、空也君がやろうとしていることってちょっとひどいことなんじゃないかな? 凛ちゃんが犠牲になってるみたいで……」

 それは空也が絵里に伝えてほしいといったこと。確かにあれは凛を犠牲にするものとなる。だから何といってスルーするわけにはいかなかった。それは仲間であり、大切な友達だから。

 

 今回の件に関してはそう思うのだって仕方ない。ただ、それをするのに意味があるとすれば話は次第に変わってくる。

空也「あぁ、その事か。言って伝わるかはわからないけど、凛は今すぐにでも殻を破らないといけない。前に言ってたあのことを実現させるためにな」

 あの時に凛が言ったこと。それは凛が持っている願望だったはずだ。そんな彼女にその役目をやらせてあげたい、そして凛が持っている重りを何とかしたいと空也はそう思っていた。

 

 ただ、さり気に言われていた言葉だっただけに凛が言った言葉を穂乃果は覚えていなかった。

穂乃果「前に言ってたあのこと? それって何?」

 凛が自分の口から言い出したことで、今の凛ができていないこと。それがいつ言われたのか穂乃果は思い出せない。

 

 凛はいつもはやりたいことを口にすることが多い。ラーメン食べたいとか、花火やりたいとか。

空也「……何かと凛ってアイドル活動をするとき、誰かを頼ることが多いだろ? そんなアイツが前に言ったのは、………………ってことだ。お前も聞いてただろ。穂乃果」

 だけど、アイドルのことになると途端にそれが当てはまらなくなる。……一番それが顕著に表れたのは公式新聞部の取材を受けた時、凛が全く話さなかったときだ。

そして、凛の願望が聞けたときのことを穂乃果に教える。

 

 空也の話を聞くとその場面を穂乃果が思い出した。

穂乃果「あ!! 確かに言われてみれば! 確かリーダーを決めるときだったっけ?」

 リーダーをどうするか。その結論が出た時に凛が自らの口で言ったことがあって、それがまだ実現していないこと。その詳細部分をしっかりと思い出していた。

 

 そして穂乃果が思い出したのと、空也が考えていた出来事は完全に一致していた。

空也「正解だ。凛も前に進まないとラブライブに出れるかはわからないからな。一人ひとりが成長していかなくちゃな」

 この前はにこがまた1つ成長をした。今の穂乃果たちには十分な伸びしろがある。ラブライブ前に成長しないときっと勝てない。

 

 そのために今の凛にこの経験は絶対に必要なものだ。だからもしもの時のための保険を空也はかけたのだ。穂乃果たちが投げ出さないようにした始まりの時のように。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛side

 

 生徒会の仕事が終わるとはいかないまでも、一通り落ち着いたことで絵里は穂乃果から聞いたことを凛たち4人に伝えに来た。

凛「えぇ~!? 凛がリーダー!?」

 早速絵里は凛にリーダーの件を伝える。しかし凛自身はそのことに驚きを隠せない。それもそうだろう。なんせいきなりリーダーになってくれと言われたのだから。今までそう言う役割をしたことのない人からすれば、何をどうしたらいいのかさえ分からなくなる。

 

 でも適任といえる人材は凛しかいない。そういう結論に至ったため何とか凛にリーダーをやってほしいと願っている絵里は、リーダーを決めることになった経緯を話す。

絵里「そう。暫定でもリーダーを決めておいたほうがまとまるだろうし、練習にも力が入ると思って。もちろん、穂乃果達が修学旅行から帰ってくるまでよ」

 練習の士気も違うし、確実に今決めなくてはいけないことを決めるのに代理とはいえリーダーの存在は大事なものだった。

 

 ただ理屈はわかってもすぐにうなずけるようなことではないので言いよどんでしまう。

凛「でっでも……」

 やったことがない。そう感じている部分もあるのだろう。しかし、どうにもそれだけではないことが見て取れる。凛には何かあると。

 

 ただそのことは今気にしても仕方のないことだ。だから絵里が穂乃果に聞いたことと、希が海未たちにメールで聞いたことを凛に伝える。

希「穂乃果ちゃんたちにも相談した結果なんよ。うちもえりちもみんな、凛ちゃんがいいって。3人はどう?」

 あと残るのはこの場にいる3人の意見を聴くだけとなった。リーダーをやりたいという人がいればその人に任せることだってできるのだから。

 

