ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

今回は穂乃果が大活躍する回です。そして穂乃果じゃないほかのμ'sメンバーが大きいが故にハラハラする展開になっています。

それでは、今回もオンとオフがはっきりとしている彼女たちをご覧ください!


白熱する競技に休まる時間

空也side

 

 続いての競技は二人三脚。各色5ペア出る。そしてこれはタスキをバトンにしているリレー生の競技だった。

空也「穂乃果、海未。アンカーなんだからしっかりとゴールテープを切って来いよ!」

 朝に海未が言ったことをもう一度確認するために、またエールを送るためにその言葉をかける。

 

 空也のエールに朝言ったことをまだ覚えていた海未は、やる気満々の様子で答える。

海未「朝言った通りです。しっかりとアンカーとして勝利を持ってきます」

 

穂乃果「うん! 穂乃果と海未ちゃんが組めば騎馬戦の時みたいに負けはないよ! 絶対に勝ってくる!」

 現状、青組が勝っているとはいえ全然さがないこの状況で、安心できない。気を抜けばすぐに追い抜かれるし、一気に突き放されてしまう。しかし、それでも優勝を目指して体育祭に参加している。優勝以外に選択肢がないため必死になって得点を取りに行かないといけない。

 

 借り物競走で得点を取ってきて一仕事終えているため少し体を休めながら今から頑張る2人に向けてエールを送った。

ことり「穂乃果ちゃん! 海未ちゃん! 頑張ってね!」

 本当にことりはこの体育祭でかなりの成果を上げていた。宝探しで高得点をとってこのチームに勢いをつけてくれたり、順位に関わらずに得点と借り物競走で撮ってきてくれたりと、運動が苦手なことりなりに頑張って撮ってきてくれた。

 

 ことりと空也のエールを受けて、海未と穂乃果が気を引き締めて移動する。その時の海未の表情は今から重大な決戦に行くかのような必死なものを感じた。

空也「……ことり、こんな時にしか言えないんだけど……」

 そんな真剣な海未を見送った空也がことりに何か言いづらいことを言うかのように頬を指で掻きながら話しかける。

 

 空也に聞かれたことりは少し、疑問に思いながらも聞き返してくる。

ことり「何かな。空也君?」

 でも、そんな中この状況で聞かれていることを考えているとどんなことなのかある程度予測できたみたいで聞いた後にニヤニヤして空也の質問の内容を待っていた。

 

 待たれていることを理解してか少しの間を空けてようやくことりに話しかけた内容を告げる。

空也「宝探しでゲットした写真を……俺にもくれないか?」

 綱引きに行く時にことりの反応からしてどんなものをゲットしたのか想像がついたためかお願いをした。

 

 誰にも告げないで秘密にしてきたものに想像がついている空也に先ほど以上にニヤニヤしながら言い寄ってくる。

ことり「空也君はあれが何だったのかわかったんだ~。さすがだね」

 穂乃果にも海未にも告げていないでそして誰にも見せていないため気がつく可能性はことりの発言でしかできない。空也はことりの持ち物に触れていないため盗み見ることもできない。

 

 それでもことりの発言から、その行動からどんなものを手にれたのかは把握していた。それが、自分の力だけでは手に入らないものだということも。

空也「複製でもいいから……。頼む!」

 オリジナルじゃなくてもいい。それでも、その写真を手に入れたかった。必死にお願いをしてどんな手を使ってでも手に入れようとしていた。まぁ、お願いすることで手に入れられたらそれに越したことはないのだが。

 

 そんな必死の空也を見たことりは、先ほどのニヤニヤした表情とは別の真剣な表情で空也にその答えを告げる。

ことり「うん。いいよ。空也君の気持ちがよく分かったから。……もう、隠す気はないの?」

 空也の気持ちを知っているからその気持ちを大事にしたいことりは素直に受け入れる。そしてそれを正直に聞いてきた空也に疑問に思ったことを聞いてみる。

 

