ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~ 作:そらなり
前回は穂乃果がラブライブ本線の日程を雪穂から教えられて考え始めました。今回で穂乃果が何を思っていたのかが分かると思います。
それでは、今回も新しいことを知った少女が出す答えを見届けてあげてください!
穂乃果side
翌日の放課後。穂乃果は生徒会の仕事をするために色々なファイルを職員室から生徒会室に運んでいた。その時も頭にあるのはラブライブのことについて。学校にはポスターも掲示してありもうこのことを知っている人だって少なくなかった。
にこ「穂乃果!」
そうやって考えながら歩いていると前に急ににこが現れた。服装はジャージを着ていていた。
今は練習をしているはずと思った穂乃果はやって来たにこに要件を聞く。
穂乃果「どうしたの?」
いきなりやって来たのだ。μ'sの練習に何かあったのかもしれないと今はただただそのことが心配だった。
そして穂乃果のところに来たわけをにこが話す。
にこ「勝負よ」
それはいきなり、にこの口から告げられた。ラブライブをかけての勝負。
しかし、急にそんなことを言われてもすぐに受けることは難しい。
穂乃果「え?」
っというより何に対しての勝負なのかいまいち理解していない穂乃果は首をかしげることしかできなかった。
にこの話はこうだった。ラブライブの出場をかけて勝負をしよう。そしてその勝負内容はいつも練習で走っている神田明神の男坂を走って先に上に登り切った方が勝ちという内容だった。
穂乃果はそれを少し悩んで受け入れた。
side out
空也side
にこが穂乃果に出した勝負の内容はμ'sメンバーに伝わっており、勝負を見届けるために神田明神に集まっていた。
階段の下でスタンバイしている穂乃果に向けて話をかける空也。
空也「で、こんな勝負なんだ」
勝負内容を最後に一応伝えるために穂乃果に向けて簡単な説明をする。
これから始まることに関しては一応学校で説明したが、
にこ「2人でこの石段をダッシュで競争よ」
男坂は練習で走っているとはいえ急な段差があるこの階段はずっと走るのは厳しい。そのため勝敗をつけるにはもってこいだと思ってのにこの考えだった。にこはあの時に空也の言葉を聞いて倒れるつもりはないと考えた。その体力を示すためにこの勝負を持ちかけた。
しかし、それを知る由もない穂乃果はこの勝負内容を疑問に思う。
穂乃果「なんで競争?」
理由を聞こうと空也とにこに話を聞こうとするが、
それは空也にとって遮られてしまう。
空也「よっし。これからスタートまでしゃべること禁止。それじゃあ行くぞ。よ~い、スタート!」
もうすでに勝負は始まっている。そのため私語を禁止することを告げ、いきなりスタートの合図をかけた。にこに言われどうしてもということで空也も手を貸した。これでにこが勝てば、抑えている穂乃果の本心が聞けると思ったからだ。
今まで話そうとしていた穂乃果はスタートが出遅れてしまい、先に走り出していたにこを追いかける形になった。
穂乃果「え? にこちゃんずるい!」
この動作で空也と結託しているのがわかったためにこに向けて話をかける穂乃果。
そんな穂乃果を見ていられなかった空也は、穂乃果が自分のことを通過する点で、
空也「ごめん」
ぼそりと穂乃果に向けて謝った。
しかし、そんな空也とは裏腹になんとしてでも勝ちたいにこは勝利に貪欲になり、
にこ「悔しかったら追い抜いてみなさい!」
自分が必ずしも勝つようにひたすらに走っていく。
階段の途中。順調と思っていたにこにあることが起きる。走っている途中に転んでしまった。石段のため打ち付けるとある程度痛みを感じるその階段に思いっきり体をぶつけてしまった。痛みでにこは今立ち上がれない。幸いにそこから落ちてしまうなんてことはなかったのでその場ににこはうつぶせの状態になってしまっていた。
穂乃果「にこちゃん!」
転んだにこを見た穂乃果は先ほどよりも速いペースでにこのいる場所に向かった。
そして転んでしまったにこを心配する穂乃果は、
穂乃果「にこちゃん! 大丈夫?」
にこに向けて手を差し伸べる。
その手をにこは取り立ち上がる。
にこ「へっ平気……」
まだ痛みはあるのか少し苦しそうな表情をしているにこ。
しかし、どうやらそれ以上のことはないようで少し安心する穂乃果は、
穂乃果「もう……。ずるするからだよ」
先ほどのイカサマに関して愚痴をこぼす。
その後ろから急いでやって来た空也がたどり着き、周りが見えていない穂乃果たちに話しかける。
空也「とりあえず避難しよう。雨が降るから」
空を見上げると黒い雲がいまにも泣き出しそうなくらいだった。
空也の助言で急いで階段を登りたどり着くとその瞬間に雨が降り始める。雨宿りをしている時どうしてもとラブライブの話になる。そして昨日気がついたことに関しては穂乃果が絵里に聞いてみると、