 しかし、その3人とも凛がリーダーをするということに関して意義を放つ者はいなかった。

真姫「いいんじゃない?」

 

花陽「私も凛ちゃんがいいと思う」

 

にこ「いいんじゃない。これからのことを考えるとそうしたほうがいいわよ」

 これで全員の意見が出揃った。

 

 このことが凛にとっては意外過ぎることだった。凛自身は自分はリーダーに向いているわけがないと、そう思っていたから。

凛「ちょっちょっと待ってよ。なんで凛? 絶対ほかの人のほうがいいよ。絵里ちゃんとか!」

 前に生徒会長をしたことのある絵里を推薦する。……自分が体育祭で団長をしたことを忘れているかのように。

 

 でも凛の言うことを素直に受け入れるわけにはいかなかった。それは、これからの未来のことを考えてのこと。

絵里「私は生徒会の手伝いがあるし、それに今後のμ'sの事を考えたら1年生がやったほうがいいでしょ」

 μ'sの中で1年生の中のだれもが仕切るようなことをしたことがないとこの先どうしても練習を回すことができなくなる。だから、以前にこが言ったことのあるように精神的支柱になって、誰からも信頼されるリーダーが必要だ。

 

 絵里の言葉で1年生がやると言ったところで凛は他の候補になりえそうな人物の名前を挙げる。

凛「だったら真姫ちゃんがいいにゃ! 歌もうまいし、リーダーっぽいし! 真姫ちゃんで決まり!」

 確かに真姫は歌がうまいかもしれない。しかし、彼女の性格上人を引っ張っていくという点にどこか不確定な部分を感じる。

 

 慌てて真姫に白羽の矢を立てた凛を疑問に思う絵里が尋ねる。

絵里「凛……?」

 

 1年生という条件下でみんなを支えられる精神的支柱の部分とみんなからの信頼が大事だ。そうするとみんなに推薦されている凛が1つリードしているともいえる。さらに言えば体育祭の時に団長として下級生ながら同じ組の生徒を引っ張ることができた。

 それが一番顕著に出たのは応援合戦の時だろう。凛が言った言葉で赤組の生徒はこれ以上ないやる気が出ていたのは事実。

 

 そういういろいろな考えをして現状では凛が適任だろうということになっている。

真姫「聞いてなかった。みんな凛がいいって言ってるのよ」

 だからみんなが口をそろえて凛がリーダーに向いているということを言っているのだ。

 

 団長の時はここまで嫌がっていなかった凛がμ'sのリーダーになるということをかたくなに拒む。

凛「でも……、凛は……」

 いつもは元気な凛がだんだんとしょんぼりしていく。下を向きながら凛は話した。

 

 その様子を見ていると凛が嫌がっているだろうというのは簡単に想像がつく。

花陽「嫌なの?」

 だから、本当に嫌がっているのであれば止めようと思って花陽が凛に話しかける。

 

 ただ、凛にとってこのことは嫌というわけではなかった。自分が向いていないと思っているからこそ、引き受けないほうがいいと思い込んでいるのだ。

凛「嫌っていうか……。凛はそういうのむいてないよ……」

 向いていない。本当にそうだろうか? そもそもこういうことに向いていない人が団長をやり遂げることができるだろう訳がない。つまりは凛は前に立つ人として向いていないなんてことはないのだ。

 

 それでも認めようとしない凛にはきっと何かがあるのだろう。

にこ「意外ね。凛だったら調子よく引き受けるかと思ってたけど」

 何度も言うが凛が団長をする際はすぐに受け入れていたのを考えると今回の件もすぐに決まると思っていたにこは意外そうに呟く。

 

 この凛のことを見たことがなければそう思うのも当然ではあるが普段から一緒にいる花陽と真姫はどこか、やっぱりのような部分を感じていた。

花陽「凛ちゃん。結構引っ込み思案なところもあるから」

 幼馴染として凛とずっと一緒にいた花陽はみんなが知らないであろう凛の性格を口にする。いつも元気いっぱいの凛を見ていると信じられないような隠れていた性格を。

 

 特に凛がそうなる時は決まってあることが関係しているのだ。それを真姫が話す。

真姫「特に自分の事に関してはね」

 そう。自分のことになると凛は極端に引っ込み思案になってしまう。確かに空也が始めて凛を勧誘したときに出ていた戸惑いはそういうことだったのか。

 