 いくら好きなのかどうかを聞いても誤魔化してくるし、どんなに問い詰めても認めなかったことなのに欲しいと素直に言ってきたことにことりは少なからず驚いていた。

空也「ん? 何のことだ? 俺はあいつの日常の思い出としてあれを持っておきたいと思っただけなんだけどな……」

 ここまでいえば、もうどういうことなのか空也は理解しているはずなのに一向にそれを認めることをしなかった。とぼけて、分からないふりをしてでも認めない。それをするとどうなるかは空也自身にも分からなかったから。最悪の夢を回避できなくなってしまうかもしれない。この場所で使えるようにしているのに、使えなくなってしまったら意味がなくなってしまう。

 

 その答えを聞いたことりは真剣な表情から一変し、普通の表情でこの後の言葉を綴った。

ことり「魔法使いだもんね~。簡単には認められないか……。でも、もういいと思える時が来たらその気持ち、教えてね」

 少なくとも、空也の持っている気持ちは理解していることをアピールをするためか、それでも未来で聞かせてくれることを信じて待つことにした。

 

 ことりの目を見てもう誤魔化しが効かないと判断した空也は大きなため息をついて、知ってしまった魔法使いのことを驚きながらも正直に話す。

空也「そっちのことも知っていたのかよ……。わぁ~ったよ。その時は教えてやるし、手伝ってもらう」

 ここまで心の中に大事にしていて、自分の中でも偽っているため素直に気持ちを告げられるかと言ったらできる気がしないため、ここでことりにお願いしておくことにした。空也は自分の気持ちには気がついているが、それを受け入れずに偽り自分を騙すことで魔法を使えなくなることを交わしているみたいだった。

 

 その空也の言葉を聞いたことりは、ようやく空也地震の言葉で聞かせてくれたことが嬉しかった。

ことり「約束したからね! あ、そろそろ始まるみたいだよ!」

 信じられなかったことをみるかのようにかなりの驚きを感じさせるがそれでも空也のお願いが聞けたことに喜びを感じていた。

 

 そんな一件の最中、二人三脚に出場する選手たちが待機場から入場して来た。そのなかには、花陽と凛のペアと、希と絵里のペアもいた。少し考えればそのペアが出てくるのは予想がついたであろうことなのだが、始まる前に気がつくことができずにいたことが今の状況では痛かった。

 

 相手になかなか息の合うペアがいることがわかり、穂乃果たちは少しこの後のことについて不安になって来た。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果side

 

 待機列の時から見つけていた絵里たちと凛たちを見た瞬間にこの競技は一筋縄ではいかないとすぐに理解した。

穂乃果「海未ちゃん、絵里ちゃんたちが出てくるとなるとそう簡単には勝てなさそうだよ……」

 穂乃果には珍しい少しネガティヴな発言だが、花陽と凛、絵里と希のペアを見ると簡単に行きそうもないことを改めて理解した。

 

 そのことは理解している海未も、穂乃果と同じ発想になっている。しかし、空也と交わした海未は最初に待機場所に来た時に持っていたやる気で取り戻していた。

海未「えぇ、でも勝てないわけではないです。穂乃果と息を合わせれば大丈夫です」

 そして長年一緒に過ごしてきた穂乃果となら息を合わせて動くことができる今の状態だと勝てる可能性が高くなっていた。ここまでの信頼も長年過ごしてきたから持てるものなのだろう。

 

 しっかりとした理由があって自信を持っている海未同様に自信があるのは変わらないが

穂乃果「そう……だよね。穂乃果と海未ちゃんが一緒なんだもん。絶対に勝てるよね!」

 しかし、穂乃果がこう思うのには理由があった。騎馬戦の時に勝敗を分けたもののうちに同じ時間をどれだけ過ごして来たか。というものがあった。短い期間では相手の呼吸に合わせて行動するのは難しいからだ。でも幼馴染として過ごして来た穂乃果と海未にはそういった点の心配はなかった。でもそれは凛たちにも言えることで、希と絵里の息のあった行動は練習中に見て知っていたため全く油断できないものになっていた。

