ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~ 作:そらなり
今日は海の日で、海未の日で、恵海の日ですね!!(2回目)恵海人の自分として2回もむかえられるなんて……。月曜更新にしていてよかったと思います。
それで今回はにこの隠していた想いが明かされる回です。アイドルのことと恋愛。真のアイドルなら、両立ができるはず……。
それでは、今回も宇宙No.1アイドルの恋の行方をご覧ください!
空也side
宗平と呼ばれた人に妹たちの面倒を頼んでμ'sで話をすることになった。
いきなり頭を下げるにこ。それは今日明かされてきたことへの謝罪のようなものだった。
にこ「大変申し訳ありません。わたくし矢澤にこ、嘘をついておりました」
現状できる精いっぱいの謝罪をみんなに向けている。普段自分から頭を下げるようなことをしないにこだからこそ、その誠意は十分伝わった。
でも今聞きたいことはそれではない。こうなってしまった原因の説明を絵里たちは要求している。
絵里「ちゃんと頭をあげて説明しなさい」
頭を下げたままその体制を維持しているにこにその旨を伝えるためみんなのいるほうを見るように言う。
その言葉で顔を上げたにこだが、その前には笑顔は一切なく、怒った顔や戸惑い疑問を感じているような顔があった。
にこ「やだな~。みんな怖い顔して、アイドルは笑顔が大切でしょ。さぁみんなご一緒に、にっこにっこにー」
この状況に耐えられなくなったためか苦笑いを浮かべながら笑顔になることをにこは臨んだ。
しかしこの状況でふざけている余裕は今のにこ以外のメンバーにはない。なんせ、バックダンサー扱いをされているのだから。
空也 希「「にこ(っち)」」
完全にふざけているわけではないとしても大真面目な雰囲気を感じないにこを見た空也と希はそれぞれのお仕置きのポーズをしていた。
そのまま、希は言葉を続ける。にこにとって恐れているものがこれから襲うのではないか。そんなことが希と空也以外のメンバーの脳裏に走る。それは当然にこも。
希「ふざけててええんかな」
そう。現状ふざけてていいのか。なぜならこの話はメンバーの信頼に強くかかわってくるものになる。
希と空也の冗談も何も通さないであろう圧力に圧倒されにこは少しだけ顎を下げる。
にこ「…………。はい……」
いつものにこではないのはもはやだれもが分かっている。しかししょぼくれた様子のにこを見るのは初めて会った時以来なかった。
にこはみんなに今回の件について話した。
穂乃果「出張?」
話を聞いた限りだとにこの母親が出張に行っていて妹たちの面倒を見る人が家にいないから早く帰らないといけないということだった。
ここで父親のことを話すほど無神経なメンバーはだれ一人としていない。
今までの大まかに説明していた内容を少しだけ詳細に話す。時期とやらないといけないことを重点的に。
にこ「そうそれで二週間ほど、妹たちの面倒を見なくちゃいけなくなったの」
確かに小学生以下の子供だけの家での留守番なんて危なっかしい以外の何物でもない。
これでなんでにこが練習を休んでいることが分かった。
絵里「だから練習休んでたのね」
幼い妹の面倒を見ないといけないという確かな理由があった。それなら休むのも無理はないだろう。
しかし、今回の無断欠席で一番問題なのは何も告げずに部活動を休んだこと。
空也「ちゃんと言ってくれればよかったのに」
誰一人としてにこが休むことを知らず、そのことにすら気が付いていなかった。部活が始まって点呼を取るまで誰も気が付かないなんてことが起きてしまえば練習出来ないものが出てくる。
学校を出る前にも聞いていた言葉に少しだけバツが悪そうな顔をした。でもそれからいろいろと反省していなかったわけではなく思うところがあったためか素直に答える。
にこ「そっちに関しては……、さっきも言ったけど悪かったって思ってる。話すタイミングを逃しちゃって……」
確かにあんなに予選通過を喜んでいる時に練習を休むとは言いずらいものがあったかもしれない。そんな雰囲気になってしまったことには空也たち側にも問題があったというわけだ。
それでも言えなかったことはにこにとって反省する部分でもあった。休むことが悪いとしている部活でもないのだから。
ただ、今一番聞きたいことは無断欠席のことではない。
海未「どうして私たちがバックダンサーということになってるのですか」
みんなが気になっていることはこの矢澤家にとってμ'sがバックダンサーとして扱われている。という点だ。
