ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

今回からユニットでいろいろな作業をしていきます。ほかの作品では主人公が3グループを回ったりしていますが、今回は空也が助けられる側になるのでその展開にはできませんでした。なのでほぼアニメ通りの展開も少なからずあると思いますが楽しんでくれたらうれしいです。

それでは、今回も乗り越えようと努力する彼、彼女らを優しく見守ってあげてください!


ユニット作戦開始

真姫side

 

 穂乃果命名の『ユニット作戦』が始まり、一度全員が別荘から離れることになった。そしてその中でも別荘に比較的に近いところにテントを張っていたのは、真姫を中心に作曲をする3人だ。

にこ「って、どうして別荘があるのに外でテントを張らないといけないのよ!」

 せっかく別荘という豪華なものがあるのにそこにいることができないところに来ているためにこはそのことについて不満を漏らす。一番近くにいるため別荘がより悔しさがにじみ出てしまう。

 

 しかし、もちろんこういう形をとって別荘からわかれたのも意味がある。

絵里「少し距離とらないと3班に分かれた意味ないでしょ。ちょうど別荘にテントがあったし」

 少しでも離れていないと結局みんなが集まって別れた意味がなくなってしまう。

 

 そうやって話をしている間も真姫は譜面を向き合っていた。何も楽器のない状況で。

にこ「こんなので本当に作曲できるの?」

 真姫を見てにこは素直にそう思った。作詞についての知識はないにこだが、楽器のない状況で作詩をすることができるのかという疑問が出てくる。

 

 にこの考えていることも無理はないだろう。今までの真姫の作曲はピアノと一緒にあった。そのため楽器がないとできないのではと考えるようになってしまうことは間違いではない。

真姫「私はどうせ後でピアノのところに戻るから」

 この場所に真姫たちがテントを張ったのはしっかりとした理由がある。それは作曲をするために別荘の近くにテントを張るということにした。やはりピアノがないと作曲はできない真姫だった。

 

 作曲に全神経を注いでいる真姫を見てまず自分たちが何ができるかを考える絵里。

絵里「そうね……、じゃあ食事でも作ろうかしら。真姫が少しでも進めるように」

 やっぱり作曲に口出しをするのはできそうにもないので、違う面でサポートをすると決めた絵里は料理をするためにテントから出る。

 

 その絵里の一言を聞き真姫は嬉しさから顔を赤くするが、先ほどからペンを握っていた真姫の手に力が入り作曲を進める。こうして支えてくれる人がいることで真姫の心の中に少なからずの余裕が生まれた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことりside

 

 衣装班のことりを中心としたグループは河原に来ていた。テントを張って一度リラックスした状態で衣装のデザインを考えようとしなのだが、

ことり「…………。穂乃果ちゃ~ん。はぁ~」

 テントの中でデザインを考えているとことりが最も信頼している穂乃果に何度問いかけても返事がなかった。それもそのはず、穂乃果の意識はもうすでにこの空間にはいないのだから。今は先ほどまでしっかりと寝ていたのに今もすやすやと気持ちよさそうにして眠っていた。

 

 何度も穂乃果に声をかけたことりだが、それが意味のないことになると気が付いてことりは一度リラックスするためにテントの外に出た。

ことり「気持ちいい~」

 そこにはなだらかに流れる川と、その先には豊かな自然が広がっていた。こんな大自然の中で深呼吸をすると普段とは感じることのできない快感を感じることり。

 

 そうしてリラックスをしていたことりのもとにザルのようなものを持った花陽が戻ってきた。

花陽「ことりちゃん、どう? 進みそう?」

 何か自分がことりのためになることをしたいということで花陽は少しの間単独行動をしていた。そんな花陽が先ほどのようなプレッシャーを感じていたことりの様子と変わったように感じたため作業の進捗を聞いてみる。

 

 勿論花陽の思ったことは正しく、一度こうして穏やかな気持ちになったことでことりに大きな変化が現れた。

ことり「うん! 一息ついたら少しイメージがわいてきたよ。あ……」

 花陽に向けてそう話すと花陽の持っているザルの中にあるものに目が行った。

 

 花陽は花をいくつか持ってきていた。名前はわからないけど今のことりと花陽にとってはそれは少しのささやかな変化であった。

ことり「それは?」

 なぜ花陽がその花を持ってきたのかをことりは聞いてみる。

 