 

 それに自信を持っていないと勝つのは難しい。それはどんなことでも言えることで勝負事をやる上でも大事なことだと言える。勝つ意志にのないものに勝利はやってこないのだから。

海未「私たちはアンカーです。まずは私たちより前に走る8人を応援しましょう」

 リレー制のこの競技に勝つには1つのペアが速くても意味がない。1位になれていなくたって差を作りすぎないようにレースを運ばないといけないのだから。

 

 やはりこの競技には1ペアだけの力というよりみんながそれぞれに頑張らないと勝利を取ることができない。そのため自分たちより前に走る人たちを信じてこの競技に望むことにした。

穂乃果「うん! 最初の方にリードしておけば逃げ切りやすくなるからね!」

 決意を固めた穂乃果はそう言って足首を回しながら準備運動をしていた。パン食い競争の時はそういった行動をしていなかったのに、左足を重点に準備運動をしていた。

 

 

 

 

 

 入場待機をしている時にふと近くから声がかかる。いつも聞いている声で、この体育祭の最初にやりあった人の声だった。

絵里「あら、そう簡単にはいかないわよ。私と希のペアだって強いんだから」

 同じμ'sとして活動して、黄組の団長である絵里に隣から声をかけられた。

 

 そしてその声が聞こえると前の方からまた、話しかけられる。今度も可愛らしい声をして聞き覚えのある声だった。

凛「凛たちだって! かよちん、頑張ろうね!」

 それも当然話しかけてきたのは赤組の団長の凛だったから。凛は騎馬戦ではあまり活躍できていなかったからここで汚名返上いうことをするためにやる気を人一倍出していた。

 

 凛の隣にいるペアである花陽も十分なやる気を持って穂乃果たちに宣戦布告をしてきた。

花陽「うん! 穂乃果ちゃんたちと絵里ちゃんたちにだって負けないんだから!」

 いつもは穏やかな花陽がいつにもましてやる気に満ち溢れていた。凛といることでここまでやる気が溢れるのは、それほど凛のことを信用しているということなのだろう。

 

 普段は言わないようなことを花陽の口から聞いたことで希は負けていられないと思ったのか、絵里の隣から話に参加する。

希「うちらだって負けへんよ! 穂乃果ちゃんにはさっきの借りを返さんといかんし」

 そう。希は先ほどのパン食い競走で負けたことを思い出して、そのためかここにいる穂乃果に向かって闘争心を燃やしていた。

 

 話をしていると入場の時間になりそれぞれの場所に散らばった。そこでわかったことは凛たちは最初に走るようで、絵里たちは穂乃果たちと同じでアンカーで走るようだ。

 相手がいつ出るのかがわかっただけでも情報としては大きい。凛たちもアンカーだったら、かなりリードを奪われるかもしれないと感じていたためその可能性が潰れて勝つための可能性が幾分上がった。

 

 

 

 

 

 入場してすぐに最初に走る人は足にバンダナを巻き始める。二人三脚のリレーのバトンはこのバンダナ。取れにくくつけなくちゃいけないし、すぐに外せるようにもしなくちゃいけない。

 

 凛はしっかりとリボン結びをして外れないことを確認して走る準備に入る。花陽は凛に合わせて準備を終えた。花陽は凛の肩に、そして凛は花陽の肩に腕を乗せて反対の手でお互いの手を握った。その瞬間2人に優しげな微笑みが生まれた。どこまでも信頼して、互いに互いのことが好きだからその顔ができるのだろう。

 

 先生が上にピストルをあげ、いよいよスタートが間近になってくる。それぞれのペアがスタートの体制になりピストルが鳴り響くのを待った。

 

 そして緊張している最中にようやく破裂音がグラウンドを駆け巡った。スタートの合図だ。

 

