ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

今回はついネタに走りました。ほかの人のネタと比べたらあまり面白くないとは思いますが急に出てくるその単語にえ!?ってなってください。

それでは、優勝を目指している3グループの行方を観戦していってください!


飛んで走って野太い歓声

空也side

 

 青組は赤組に逆転を許してしまい空也たちは少なからず焦っていた。流れをつかんだと思っていたからなおさら。

 しかし、次の競技はパン食い競走。穂乃果がどうしても出たいと言ってきかなかった競技。

 

 穂乃果の大好きな食べ物のうちの1つ。パンを求めての出場を認められた。おそらく一番パン食い競走にかける思いを持っている。

空也「穂乃果、少しでも点差を縮めてきてくれ」

 今は余裕がない。点差的には十分逆転が可能なのだが精神面で優位だったことが覆されるとどうしてもグループの士気が落ちてしまう。

 

 そのことをしっかりと理解しているのか、穂乃果はやる気をみなぎらせている。その目からは確かな闘志が見えた。

穂乃果「うん! 穂乃果はパンのことならだれにも負けないよ!」

 ……いや、ただパンに夢中なだけのような気もするが、それでも食べたいという欲求はこの競技において勝ちたいという欲望と大差がない。なぜなら早く食べたいと思うのだから。

 

 パンにおいて、穂乃果よりも執着している人なんてほとんどいないだろう。ほかに夢中になっているものが一緒になっていたらわからないが……、

空也「ハハッ! 穂乃果だもんな。じゃあ、勝ってこい」

 ここまでやる気の穂乃果を見て少し焦っている自分が馬鹿らしくなったのか、空也は少し笑顔を取り戻し、穂乃果にエールを送る。

 

 その声援に対してしっかりと受け取り待機場所に向かい始める。

穂乃果「もちろんだよ! パンが穂乃果を待ってるからそろそろ行くね!」

 もう、穂乃果らしいと言えばらしいのだが、パンを楽しみにしていることが誰がどう見てもわかる様子に少しあきれる。

 

 駆け足気味に待機場所に向かった穂乃果は本当に楽しそうに、嬉しそうに移動していた。

海未「穂乃果は、相変わらずですね」

 そんな様子を見た海未は空也同様に少しだけ呆れていたが、それはいつものことでもあった。

 

 そして穂乃果の様子もいつもと変わっていなかったためことりもいつものように笑顔でいた。

ことり「穂乃果ちゃんだもん。それに穂乃果ちゃんのためにあるようなものだからやる気になるのもわかる気がする」

 そう、もはやこの競技は穂乃果のためにあるようなもの。そしていつも通りの穂乃果ということは緊張していない状態であること。普段の能力を存分に引き出せる状態になっている。そうとなれば安心できる部分が多くなる。

 まぁ、穂乃果が体育祭で緊張するかといえば、その場面を想像することができなかった。

 

 ただ、このパン食い競走の一番の問題点があることを空也たちは気が付いていた。

空也「あとは……パンがあれじゃないことを祈るばかりだな」

 それはパンが有名なあのパンだと穂乃果に勝ち目はないということだった。穂乃果が唯一苦手としているものだから。

 

 苦手としているからそのパンを食べているところを海未たちはあまり見たことがない……。というか皆無だった。

海未「えぇ、あのパンだけは穂乃果自身あまり選びませんからね」

 とにかく避けるようにしているパンを出されたら終わりだということに少し心配していた。

 

 でもそのパンは直接日の当たるこの競技に出る可能性は少し低いものであることはわかっている。

ことり「さすがにないとは思うけど……」

 だからこそ今はあれが出ないことを祈るばかり。穂乃果が食べることのないあのパンが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 競技が始まるのでパン食い競争に出場する生徒たちが入場してくる。そこには当然穂乃果もいるが、なんと希もいた。なぜ希がこの競技に出るのを選んだのか……、借り物競走に出れば持ち前の運で簡単なものを選べそうに思うのだが……。

 

 まぁ、そんなことは置いといてパン食い競走は1発勝負。10m先にあるパンを目指しそこからさらに10m先のゴールへ向かう競走なのだがパンをつるしてある棒を椅子に座った生徒が持っていた。これで高さを調整することができる。

 

 始まった瞬間6人の生徒がパンを目指し走る。その中、最も早く着いたのはパンへの執念がすさまじい穂乃果だった。

 