 ことりに聞かれた花陽は花を持ってきた理由を語る。

花陽「きれいだなぁ~って思って。同じ花なのに一つ一つ色が違ったり、みんなそれぞれ個性があるの。今回の曲のヒントになるといいな」

 ことりにとって何かプラスになるようなものを持ってきたい。考えになるようなものをとってきたいと思った花陽はそのための単独行動をしている時にその花を見つけた。その花は花びらの枚数や色の違いなど見ただけでしっかりと同じ種類だとわかるのにそれぞれに違いがあることに気が付いた花陽はそれをことりに見せた。

 

 自分1人じゃこういった考えはできなかったことりは持ってきてくれた花陽に感謝する。

ことり「ありがとう。花陽ちゃん」

 ユニットごとに分かれたことが功を奏しことりの中に少しずついろんなイメージが頭をよぎった。

 

 そのことりの答えに持ってきた花陽は喜び微笑む。そういているとテントのほうに視線が向いた。

花陽「なんだか……」

 その中で眠っている穂乃果を見て花陽が口を開く。

 

 その先の言葉はきっと同じくテントの中を見ていることりもどことなく察することができた。

ことり「うん」

 きっと考えていることは2人とも同じだろう。

 

 すやすやと気持ちよさそうに寝ている穂乃果の姿はとても羨ましく感じるものがあり、

花陽「眠くなっちゃうねぇ~」

 見ている側の人間もついつい眠くなってしまう。穏やかな気候と相まってそれはすぐに感じるものだった。

 

 やっぱりことりもそのことを思っていたようで素直に花陽の言葉にうなずく。

ことり「うん」

 作業の進展もあったことから少し余裕が出てきたことりはその後穂乃果と一緒に眠ろうと花陽に持ち掛ける。花陽はことりの提案を受け入れみんなでお昼寝をすることになった。

 

 まぁ、余裕があるといってもほんのわずかなもののためこれから少し大変になってしまうかもしれないがそれはこの後のお話

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空也side

 

 空也たちは海未の提案で山に来ていた。なんでも山に行けばイメージがわいてくるそうで……。みんなで海未が行きたいという山に登っていたのだが、

凛「いやぁ~~~!」

 いきなり凛が悲鳴を上げる。今の状況はジャンプでは飛び越えられない高さを登ろうとしてた。

 

 その凛の手を握って先にいろいろと装備できているため上に行っていた海未は凛に向けて叫ぶ。

海未「凛! 絶対にこの手を離してはなりません! 死にますよ!」

 それなりの高さがあるが学校の階段よりは高さがないにしても打ち所が悪ければ、とがった岩肌でただでは済まないだろう。

 

 必死で海未の手を握っている凛の頭には今日のある出来事が脳裏をよぎった。

凛「いやぁ~~~! 今日はこんなのばっかりにゃー!」

 それはにこと一緒に高所から川に落ちたこと。今日の凛は危険な目によく合うようだ。

 

 そんな凛の背中を後ろから持ち上げる希はとにかく凛がもう少し力を出せるように声を出す。

希「ファイトが足りんよ!」

 もともと運動神経のいい凛にはこの程度海未の手助けを借りればすぐに登れるはずだ。そのため凛に向けて希はそう告げた。

 

 しかし今の凛の状態を見ると普段通りの力を発揮するのは難しい。そう判断した空也は、

空也「やれやれ。よっと!」

 懐から常に持っているワンドを取り出し軽く降り凛のほうに棒の先を向けた。

 

 その瞬間少しの間停滞していた凛の体が動き始め高い段差を乗り越えていた。

空也「ふぅ~」

 今の魔法は簡単に言うとものを持ち上げる魔法。ものを持ち上げるという結果だけを見れば成功なのだが、この行為にはいくつものやり方が存在するし、長時間持ち上げるのは骨が折れる。今回の空也の魔法は凛自身にかかる重力を弱くしたのだが、今の空也には普段よりは疲労がたまる。

 

 凛のことを支えていた希が急に軽くなった凛に違和感を感じ空也に聞いてみる。

希「空也君。なんかした?」

 明らかに何かをしたといえる空也の変化を見た希は何をしたのかを空也に訊ねた。まぁ今まで握っていなかったワンドを空也が握っている時点で魔法関係のことをしたのはわかるが。

 

 希のそう聞かれた空也は正直に自分のしたことを教える。

空也「魔法で凛を軽くした。もともと軽いらしくあまり力は使わなかったけど」

 これだけを言ってしまえば簡単なように感じられる。言っている空也も今は疲労を見せないように希に話した。

 

