ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~ 作:そらなり
今回は新キャラ出てきます! どんなキャラなのかは私の活動報告の中の何かを見ればわかります。
それでは、逃走劇を繰り広げていた彼女と彼の最後をご覧ください!
穂乃果たちのことをμ'sだと認識したこころは急に穂乃果たちを誘導しながら屋根のある駐車場に向かって走り出した。
やがてこころが止まり車の陰に隠れるとようやく落ち着いて話せるようになる。
希「にこっちに妹がいたなんて」
落ち着いた今でも驚きが残っているが最初の頃よりはマシになった。
そして先ほどの会話で少女の性格がどことなくわかった。
真姫「しかも礼儀正しい」
まったくにことは似ても似つかない礼儀正しさを持っているこころを見て誰しもがそう思った。
普段のにこは自分の欲望に忠実で、言葉遣いだっていいとは言えないほうだ。その点こころのことを見ていると同じ空間で生活しているとは思えないほど礼儀正しかった。
凛「まるで正反対にゃ」
そう。まるで正反対の性格であることをここにいる全員が共通認識としてとらえていた。
でも、その礼儀正しさと今の行動がどんな意味を持っているのかはまったくもって予想できなかった。
穂乃果「あの~、こころちゃん。私たちなんでこんなところに隠れなきゃ……」
今穂乃果たちがいるのは屋根のある駐車場に止まっている車の後ろの陰に隠れていた。なんでこんな場所にいなくてはいけないのか。それが本当にわからなかった。
しかし、感じ取れる礼儀正しさとは違う行動をしている。わざわざ隠れて、ぶっちゃけ言ってしまえば非常識な行動をしているほかない。
こころ「静かに! 誰もいませんね。そっちはどうです?」
だけどそんなことを気にせずに心は自分がいまベストだと思える行動をとっていた。そして自分では見れなかった反対側を見ている海未にどうなっているのかだけを尋ねた。
人まで巻き込んでいる分、余程本気で臨んでいる行動であることが見て取れた。
そう言われて心が見えている反対側で何か特別なことがあったのかどうかを報告する。
海未「人はいないようですけど」
人の通りはなく、特に変わったことがあったわけがない。それが何を意味しているのかは分かっていない海未だけどそれをすぐに答えた。
だけど不安げに話していたのがばれてしまったのか尋ねてきたこころはそれをやる気のなさとして受け取ったのかより真剣身を増して話し始める。
こころ「よく見てください。相手はプロですよ。どこに隠れているかわかりませんから」
どうやらこころは何かのプロから逃げているようでかなり必死に周りの安全の確保に全力を注いでいた。
今日何度目の疑問だろうか。こころの言ってた言葉にまたはてなマークを立てずにはいられなかった。
穂乃果「プロ?」
プロといってもどんなプロなのかもわからないしこの行動がどんなことを意味しているのかすら察することすらできなかった。
そんな思考巡りをしているとこころから新しい指示がμ'sのみんなに告げられる。
こころ「大丈夫みたいですね。合図したら皆さん一斉にダッシュです」
どうやら安全確保は終わったみたいで、自信をもって行動しても平気という確証を得られたからこそみんなに伝えて実行しようとしていた。
ただ、一斉に走らないといけないということにまたもや疑問を覚えてしまう。今日が疑問が尽きない日なのだろうかと錯覚してしまうくらいに。
穂乃果「なんで?」
安全が確保されたのであれば急いで移動するほどのことでもないだろうという考えが穂乃果の中にあった。だからこそ今のこころとの発言を理解することができなかった。
しかし相手は子供。説明ができると聞かれればいえると言い張ることができない。
こころ「決まってるじゃないですか。行きますよ!」
今のこころの状態は自分の考えていることはみんなが想像できることで、短い言葉でも簡単に通じると思い込んでいる。だから自分についてきてくれるのであろうとも考えている。