 穂乃果が真っ先にたどり着いた先には6種類のパンがあった。穂乃果の目の前にあるのが空也たちが危惧していたパンである。そう、あんぱんだ。少しためらいを作った穂乃果は選ぶことができるためほかのパンをすぐに口にくわえ走り出す。ためらっている時間に希は追いつきハンバーガーを口にくわえて走る。

 

 他の生徒を突き放して希と穂乃果はゴールに向けて走り出す。希も穂乃果も今咥えているパンが食べたいためものすごく急いだ様子で走る。抜いて抜かされての状態でかなりのデットヒートだった。

 

 希はハンバーガーの肉の部分を楽しみに、穂乃果はパンパック自体を楽しみにしている。きっとこの執念の差がきっと勝敗を分けたのだろう。パンを純粋に楽しみにしている穂乃果が先にゴールにたどり着いた。

 

 結果は1位青組、2位黄組、3位黄組だった。

 

 

 赤     青     黄

320   330   270

 

 

 再び青組が逆転して1位の状態になっているが油断なんてできる状態ではなかった。いつでも抜かされる可能性がある。そして黄組も今後の頑張り次第で十分追いつけるほどの差しかなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 右手にパンを持った穂乃果が空也たちのもとに戻ってきた。その時の表情は嬉しそうで今日一番の明るい笑顔になっていた。

穂乃果「空也くーん! 勝ってきたよー!」

 勝ってきたこととパンをゲットしたことへの2重の喜びが押し寄せたためのこの喜びようだ。

 

 本当にうれしそうに帰ってきた穂乃果に空也たちは頑張ってきた穂乃果を出迎える。

空也「あぁ、見てたよ。お疲れ様」

 少しの戸惑いはあったがパンにたどり着くまでは誰も寄せ付けない走りを見せてくれ、その行動は青組みんなのやる気を一段にあげていた。

 

 でもそんなことよりも今目の前にいるのがいつも通りの穂乃果なのに少しうれしく思っていた。体育祭優勝にだけ闘志を燃やしているだけじゃないことが分かったからだった。

海未「やっぱり穂乃果は穂乃果ですね」

 まぁ、この言葉の裏にはパンがあんぱんだった時の戸惑い方を見てのものでもあるのだが、そのことには穂乃果自身は気が付いていなかった。

 

 その言葉で気が付いたのは穂乃果以外の2人。空也とことりだった。

ことり「うん! でもあのパンが出ちゃったことには驚いたね」

 あのパンだけだったら穂乃果には厳しいものがあったが、好物であるパンパックが出たというか、さまざまな種類のパンがあったことに少しだけホッとしていた。

 

 そんな中、あんぱんが穂乃果の目の前にあったことに対して不満があったようで競技に出ていた本人は愚痴をこぼす。

穂乃果「本当だよ! あんこ飽きてるのに穂乃果の前にそのパンを置くんだもん。何かの策略かもしれない!」

 なくはないことだとは思うが、そう決めつけるには情報が少ないから海未たち3人はそういうことは冗談だと思っていた。

 

 それに、結果オーライということで勝利を収めたからそこまで気にするようなものではなかった。

海未「それは考えすぎだと思いますが、それでも勝てたのですし、良しとしましょう」

 注意しておくことはできるが相手がそんな姑息な手を使うとは思えない。この競技もアレルギーとかを考慮してのものだったのだろうし、気にするほど無駄なことでもある。

 

 そしてこの競技には穂乃果がやってくれたありがたいことがあった。

空也「これでまた逆転出来た。穂乃果のおかげだな」

 まだ逆転される可能性があるがもう一度1位の立場に立つことができた。油断もない状態でさらに差を開けようとするためやる気を最大限にあげてくれた。

 

 空也にそう言われた穂乃果は腰に手を当て胸を張り、少し自慢げに話し始める。

穂乃果「えっへん! 団長なんだもん、これくらい当然だよ!」

 このグループの長は穂乃果だ。その穂乃果がまたこのチームに勝利の可能性を見出してくれた。このことでチームの士気は余計に上がることになる。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の競技はハードル走。先程のパン食い競走では真ん中のスペースを使っていたがハードル走はトラックを使って行う。

 ハードル走にはほかチームからにこと真姫が出場するみたいだった。

 真姫とにこは1レースに出場するみたいだ。あめ食い競走といっしょで3レース6レーン構成になっている。

 

真姫side

 