 その瞬間に3ペアが走り始める。20m先にあるコーンをめがけて。先についたのは凛たちだった。花陽がしっかりと凛の速さについていき、また凛は花陽に無理のないスピードで走っている。そのためか運動神経のいい凛が走るにしては予想していたほど2位以下に差が生まれていなかった。

 

 それでも、凛たちがコーンをターンして次の選手が待つスタート位置に帰ってきた。バトンを渡して次の走者たちが走り出す。スタートした瞬間にほかのペアも戻ってきてバトンを渡す。

 

 差はあまりついていない。ただ、追う方の立場にある黄組と青組には少し焦りの表情が見えていた。

 

 赤組は追われている危機感からか少し怖がりながら走っていた。どのチームも余裕のある走りはできていない。

 

 

 

 

 

 競技は恙無く進んで行き、やがてそれぞれの組がアンカーになる。最初にアンカーになったのは赤組だ。凛が作ってくれて優勢を最後まで持ってくることができた。アンカーの3年生ペアが走り出している。しかしその後を追うかのように黄組の希と絵里もすぐに走り出す。

 

 その一歩遅れて穂乃果たちが2ペアを追ってスタートする。絵里たちは抜群のコンビネーションを見せつけ赤組のアンカーを抜き去る。形としては絵里のペースに希が完全に合わせている感じになっている。そしてそのまま中間地点であるコーンのところにたどり着いた。

 

 一方穂乃果たちは乱れないリズムで速く走っているそのペースはどんどん加速していき、赤組を抜かし、希たちと並ぶまでに至った。しかし、どちらも引かないためデットヒートが繰り返される。

 

 

 このまま行けば希たちと穂乃果たちのどっちが勝つかはお互いの体力といかに速くペースを合わせて走れるかが重要になっていた。とにかく油断したりしてペースを緩めるわけにはいかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかしちょうどその時……、アンカーとして頑張っていた穂乃果の足がもつれてしまう。

 予想外のことが起きて、穂乃果と海未は倒れそうになってしまう。頑張って片方が止まった瞬間に海未も止まりそうになるが、その足は進み続けようとしていた。そのため海未と穂乃果は前に倒れていく。

 

 しかし、まだ転んだわけではない。ここからの立て直し次第でどうにかすることはできた。

空也「穂乃果ぁぁぁぁ!! 頑張れぇぇぇぇ!!!」

 

ことり「穂乃果ちゃん! 海未ちゃん!」

 そんな最中、穂乃果と海未を空也とことりのエールが背中を押した。喉が張り裂けそうな大声を出して空也たちは穂乃果たちのことを心配していた。

 倒れていく穂乃果と海未はその瞬間に目を合わせ何か意思疎通をした。これからどうすれば立て直して進むことができるのかということを。

 

 前に倒れていく穂乃果たちは背中を合わせ、手を伸ばし側転の要領で進みながら元の体制に戻る。普通はできないことだ。そもそもやろうとも思わないことでできるかどうかすら分からなかった。でも結果として元の体制に前に進みながら戻ることに成功した。

 

 元通りになった穂乃果たちは絵里たちをそのまま追う。幸いまだ大きな差がついたわけではない。それに相手はとても重いものを持っている。

 

 この状況なら走って追いつくことは可能だし、追い越すことだって不可能ではなかった。

 

 海未と穂乃果はひたすら走った。転びそうになったというのにそれを感じさせないほど速く。ゴール間際でついに希たちに追いついた。

 

 そのまま追い越そうとするがなかなかうまくいかない。目の前にはゴールテープ……。穂乃果と海未は前に重心を向ける。背中を曲げながら。

 一方希たちのほうは胸を張ってゴールに向かう。

 

 穂乃果と海未の頭がゴールテープに触れる……。その一瞬後に希と絵里の胸がゴールの範囲に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 青組が勝ったと思われたその時、ゴールの方法で審判たちの会議が始まった。この体育祭は陸上競技のルールに近いものでやっている。その結果告げられた順位は……、

 

 

 

 

 

 黄組が1位ということだった。

 