 空也のやったことを知った凛はある種の恐怖から逃れられたためかホッとしていた。

凛「空也君。ありがとにゃ!」

 そしてその手助けをしてくれた空也に対してお礼を言った。さり気に言った空也のフォローについても詳しくは言わなかったが今のお礼の中に入っていた気がする。

 

 そのお礼を素直に受け取る空也。そして希も上にたどり着き最後に空也が昇り終えた。

空也「どういたしまして。じゃあ、これからどうする?」

 4人とも上にたどり着きこれからどのみちでどこに向かうのかを空也は海未に訊ねる。すると海未は少し考えるそぶりを見せる。そして上に続くだろうと判断した道を指さし、前を歩き残りの3人を先導する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからもずっと歩き続け、先ほどのような展開も数回あったが、何とか4人そろって進み続けることができていた。

希「雲がかかってきた。山頂まで行くのは無理や」

 順調にいくと思っていた登山も山頂に雲がかかり夕日が沈み始めていた。

 

 両膝に手を付けながら下を向いている空也は希の言ったことに同調する。

空也「時間も時間だしな……」

 夜の登山は危険だ。足元も見えなくなるため危険度が大きく上がる。それに岩肌がとがっているこの山はさらに危険になるだろう。

 

 そう判断している希と空也の考えを聞いて山頂を見つめている海未は悔しそうにつぶやく。

海未「そんな……。ここまで来たのに……」

 山に登ろうと言い出し何かと頂上にたどり着くことを目標にしていた海未は本当に悔しそうだった。しかしその目はあきらめてはいなかった。

 

 だが、もう登山に関してはこりごりだと思っているものも少なからずいた。それは凛だ。

凛「ひどいにゃ! 凛はこんなとこ全然来たくなかったのに!」

 山に来る前に川に落ちて今度は登山中に危険な目に何回かあっている凛は少し目尻に涙をためていた。そもそもここに来たのだって空也の作詞の手伝いをするためなのにまったく空也は作詞の作業をしていない。

 

 それでも海未は山に登ることをやめずに行こうとしていた。

海未「仕方ありません。今日はここで明け方まで天候を待って翌日アタックをかけましょう。山頂アタックです!」

 ただ今日はあきらめるが絶対に登り切りたいという海未の願望がここにきてより前に出る。

 

 その海未の判断にもう疲れ切って座り込んでいる凛と……、

凛「まだ行くの!?」

 珍しいことに空也はここでリタイアしたいという意味を込めて言葉にする。

空也「俺。もう、魔法を使いすぎて限界なんだが……」

 先ほどひじに手をついていた空也は肩で息をしていた。体力的にも限界になってきているのだろう。

 空也はあの夢を見た時から本島にいても魔法をある程度使えるように練習をしていたが、やはり今日のように何回も続けて魔法を使うのは無理なようだった。

 

 しかし今の海未には周りが見えていない。そのため山頂を見つめたまま、

海未「当然です! なにしにここに来たと思ってるんですか!」

 まだ続けることを口にする。

 

 そんな今の凛にとっては絶望的な宣言に凛は先ほどたまっていた目尻の涙が自然と流れた。それほど今のことが嫌なのだろう。

凛「作詞に来たはずにゃー!」

 そして凛は海未に訴えかけた。そう、ここに来たのは作詞をサポートするため。なのにやはり先ほどから何も作詩らしいことはしていない。

 

 そのことを凛に言われた海未はどこかしまったという表情になる。

海未「あ!」

 そして海未のことを変えたのは表情だけではなかった。思わず声に漏らしてしまうほど海未は今も状況をすぐに理解した。

 

 そしてその言葉だけで今まで海未の中に何があったのか察することができる。

空也「まさか……」

 海未の中に合った考えを空也が息を切らしながら話す。

凛「忘れてたの!?」

 そして我慢できなかった凛が空也の言うはずだった言葉の続きを言う。

 

 ただ、今それを肯定してしまうのは海未のプライドが許さなかった。

海未「そっそんなことはありません。山を制覇し成し遂げた充実感が創作の源になると、私は思うのです!」

 もう手遅れではあるがどうしても海未は言い訳をしてしまう。確かに何かを達成したときの感情は創作に通じるものがあるため一概に何も関係ないとは言えないが今の状況では苦しい言い訳にしかならなかった。

