ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

今回で長かった体育祭回も終わり、この話が始まった理由はえみつんの曲をベースにした話が書きたかったからで、前の探求回よりは深い内容ではないですが、歌詞から伝わる応援部分を表現できていたらいいなと思います。

それでは、最後の体育祭の様子をご覧ください!


前に、マエニ、ススメ

にこside

 

 仮装リレーの後のプログラムは大玉転がし。3色のそれぞれが大きな玉を3往復するように運んで先にゴールしたほうの勝ちというもの。これに、どうやらにこが参加するらしい。出場する生徒が集まり5人のグループが30人が3チーム入場してきた。

 

 そんな中でにこを見つけるのが難しかったわけではなかった。それはなぜかというと……。

にこ「なんでにこがこんな格好しないといけないのよ!! 急に視界が暗くなったと思ったらなんでこんな格好になったるのよ!?」

 にこの格好は半そでの白いシャツに胸のところに『に こ』と書かれた体操服を着ていて、その背中には真っ赤なランドセルが背負われていた。仮装リレーが終わったというのに。

 

 自分がしているまったく周りと違う格好でいることに恥ずかしさと怒りを覚えたにこは周りに向かって問いただす。

にこ「ねぇ!! 誰がこんな格好にさせたのか誰か知らないの!? 誰か見ているはずでしょ!!」

 そう言っても周りの人たちはほかの色の人を含めて胸を手で隠しながらみんながそっぽを向いていた。

 

 その様子を見たにこはこんなことを仕掛けてきた相手の予想がついてきた。

にこ「……そう。もう着替えている時間もないし、この格好で出るけどみんなは気にしないでくれる? ランドセルを下したいけど。置く場所ないし……。はぁ、これで負けても文句は言わないでよ。この服に着替えさせた巨乳さん」

 胸を隠すというジェスチャー。大方言ったらワシるとか言われているのだろう。

 

 しかしにこは自分1人で真相だと思われることにたどり着いたから周りには迷惑が掛からない。今はその犯人にどうやって話をつけようかとにこは思っていた。

 

 

 

 

 

 入場が終わって大玉の準備をしている間にこんなことがあったがそのまま競技が始まる。

 

 一斉に大玉を転がし始める3色のチーム。速くこの競技を終わらせたいと思っている黄組の生徒が何かと速く進んでいた。そのあとを赤組が追い、最後に青組がいる状況だった。

 

 にこが走る番になり、ランドセルを背負った体操着姿のにこが目立っているがそれでもペースが乱れるわけでもなく進み続け、アンカーの番になった。

 

 アンカーがここまで来てゆっくりになるわけでもなくむしろにこたち以上に速くゴールに向かって行った。

 

 その後の順位に変動はなく黄組が1位、2位が赤組。3位が青組となっていた。大玉転がしは勢いだけで十分行けるため大きな順位変動が望まれない競技だ。結果そのまま3チームがゴールした。

 

 

 赤     青     黄

470   460   470

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花陽side

 

 次の競技は玉入れ。運動会といえばこの競技が当然のようにある。走るような競技でもなく、綱引きのように力が必要なものでもない。どちらも自信のない生徒たちはこの競技に出場してひたすら玉を投げ続ければいいため結構人気種目になっていた。

 

 そんな中に先ほどの仮装リレーで追い上げを見せた花陽の姿があった。もちろん服装は普通のジャージ姿だが、この競技に花陽が出場するということはわかった。

 

 この競技が間近に迫っている状況の花陽の目はいつもは絶対にしないであろう闘争心を含んだ眼をしていた。

花陽「私も頑張らなくちゃ! 凛ちゃんについていってるだけじゃダメ。私も力にならないと」

 そう意気込んで花陽は玉入れの準備をしていた。

 

 一斉に始まる玉入れ。これは1分間でどれだけ多くの玉を上にある籠の中に入れられるかを競う競技でそれを2回行い合計数で競うものだ。

 赤組も青組も黄組もそれぞれの籠に玉を入れていく。花陽は多くをいっぺんに投げるのではなく一つずつ確実に入れようとしていた。

 そうしていたのだが……、花陽は味方の投げたたまに当ててそのまま連鎖を起こしすべてが籠の中に入ってしまうという何とも不思議なことをやってしまった。以降そんなことが起こるわけがなく進んだがそのリードは大きく最初は赤組が1位となり、そのあとを青と黄色が追っていた。