 陸上は胴体がゴールしないと、ゴールしたことにはならない。それと同じことが穂乃果たちに起きてしまったのだ。自動的に穂乃果たちは2位となり赤組が3位となった。

 

 

 赤     青     黄

420   440   420

 

 

 勝ったと思ったものが、敗北したときそのときの絶望は普通より大きい。点数では勝っているが穂乃果たちのやる気はここで落ちていってしまった……。油断している暇はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人三脚が終わり次は得点が関係ない部活動対抗リレー。この体育祭の一番の楽しみ要素だ。

 文化部と運動部に分かれてリレーをするのだが、アイドル研究部は運動部の中でリレーに出場する。

にこ「今は一時休戦よ。勝って部費をアップしてもらわないと」

 この体育祭では相手であって、しかもこのアイドル研究部は勝ったチームにチーム内にいるμ'sメンバーの数だけ命令できる権利をかけて戦っている。しかし、この部活動対抗リレーも部員で力を合わせて勝つということを心に決めていた。その理由をにこが話してくれた。

 

 にこの言っていることが目的でこのリレーにも出ることになった空也が今頃になって部費アップの話に疑問を持った。

空也「そうはいっても……、本当に部費が上がるのかよ」

 この情報は未だ噂の域を出ない、いわばこの学校にある都市伝説のようなものだ。そんなものにすがるほど現状が苦しいわけではないのににこは必死に優勝を目指していた。

 

 しかし、この噂が出るということは何かがあったということでもある。火のないところに煙は立たないのと同じで全く何もないところから学校全体に広がる噂は生まれてこない。絶対に途中で嘘だということに誰かが気がつくから。

凛「でも、そういう噂が出るってことは何かはあるってことだにゃ。それを確認できればいいんじゃない?」

 そのことを考えてか全く考えていないのかは分からないが、凛が言うことにも一理あった。そう言う噂が立つには立つようになった理由があり、それが一人歩きしてこの噂になったと言う可能性も素敵ることはできない。

 

 部費のことに関して知っていると思っていた元生徒会長の絵里はこの話になると決まって話題をそらしてきた。

絵里「とにかく今はほかの部活がライバルよ。本格的に運動している部活だし、走ることをメインにしているものもあるから油断せずに行きましょう」

 今回も今までと同様、このリレーの勝利を目指すと言う話題を出してこの話に一旦区切りをつけた。

 

 ちなみに空也以外の3人の服装は『僕らのLIVE 君とのLIFE』の時の衣装。バトンは『ユメノトビラ』の時に着けていた花飾り。受け取りやすいものを考えた時のこれが思い浮かんだ。空也が来ているのは音ノ木坂学院の制服を着ている。スクールアイドルのマネージャーという面を出すためにはこの格好が一番いいのだとにこに押されてこの格好になったみたいだ。

 

 第一走者は凛が走る。このリレーはアンカー以外の人が走るのはトラックの半周。100mの距離。まず、スタートの合図で飛び出した影が2つあった。陸上部の先輩と凛だった。そのあとをソフトボール部が追いかける形になっている。陸上部の先輩は意外な表情を一切せずに、むしろ当たり前であるかのような顔で凛の隣を走っていた。

 一度陸上部の見学に行った時に凛の走りを見ていたからだろう。一応考えていた奇襲は全く意味を成さなかった。

 

 次の走者は絵里。凛からバトンを受け取るが陸上部のほうがスムーズにバトンパスができていたため少し出遅れてしまう。今は2位。そして絵里は凛より走力に長けているわけではない。そのせいか2位を維持する走りは見せても、1位の陸上部には差をつけられてしまった。

 

 第三走者は空也。バトンパスは陸上部と遜色のないもので、絵里からバトンを受け取った瞬間に少し前にいる陸上部の同級生に向かって走り出した。短距離走で凛と互角に走っていた空也が速いということは想定済みなのだろうがそれでも陸上部の同級生は空也に追い越されてしまった。綺麗なフォームで見ている生徒を魅了しながら。陸上経験はないはずなのに。