だからこそこころは穂乃果たちの回答を聞かずにとあるアパートのほうに入っていった。それも宣言した通り駆け足で。
穂乃果「ちょっちょっと~!」
合図が唐突に始まったことで驚きを感じていた穂乃果たちは少し動き出すのが遅れたがこころを見失うなんてこともなくこころが入っていったアパートのほうにみんなで向かった。
この後に今日の疑問が少しずつ明かされることになるのだが、今は目先の疑問で穂乃果たち"8人"の頭はいっぱいだった。
自分たちが相談していた場所からそれほど遠くない……というかほぼ真後ろにあったアパートの中にこころの案内で入っていく。
こころ「どうやら大丈夫だったみたいですね」
全員が入ったことを確認し、そしてまた外を激しい目つきで見つめている。まるで何かを探しているかのように。
ただ、ここまで行動しても先ほどまでのやり取りは何の意味があったのかはわかっていない。何のためらいもなくこのアパートに入ったことでここがにこの家であることが見て取れた。
海未「いったい何なんですか?」
真剣に外を眺めているこころの行動に何度も謎に思う。礼儀正しいこの子が……ロビーの中のみんなが思っていた。
この行動をしなければいけないということはどういうことが起きているのか。それを考えると思い浮かぶことが1つだけあった。
花陽「もしかしてにこちゃん、殺し屋に狙われてるとか?」
ここまで慎重に移動しているということは何か命に係わることがあるのではないか。花陽はそんなことを考えていた。
でもそれはこころの考えていた答えとはかけ離れていた。アイドルにこだわるにこの性格が妹であるこの子にも影響しているなら想像はできるようなことがあった。
こころ「何言ってるんです。マスコミに決まってるじゃないですか。パパラッチですよ、特にバックダンサーのみなさんは顔がばれてるので危険なんです。こられるときは先に連絡をください」
マスコミ……。普通であればスクールアイドルが人気とはいえ張り込みをするほどのものにはなっていない。それは考えればわかることでも、こころのようなまだ幼い少女にはあまり理解することができないものがあったようだ。
ようやく疑問点が解消されたと思ったら今度はまた新しい疑問点が浮かび上がってきた。
絵里「バック……?」
希「ダンサー?」
真姫「誰がよ?」
それはこころの言葉を聞いて出てきた単語。それは今まで自分たちのことを表すのに使われたことが一切ないものだった。
"バックダンサー"主にメインで歌っている人の後ろで踊っている複数のダンサーのことを表すもの。自分たちがそう呼ばれていることを認識した瞬間、疑問と同時に何か重大なことを知ってしまったという思考がみんなの頭の中を巡る。
穂乃果たちのそんな考えを知らずに疑問に思っているだけだと思っているこころはその疑問を回収するべく言葉をつづけた。
こころ「スーパーアイドル矢澤にこのバックダンサー『μ's』」
この話によると先ほどのメインとなる人はにこで、μ'sの"8人"はそのサブ的なポジションを担っているという認識でこころはいた。
その事実が明かされ、穂乃果たちはその耳を疑った。
ここにいたメンバー『はぁ~!?』
なんでにこが1人メインということになっているのか、バックダンサーという印象はどこから来たのか。そんな疑問が一気に押し寄せてくる。
ただ、そんな疑問はまたこころによって解消される。
こころ「いつも聞いています。今お姉さまから指導を受けて、アイドルを目指しておられるんですよね」
自分の姉の話になったからなのかかなりテンションが高い様子で語っている。
その言葉を聴いた瞬間、今までの疑問がある程度繋がった。
絵里「……。なるほど……」
海未「状況が読めてきました」
真姫「忘れてたわ。相手はにこちゃんだもんね」
この子はにこにいろんな話を聞かせてもらっているようだ。そしてにこの性格は自分のことを大きく見せようとする傾向がある。それが意味するのは当然見栄を張った嘘をついていたということだった。