 

赤:50 青:35 黄:30

 

 2回戦が始まり黄組と青組に余裕がなくなっていた。そんな中赤組は同じ奇跡が起きるようなことを考えているわけではないが着実に籠の中に玉を入れるよう投げていた。

 

 出来た差が埋まるかといえばそうではなく、結果として最後は赤組が87個、青組が67個、黄組が66個となった。

 

 

 赤     青     黄

500   480   480

 

 

 残りの競技が少なくなってきたこの状況で、少しだけ赤組がトップに差をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよながかった体育祭も終わりが近づいてきた。大トリ前の競技が今ここに始まる。その名前は障害物競走。この競技にはことりと希と絵里が出るみたいだ。

 

ことりside

 

 大トリを残して、この競技でことりが出る競技は終わりとなる。そのため勝つために必死になっていた。

ことり「絵里ちゃんと希ちゃんもこの競技に出るんだね! ことりは負けないからね!」

 そんな状態で出会う絵里たちに、隠しても隠し切れない勝利の渇望を漏らさずには入れなかった。

 

 それはことりだけのものではなく、ここにいる絵里と希もそうだったみたいだ。

絵里「私だって負けないわ。希と上位を独占しちゃうんだから」

 

希「ことりちゃんには悪いけど、絶対に勝たせてもらうわ」

 それぞれが勝つ気満々で言葉を交わしあう。

 

 

 

 

 

 障害物競走の別名は近代五種目。5つの障害を乗り越えてゴールするものだ。その障害とは『ぐるぐるバット』、『網くぐり』、『跳び箱』、『縄跳び走り』、『うさぎ跳び』。なぜか下半身の動きが激しいものが多く見えるがそれはきっと気のせいだろう。

 

 この競技はいつもの6レーン3レース制の競技でことりたちは最後にまとめて3人走るみたいだった。

 

 まず最初に1レース目。このレースは障害なんてないと思わせるほど速く走っていった。結果は1位青組、2位黄組、3位赤組だった。

 

 次の2レース目かなり個人の差があり結果は、1位2位を黄組が独占。3位が赤組だった。

 

 最後の3レース目ことりたちが出る番だ。ことりたちがスタートの合図で一斉に飛び出す。真っ先に最初の障害にたどり着いたのはことりと希と絵里の3人だった。

 

 最初はぐるぐるバットはやさしめに5周で終わる。絵里はバレエで鍛えた平衡感覚があるから余裕だと思うが5回という少ない回数なら誰だって平衡感覚を保ったまま次の障害に向かうことができる。ことり、絵里、希の順で次に向かった。そのすぐ後にほかの3人も次なる障害に向かって行った。

 

 次の障害は網くぐり。勢いよく網の中に頭を突っ込んでいったことりたちは網の中でどこかが引っ掛かっていた。この網くぐりというのがなぜかルールで仰向けの状態で進むことが義務付けられている。

 そんなルールがあるこの障害でことりたちが網の中を進むとところどころで網目に上半身の上部分に大きくある山がいちいち引っかかっていた。それは一緒にいる希も、絵里も同じだった。

 

 しかもそのことをしっかりと理解したうえで回避することのできないことを知り、赤面しながら進んでいた。つっかかってしまうほどに動きがとられてしまい遅くなってしまうことでことりたち3人はほかの3人に抜かされてしまう。どうでもいいのだがトラックの網付近に男子生徒が固まっているのはどういうことなのだろうか?

 

 しかし、そのまま次の障害に向かうことになる。4位以下になってしまったことりたちは跳び箱に向かって勢いおつけて突き進む。段数は少なめに5段の跳び箱で絵里、ことり、希の順で飛んで行った。希は何か重いものを持っているみたいでどうしても遅くなってしまっていた。

 

 次は縄跳び走り。置いてある縄跳びで飛びながら走るというもの。小学生くらいの時にやったことがあるのではないだろうか。そんな動きをこの障害物競走ですることになる。何がとは言わないがこの縄跳び走りをしている時にことりと絵里と希の何かが上下にずっと揺れ続けていた。

 順位はことりが4位、絵里が5位、希が6位となっている。他の赤組2人と青組1人がトップを走っていた。

 