なんでこうなっているのかわからない今、どうしてそうなったのか経緯が気になる部分が多い。
絵里「そうね。むしろ問題はそっちよ」
バックダンサーなんて扱いを受けている理由がいまだにわからない。
一番つかれたくないところだった。このまま家ではこうなっていることを知られたくなかったにこは恥ずかしいことを打ち明けるかのように口籠ってしまう。
にこ「そっそれは……」
最初に謝ってきたときのように頭を下げてしまう。
ただ、この続きを気になっているほかのメンバーたちは気になっているため食い気味でその先を催促する。
にこ以外『それは!?』
気になっていたことをようやく解消できると思ったためかかなり期待しながら続きを待った。
しかしその期待がにこに重くのしかかる。言わなくてはいけないことが言いずらい状況でその期待が重くなってしまい、言いたい言葉が出てこない。
にこ「にっこ……」
そのためいつもの手を顔の横にもってきてやろうとする。
今度はその前に希の言葉で遮られてしまう。
希「それは禁止やよ」
ふざけている余裕が希たちにはないのだ。焦っているわけではない。ただこの出来事に余裕が持てないだけで時間的問題はそこにはなかった。
でも言いずらいことには変わらない。
にこ「うぅ……」
言いづらかったから今まで言わなかった。それなのに言わないといけないというジレンマを今、にこは感じていた。
少しの間だが、黙りこくっている間にまったくの進展がなかったため海未がしびれを切らした。
海未「さぁ、ちゃんと話してください」
きっかけをまた作るようににこに向けて話しかける。そう、ちゃんと話してくれないと伝わらないものだってある。
海未の言葉をきっかけにただにこが話すのを待っているだけではだめだと気が付いた穂乃果は今まで閉ざしてきた口を開く。
穂乃果「にこちゃん……」
どうしても気になることだからにこのことを信頼して話してくれるのを待っている。
その想いが伝わったのかにこも同じく閉ざしていた口を開いた。
にこ「元からよ……」
その口から聞こえてきた言葉はそれ単体では何を意味するものかは分からなかった。
この状況でしっかりと意味を理解できた人は誰一人いないだろう。多分分かったのは妹たちの面倒を見ながらこの話を聞いている宗平くらいだ。
ことり「元から?」
頭にクエスチョンマークが浮かんでいるのかわかるくらいの発音でにこにどういったことなのか詳しい説明を要求することり。
しかし詳しいことを言いたいとは思っていないにこはそのまま強引に押し通そうとしている。
にこ「そう。家では元からそういうことになってるの。別に私が私の家でどう言おうが勝手でしょ」
この話はきっと強引に終わらせようとした中でもヒントを含んでいることなのだろう。この言葉である程度の人間がどんなことかを理解した。
でもまだしっかりと把握が出来ていない人のほうが多い。
穂乃果「でも……」
解決できていない疑問をそのままにしておくほどもやもやすることはないだろう。詳しいことを聴こうと穂乃果が食い下がる。
例え話したいと思ってもにこの中にある何かがそれを言うことにブレーキをかける。
にこ「お願い……。今日は帰って……」
ようやく口にした言葉はここにいる全員を遠ざける言葉。重苦しい雰囲気の中で真剣に言われた言葉を穂乃果たちは聞いた。
にこの言葉がダイレクトに伝わったのかそれを聞いた穂乃果たちはそれ以上詳しいことを聞くのをやめた。
穂乃果「にこちゃん……」
ただ、全員が完全に納得しているかと言われればそういうわけにはいかない。
しかし話を聞くことができない状況になってしまったためにこの言葉通りこの辺で帰ることにした。
穂乃果たちが次々に出ていき最後に空也が残った。靴を履いている空也を律義にもお見送りをしてくれている。まぁほかのメンバーもしっかりお見送りしていたが。
空也「あぁ、にこ。みんながいる時は話せなかったけど、あんまり自分を偽らないほうがいいぞ。罪悪感のほうがでかくなる。それに、あの子たちだけのスーパーアイドルなら なっててもいいと思うけど。みんなに自分が望まない迷惑はかけんな。それだけ。じゃあまた明日」
帰り際のドアを開ける前に軽くにこのほうを振り返り、今日感じていたことをにこに告げる。
そう。にこはこの家で嘘をついているのだ。一番自分自身の心が休まるはずの我が家でほんの少しだけとはいえ自分を偽っている。それがどんなにつらいことかなんて簡単に想像ができることでもない。……でも辛いであろうということは簡単に予想が付く。
今のにこにとって本当に心休まる場所は……あるのだろうか?