その事で、多少の怒りを覚えるメンバーが数人いた。
そんなメンバーを煽りたかったのか、それともただショックを受けていたと感じ取って励まそうとしていたのかはわからない。でもその言葉をこころは言い放つ。
こころ「頑張ってくださいね。だめはダメなりに8人集まれば何とかデビューぐらいはできるんじゃないかって。お姉さま、言ってましたから」
いちいち言い方に棘のあるような言葉を言うこころは無自覚に穂乃果たちの怒りのボルテージを確実に上げていく。中には怒りよりも呆れの感情のほうが強いものもいるが全員が全員怒りの感情を覚えていた。
なかにはこころの言葉を聴いた瞬間に爆発させるメンバーがいた。
真姫「何がだめはダメなりにはよ!」
にこ同様プライドの高い真姫がマイナスのように聞こえる言葉を聞いて苛立ちをあらわにする。
ただその時の顔は本当に起こっているのを表現したかのようなもの。それを見たこころは何かを感じ取ったようで再び口を開いた。
こころ「そんな顔をしないでください。スーパーアイドルのお姉さまを見習って、いつも『にっこにっこにー』ですよ」
にこが良くやるものを妹のこころがマネしながら笑顔になってほしいと告げる。
しかしそれを見てみると、ここにいないにこに対して苛立ちの解消はできなかった。
ここにいるメンバー『…………』
だからみんなはこころのことを黙って見つめることしかできなかった。
一向にマネしてこないことを確認したこころは一緒にやればいいことを理解していないと判断したみたいだった。
こころ「皆さんご一緒に、にっこにっこにー」
ずっと同じ動きをしているこころはマネしてくれることを期待しながら待っていた。
しかしマネをするよりも早くにすることがあった。
絵里「ねぇ、こころちゃん」
それを告げるために一度名前を呼んでにっこにっこにーをしているこころの動きを止めた。
一度名前を呼ばれると何の用なのかが気になり話しかけてきた人のほうを向く。
こころ「はい?」
それを確認した絵里は今すぐにでもやりたいことをやるべくなるべくやさしい声でこころに向かって話しかける。
絵里「ちょっと、電話させてくれる?」
かける先のことはもう誰もが分かっていることだろう。その人にかけるために一度、こころに断りを入れた。
苛立ちの部分は楽しんでいるためこころは感じ取ることができなかったみたいで、笑顔のまま絵里に対して答える。
こころ「はい!」
その後ろでこころはにっこにっこにーの練習をしているが、絵里は気にせずににこに電話をかける。しかし結果は留守電。いつものにこのテンションでの音声が流れる。
発信音の後にメッセージを録音できる時間となった。その時間を利用して言いたいことを言う。
絵里「もしもし。わたくし、あなたの"バックダンサー"を務めさせていただいてる。絢瀬絵里と申します。もし聞いていたら、すぐ出なさい!!」
バックダンサーの部分を強調して嫌味たらしく言い放つ。そしてこれは留守番電話サービスでも聞こえる状態になっている。聞いている可能性を考慮して話している。
絵里が言い出したことにより我慢していたメンバーたちの怒りが爆発する。
真姫「出なさいよ。にこちゃん!」
海未「バックダンサーってどういうことですか!?」
凛「説明するにゃー!」
普段はにこのすることを面白がって弄る凛でさえも今回のことにはお怒りのようだった。
すると穂乃果の携帯に着信が入った。その相手とは……
穂乃果「もしもし空也君?」
今はこの場にいない空也からだった。話している時の穂乃果はどんなことを言われるのか何にもわかっていなかった。
今、空也は穂乃果たちの中でにこを尾行していることになっている。それが間違えではなかったことに次の空也の言葉で気が付いた。
空也『あぁ、俺だ。なんかにこに言ったみたいだけど、どうした? にこがすっごい怯えてんぞ。携帯のバイブレーションみたいに……』
そんな空也が本当に尾行していることが分かる発言とあの留守電を聞いていたことが穂乃果たちに伝わった。しかもそのおびえ方が尋常じゃないくらいひどいものだったということも同じくして……。