 最後はうさぎ跳び。足にバンドを巻き、ジャンプでゴールするというもの。3位と4位に差がある状態での最後の障害。青組がトップを走り、そのあとを赤組が追っていた。少し遅れてことりが足にバンドをつけて飛び跳ねながら追いかける。

 必死になって前の赤組の生徒を追うことり。そしてそのことりを後ろの希と絵里が頑張って追いかける。しかし希と絵里はμ'sの中でも、というより女子高生の中でもトップクラスのあるものを持っている。そんな2人がジャンプで前に進むとどうしても縄跳び走り以上に揺れる。ことりも同じようなことが起こってるのだが、2人ほどではなく、そのおかげで何とか赤組の生徒に追いつくことができた。

 

 先にゴールテープを切ったのは青組の生徒。網くぐりの時からずっと1位を保ったままのゴールだった。その少し後に赤組の生徒がゴールして、さらにそのあとにことりがゴールに一歩早くたどり着いた。

 

side out

 

 

 赤     青     黄

???   ???   ???

 

 

 この競技の後に点数は隠された。今がどうなっているのかはもうわからない。ただ、そんなに大きな差はついていない。そんな気が体育祭に参加しているすべての生徒が感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ついに体育祭最後の競技色別対抗リレーが始まる。差がついていないこの場面では1位になれば優勝できるとても大事な競技になっていた。

空也「海未、勝てるかの命運はやっぱりこのリレーにかかってるみたいだ。最初から全力で行けよ」

 最後のリレーに出る空也は同じ仲間として出る海未にエールを送る。

 

 送られたエールを受けた海未はその瞳に静かな闘志を秘め答える。

海未「わかってます! 絶対に勝ちます。勝ってみせます!」

 

 そんなやり取りをしていると近くから空也たちの声を聞いて凛がやってきた。

凛「あ、空也君たちも出るんだ! 凛は負けないからね!」

 短距離走でその速さを見せつけていたのなら、最後のリレーに出ることはある程度予測がついていたため、意外でもなかった。

 その代わりに凛に勝たないといけないということが確定したわけで、短距離走で空也が勝ったとはいえギリギリの戦いになっていたから、油断はできない。

 

 だからこそ気を引き締めて、そしてこれが最後であることを再認識して言葉を紡ぐ。

空也「あぁ、勝っても負けてもこれで最後だ。全力で行かせてもらう!」

 やる気になっているところで入場が始まる。海未は列の先頭に空也と凛は列の最後に並んだ。

 

 

 

 

 

 いよいよ最後の競技が始まる。バトンを持った海未と赤組の生徒、黄組の生徒がスタートの準備をしている。

 

 ピストルの音が鳴った瞬間に飛び出す海未たちを再びピストルの音が止めた。フライングが起きたのだ。早く前に出たいという願望がどうしてもスタートを邪魔してしまう。

 そんな中海未は冷静だった。弓道をしているからか心に落ち着きが見える。リラックスした状態でスタートの体制に入る。

 

 もう一度スタートの合図がかかった。音が聞こえた瞬間走り出す海未たち。今度はその3人を止める音なんて聞こえない。

 

 現在トップを走っているのは赤組の生徒。それもそのはず。現在は知っているのは陸上部の生徒なのだから。しかし、そのすぐ後ろに海未がついて走っていた。少し遅れ気味の黄組だがそれでも差はそんなに開いていなかった。

 

 トラックの真ん中付近に来た瞬間に海未のスピードが急に上がった。空也には最初から全力といわれたが、相手が相手のため様子を見ることにしたのだが、自分の力量で負ける相手ではないことが分かった今、自身が誇るトップスピードで赤組の生徒を抜き去った。

 

 そのまま順位は変わらず、青組、赤組、黄組の順で次の走者にバトンを渡す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リレーも終盤に入ってきて現在はアンカー3人がバトンが来るのを待っている状態だ。現在の順位は黄組がかなり頑張って1位になっていて、その後ろに青組と赤組が競り合っている。

 

 黄組のアンカーが先に飛び出し、そのあとすぐに凛と空也が黄組を追いかけるように走り出す。以前差はそこまでないため凛と空也の走力で黄組のアンカーを抜き去ることができた。

 

 凛と空也の走るスピードはそこまで差がない。男子生徒と変わらない速さを持っている凛は本当にすごいものを感じるがということは一度でも抜かされたら追い抜くことが不可能に近くなるということでもある。