空也の言葉を聞いたにこは一瞬目を見開き、すぐに目線をそらした。
にこ「…………。ありがとう」
それが図星をつかれたからなのか、それとも心配されたことがうれしくて真っ直ぐ見ることができなかったのかはわからないがそれでも短くにこはお礼を言った。
その後ろから少しの間まったく声を聴かなかった男の声が聞こえてくる。
宗平「あ、俺もそろそろ帰るわ。夜にまた来る」
にこは穂乃果たちに話をする際にこころたちの面倒を見ていた宗平がにこの家を出るべく玄関にやってきた。
そんな宗平についた来たのか後ろからここあがやってきた。
ここあ「あ! 空也! あの約束、守ってよ!」
子供特有の元気な様子で空也に向かって話しかけてくる。その様子に空也は右手の親指を立てて笑顔で答える。約束とやらを守る気満々の様子で。
それを最後にして、空也と宗平はにこの家から出て行った。
そのすぐあとにこの家の前で宗平が空也のことを呼び止めた。
宗平「なぁ、えっと時坂とか言ったか……」
少しだけ頬を赤くして先ほどあったばかりで自己紹介もまともにしていないのに空也の名前を呼んだ。
名前を呼ばれた空也は宗平のほうを向き話しかけてきた理由を尋ねる。
空也「何か話があるんですか? みんなを待たせているんであるなら短めでお願いします」
確実に実年齢は空也を上回っており、何ならにこたちよりも年上なのだろう。学年にして大学1年か2年。そんな相手に空也は敬語で答える。
ただ、呼び止められた時間が時間でもうすでにそこには穂乃果たちの姿はなかった。置いてかれている状況でそんなに余裕があるわけではない。
宗平「わかった。じゃあこれからこころたちの面倒を俺が見るからにこを練習させてほしい。あいつは俺にとって昔から世話になってたりしたりしてるやつだから」
空也の要望通り、宗平は手短に呼び止めた理由を口にする。
その提案は空也にとって願ってもいないことだった。にこが練習に参加できないのは妹たちの面倒を見る人がいないから。ラブライブの最終予選に出るのに練習をしなければ簡単に通過できるものではない。
空也「……わかりました。……けど、明日までそのことは秘密でお願いします。…………ってことをしたいので」
しかし、今すぐにそのことをにこに提案するのは少しだけ待ってほしかった。それはここあと約束したことを守るため。……多分ここあだけでなく宗平だってこの提案は乗ってくるものがある。話しかけてきたときのあの顔を見れば。
最初に話していた顔の赤みはなくなり、面白そうなことを楽しそうに考えているような表情になった宗平は空也が考えていた通りの反応をしてきた。
宗平「ほぅ。面白そうだな。俺も行っていいか?」
最初からそのつもりだったことを話してくる。やっぱり予想通りだった。宗平はきっと本当のにこのステージを見たことがない。だからこそ空也の提案に即答でうなずいた。
勿論、断る理由なんて一切ないというか……もとからそのつもりだったためまた空也も笑顔で受け入れた。
空也「えぇ。にこのためにはあなたがいることが大事そうですから話をつけておきます。俺と一緒に入れば問題ないようにします」
宗平とにこが話しているところを見てある種の兄弟のような感じを覚えた空也だが、その兄弟というのが今までかかわった人たちを見ていると……どうやらその人たちと同じような感情を2人が持っていることに感づいていた。
そんな空也の思考を知らずにうれしそうな表情でにこの家の隣のドアに入っていく。
宗平「おう! じゃあ頼んだ」
ドアから顔だけをのぞかせて最後に空也に頭を下げる。
それを後に今度こそ宗平は自分の家に戻っていった。
空也「……あれ? 俺の苗字、教えたっけ?」
そんな中である一つの疑問。空也の苗字を知っていることが出てきたが、今はそこまで気にしないでいた。