絵里「そうよ。3月になったら私たち3年は卒業。こうしてみんなでいられるのはあと半年」
開催時期から察していたことを穂乃果に伝える。そう言っている絵里はどこか寂しそうな表情をしていた。
絵里に続き今度は希が話し始める。
希「それにスクールアイドルでいられるのは、在学中だけ」
そう。スクールアイドルは学校に所属してこそのもの。だから卒業してしまえば名乗ることはできないし、それが出場既定の大会に出ることはできない。
昨日脳裏によぎったことを改めて口にされると、
穂乃果「そんな……」
その訪れてしまう未来に少し悲しくなってしまう穂乃果。
穂乃果が考えていることなんてすぐにわかる。今の表情からなら。
絵里「別に、すぐ卒業してしまうわけじゃないわ。でも、ラブライブに出られるのは今回がラストチャンス」
今すぐではない。けどそれは必ず訪れてしまうことで、それにチャンスも今回がラストと言われればどうしても出たいと思ってしまう。
そしてやはりこの話になるとそのラストチャンスを逃した時のことをどうしても考えてしまう。
希「これを逃したら、もう……」
その先の言葉を希は言わなかった。言ったら悲しくなってしまうことが分かっているから。
後ろ向きな考えがみんなの脳裏をよぎるがそれを吹き飛ばすかのように絵里がまた話し始める。
絵里「本当はずっと続けたいと思う……。実際卒業してからもプロを目指して続ける人もいる。でも、この10人でラブライブに出られるのは今回しかないのよ」
ずっと続けたい……。それはみんなが思っていることで、でもラブライブは今回しか出ることができない……。そんな葛藤を彼女たちは胸に秘めていた。
絵里の言葉を聞いて穂乃果は周りを見渡す。
穂乃果「やっぱり、みんな……」
入ってくるのは少し悲しそうな3年生の表情と決意を持った表情の1年生。そして優しく穂乃果を見守る空也たち2年生の姿だった。
あることを決意している花陽が穂乃果に向けて語りかける。
花陽「私たちもそう。たとえ予選で落ちちゃったとしても、10人で頑張った足跡を残したい!」
普段はすごい弱気で恥ずかしがり屋の彼女が彼女なりに考えて必死に考えて出した答えを穂乃果に伝える。
それは1年生全員の意見だったようで、
凛「凛もそう思うにゃ!」
真姫「やってみてもいいんじゃない?」
凛も真姫も本気でやりたいと思っていた。
3年生と1年生の答えはわかった。そして穂乃果は幼馴染の3人に答えを聞いてみる。
穂乃果「みんな……。ことりちゃんは?」
まずはことりにラブライブについて聞いてみる。
するとことりはすぐに答える。
ことり「私は、穂乃果ちゃんの選ぶ道ならどこへでも」
この言葉は穂乃果がどんなことを思っているのかが分からないといえない言葉だ。本当にやりたくないと思っているならこんなことは言わない。
そして今度は海未が考えを穂乃果に話す。
海未「また自分のせいで、みんなに迷惑をかけていまうのではと心配してるのでしょう。ラブライブに夢中になって、周りが見えなくなって生徒会長として学校のみんなに迷惑をかけるようなことはあってはいけない」
そう。今の穂乃果は生徒会長だ。μ'sのみんなだけでなく今の立場なら学校全体の迷惑にもなりかねない。あんな失敗をしてしまった穂乃果だからこそ考えてしまうものがあった。
そしてそれは自分だけでなく、ほかの人だって起きる可能性がある。
空也「それに、自身の経験からほかのみんなが過度なトレーニングから体を壊すのが心配。そういうのが心配なんだろ?」
無理して活動休止になってそれで終わりなんて未来は最悪だ。きっとあの時理事長に言われたことも影響している。周りを見ることができるようになった穂乃果だからこそいろいろ考えてしまうものがあった。
空也と海未に自分の考えていたことを告げられた穂乃果は、
穂乃果「全部、バレバレだね。始めたばかりの時は何も考えないでできたのに、何をやるべきかわからなくなる時がある。でも……、一度夢見た舞台だもん。やっぱり私だって出たい! 生徒会長やりながらだから、迷惑かけることがあるかもだけど本当はものすごく出たいよ!」
初めて穂乃果が自分の本心をさらけ出した。それはそうだ。以前目指した地に向けて新しい道ができたのだ。そこに向かいたくないなんてことはあり得ない。穂乃果ならなおのこと。
穂乃果の本心か聞けたことにより空也にもまたいえることが増えた。
空也「俺たちなら迷惑になんて思わない。それどころか手伝ってやるよ。言ったろ? 後悔するなってな」
迷惑なんて思わない。必死にやりたいと思うことをやるのが高坂穂乃果だ。そんな穂乃果に絶対に後悔しないでほしいと思ったからこそ空也はあの時この言葉を送ったのだ。
この空也の言葉が、今まで縛っていた穂乃果のやる気を解放させたようで、