 先ほど、凛の口から嫌ではないということが聞けた。ならあれを使ってもいいだろうと絵里は考えた。

絵里「凛。いきなり言われて戸惑うのはわかるけど、みんな凛が適任だと考えてるのよ。その言葉、ちょっとだけでも信じて見ない? それと空也から前の命令権が使われたわ全員分まとめて」

 それにみんなが凛を信じて推薦している。それをより認識させるために言葉として送る。空也が言っていたというある種の犠牲を作る言葉とともに。

 

 普通であればこの空也の言ったことは限りなくヘイトを受けるものなのだろうが、空也の行動にはたいてい理由があることを知っているみんなからすればどんなことを考えてのものだったかが想像がついた。

凛「っ!! でも……。……わかったよ。絵里ちゃんがそこまで言うなら。それに空也君のことだから保険だったんだと思うし」

 空也がやったのは保険、もある。どうしても凛にやってほしいと思っていたから今回の件に命令権を使ったのだ。

 

 凛が受け入れた瞬間、まるで自分の事かのように花陽が喜ぶ。

花陽「……! 凛ちゃん!」

 これで、暫定のリーダーが決まった。これからやることは勿論練習。

 

 そのことをあたかも読んでいたかのように雨雲が晴れはじめ、雨が弱まってきた。

絵里「さぁ、そろそろ雨もやみそうだし。放課後の練習始めて」

 そう言って絵里と希は生徒会室に向かう。今ここで練習ができるのはにこと花陽と真姫、そしてリーダーになった凛の4人。練習をするためにこの4人はいつもの屋上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず初めにこれから練習を始める号令を代理リーダーの凛が掛け声を入れる。

凛「では、練習を始めたいと思います……」

 しかし、仕切るはずのリーダーである凛は弱弱しく練習の始まりを告げた。肩は上がっており、声も少しだけ上ずっていた。

 

 ただ、凛が練習を仕切っているという事実自体がうれしい花陽はそんな凛に拍手を送る。

花陽「わぁぁぁぁぁ!」

 

 初めてだからとはいえ、知らないメンバーとの練習ではないのだからそこまで緊張する必要がないと真姫は思っているようで、

真姫「拍手するところじゃないでしょ」

 あくまでも凛を落ち着かせるためにいつも通り話しかける。

 

 今、凛の中には『いつも通り、いつも通り』と自分に言い聞かせている声の身が聞こえていた。

凛「えっえっと……。では最初に、ストレッチから始めていきますわ。皆さん、お広がりになって。それが終わったら、次は発声ですわ」

 ずっとそう繰り返していると、次第に『いつも通りってなんだっけ?』そう考えるようになった。途端、話し方が凛に似合わない固さになる。

 

 違和感しかない凛の口調に、むず痒さを感じたにこはそのことを告げる。

にこ「何それ……」

 いつもは元気いっぱいの様子で練習をしているのに、なぜお嬢様口調になるのか。

 

 流石にリーダーをしているという面で喜んでいた花陽も今の凛がおかしいことには気が付いたみたいで、

花陽「凛ちゃん!」

 声を張って凛の名前を呼ぶ。

 

 あまり聞かない花陽の張った声に凛は驚き、

凛「え! なんですの?」

 何があったのかを尋ねる。

 

 ……自分でも理解していないのか、それともやってしまったと思ったからとぼけているのかは定かではないが未だ口調が戻っているわけではない。

真姫「その口調。いったい誰よ……」

 ようやく真姫の一言で話し方が変だということを伝えた。さっきまではにこが何が起こっているのかを理解していなかったためか口調に関してのツッコミはなかった。

 

 言われたことでようやく自分の異変を認めた凛ははっとなり肩の力が抜けていた。

凛「え? 凛、なんか変なこと言ってた?」

 ふいにいつも通りの様子に戻る。しかし、凛の口から語られる言葉からは、どうもさっきまでの違和感を自覚していないように聞こえた。

 

 極度の緊張が凛を襲っていることはここにいる全員が理解している。その緊張をほぐすためににこが言葉を発する。

にこ「別にリーダーだからって、かしこまることないでしょ。普通にしてなさい」

 ここにいるのは全員凛の知っている顔。いや、知っているだけではない。ずっと同じ時間を共にしてきたのだから、急によそよそしくなったらなられたほうだって戸惑う。

 