今一番に考えるべきなのは……明日のこと。それを早くほかのみんなに伝えないといけない。
宗平との話が終わり、穂乃果たちのもとに空也は向かった。アパートの前にいた8人と合流してにこの件について話をすることにした。
凛「はぁ~……」
そのきっかけを作ったのは凛の少々長めのため息。
にこの話を聞いてずっと考えていたことがあるのかあの時一向に話していなかった真姫が口を開く。
真姫「困ったものね……」
本当ににこにはいつも困らせられる。それが今回は初めて出会ったとき並みのものだったのは珍しくもありどうすればいいのかはわからなかった。
そこでにこの話を聞いていて一番疑問が強くなった部分について話しかける。
ことり「でも、元からってどういうことだろう?」
そう。にこの言ったもとからそうだった。そうなっていたということ。この言葉ばかりを聞いていても一向に答えが見えてくる様子がなかった。
その言葉から想像できることを口にする穂乃果。
穂乃果「にこちゃんの家では元から私たちはバックダンサー?」
多分この話だけを聞いているとこの考えに至るのだろう。しかし、それは正解じゃない。
逆なのだ。この言葉を聞いただけの回答ではなく、にこの過去も交えて考えないと完全な正解にはたどり着けない。
空也「いや。逆だよ」
あれほどのアイドルとしての家での扱い。そこを考えると長い時間をかけて形成されているものだと思う。1年もたってないμ'sでのものではなく……。
空也の発言で周りを見た絵里が考え事をしている希の姿を見つけた。
絵里「え? 空也? あれ? 希も?」
考えついたのはさっき話していた空也だけではなかった。にこのことを心配していたからこそしっかりと見ていた人物がいる。それが希。
空也が言った言葉だけではきっとみんなはしっかりと理解できない。そのため最も核心部分をつくであろう言葉を言った。
希「多分元からスーパーアイドルだったってことやと思う」
元から……、あの初めてにこがアイドル活動を始めた時から矢澤家ではにこのことはトップアイドルということになっていた。つまりはそういうことなのだろう。
しかし、これは今回の出来事と今の希の言った言葉をつなぎ合わせるにはにこの過去の出来事を経由していかなければならない。
海未「どういうことです?」
ただ、この話を考えようとして過去のことまで含めることをするかと言われればみんなはしないだろう。
でも、考えているのであれば今どんな状況ににこがいるのかを理解することができる。
空也「にこは2年前にスクールアイドルをやってたにこはみんなに話したんだろう。けど」
自分が目指していたアイドルになったのなら喜んで家族に報告するだろう。それを子供が受け取るなら……それはテレビに出ているアイドルと変わりのないもの。
ただプライドが高いと特にダメになった時の意地が比例して大きくなる。
希「ダメになったときダメになったとは言いだせなかった。にこっちが1年の時からあの家ではずっと、スーパーアイドルのまま……」
μ'sに誘ったときもあんなに自分のことをかたくなに言わなかったにこが独りになった時に家族に報告できるかといえば、きっと全員がNOと答えるだろう。
ここまで話を聞いてようやくにこの過去と今回の出来事が繋がった。みんながにこに対して感じていた疑問はほぼすべて解消された。
海未「確かにありそうな話ですね」
もうみんなが納得した様子で話を聞いた。
細かい様子が分からないにしても大まかなにこの状況を察したみんなは少しだけホッとしていた。
真姫「もぅ、にこちゃん。どんだけプライド高いのよ」
そんな中、出来事の原因がわかったからこそ覚える感情もあって真姫はそのことについて話していた。