しかし今のこの状況を言葉にしようとしても伝えられる気がしなかった穂乃果は話すことよりも見ることを進めることにした。
穂乃果「う~ん。そのままにこちゃんについて来ればわかると思うよ」
にこが来るのはおそらく自分の家。だからにこについてくればここにたどり着くし、この状況を見ればどんなことが起きたのかなんとなく理解することができるであろう。
穂乃果の言葉を素直に受け入れ、にこのことを尾行しなおそうとする空也。
空也『そうか。あ、じゃあばれそうだから切るわ。また後でな』
多分周りに留守電が聞かれたかもしれないということで今のにこは周りをきょろきょろしているのだろう。そのせいで空也がばれる可能性が少しだけ上がった。
その報告を受けた穂乃果は空也がここにやってくるということが分かりほっとした様子で返事をする。
穂乃果「うん。またね~」
空也と話している時間に絵里や海未たちの言いたかったことを言ったためか怒りが少しだけ収まりつつあった。
その後にこの家に上がったこころの案内で穂乃果たちはにこの家へと足を踏み入れた。
穂乃果「ここがにこちゃんの家」
そこはアパートの1部屋。そこまで狭いわけではないが別段広いわけでもない。にこが住んでいる家を知らなかったからこその驚きがそこにはあった。
そしてその部屋の中にまだ5歳前後の年にしか見えない少年がこちらを見ていた。
こころ「弟の虎太郎です」
その少年の名前をこころが紹介する。こころの弟ということはにこの弟であるのと同義であるため、虎太郎も矢澤一家の一員だった。よく見てみると性別の違いがあるものの似ている部分は多数見受けられる。
そんな虎太郎なのだが入ってきたことりたちを見るなりおもちゃのハンマーを持っていないほうの手で指をさし、こころと同じようなことを言い放つ。
虎太郎「ばっくだんさー……」
鼻水を垂らしながら幼さ全開の悪気のない言葉を穂乃果たちを襲う。
その言葉に少しだけ傷つきながらもとりあえず挨拶はしておく。
ことり「あはは。こんにちは」
今のことりは普段の笑顔ではなく、苦笑いしながらのあいさつだった。
先ほどの空也の連絡があったようににこはまだ帰ってきていない。そんな中でこころが普段のにこの様子を教えてくれる。
こころ「お姉さまは、普段は事務所が用意したウォーターフロントのマンションを使っているのですが。夜だけ、ここに帰ってきます」
しかしにこが過ごしているというマンションの特色といえる部分はこの付近では聞くことのないようなものだった。
夜にはここに帰ってくるという点をふまえるとこの東京の中では早々みられない場所にある。
真姫「ウォーターフロントってどこよ」
海岸付近じゃないと行けないそのマンションのことを言っているこころに向かって真姫がツッコミを入れる。
だけど、こころはその場所を特定しようとしての質問だったと判断したのかバレることを危惧して話すことをやめた。
こころ「あ! それは秘密です。マスコミに嗅ぎ付けられたら大変ですから」
確かに場所を聞かれたら大変な人たちは存在する。でも多分にこから詳しい場所については聞いていないのだろう。
それでも目を輝かせてにこを尊敬している様子のこころに思わず苦笑いを浮かべてしまう穂乃果。
穂乃果「あはははは……」
ことり同様に笑顔が引きつっている。
ここまでにこの言っていることを信じている様子に再び疑問を感じ始める。
花陽「どうしてこんなに信じちゃってるんだろう……」
にこの言っていることはほとんどがちゃんとした証拠のないようなもの。
そして自分たちがどんな立ち位置にいるのかはネット上でならいくらでも見れるはずなのだ。
海未「μ'sの写真や動画を見れば、私たちがバックダンサーでないことぐらいすぐわかるはずなのに」
それなのににこの言っていることを素直に信じている。そんな状況に違和感を感じ始めた。
その違和感を解消するためにことりは近くにいる虎太郎にあることを聞いてみる。