 

 トラックの中盤、海未が赤組の生徒を抜いたところで空也の足はもつれる。気合が空回りしてしまったための事故だった。

空也(イメージと体が追い付かない!! このままじゃ……負ける……)

 普段はどんな動きでもすぐにできるのに、気合が空回りしたせいで最大の力を出し切れていなかった。

 

 

 

 

 

 

 そんな絶望にも似た考えを感じ始めた空也の耳にある人の声が聞こえた。

穂乃果「空也くーん!! 頑張れー!!!」

 空也の真横で応援していた穂乃果の言葉が聞こえてきた。ひたすら空也のことを応援するためだけの声を。

 

 その声を聴いて空也は思い出したことがある。それは応援合戦という競技内で穂乃果が言っていた。

空也(あぁ、思い出した……。応援合戦でも言ってたじゃないか。俺は今は一人で戦ってる……。凛に勝つために。でも、穂乃果のエールがみんなのエールが送られてきている)

 そして穂乃果のエールを受けて気が付く、ほかの人も大声で空也のことを応援していたことに。

 

 みんなに応援されているのに転んで勝てませんでしたなんて空也自身が許せるわけがない。

空也(穂乃果も、そんな声の出し方したら、かれちまうぞ。アイドルなんだからもう少ししっかりしろ。……でも、今は一歩でも前に、マエニ、ススメ!! 速く、もっと速く!!)

 穂乃果の声は自分ののどの様子なんて気にしていない出し方だ。これじゃあ、アイドル活動に支障をきたしてしまうかもしれない。でも、だから一歩でも速く前に行こうとしていた。

 

 このことに気が付いた瞬間、空也の何かが変わった。

空也(いまならもっともっと速くなれる気がする。行くぞ凛。すぐに追い越してやる)

 先ほどの焦りなんて全く感じさせないほどのすがすがしい表情だった。支えられていることを理解して、頑張ろうと思う空也の心境の変化が現れたから。

 

 そのまま立ち上がり空也は凛に向かい走り始めた。凛はもうトラックのカーブに入ろうとしている。差にして10mあるかないか……。同じスピードだったのなら追いつくことは不可能。しかし、それが今までの空也の速さであったならということが前提条件になっている。

 

 空也は走った。穂乃果の無茶なエールを受けて。前に、マエニ。

 

 その速さは先ほどまでのものとは全然違うものだった。走り方が変わったわけでもないのに速い。カーブ中間あたりで空也は凛に追いついた。だけど空也は凛のことを目標にしていても、凛のことだけを見ていたわけではない。一番最初にたどり着きたいと想っているゴールをずっと目でとらえていた。

 

 カーブが終わり残りは直線を走るだけになったことで凛がスピードを上げる。それに負けじと空也も。

空也(凛、お前は団長としてみんなを引っ張ってきたのかもしれない。みんなに支えられていたのかもしれない。期待だってされていたんだろうよ。でも、悪いけど"あのエール"を受け取った俺は絶対に負けない。だからもっと速く前に、マエニ進むんだ!!)

 

 ゴールをしたのは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空也だった。二人三脚のように頭がゴールして順位降格ということはなく、まぎれもなく空也が凛に勝利した。

 

 

 赤     青     黄

???   ???   ???

 

 

 今ここに結果が出た。しかし、その結果を知るのはもう少しだけあとになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の競技が終わり、得点の最終確認をするための待機時間となる。この時間が終われば閉会式になる。

 

 アンカーとして最高の結果を取ってきた空也が穂乃果たちのいる生徒席に戻ってきた。

空也「はぁはぁ……。穂乃果……。勝ったぞ……」

 そして空也の隣には一緒の競技に出場した海未もいた。だけど空也の疲労はかなりのものだった。

 

 しかし、そんな疲れを忘れさせてしまうようなことがすぐに起こってしまう。

穂乃果「お疲れ様! 空也君! かっこよかったよ!」

 帰ってきた空也に先ほどの走りを見た自分が感じたことを笑顔で言う穂乃果。まるで自分のことのように頑張ったことを褒めてくれた。

 