プライド……、意地があったから今までの2年間ずっとこの様子で過ごしてきた。いつ折れてもおかしくないはずなのににこはそのまま過ごし続けていたんだ。
ただまぁ、真姫が言うとそれはまた違った意味にも聞こえるようで……、
凛「真姫ちゃんと一緒だね」
重苦しい空気から抜け出せたからなのか凛はそんな軽口を言えるようになっていた。それほどまでに今の空気感は軽くなったのだ。
でも、通常の空気感とはまた違ってまだみんながみんな完全にすっきりしている様子ではなかった。
真姫「茶化さないの!」
かなり真剣に答えたから話の腰を折ってきた凛に向けてツッコミを入れる。
そんな中話を聞いていて、そして真姫の言葉を聞いて少しだけ違和感を感じていた人がいる。
花陽「でも、プライドが高いだけなのかな?」
それが花陽だった。
今までプライドだけでこうなっていると思い込んでいた人たちは花陽の言葉に驚きをあらわにする。
空也と花陽以外『え?』
プライド以外の考えが思い浮かばない穂乃果たちはいっせいに花陽のほうに向く。
ただそんなものを気にせずに花陽はそのまま言葉を続ける。
花陽「アイドルにすごく憧れてたんじゃないかな。本当にアイドルでいたかったんだよ。私もずっと憧れていたからわかるんだ」
アイドル好きとしての共通点のあるからこそその考えを思いつくことができた。にこはアイドルのことになるとみるほうだって活動するほうだって真剣に本気でやってきた。
そんな彼女が、一度アイドルになったと言って失敗してしまった後広くの人に応援されるアイドルではなく、自分の妹たちのためのアイドルになろうとずっと頑張ってきたんだろう。
花陽の言葉を聞いて過去のことをいろいろと思い返してみた。
絵里「1年の時、私見たことがある。そのころ私は生徒会もあったし、アイドルにも興味がなかったから……。あの時、話しかけていれば……」
今の絵里はあの頃に後悔を覚えてしまっている。確かにあぁしていれば成功したかもしれない。
しかし……、時間に強いかかわりを持っている空也だからこそ言えることがあった。
空也「IFの話をしてもいいないだろ。過去の話をするときはそこから反省につなげることができる時だけだ」
過去は変えられない。空也だってもう変えることはできない。でも過去から学ぶものは多くある。
今の過去話でいろいろ思うところが出てきた絵里たちはまた少し考える時間に入った。でも、過去は変わらないということは現在を変えることはできる。これからの行動次第でにこの今は確実に変わる。
穂乃果「そうだね。……あ! そうだ! ねぇ、こういうのはどう?」
すると穂乃果があることを思いついた。にこのために自分たちができることを……。そしてそれは先ほど空也がここあと宗平に約束したものだった。
みんなが穂乃果の言葉を聞き、それを少しの間考えていた空也が細くして詳細を決め、穂乃果の提案が賛成され、作業をするべくある人は学校に、ある人は自分の家に向かった。
次の日の放課後。急きょあることをするために空也はにこの家に再び出向き、宗平とにこの妹たちを連れて学校から出ていくにこを待っていた。
空也「よぉ。にこ」
考え通りにこは何も知らない様子で家に帰ろうとしていた。そのまま帰られるとやることが出来なくなってしまうためすかさず声をかける。
昨日しっかりと伝えておいたのに校門まで来ている空也に少しだけ呆れつつ、今日もいけない旨を伝えようとする。
にこ「練習なら出られないって……!」
しかしにこが空也のほうを見ると、毎日必ず見ている顔が、でもここで見ることはほとんどない顔がそこにはあった。
長い時間を待っていたわけではないがにこがそこに来るのを待っていたこころたちはとたんに笑顔になり姉のもとに駆け寄っていく。
こころ「お姉さま!」
ここあ「お姉ちゃん!」
虎太郎「学校~」
そしてその3人についていくようにゆっくりとにこのもとに向かう宗平。