 ただ、にこに言われて気が付いた面も小さくなかった。その言葉だけで、練習における心持ちは楽になるだろう。

凛「そっそっか。えぇっと。では、ストレッチを始めるにゃー!」

 いつもの調子でみんなが思い描いてるであろうハイテンションな凛がここに現れた。

 

 

 

 

 

 ようやく練習が始まりみんなが二人一組でストレッチを始める。凛は花陽と組み今は背中の筋肉をほぐしている。

花陽「ねぇ、ちょっと緊張してる?」

 ストレッチをしながら普段とは状況が変わっている凛に向けて花陽が話しかける。

 

 確かに凛は緊張しているだろう。ただ、花陽の言葉で訂正する部分があるとするなら……、

凛「ちょっとじゃないにゃ~……」

 並の緊張ではないということ。団長の時は勢いだけで何とかなった感があったためそこまで緊張をすることはなかったが、今回はμ's全体にかかわる大事な役割を担っている。そう考えると自然に緊張してしまう凛がそこにはいた。

 

 横で真姫とにこの激しい言葉のやり取りが聞こえるが、今の凛の耳にはその声は入ってこなかった。

 

 準備運動のストレッチが終わり、次は振り付けの練習をしている……のだが、

凛「1,2,3,4 1,,2,,3,,4」

 この練習ではリーダーの凛がリズム取りの役割をしていた。しかし、やり慣れていない人がそういうことをするとどうなるだろうか? そんなのはもう決まっている。リズムが途中でくるってしまう。そうすれば踊っている人全員のリズムがずれるのだ。

 

 幸い、リズム感に自信がある真姫がそのことを指摘する。

真姫「凛、ずれてきてる」

 明らかに遅くなってるリズムが真姫たちのダンスの動きを悪くしている。

 

 真姫にそう言われた瞬間、凛の中に動揺が走った。自分が今やっている失敗をどうするのか。そういうことを考えていると……、

凛「にゃ! にゃ! にゃ! にゃ!」

 いよいよカウントすら言えなくなるほどまでに動揺し、焦っていた。

 

 そんなこともあってリズムを取るのは後にして全員で練習することになり、凛が花陽たちの中に入る。

真姫「私はここから後ろに下がって行ったほうが、いいと思うんだけど」

 最後の振り付けの確認が終わったところで、真姫の口から今までにない新しいアイディアが出てきた。

 

 しかし、そんな真姫の意見に反対する意見も出てくる。それは会場の広さを考えてでたもう一つのアイディア。

にこ「何言ってるの、逆よ。ステージの広さを考えたら。前に出て目立ったほうがいいわ」

 ライブをやる会場はファッションショーをするのに使われるところ。ステージが広くないわけがなかった。少しでもアピールがしたいのであれば前に出るという考えもないわけじゃない。

 

 そのにこの考えさえも、真姫は持っていた。

真姫「だからこそ引いて。大きくステージを使ったほうがいいって言ってるんじゃない」

 同じ理由を持った異なった意見。根元は同じはずなのにまったく話がかみ合わなくなってくる。

 

 あくまで自分の意見のほうがいいと思っているにこは真姫の意見に食らいつく。

にこ「いいや。絶対前に出るべきよ」

 前に出れば観客たちの距離も自然と縮まっていいパフォーマンスをすることができる可能性だってあった。

 

 だんだん、討論が白熱し始めている真姫とにこを見て、収拾がつきそうにないと感じ始めた花陽が2人のことを止める。

花陽「ちょっちょっと二人とも 落ち着いてよ~」

 熱くなりすぎるとまともな意見だって出なくなってくる。とりあえず今は落ち着いて判断できるような状況にしないといけなかった。

 

 ただ、問題なのは一度熱くなってしまうと冷ますのに時間がかかってしまうという点。特に真姫とにこは。

真姫「……。そうだ、凛はどう思う?」

 そこで1つの考えが浮かぶ。それは現状で冷静な他者から意見をもらうということ。

 

 急に自分のことを頼られた凛はその場で驚く。

凛「えぇ!?」

 パフォーマンスに関しての重要な意見をここで決めろと言われている。普段ならこういう役目は穂乃果や絵里、そして空也が決めるのだが、3人ともここにはいない。

 