 出場する真姫はまだスタートまで時間があるため、同じ競技に出場するμ'sメンバーのにこに話しかけに行った。

真姫「にこちゃんがこういう走る競技に出るとはね」

 運動が得意とは思っていなかったためこうやって走る競技に出ることが意外だった。

 

 でも考えてみると凛に追いかけられたとき、少しの間だけど逃げ切ることができていたし、走力自体はあるのだろう。

にこ「そういうあんたこそ、運動はあまり得意なほうじゃなかったんじゃない?」

 真姫に言われたにこは意外というならということで言われたことをそのまま言い返した。

 

 挑発にも似た言葉を受け取った真姫はいつものようにすぐに取ってしまう。

真姫「……少なくとも、にこちゃんには負けないわよ」

 この競技はただ走るだけじゃない。ハードルを飛び越えていかなきゃいけないし高く飛び越えると時間ロスになってしまう。いろいろな障害物を乗り越えたことのあるものなら加減が分かるかもしれないが少しかじった程度ではスムーズに走ることは難しいだろう。

 

 逃げることを多くしてきたにこはそれで走力を鍛えられ、さらには状況が状況であるためにこのやる気は尋常ではなかった。

にこ「言ってくれるじゃない。こっちは今ビリで余裕ないんだから本気でいくわよ!」

 今は最下位になっている黄組であるにこは余裕がなく、また勝利に貪欲になっていた。

 

 そんな話をしているとスタートの準備ができピストルの音がレースの始まりを告げた。一斉に走り出す6人の生徒。経験はないはずのにこはスムーズにハードルを飛び越えていく。それを悔しがって真姫は必死ににこを追っていた。

 

 にこは何の抵抗もなく走っていたがどこか真姫は走りずらそうだった。何か上半身に何かがあるような感じでかばいながら走っていた。

 

 その2人をほかの4人が追う形になっている。にこは変わらずにトップを走っている。それを慣れていないようだが必死に食らいついている真姫だが、次第に差が開き始めた。にこが完全にトップに立った。そのままのペースでゴールに駆け込んでいた。にこの少し後にゴールした真姫は胸元を手で覆い頬を赤らめていた。それは空也と希と神田明神で話した時の出会いのように。

 

 ただ、にこにはその行為がどういうものだったのかはわからなかった。……わかるはずもなかったんだ。

 

side out

 

 ちなみに順位は1位黄組、2位赤組、3位黄組だった。

 

 そして3レースが終わり、得点が加算される。

 

 

 赤     青     黄

380   360   350

 

 

 かなり得点が接戦になってきた。まだどのチームの優勝の可能性がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空也side

 

 次は借り物競走。ことりが出場する種目だ。パン食い競走と同じく10m先にあるお題を取ってそれに合う人をゴールに一緒に連れて行くという競技だ。

ことり「じゃあ、ことりはいくね」

 その競技に出るためにハードル走を見ていたことりは待機場所に向かい歩き出す。

 

 宝探しで高得点を取ってきてくれたことりに向かって海未がエールを送る。何度も送っているが出ない競技のためその競技の結果は出場選手に託すしかない。

海未「ことり、頑張ってきてください」

 だから力強く背中を押し出すようにことりを送り出した。

 

 この借り物競走はお題通りの人を連れてくるものであり、それが相手のグループだったりする。

ことり「うん! なんか借り物って言っても条件にある人を連れてくるみたいだからその時はよろしくね」

 だからどれだけその人物を連想ができるかがこの競技に大切なものになってくる。

 

 もしそれがここにいる3人だったらことりはすぐに動けるから、お願いをしてこの場を離れた。

穂乃果「わかったよ! いつでも出れるように準備しておくね!」

 こういうことはあまり経験のない穂乃果はえらばれることをすこしだけ期待している穂乃果はいつでも出れるようにと待機席の前のほうにスタンバイをしようとしていた。

 

 そういう行動をとった穂乃果をみて自分が力になれそうだと思った空也も同時に行動する。

空也「男子生徒とかありそうだな……。まぁ、出られるようにはしておくよ」

 男子生徒が少ないからこそ出てくる可能性がある。そう考え、リュックをもって移動を始めた。

 

 そしてことりが待機場所についたころに穂乃果たちはこの借り物競走について話をしていた。

穂乃果「穂乃果ね、借り物競争で借り物になるのがちょっと楽しみなんだ」

 本当に楽しみにしているようで曲げたひじを上げ下げして穂乃果自身は少しそわそわしていた。

 