 

 そんな話をしている間にも空也の体力は限界近くまで来ていた。

空也「希、後は頼む。俺……。限界……」

 希に今の海未のことを託し空也は、その場に倒れてしまった。幸い気絶まで入っていないから回復はそこそこ早くなるだろう。

 

 空也に海未のことを託された希は親指を立てて自信満々に空也に言う。

希「任せとき! 海未ちゃん。気持ちはわかるけどここまでにしといたほうがいいよ。空也君も限界みたいやから」

 優しく海未に語り掛けるように話す希は穏やかでまるで言葉で海未を包んでいるかのように感じられた。

 

 それでもどうしても山を登りたいと思っていることがある海未は、

海未「ですが……」

 食い下がってでも山を登りたいことを公言する。

 

 そこで希は今一度海未に語り掛ける。

希「山で一番大切なことなんは何か知ってる? チャレンジする勇気やない、諦める勇気。わかるやろ?」

 この言葉は海未だけに当てたものだけではなかった。今この言葉を聞いているであろう一番聞いてほしい人物にも希は同じように語りかけた。

 

 ここまでの言葉にようやく折れた海未は、

海未「希……」

 肩を下して希の名前を呼ぶ。これは山に登れなかったことに対する落胆ではなく、海未自身もリラックスすることができたため海未の肩の荷が下りたようだった。その証拠に今の海未の表情はいい笑顔だった。

 

 もう今の海未を見ていて安心した様子の希は、

希「凛ちゃん。空也君が回復するまで下山の準備、晩御飯はラーメンにしよう?」

 下山の準備をし始めた。今は寝転がっている空也の回復を待つ必要があるがそれでも準備だけはしておこうと判断しての行動だ。

 

 そして凛は希の言葉の中に合った単語に反応する。

凛「ほんと!」

 ラーメン好きの凛にとってはその言葉だけで今までの疲労がなくなったかのように立ち上がった。

 

 ただこんなところまで来てしまうと食料が足りるか不安になるが今の希ほど頼れる人材はいないかのように不安を打ち消すかのように希が話し始める。

希「下に食べられる草いっぱいあったよ。海未ちゃんも手伝って」

 ただひたすらに登ってただけではなくいろんなところを観察していたようでそのことをみんなに向けて話した。

 

 そうこう話している間に何とか立ち上がった空也は自分がもう大丈夫であることを告げる。

空也「俺はもう大丈夫だ。歩ける程度は回復した」

 体力が限界になっていた空也だが上を向いて何回も深呼吸していると次第に息は整い体力も回復していた。

 

 準備のできている空也を見て希がまず先導して山を下りる。

希「じゃあ空也君には、料理してもらうから。それまで作詞してて」

 その最中に空也にそう話す希。ことりと真姫は少しでも作業を進めていたが、空也は今まで何もできなかった。そのため2人よりは忙しくなるだろう。

 

 ただ、それでも空也はやる気がみなぎっているようで、

空也「了解」

 短くそう答えた。しかし、そのことを言っている空也の目はまっすぐに何かを見つめていた。

 

 どんどんと進んでいく希の後姿を見ながら今までの会話で気になったことが自然と海未たちの口から洩れる。

海未「でも、そんなことにまで詳しい希って……」

 

凛「謎にゃ~」

 確かに山菜などのことを一目見ただけで把握する希はいったい何者なのだろうかと考えてしまうほどの情報を含んだ会話だった。

 

 しかし今そんなことを考えていたってしょうがない。

空也「そんなこと、考えたってしょうがない」

 唖然としている海未と凛に空也はそう告げ、先に行っている希の背中を追いかけ下山をするのであった。

 




なんか今回の話で初めて空也が直接的にμ'sメンバーに助けられましたね。ただ空也の集中するときの条件というのがアニメ1期6話回に相当する話に書いた通りある程度うるさくないとできないのでそれも作詞ができない理由として少し入っています。

そして海未!誕生日おめでとう!きっとアメリカから帰った時には誕生回ができるでしょう!それまで今しばらくお待ちを……。

さて、今回でユニットごとに分かれて作業を始めたμ'sたち。一体これからどんな風に曲だできていくのでしょうか?

新しくお気に入り登録をしてくださったにゃむろっとくんさんありがとうございます!

次回『新曲完成』

それでは、次回もお楽しみに!



Twitter始めました。
https://twitter.com/kuuya_soranari
どうかよろしくお願いします!

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