 そして今の凛の役割は……、

にこ「そうよ。リーダー」

 代理とはいえ少なくともここにいる他の3人にとってはリーダーだ。

 

 おそらく一番リーダーらしい仕事がこれになるのだろう。今までは号令をかけるとか練習を見るだとかのサポート的なことで、リーダーとして重要なことをしたわけじゃない。

花陽「凛ちゃん!」

 初めての重要な仕事を前にしている凛に期待の目線と応援の目線を混ぜたような視線で見つめる花陽。

 

 そしてそれはほかの真姫とにこにも似たようなものが見られた。

 

 しかし、いきなり重要な決断をしろと言われたって出来るわけがない。少なくても慣れていない凛にとっては。

凛「えっえっと、穂乃果ちゃんに聞いたらいいんじゃないかな?」

 だから自分の意見ではなく、本当のリーダーである穂乃果に頼もうと言い出す。確かにそれも間違った判断ではないだろう。しかし、この場にいない穂乃果がそのステージのイメージをしっかりできるのかといわれれば不安が残る。

 

 それに、穂乃果たちが戻ってくるのはライブをする1日前。

真姫「それじゃ、間に合わないでしょ」

 そこから合わせるとなると決められることを先に決めておいて報告したほうが確実性はある。あらかじめ練習ができるのだから。

 

 ここにいないことが原因なのであれば、もう一人こういうことになれている人がまだ学校にいる。

凛「じゃあ。絵里ちゃんに……」

 そう、それは生徒会長をしてダンスに関して一番強い人物。確かに絵里に相談すればいい意見が聴けるのかもしれない。

 

 しかし……、

にこ「凛!」

 あまりにも弱気な発言が見て取れる凛に向けて、にこが声を張って話しかける。

 

 急な大声に戸惑いが現れるがそれでもにこの話を聞こうとしっかりと凛はにこのほうを向く。

凛「はい……」

 声はだんだんと小さくなっているがそれでも話を聞こうとしているということは伝わってくる。

 

 聞く準備のできた凛に向かってにこがはっきりと、教え込むようにつぶやいた。

にこ「リーダーはあなたよ。あなたが決めなさい」

 現状のこの場のリーダーは凛だ。決定権は凛にある。決めなくてはいけないことをしっかりとした判断のもとやっていかないといけないのがリーダーだ。

 

 にこの言葉は少なくとも凛の心に響くほどのものではあった。

凛「そっそっか……。えっと、明日までに考えてくるよ……」

 だからこそ大人しくその言葉を受け入れて自分で決めるという選択肢を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いろいろと新しいことが起こり、凛としては違う意味で疲れた練習が終わりを迎えるころ不意に屋上のドアが開かれる。

 

 そのままの勢いで屋上に足を踏み入れたのは生徒会室で仕事をしているはずの絵里。その手にはCDカセットが1枚持たれていた。

絵里「ごめん凛! 空也にカウントのCDもらってたの忘れてたわ。明日からこれ使ってやって。さすがにいきなりこの役目はできないからしょうがないわ」

 空也が念のために備えておいたCD。今日の練習でカウントが凛にとって難しいということはわかったはず。これでスムーズな練習ができる。

 

 疲れ気味な凛は絵里からそのCDを受け取り自分の鞄にしまいながらお礼を言う。

凛「絵里ちゃん……。ありがとう。あとで空也君にお礼行っておくにゃ」

 本当に準備のいい空也にお礼を言うことを告げ、ここまでもってきてくれた絵里にもお礼を言った。

 

 そのお礼を受け取った絵里は、まだ仕事があるからなのかすぐに屋上から出ていく。

絵里「そうね。じゃあまた明日、がんばってね」

 去り際に明日の練習についてエールを送る。

 

 そうだ。明日だってその次の日だって練習がある。凛にとって慣れないことが多くなってしまった練習。一体これからどんなことが起こるのだろうか?

 

 




実は小学生の時リコーダーが苦手という理由で指揮をやった結果、ボロボロになるということをやらかしたそらなりです。

まぁ、本番までにはマシにしましたが、難しかったです。それを短いスパンでやらないといけない凛は大変ですね。

新しくお気に入り登録をしてくださった黒っぽい猫さんありがとうございます!

次回『凛の自己評価』

それでは、次回もお楽しみに!



Twitter始めました。
https://twitter.com/kuuya_soranari
どうかよろしくお願いします!

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