 そんな様子の穂乃果を見た空也はバックの中をあさりながら話す。少し重そうなものを後ろに持っているみたいだった。

空也「そういう性格だもんな。確か……特徴でもあったからちょっと多くしてみるか……」

 普通はこういうことは反則といわれても仕方のないことなのだろうけど、ゴールした時にそういう格好でいればいいのだからやってみる価値はある。

 

 ただ、そういわれただけでどういうことなのかを理解することのできる人は少ない。

海未「特徴を増やすって、どうやって……?」

 なぜならそこまでする人はなかなか現れないから。借り物競走ごときで優劣が決まるとはだれも思っていないためだ。

 しかしここで考えてみてほしい。今の点数の状況はそれほど差があるわけではなく、むしろ接戦だ。この状況でいろいろな競技を落とすわけにはいかない。

 

 だからこそ、わずかでも可能性があるならそれを行わないわけにはいかない。

空也「基本こういうのはお題が変わらないんだよ。だから去年のを思い出しておいてできそうなやつを持ってきた」

 去年の記憶もわずかながら残っているからあらかじめ空也は準備をしてきていた。優勝するために。

 

 バックをそう言いながらあさっている空也に向けて上がり切ったテンションのまま話しかける。

穂乃果「さっすが空也君! で、何を持ってきたの?」

 どうやら穂乃果はどんなアイテムがあるのか気になっているようだった。

 

 聞かれたためかリュックの中から持ってきたアイテムを取り出していく。

空也「ん~。メガネとヘアピンと……伝説の宝剣」

 眼鏡ケースに入っているめがねを開いて見せたり、女の子っぽいヘアピンを取り出したりしているさなかに何やら聞きなれない単語が聞こえてきた。

 

 話を聞いていたら普通に勝つことを考えているものがあったため安心しながら聞いていた。

海未「いろいろ持ってきたんですね……。って伝説の宝剣!?」

 そして思ったことは空也の言っていた完全に聞きなれない言葉だった。……いや、この場面で聞くことがあるはずがないと言ったほうが正しいのか。

 

 そんなことを言われたためか未だリュックの中をあさりながら話を進める。

空也「あ、間違えた。スタンガンだ」

 どうやら宝剣というのは冗談だったみたいで空也はリュックの中にあるであろうものを取り出そうとしていた。

 

 今度は聞いたことはあっても実物を早々目にしないはずであるアイテムの名前を聞いて驚いていた。

穂乃果「そっちもいろいろとまずいよ!? なんでそんなもの持ってるの!?」

 伝説の宝剣より何倍もリアリティーがあるが故にその驚きは普通よりも大きくなっていた。

 

 でも、護身用であるとしてもそんなものをホイホイと出していいわけがないはずなのだが、そんなことを気にせずに空也はリュックから手を取り出そうとしていた。

空也「冗談だ。そんなの持ってるわけないだろ」

 取り出した手には何も握られておらず、気の抜けたような表情をしている穂乃果と海未に向けて種明かしをした。

 

 しかし、海未はその種明かしだけでは満足していなかったみたいだ。それは視線の先にある目を疑うものを見ているから。

海未「そうは言いますが、後ろに刺さっている剣は何ですか?」

 ずっとリュックのほうに気を取られていたが空也の後ろには重々しい重厚感のある剣が突き刺さっていた。

 

 言われた本人はそれが見つかったというのにまったくどうしていない様子を表している。

空也「伝説の宝剣のレプリカだけど?」

 何も悪びれずにそれが普通であるかのように、それがあることが当然であるかのように話していた。

 

 だけど空也が持っている価値観を誰もが持っているわけではない。それが普通と理解できない人だって存在する。

穂乃果「普通そういうものは持ってないはずなんだけど……」

 後ろにある剣のことをずっと見ていた穂乃果はいまだ納得できていなかった。

 

 もちろんみんながみんな納得できているなんて思っていないし、本物のレプリカであるがこれまで言ってきたことは空也にとっても冗談だった。

空也「気にしたら負けだ」

 しかし、ここで引くわけにもいかない。ただ、このまま話し続けるとそれがばれてしまうかもしれない。極力冗談であると思われたくないためここでこの話題の会話を切ることにした。

 

 それでも納得のいかない穂乃果は空也に説明を要求する。

穂乃果「でも……」

 

 そんな穂乃果の疑問を解決することを空也は選択しなかった。

空也「負けだ」

 だから真っ直ぐに穂乃果の瞳を見つめて引き下がってくれるように話しかけた。

 