 

 アンカーは部長のにこ。何かがかかった時のにこの走りは素早い。それはアイドルグッツの時も、そして今回の部費アップの時も同じ。必死になって最後の1周、200mを走りきる。ゴールテープをめがけて。後ろを追ってくる陸上部にはわずかながらにある差、しかし確実に諭して呼べるものを残したまま、ゴールインした。

 

 アイドル研究部、運動部部門優勝。去年までは1人しかいなかったためリレーには参加できずにいて、この体育祭で初めてアイドル研究部が陸上部を抑えて1位を獲得した。

 

 ちなみに文化部部門で優勝したのはアルパカ部だったみたいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前の部が部活動対抗リレーで幕を閉じ、午後のためにお昼休みがはさまれる。

 

 空也と穂乃果、海未とことりはいつもの中庭でお昼にしようとしていた。空也の作った弁当を食べるために。

空也「じゃあ、飯にするか」

 自分のカバンから大きな重箱を取り出す。その中にはおにぎりも入っているし、サンドイッチも入っている。さらには唐揚げにツナサラダなどなど、様々な料理が入っていた。

 

 そのお弁当を見た穂乃果はすごく嬉しそうに喜んだ。

穂乃果「わーい! 空也君の料理だ~!」

 空也の料理を食べる機会はそこそこあるはずなのに、それでも穂乃果は目の前にある料理をキラキラした目で見つめていた。

 

 普段ならことりは弁当を持ってくるのだが、今日の弁当は空也が全員分を作ってきたから他のものはこの場にはなかった。

ことり「今日はありがとう!」

 そして作ってきてくれるということをかって出てくれた空也にことりは感謝する。

 

 しかし、出ている料理を見て少し不思議に思っていた。4人で食べるには重箱3段が2つあるのはおかしかった。

海未「でも……なんか多くないですか?」

 ここにいるのは空也以外全員が女の子。ここまでの量は必要ないはずだった。特に多く食べるような人もいるわけではないのに。

 

 勿論こうして多くの量を持ってきたのはしっかりとした理由があった。

空也「あぁ、もしかしたらと思ってな。って噂をすればか」

 そのことを話し出そうとすると空也の考えていたことが当たったことが分かった。食べはじめようとすると後ろのほうから先ほど一緒に走った人の元気な声が聞こえてきた。

 空也の考えていたことはこうしてお昼の時間に、争い事もなくμ'sのみんなで食事をすることになるだろうと考えてのものだった。

 

 まさにその考えが当たったため空也たちのもとに凛たち残りの6人がやってきた。

凛「空也く~ん! みんなで食べようよ!」

 腕をぶんぶんしながら大声で話しかけてくる凛に、

 

 その隣で自分のお弁当を大事そうに持っている花陽。

花陽「穂乃果ちゃんたちもやっぱりいた」

 

 そして、パン食い競走で手に入れたハンバーガーを持ち、小さなお弁当を持ってきた希は、空也に向けて話しける。

希「うちにご飯恵んでほしいな~」

 どうやら希は本当に空也の料理が狙いだったみたいで、しかも隠すことをせずに正直に言ってきた。しかしその表情からはただふざけているだけのものではなかったような気がした。

 

 本来この場所でいつも食べていることは誰にも教えていない。みんなで食べるとなったら部室で食べるし、各自で食べるときにいちいち場所を報告なんてしないから。

絵里「ここで食べてたのね。少し探しちゃったじゃない」

 だから絵里たちはこの場所で空也たちが食べていることを知らなかった。しかし、見たことのある人がいるため、この場所を聞いていたらしい。

 

 腕を組み、片目を瞑って空也たちに話しかけてくる。

真姫「まったく……。今日くらいはみんなで食べようましょうよ」

 普段では想像のつかないようなことを言ってくる真姫に少しだけ驚きながらもその提案を受け入れる。

 