宗平「よう。にこ」
右手を挙げながら軽く挨拶をしていく。しかし、どこか興奮気味の様子が見え隠れしていた。
こころたちと宗平を見たにこは本来ならここにはいないはずなのに確かにそこにいる4人に驚きを、そしてそんなことをした空也の行動を疑問に思ってそれを口に出す。
にこ「ちょっ、なに連れてきてるのよ!? って宗平まで何でいるの!?」
まだ妹たちだけならよくわかる。面倒を見るのに一緒にいたほうがいいと思ってということだったのなら空也の行動にも合点がいく。
しかし、宗平まで一緒だと学校に連れてくる意味が全然理解できなかった。家で面倒を見ている時ににこが練習をしていればいいのだから。
一向に納得できなかったであろうにこに空也がその答えを話す。
空也「あぁ、アパートでここあちゃんに会った時に見せるって約束してたんだ。ならサプライズもいいかなって。それを話したら宗平さんも来たいって。みんなも見たいよな。にこのステージ」
そう。今日みんなに来てもらったのは、にこのライブを見せるため。今までにこがアイドルとして活躍をしているところを見たことがないということを聞いてライブを見せるということをここあに約束していた。
話を聞いていたこころはライブが見れることにこの上ない喜びを感じていた。
こころ「はい!」
しかし何も聞いていないにこはその場所でただただ呆然としていることしかできなかった。
にこ「すっステージ?」
いきなりステージをすると言われても何が何だかの状態で思考が追い付いていないのだが、半ば無理やり空也にアイドル研究部の部室に連れていかれた。
これから待っているのはにこによる、にこの初期のファンのためのにこにとってとても大事なライブ。
今ここにライブの幕が開かれる!
side out
にこside
空也に部室目で連れていかれると室内には希と絵里がいた。突然にこは目隠しをされ服を脱がされる感覚を覚えながらそのままの状態で屋上前の踊り場に連れてこられた。
目隠しが外されるとにこは自分の姿を見て驚きをあらわにする。
にこ「これって……」
それは今まで着ていた衣装ではなく、初めて見るものだったからだ。今まで作っていたなんて話は聞いていないし、絵里たちは制服姿のまま。
自分の姿に戸惑っているにこを見て絵里と希がそれぞれの感想を話す。
絵里「にこにぴったりの衣装を、私と希で考えてみたの」
この衣装のデザインを担当したのは希と絵里の2人だった。何かができないかと考えた時にできると思ったのがにこに似合う服をデザインするということだった。
衣装のデザインのことを絵里が話すと次は希がにこをもう一度顔から足までの一通りを眺めてみる。
希「やっぱりにこっちはかわいい衣装がよく似合う。……スーパーアイドルにこちゃん」
少しうれしそうに、そして寂しそうに呟いた。
希の様子を見て何か感じることがあったのか希のほうをじっくりと見つめる。
にこ「希……」
なぜそう思ったのか……。それは希がにこのことをちゃん付けで呼んだからなのだろう。
そんな話をしていたが今は屋上ににこを待っている一番のファンたちがいる。
絵里「今! 扉の向こうにはあなた1人だけのライブを心待ちにしている。最高のファンがいるわ」
この話はここで終わりにしてにこに屋上に出ることを促す絵里。
自分のためにここまでしてくれる同い年の友人にある種の感動を覚えた。
にこ「絵里……」
でもここまでしてくれたからには2人の努力を無駄にしないようにステージに立つしかない。このための練習なんて一切していないし、1人でステージに立つなんてそんなに経験があるわけじゃない。
それでもスーパーアイドルとしてステージに立たないなんて選択肢はない。なぜなら、そこには一番自分のことを応援してくれるファンがいるのだから。