ことり「ねぇ、虎太郎君。お姉ちゃんが歌ってるところとか見たことある?」
それは自分たちの活動の様子を自分の目で見たことがあるかということ。これが分かればもしかしたら何がどうなってこの結果にたどり着いたのかが分かるかもしれないから。
ことりに聞かれた虎太郎は壁に貼ってある何かを指さして質問に答える。
虎太郎「あれ~……」
そこにあったのはμ'sのポスターだった。しっかりと9人が写っているポスターだったのだが、撮った人たちからすると何か違和感を感じるものだった。
ただ、普通に紹介された瞬間はその違和感を感じることはできなかったみたいで、少し安心した様子でことりが喜んでいた。
ことり「μ'sのポスターだ!」
これで説明ができると思ったのだろう。しかし、その考えさえもポスターを見るとできそうもない気がしてきた。
まず違和感を真姫が感じ取った。
真姫「いや、何かおかしい」
じっくり見てみるとどこかがおかしいことに気が付く。それは撮った時と違うポスターの様子だった。
真姫の発言でみんながみんなもう一度ポスターをじっくりと見る。
穂乃果「え?」
ここにいるメンバー『合成!?』
じっくりと見た結果……、穂乃果とにこの顔が入れ替わっていたことに気が付く。あの画像を見ればμ'sがバックダンサーと言われても信じてしまうかもしれない……。ただ合成が雑であったため穂乃果の顔の横にはなぜか黒髪が、にこの顔の横にはオレンジ色の髪の毛が覗けたのだが。
リビングにあるポスターを見た後こころの案内でにこの部屋に上がらせてもらった。
穂乃果「ここ、にこちゃんの部屋?」
入った瞬間今まで本当に同じアパートの部屋にいたのだろうかと感じてしまうほどピンク一色の部屋だった。
さらにはその部屋に飾ってあるμ'sのポスターもリビング同様に編集されていた。
絵里「これ、私の顔と入れ替えてある……」
海の別荘に行ったときに撮った写真から作られたポスターは絵里と真姫の顔が入れ替えてあったり、にこがメインの写真がコルクボードにいっぱい張られたりしていた。
それに気が付いた凛はそれをみんなに伝えるため指をさしてコルクボードを示す。
凛「こっちもにゃ~」
この部屋には雑な編集というか切り取ってセロハンテープで止めただけの合成写真に自分の写真がいっぱい張ってあるものと、にこによるにこのための部屋のように思えた。
流石にここまでの努力?をしていることを知って複雑な感情を覚えた。
絵里「わざわざこんなことまで……」
それだけ目立ちたかったのか本当にいろいろな労力を使っての合成写真だった。……雑だったけど。
そんな写真を見ているとそれを作るために行動していたにこの姿が簡単に想像することができた。
穂乃果「涙ぐましいというか……」
写真を切り取ってそれに合うように貼り付けをしたり、切る用の写真と張る用の写真を用意してずれの少ないように貼る。そんな想像をしていると何とも言えない感情がにこに向けられていた。
そんな話をしているとこころに連れられてこの部屋に入ってきたときと同じ音が部屋の中を駆け巡った。
音のしたほうを見るために穂乃果たちはにこの部屋から玄関をのぞき込んだ。
にこ「あっあなた達……」
そこには穂乃果たちがここに来た一番の目的の人物、矢澤にこ1人の姿が買い物袋を持った状態でいた。
穂乃果が帰ってきたにこに対して名前を呼ぶがそのすぐ後にこころが感覚を開けずに話しかける。
こころ「お姉さまお帰りなさい。バックダンサーの方々がお姉さまにお話があると」
今ここに穂乃果たちがいることの理由をこころが代わりに話してくれる。そしてその言葉はにこが穂乃果たちに対して聞かれたくなかった言葉の1つでもあった。電話の時にばれてしまったこともあるがこうやって目のまでばらされるとさぞかし心臓に悪いものがあるのだろう。
流石にばらされてからでは穂乃果たちのほうを真っ直ぐに見ることができなかった。
にこ「そっそう……」
だからにこは目をそらし冷や汗を流しながらこころに返事をする。