 ここでいろいろ言ってもらちが明かないと判断で来た穂乃果は食い下がることにした。

穂乃果「…………。わかった」

 しょうがないと割り切る。空也の視線はそう思わせるほど真っ直ぐなものだった。

 

 

 

 

 

 そんな話をしていると、ことりの競技が始まった。他には真姫や希、絵里も出場していた。

 

 一斉に始まり、出場した生徒全員がお題を取りに向かう。ことりは地面に置いてあるお題が書いてある紙を普通に取った。

 

 そこに書いてあるものを見てことりは数秒間固まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこにはこう書いてあった……。『伝説の勇者』と……。

 

 ようやく思考が追い付いたようで硬直がとける。しかし、依然として状況はあまり変わっていない。

ことり「え!? なにこれ!?」

 訳が分からない。でも、何もしなかったら状況は変わらない。そう判断したことりはとりあえずダメもとで空也たちのいるところに向かった。空也が持ってきたアイテムを知らない状態で。

 

 

 

 

 その一方で絵里は幹のもとに、希は凛のもとに、真姫はにこのもとに向かっていた。

 

 

 

 

 

 困り顔でトテトテと歩いてきたことりを見て穂乃果は少し心配になっていた。

穂乃果「ことりちゃん! 何だったの?」

 条件に合う人が見つけずらいものであることは今の状況ですぐに理解することができた。だからことりがどんな人を探しているのかを尋ねてみることにした。

 

 困り顔のままではあるがことりは穂乃果たちにお題が書かれている紙を見せてきた。

ことり「実は……これなの」

 そこに書かれているのは普通であれば、無理難題にもほどがあるものでこの体育祭の時間内に見つけられるかといわれれば誰もがNoと答えるようなものだった。

 しかし、ここにいる海未と穂乃果、そして空也はそうは思わなかった。

 

 なぜなら……、

海未「『伝説の勇者』……。え!? これって……」

 海未はもうすでにこれからどうすればいいのかを把握することができた。空也の持っているアイテムの中でつければ成立するであろうものを覚えているからだ。

 

 その発想に至ったのは穂乃果も同じだった。あれだけインパクトのあったものだからすぐに思いつく。

穂乃果「空也君! その宝剣もってことりちゃんと一緒に行って!」

 未だ空也の後ろの地面に刺さっている宝剣のレプリカを指さして言い放つ。

 

 そう、伝説の勇者がいないのであればそれに見合う格好をしていけばいい。向こうだってどれだけの格好で勇者にあたるかなんて細かい想定をしているとは思えない。

空也「もちろんわかってる! さぁ! 行くぞ! ことり」

 時間はない。もうすでにゴールしている生徒だって出てきている。そんな中で遅れてしまったことりを連れて行くのに空也は真っ先にことりの手を取った。

 

 そして逆の手には伝説の宝剣のレプリカを持ち腰に固定をした。空いた手でことりの腰を持ち上げてお姫様抱っこの状態にして、そのままゴールに向かって走る。

 

 少し怒った顔をしている海未と、驚き表情のまま固まっている穂乃果が視界の隅に見えたが何より印象に強かったのはことりのなんで私をお姫様抱っこしているのと言いたげな視線だった。その意味を理解できるのはきっと空也と海未の2人だけなのだろう。

 

 なぜお姫様抱っこをしたのかといえば、この競技のゴールの方法は条件に合う人と触れ合った状態でのゴールになる。しかし手をつなぐにしても重い剣を持っている空也がことりのペースに合わせられるかと言ったら、自信をもって肯定することはできない。

 しかしことりを持ち上げてしまえばペースを考えることもなく全力で走ることができる。少しスピードは落ちるが全体としてのスピードはこっちのほうが早いと判断しての結果だった。

 

 そういう考えをした空也だったのだがゴールできたのは4番目だった。3位までが得点をもらえるこの体育祭で結果が出せなかったと思われたが『伝説の勇者』を持ってきた人には無条件に20点が与えられるようだった。入賞すればさらに得点がもらえたがそれでももらえただけよかっただろう。

 

 ちなみに1位は絵里だったみたいだ。しかしゴールしていた絵里と幹の顔はゆでだこのように真っ赤だった。2位は真姫だった。なぜかにこを連れてくるときも顔が赤かったがにこはそんなことを気にしている様子はなかった。一体どんなものが書かれていたのだろうか? 希は凛を連れてきたが2人と違って普通の表情だったから何があったのか想像が難しい……。

 