穂乃果「そうだね。やろう!」
ラブライブに向けて純粋にやろうと言い出した。
そんな穂乃果の言葉にみんなは笑顔になり、声を合わせてやろうと言い出す。これでここにいるみんなの心は1つになった。
穂乃果「よ~っし! やろう! ラブライブでよう!」
解放された穂乃果のやる気はどんどん上がり続け、穂乃果はそのまま雨の降る神田明神に足を踏み入れた。
穂乃果はそのまま駆け出し、少し走った先で立ち止まり大きく息を吸った。
空也「なんかやりそうだな……」
その姿を見た空也は直感で何かをすることを察した。またほかのみんなは突然の穂乃果の行動に疑問を持っているようで穂乃果のことをじっくりを見ていた。
そして十分に息を吸い込んだ穂乃果がやまびこをやるような体勢をとる。
穂乃果「雨やめー!」
ひたすら穂乃果は雨の降る雲に向けて大声で叫んだ。普通ならこんなことをしたって何もならない。むしろ悲しい目で見られる可能性のほうが高い。
しかし、本当に穂乃果が練習をするために雨がやんでほしいという想いが届いたのか雲はだんだんと薄れその隙間から太陽の光が差し始めた。
それを見たにこたちはただただ驚いた。
にこ「嘘!」
簡単にできることじゃないどころか不可能に近いことをやってのけたのだ。それを見たら驚くことは無理もない。
そしてそれは穂乃果も思ったこと。でもこの結果は穂乃果たちを余計にやる気にする出来事だった。
穂乃果「本当にやんだ! 人間その気になればなんだってできるよ! ラブライブに出るだけじゃもったいない! この10人で目指せる最高の結果! 優勝を目指そう!」
空に向けて穂乃果が人差し指を伸ばしみんなにそう言った。今まで少し悩んでいた人の言葉とは思えないほどのポジティブな考え。もう穂乃果は大丈夫だといえるだろう。
穂乃果のいきなりの発言に驚くμ'sのみんな。
海未「優勝!?」
凛「そこまで言っちゃうの~!?」
にこ「大きく出たわね!?」
希「面白そうやん」
その中には穂乃果の言ったことをすぐに受け入れ、やる気が上がる者もいれば、今は驚くことしかできない状況のものもいる。
しかしそんな中、穂乃果のしたことに驚きながらもそれを表に出す前にそのあとに行ったことに反応する。
空也「何をあたりまえの事を……」
もとより空也はそのつもりだった。ただ出るだけならなんとでもなる。そして最後のチャンスでもあるこの大会。最高の結果で終わらせたほうが思い出にも残る。もう一度夢に向けてまた走り出すことを空也はためらわない。
そう空也が思考を巡らせている時も穂乃果はひたすら話し続ける。
穂乃果「ラブライブのあの大きな会場で精一杯歌って私たち、1番になろう!」
やっといつもの調子を取り戻した穂乃果に今は怖いものはない。堂々とみんなに向けて宣言し続ける。
それを聞くと不思議とできるように感じてくる。また、穂乃果のその言葉は今以上にみんなのやる気を上げる。
真姫「穂乃果!」
ことり「穂乃果ちゃん!」
絵里「穂乃果!」
穂乃果がμ'sのリーダーだったからこそ、ここまでみんなを引っ張ることができたのかもしれない。真姫たちはひたすらに穂乃果についていく気満々で穂乃果のことを見ている。
きっとこれからみんなが待っているであろう行動を穂乃果はやり始める。
穂乃果「よ~っし。いっくよー!」
それはいつか見たような階段に向けて走り出す姿。そして走っている穂乃果の表情はどこまでも笑顔で、穂乃果について行っているみんなも、優勝が不可能なんてみじんも思っていないほどの笑顔をして音ノ木坂学院に練習をしに戻っていった。
どんなに不可能に思えることだって想いの力があれば乗り越えられる。そのことにどんだけ心から望めるか。それができるものはどんな人だって魔法使いだ。1つのことを思い続けることが難しいことであると同時に何物にも負けない美しさを持っている。
今日、穂乃果は魔法を使った。意識してのものでも、無意識のものでもない。ただその想いが空に、天に届いただけだ。
こんなことを見てしまえば頑張らないわけにはいかない。だから空也は全力をかけて彼女たちのサポートそして行こうと心に誓った。
今回で2期1話『もう一度ラブライブ!』回が終わりになります。コラボさせている作品がらこういう考え方を持ってこれるのは正直すごく楽しかったし、自分の中で謎が解けた気がしました。
次回はもちろん合宿回。次回も今回と同じような考え方ができる回となっています。サブタイから察して調べてみるのもいいかもしれませんね。
新しくお気に入り登録をしてくださったアンダーグラフさん、こうのとりさんありがとうございます!
次回『サンタクロースの正体』
それでは、次回もお楽しみに!
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