絵里「さぁ、みんな待ってるわよ」
この絵里の言葉を最後ににこは覚悟を決めてステージのある屋上の扉を普段よりも重く感じるその扉を開けて宗平と妹たちが待っている場所に向かった。
side out
宗平side
自分たち以外誰もいない屋上に連れてこられた宗平とこころたち。
こころ「ここがお姉さまのステージ?」
きっと考えていたのはファンのみんなが押し寄せているものを考えたんだろうけど、そこにあったのは簡易的なステージと自分たち以外誰もいない奥田世だったことに少しだけ疑問が頭をよぎる。
ここあ「誰もいな~い」
虎太郎「屋上~」
それはこころだけの感想ではなくここあも虎太郎も感じていたものだった。
多分この中である程度この状況を予想していた宗平はみんなを納得させるためにあぐらをかいてその上に虎太郎を乗せてながらそう呟いた。
宗平「まぁ、にこは俺たちのためだけに準備してくれているんだから、いい子で待ってような」
その言葉に両隣にいるこころとここあは素直に聞きにこが来るのを待っていた。
side out
にこside
こころたちが待っていた時間もそう長くはなく覚悟を決めて出てきたにこの表情は笑顔よりも真剣な表情のほうが強かった。
虎太郎「……アイドル……」
しかし初めてこころたちが見るにこのアイドル衣装に叫ぶとか、そういう感情よりもただただ見入ってしまっていた。まだ小学生以下の子供たちなのに。
そんな中、今までにこのことをスーパーアイドルとして慕ってきた3人に向けて話しかける。
にこ「こころ、ここあ、虎太郎。歌う前に話があるの」
多分宗平はある程度のことを知っている。幼い時からにこのことを見ていたから。だから今回説明するのは妹たちの3人だけ。
歌うと思っていたにこが自分たちに話があるということを告げるとその場で驚いてしまう。
3人『え!?』
自分が叱られてしまうんじゃないか。そんなことが心の頭をよぎるが、にこが話す内容をそのまましっかりと待っていた。
そんな状態でにこは一度目を閉じてもう一度話す覚悟を決める。
にこ「実はね。スーパーアイドルにこは今日でおしまいなの」
大きく深呼吸をした後にしっかりとこころたちのことを見つめて終わりを告げた。
しかしその言葉を受け取った3人は突然のことに衝撃を覚えた。
3人『え~!?』
なんせアイドルを止めるとしか聞こえないものだったのだから。
その疑問を解消したいと思ったこころがにこにどういうことなのか尋ねる。
こころ「アイドル。やめちゃうの!?」
ないであろうと思っていたことだったのかストレートに聞いて速い答えを待つ。
そして返ってきたのはきっと待っていた言葉だったのだろう。
にこ「ううん、やめないよ。これからは、ここにいるμ'sのメンバーとアイドルをやっていくの」
でも、後半の意味はきっと最初ではよくわからない。なぜなら矢澤家にとってμ'sはアイドルではなかったから。
まだアイドルなのではなく……、
こころ「でも皆さんは、アイドルを目指している……」
μ'sは……
虎太郎「バックダンサー……」
にこのためのバックダンサーでにこのもとでアイドルのことを勉強している最中。……そのはずだった。
だけど、本当は違う。それは今年からずっと過ごしてきたにこがどう思っているかによって変わる。
にこ「そう思ってた。けど違ったの。これからは、もっと新しい自分に変わっていきたい。この9人、ううん。そこにいる人もいれて10人かな。でいる時が1番輝けるの。1人でいる時のずっと、ずっと……。今の私の夢は宇宙ナンバー1アイドルにこちゃんとして、宇宙ナンバー1ユニット『μ's』と一緒により輝いていくこと」
入り口付近で待機している空也のことを指さしながら自分の思っているμ'sのことを話す。そして新たな目標をここで誓う。