 それに続きにこが胸を張って自分がやった功績をたたえてほしいようなアピールをしながら話す。

にこ「にこがせっかく勝利を取ってきたっていうのに、つれないわねー」

 多分一番部活動対抗リレーで活躍したのはにこなのだろう。相手はアンカーの立場ならエースが出てきてもおかしくないのにその人に抜かされることなく走り切ったのだから。

 

 こうなることをあらかじめ想定していた空也にとっては、多めに弁当を作ってきていたのだ。

空也「こうなると思ってたんだ」

 その事を先ほど疑問に思っていた穂乃果たちに向けて答え合わせをしていた。食事はみんなで囲ってこそ。楽しく取らないといけない。それが食事という娯楽なのだから。

 

 そこまで考えていた空也に驚きを通り越してしまい、そして何も言わずにここに集まる10人に喜びを感じていた。

穂乃果「アハハ。全員集まったね」

 普通に食べるのもいいけど、こうやって仲のいい人と大勢で食べるのが最もいい食事なのだろう。そのことを感じてしまう。

 

 穂乃果が言ったことに全面的に賛成なようで海未も食事を始めようと自分たちの座っているブルーシートにみんなを呼び込む。

海未「そうですね。今くらいはみんなでご飯を食べましょうか」

 そういうことで10人でご飯を食べることになった。

 

 

 

 

 

 こうしてみんなで食卓を囲むことになったのだが、なぜ空也が海未たちにみんなが来ると思ってと言ったのかよくわかっていない絵里たちはここにある弁当を見て思ってことを言う。

絵里「お弁当、かなり多いわね……」

 明らかに弁当の量が多かった。みんながお弁当をしっかりと持ってきているのに、どうして空也はこれだけの量を作ったのか……、それがみんなの疑問になっていた。

 

 ただ、量のことを聞かれたからにはどのぐらいの量になっているのかをまず伝える。

空也「あぁ、9人分ある」

 しかし、空也の言っていた量はここにいる人数だと少ない量だといった。

 

 当然そのことについても疑問に残る。だからその人数分作っていないことについて聞きただす。

穂乃果「10人分じゃないの?」

 本来であれば10人分ないといけないというのに、誰かを省いているかのように料理を作ったのかと思ってしまうくらい驚きのことだったが、そんなことはないと思っている穂乃果は穏やかにそのことについて聞く。

 

 聞かれると、この量を作って持ってきた理由を告げる。

空也「俺は少し食べるのを抑えようと思ってるんだ。リレーで力を出せなかったら意味がないからな。それにがっつり9人分ってわけじゃない。軽くつまめるように作ってあるから」

 満腹感を感じてしまうと運動能力に支障をきたしてしまうし、何より一番大事なリレーを走るということでそのような調整をしていた。そしてみんながお弁当を持ってくるということも想定して普通の1人前の量を下回る感じで作ってきていた。

 

 空也のリレーに関する対策を聞いたことりは普通に空也のことが心配になっていた。

ことり「大丈夫なの?」

 食べないと力は出ない。そのことをわかって平気なのかどうかを尋ねる。

 

 そして量が少なくなっているということを知った凛は空也が我慢しなくちゃいけないという状況なんじゃないかということを心配して話しかける。

凛「凛たちもお弁当あるから大丈夫だよ?」

 凛たちもしっかりとお弁当を持ってきている。空也の弁当がなくても問題はない。

 

 しかし、あえて少なくせいている人だっているし、それが作戦ではなく時間がなかったとか、いろいろな理由があるし、

空也「大丈夫だって言ったろ。食べないわけじゃないし、それに残ったら残ったであとで食えばいいしな」

 リレーのためという最大の理由と余ったとしてもこの後に残しておくことだってできる。むしろ体育祭で疲れたあとは夕飯に力を入れられるほど体力は残っていないのだから。

 