 穂乃果の言葉を聞いた空也はその瞬間に頬を赤く染め人差し指でその頬を掻く。

空也「っ! ……ありがとな。エールをくれて」

 あの時に穂乃果がエールを送ってくれなかったら勝つことなんて出来なかった。転んでしまったことは事故だし、あの瞬間に穂乃果のエールが来ることなんて予想できるわけもない。ただの偶然が重なって、それを逃さないようにした結果勝ちを取ることができた。

 

 でも、穂乃果も穂乃果でしっかり空也からのエールをもらっていたこともある。

穂乃果「ううん。穂乃果たちの時だって空也君がエールくれたでしょ。みんな支えられていたから勝てたんだよ」

 それは二人三脚の時は空也がエールを送っていた。だからあの時2人はすぐに復帰することができた。ここでも、支え支えられて体育祭に参加していたのだと知ることができた。

 

 空也と穂乃果が見つめあってそんなことを言い合っているところをずっと見ていた海未は見ていられなくなり、少し咳払いをする。

海未「んん!! 空也、穂乃果自分たちの世界に入っていないで早く集合しますよ。私たちは運営も頼まれているんですから」

 そんな行動をしている海未の顔は真っ赤で、何か恥ずかしがっているように聞こえた。

 

 その後ろで面白そうに笑いながら見ていることりは後ろに腕を組んで穂乃果たちに話しかける。

ことり「そうだね~。そういうことはあとでね?」

 海未と同じことをしているみたいだけど、どうやら意味合いとしては少しだけ異なっているようだった。

 

 完全に自分たちの世界に入っていた穂乃果たちは海未に話しかけられもとの世界に戻ってきた穂乃果はとたんに恥ずかしくなる。

穂乃果「あ……。ううううん! そうだね!! さぁ、行こう!! 海未ちゃん、ことりちゃん、空也君!!」

 照れ隠しなのか早口で言う穂乃果の言葉で空也たちはこれから生徒たちの並ぶ場所の前にあるテントに向かった。しかし、穂乃果の手は空也の手が握られていた。

 

 

 

 

 

 得点の計算も終わったようでいよいよ閉会式が始まる。理事長が今回の体育祭の話をしている時にテントの中で穂乃果たちは別のことを話していた。

穂乃果「いよいよ結果発表だね。どうなるのかな?」

 それはいまみんなが気にしていること。どこが優勝するのか。それは体育祭の本部にいる得点係の生徒しかわかっていない。

 

 だけど、少しだけこの体育祭のことに自信を持っていた。それは最後のリレーに勝ったからとかそんな一時的なものではなくて、穂乃果たちと力を合わせて全力を出したのだからという、一種の願望に近い、だけど確実に信じている勝利を空也は感じていた。

空也「勝てるさ。みんなで勝ちに行ったんだから」

 

 そんな決意を海未も同じく持っていた。しかし、空也のように確実な自信があるわけでもない。

海未「でも、ドキドキしますね……」

 だからこそ結果が分かることに胸が強く打っていることが分かっていた。

 

 でもここであることが問題になってくる。

ことり「でも、もし勝ったら誰が行くの? 穂乃果ちゃん団長だけど生徒会長で賞状を渡す係じゃなかった?」

 それは、賞状を取りに行くのが誰かというもの。穂乃果はことりの言ったように渡す側の人であるから取りに行くことができない。それを決めていなかったことが今明らかになった。

 

 そんなことをことりが言ったが、穂乃果が団長になった時にそのことも考えていたみたいだった。

穂乃果「それはもう考えてあるよ。でも話してないけどね」

 ここで少し穂乃果らしいというべきか、事前に許可を取っていなかったみたいだ。しかもここにいるのは空也たちしかいない。一体だれがトリに行くのだろうか。

 

 問題はまだあるということを知って少しだけ海未に不安が芽生えた。しかしそれはものすごく小さいもの。

海未「どうするんです?」

 

 海未に聞かれ、賞状を取りに行くのにふさわしい人物を離し始める。

穂乃果「この体育祭で一番頑張ってくれた人。最後に一人きりでみんなの想いを乗せて走ってくれた人。その人がふさわしいかなって。だから、その時はお願いね。空也君」

 その役割がふさわしいと思ったのは空也だった。最後に必死になって走って、勝利のために青組に貢献した人物の一人。

 

 名前を出された空也は驚いた。自分が行くことになるなんて予想していなかった。

空也「おっ俺!? 俺が賞状のほうをやったほうが良くないか?」

 だから代わりに空也が副会長として賞状を読み上げる係になることを申し出た。

 