そのあとに、にこの部屋から海未が出てくる。しかしその表情はものすごく笑顔だった。
海未「申し訳ありません。すぐに済みますので、よろしいでしょうか?」
しかし次の瞬間言葉を話し終わるとその表情が笑顔から真顔に変わる。何の飾り気もない正真正銘の真顔に。
その無言の圧力がにこのことを襲う。
にこ「えっえっと……」
何も言わない海未ににらまれているため声がまともに出ない様子でそのまま目を泳がせ続けていた。
その時の内心はおそらく携帯の留守電サービスを聴いたのだろう。家に来ていることが分かっていても家の中にもでいることは想像がついていなかったため、
にこ(なんで家の中にまでいるのよ!? さすがに帰ったと思ったのに)
もう帰っていると判断してこの家に戻ってきたのだがどうもその予想が外れてしまった。
もうこうなったらやることは1つ。ここから逃げるしかない。そのため手に持っている買い物袋を足元に置き踵を翻し後ろを向く。
にこ「こころ。悪いけど、わっ私今日仕事で向こうのマンションに行かなきゃいけないから。じゃ!」
こころたちに違和感を持たれないように最初にくぎを刺してにこはこの場から立ち去った。
その行動を認識するまでの間にわずかなラグが存在していた。
海未「あ! 逃げた!」
先に逃げてしまったにこをもう一度追いかけることになる。にこはそのままアパートのエレベーターがあるところまで走っていった。
その後ろを一番このことに納得のいっていない絵里と海未と真姫がにこを追う。
にこ「なんで何度も逃げなきゃいけないのよ!?」
後ろを見ながら追ってくる3人をどうやって撒くかを考えていた。
しかしその前にエレベーターからやってきた2つの影がにこの動きを止めた。
空也「あ! 君のお姉さんだよね?」
エレベーターから降りてくる空也はにこのことを指さしながら一緒に乗っている少女に向かって話しかける。歳はこころよりは幼く虎太郎よりはしっかりしているくらいの年齢だった。
空也に聞かれた少女は向かってくるにこに向かって抱き着いた。
???「そうだよ。お姉ちゃんどうしたの。そんな急いで」
流石に今帰ってきたであろう姉のことをうれしく思ったその少女に抱き着くなというほうが無理な相談であった。
もう逃げられない。そんな考えがにこの脳内を巡る。
にこ「ちょっとね……」
すでににこの体は妹によってとらえられているため無理に動くことはできない。だからがっかりしながらも言葉を返すのだが、その声には力がなかった。
そんな様子を今知る追ってきた凛たちは抱き着いているにこの妹に驚きを感じる。
凛「もう1人妹がいたんだにゃ」
今家にいるこころを虎太郎を合わせて3人もの姉弟がいるということに多くても2人の姉妹しか見たことのなかった凛たちは驚いていた。
妹に抱き着かれ思うように身動きの取れないにこに近寄って空也は耳元で呟く。
空也「チェックメイトだ。にこ」
それは完全に空也たち側の勝利を意味する言葉だった。にこの逃亡劇は今ここで空也たちの勝利を決定づけ幕を閉じた。
side out
そんな終わり方を見せたこの逃亡劇だがそのすぐあとにこの住んでいる部屋の隣のドアが開く。
???男「騒がしいな……。あ、にこ。帰ってきたのか」
そこには高校生にしては大人びている青年が立っていた。
その人物の様子を知っている様子でこころたちの様子見るように話しかける。
にこ「あ、
そのある程度の覚悟が見えた。宗平と呼ばれた青年はにこの言葉にうなずきそのまま部屋に戻る。
ようやくここですべての謎が明かされることになりそうだ。
新キャラが出るといって最後にちょろっと出ただけ……。もっと本格的に出せると思ったのに……。このキャラはいただいたものでもあるのに……。
でもそれは次回! 次回に持ち越しです! それまでお待ちください!
次回『最後のステージ』
それでは、次回もお楽しみに!
Twitter始めました。
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どうかよろしくお願いします!