 完全に空也の了承が取れたことで安心してつまめるようになったためか、花陽が頬を赤らめながら話しかけてくる。

花陽「空也君。おにぎりもらってもいいですか?」

 花陽と言ったらお米であるということはもうみんなには周知の事実。そんな中で自分の持っているおにぎりと同じくして空也のおにぎりも食べたいと思ったようだ。

 

 そしてわざわざ聞いてきた花陽の対称の行動をとった人物がいた。

にこ「あ、この唐揚げもーらい」

 空也の作った弁当の中に入っている定番のおかず。唐揚げを取ってそのまま口に運んだ。

 

 そのにこと花陽をきっかけにしてみんなが空也の弁当をつまむ。希はハンバーガーを食べながら。

 

 

 

 

 

 ご飯が食べ終わり、午後の競技が始まるまで余裕があるので雑談をしていると、次の競技である応援合戦の話になってくる。

穂乃果「次の応援合戦は負けないよ!」

 応援合戦とは団長が応援の衣装に着替えて行うのだが、最初にやった選手宣誓の午後バージョンのような競技だ。

 

 しかし、そんな穂乃果を少し心配そうに絵里は見ていた。

絵里「それはいいけど、足は大丈夫なの?」

 先ほどの二人三脚で穂乃果は足がもつれて転びかけた。しかしあそこには何も障害になるものはなく、2人の息がずれたわけでもない。それなのに転びかけてしまった。何かあるということになるだろう。

 

 その事に関してはしっかりと空也も気が付いていて、対抗リレーに行く前に戻ってきた穂乃果を確認してから向かっていた。

空也「ん、絵里は気づいていたのか……。でも、今日は穂乃果がこれから出る種目がないから大丈夫だ」

 その結果、そこまで重大なケガではなく、そう判断した空也はそのままにこたちのもとに向かったみたいだった。

 

 けがをしたということがこの会話でわかった真姫は穂乃果に近づき、足を確認しようとする。

真姫「少し見せて」

 その前に少し断りを入れるが半ば強引に足の様子を観察していた。

 

 真姫が穂乃果の足を見ている間に見られている本人が今のけがの状態を自分の考えで話す。

穂乃果「すこしひねっただけだし、問題ないよ」

 重大なケガではないということをわかっているためか、足を怪我したということをそこまで重要視していなかった。

 

 その話を聞きながらけがの具合を見ていた真姫が穂乃果の足から目を離す。

真姫「本当のようね。でも安静にしておきなさいよ。ラブライブだってあるんだから」

 確かに真姫の言う通りだ。この体育祭だって大事だが、それはこの学校の中でだけ。全国のスクールアイドルと競い合わないといけないラブライブで優勝を目指している以上、怪我はしないに越したことはないし、例えしたとしても軽いけがまでにとどめておいたほうがいい。

 

 ここで真姫が引き合いに出したラブライブという言葉にほかの全員が反応する。

希「お、真姫ちゃんすごいやる気やん」

 真姫の口からここまで意欲的な言葉を聞くのは珍しい。だから希のようにからかいながら話す人もいれば、驚きながらもうれしいような表情をしているものだっていた。

 

 希と同じ風にからかうように話しかけるにこはそれでも真姫の言っていた言葉をうれしく思っていた。

にこ「そうね~、真姫はすっごいラブライブにやる気を出しているもんねー」

 それを隠すかのようにいつもより大げさに、話しかける。

 

 そんなにこと真姫のやり取りを見ていた、海未たちは驚きが引いてみんながほほ笑むように笑っていた。

海未「フフッ。そうですね」

 しかし真姫はそんなことを言われ顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。余程恥ずかしかったのだろうが、ここにやる気が十分ということが聴けて良かったと思っている。

 

 




希があれを持っていたおかげで勝つことができたみたいなものですかね。そして穂乃果と海未が謎のパフォーマンスを見せて……、なんかすごい回になった!?

次回は多分一番頑張ることになった回になるのかな?

新しくお気に入り登録をしてくださった真空さんありがとうございます!

次回『応援合戦とコスプレリレー』

それでは、次回もお楽しみに!



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