 順位は1位黄組、2位赤組、3位青組だった。

 

 

 赤     青     黄

400   390   380

 

 

 追いついて追い越されてを繰り返しているこの体育祭。これからどんな結果になるのかはまだだれにもわからない……。それほどまでに接戦していた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次は走り高跳びグラウンドにはバーが設置され、マットもしっかりと設置されていた。

 

真姫side

 

 ここにきて本格的な陸上競技がいきなり出てきたがこれに出場するのがどうやら真姫のようだった。そしてこの競技には時間がかかると判断してか、各色1人ずつの出場になっている。

 

 入場してきた真姫がとても緊張しているとすぐにわかるような表情をしていた。しかも入場してくるときの動きはぎこちなかった。

真姫(絶対に点数が取れる競技だけど、今の状態だと1位を取らないと逆転される可能性がある……。大丈夫、授業でやったんだから!)

 その理由はこんなことを考えていたから。必ず得点がもらえるというものでも安心できるものじゃなかった。点数に差がないこの状況で誰もが高い点数を目標にしてきている中でいい結果を残さないとこの点がきっかけで負けにつながってしまうかもしれない。

 だからこの競技に油断をしてはいけなかった。

 

 競技が始まり、最初の目標となる高さが目の前に現れる。まずは100㎝。この走高跳に挑戦できるのはは1回だけで飛べなかったら脱落というシンプルなルールのもと行っている。最初の目標は簡単に飛び越えることができる。

 

 難なく真姫を含めた3人が飛び越えることができた。みんなが走高跳で使っている飛び方ははさみ飛びだった。

 

 次第に高さが上がっていき140㎝になった。自分の身長に近いくらいの高さになり飛び越えることが難しくなってくる。

 

 ちなみに黄組が130㎝で失敗をして今は青組と1対1の勝負になっている。

 

 最初は青組が飛ぶ。最初と変わらないはさみ飛びで。結果はバーに触れてはしまったもののそのバーは落ちることなくとどまり何とか成功に収めた。

 

 次は真姫の番だ。先ほどの高さで脱落したのは黄組だけであるが、その時真姫も余裕だったわけじゃない。しかもこの140㎝という高さは真姫にとって重いものだった。

真姫(授業ではこの高さをはさみ飛びで失敗している……。背面飛びなら……。イメージはしっかりとしているし何回か成功はしている。大丈夫なはず……)

 今まで飛んできた方法で授業の時に失敗をした。立て続けに、何回も。だから可能性があるほうを選択する。背面飛びという走高跳らしい飛び方を。

 

 そんなことを考えて真姫は目の前の障害に向かって走り出す。飛び越えるために。ちなみに真姫の今の服装は半そでである。そして飛んで今まさにバーを飛び越えようとしているその瞬間に強い風が真姫を襲った。風が来た瞬間、真姫の来ている体操服の裾がひらりと浮かび上がった。数秒の間に。

 

 時間にしてしまえば短いものだった。しかし、真姫ほどのスタイルを持っている人がそういう場面に陥ってしまえばとある人は喜びを覚える。とある人とはこのグラウンド内にいる男子生徒のこと。そしてその男子生徒が見たのは……。体操服から除くことのできる真姫のおへそだった。

 

 もう恒例といえるほどの野郎どもの黄色い歓声がグラウンド内を駆け巡った。

 

 飛び越えた瞬間、真姫はバーに触ってしまったみたいで心配そうにバーのほうを見つめていた。

 バーは大きく揺れているがまだ落ちてはいない。しかしなかなか揺れが収まらないと思っていたらその揺れで少しずつ移動していたみたいでバーはマットの上にポトンッと落ちる。この瞬間この競技の結果が決まった。真姫は残念ながら失敗してしまった。

 

 

 赤     青     黄

410   420   390

 

 再び青組が1位を取り戻した。このまま流れに乗れるのか……。それとも意地でほかの色が青組を抑えるのか。それは今後の頑張り次第でどちらもなりえるものだった。

 

 




かなりの接戦をしている音ノ木坂の体育祭……。急な逆でしらけさせてしまい申し訳ないです。……でも後悔はしていないので。

にこって結構走力自体はあると思っているんですよね。ハードル走で、真姫に何があったのかが分かった人は、にこには何も言わないで上げてください。

新しくお気に入り登録をしてくださったきゃろらいなりーぱーもちさん、koroさんありがとうございます!

次回『白熱する競技に休まる時間』

それでは、次回もお楽しみに!



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