自分が今やりたいこと、グループの目標としては今まであったが個人の目標はあまり話してこなかったこの状況で口に出す。
にこ「それが1番大切な夢、私のやりたいことなの!」
新しい目標ができた人間は強い。今、この瞬間に矢澤にこという1人の女神は新たな一歩を踏み出した。
そしてその進化を見ていたこころたちは少しの戸惑いと、輝いているにこの姿にいい意味で複雑なことを感じていた。
こころ「お姉さま……」
宗平「にこ……」
でも確かに成長を感じられる事柄だった。宗平は黙って今まで見ていたがにこの姿に感動を覚えた。
だから今のにこを見れるのは今が最後。その姿を妹たちにしっかりと目に焼き付けさせるために、にこは歌う。
にこ「だからこれは私が独りで歌う最後の曲。にっこにっこにー。聞いてください『どんなときもずっと』」
体育祭の後に空也が書き上げた新曲をにこが歌う。これは独りで歌いながらもその内容はμ'sのみんなに対しての想いを告げているのではないかと思うほど強い曲になっていた。ライブは成功。今日この日に、にこはひとつ自分の殻を破ったのだった。
ライブ終了後屋上前の踊り場で、宗平はにこに話しかけた。
宗平「にこ。よかったじゃないか。もう大丈夫そうだな」
歳がそこまで離れているわけではないがにこのことを長い時間見ていた宗平は新しいにこの姿を喜んでいた。
でも今までのにこが変わるわけではない。いつもの様子でにこは宗平にこたえる。
にこ「当り前じゃない! あと、1つだけ決心したことがあるからそのせいでもあるのかも」
今回の出来事で、あることを思い出したにこはそのことを素直に受け入れようとしていた。
それははたから見ればどういうことに気が付いたのかはわかるだろう。だけどいざかかわりを持ってみると理解することは難しい。
宗平「……? あと、これからにこは練習をしてくれ。こころたちのことは俺が面倒みるから」
首をかしげてどんなことなのかを考えるが考えつかないのでいったんその考えを消し去り、にこに今後のことについての話を切り出す。
にこが練習に参加できないのは妹たちの面倒を見ないといけないから。だけど、それが解消されるならにこは練習に出ることができる。
にこ「良いの……? あんたも勉強とかあるんでしょ?」
非常にうれしい提案だった。だけど宗平にも宗平の予定があるはずだ。大学の終わりは高校よりも遅いはずだし、授業についていけなくなってしまうことだってある。
そんなにこの考えというか気づかいというかを聞いた宗平は途端に笑顔になり、
宗平「俺をなめるな。俺は……この
勉強の苦手なにこを引き合いに出し、大丈夫だということを告げる。アイドルとして上を目指すには練習に力を入れないといけない。だからこそどんなに少ない時間でも練習をしてほしいと思った宗平はこころたちの面倒を見ることにしていた。
引き合いに出されたのなら、幼馴染として長い時間を共にした宗平になら任せても大丈夫だと感じる。
にこ「…………言ったわね? じゃあ、お願いするわ。宗平、にこが有言実行するところを見てなさい!」
宗平に対して挑発的な言葉をかけてよりやる気を出すにこだが、そのほかにやることができ新しい支えができたにこだった。
今回で、にこ回は終わり。にこと宗平の関係って義之と音姫、由夢。清隆と姫乃のような関係なんです。それは読んでいればなんとなくわかりますかね?
そして次回から『新しい私』回。いよいよあれを活かせる話を書くことができそうです!
新しくお気に入り登録をしてくださったyukkyさんありがとうございます!
次回『旅だった2年と残された奇数組』
それでは、次回もお楽しみに!
Twitter始めました。
https://twitter.com/kuuya_soranari
どうかよろしくお願いします!