 そんな提案を受け入れることができなかった。それは確かな理由があってのもの。

ことり「もう穂乃果ちゃんの名前が印刷されてるし、いるのに他の人が穂乃果ちゃんの名前を呼ぶのはちがうでしょ?」

 賞状には穂乃果の名前がある。ことりの言うようにいるのに別の人が名前を呼ぶのはおかしい。

 

 その事を知った瞬間にもうどういっても避けることができないことを空也は悟った。

空也「……それもそうか。で、本当にいいのか?」

 それで最終確認。この体育祭で頑張っていない生徒はいないし、みんな同じくらい頑張っていた。だから、別に空也がいかなくてもいい。そんな風に思えた。

 

 空也の最後の問いに穂乃果は笑顔でそう答えた。何も心配していない様子で、完全に信用しているからこそ出来ることだった。

穂乃果「うん。だからよろしくね。空也君」

 結果、空也が優勝した際に賞状及びトロフィーを取りに行く役割を得た。まぁ、3位でも賞状があるのだから決めたことに無駄があるわけではない。

 

 閉会式で理事長の話が終わると、体育祭担当の先生たちの話が少しあったが今ここにいる生徒が今か今かと待っている成績発表が始まる。

 

 穂乃果が朝礼台に立ちマイクで得点板に出る数字に指示を出す。

穂乃果「それでは、最終得点を発表したいと思います。行きますよ? 一の位!」

 みんなが気になっている得点を出すために穂乃果が声を今から出てくる点数を指示する。ドラムロールが鳴り、それが止まると数字が出てくる。

 

 

 赤     青     黄

??0   ??0   ??0

 

 

 すべてが同じだった。まだどこが勝っているかはわからない。

 

 続けざまに次に出る数字を指示する穂乃果。

穂乃果「次に、十の位!」

 再びドラムロールが鳴る。ここから運命の分かれ道になる。ここでどんな点数を出すかで勝てるかどうかの希望が変わってくる。

 

 

 赤     青     黄

?00   ?40   ?80

 

 

 差が出るかと思っていたが、どんな点数なのか最終的な点数がどうなっているのか予想が付くことはなかった。どのチームもまだ勝てる希望は残っている。

穂乃果「最後に、百の位!」

 今までは台本にある文を読んでいた話し方だったが、ここからは弾むような声で自身も結果を楽しみにしているようでワクワクとした目で得点板を見つめていた。

 

 

 赤     青     黄

600   640   580

 

 

 最終結果が出たことで穂乃果が最終的な点数を見て穂乃果がしめる。

穂乃果「赤組600点、青組640点、黄組580点で優勝は青組です!」

 その宣言で喜ぶ声、悔しがる声が音ノ木坂学院の中を巡っていった。

 

 最後に賞状を渡すために団長が前に出る。

穂乃果「各色の代表者は前に出てきてください」

 そう言われ、絵里と凛、そして穂乃果の代わりに空也が穂乃果の前に立つ。

 

 穂乃果から、空也に賞状が渡される。

穂乃果「優勝、青組。あなたたちは力を合わせ、この体育祭に望み、優秀な成績を収めましたのでここに称します。生徒会長、高坂穂乃果」

 空也のもとに賞状とトロフィーが渡される。それを皮切りに2位の赤組にも3位の黄組にも賞状が渡された。悔し涙を流している生徒、嬉しく喜んでいる生徒がいる中、穂乃果は空也を笑顔で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これで長かった今日も終わり、3年生は最後の、1年生は初めての体育祭が幕を閉じた。

 

 優勝した穂乃果たちにはμ'sの6人に対して4回命令をする権利が与えられた。

 

 




今回で体育祭回が終わりました。いやー、長かったですね……。アニメ1話が4話で終わるこの作品で初音島回を除いて6話もかかるなんて……。

実はコスプレ回が一番大変でした……。ほかアニメのタイトルを出すかで悩んだし、詳しい衣装をどう表現するかだって悩みました。……結果あんなに長くなるなんて予想できなかったです。

そしてお気に入り登録をしてくださった拓Pさんありがとうございます!

次回はいよいよラブライブの予選結果が分かる回になります。

次回『予選の結果』

それでは、次回もお楽しみに!



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どうかよろしくお願いします!

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