ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

今回でようやくTVアニメ分が終わりになります。とうとうここまでやって来ましたよ!

それでは、今回も想い出巡りをする彼女たちを見て言ってください!


想い出

 μ'sの中で決めたルールを破ってしまった空也は手伝ってくれるという穂乃果と一緒に自動販売機にへと向かっていた。

 

 その途中に穂乃果は隣を歩いている空也に何かを言おうとしていた。部室から少し離れて周りには誰もいないことを確認した穂乃果は空也のほうを見て口を開いた。

穂乃果「空也君、ありがとね」

 それは空也に対しての感謝の言葉。

 

 けど、空也はその言葉を素直に受け入れるつもりはなかった。

空也「なんの事だ? 俺は何もしてないけど?」

 穂乃果が分かっていること……それは空也のやったことは空也自身が自分でしたくてやったこと。感謝されるつもりでやったわけではなかった。ただ、穂乃果が無理をしている姿を今は見たくなかったというそんな簡単な理由だった。

 

 それでも、穂乃果が感謝したいということにはわかりなかった。だから感謝している時の理由を空也が逃げられないように口に出した。

穂乃果「私が気がついてないと思ったの? あのままだと私が"最後"っていっちゃうから止めたんだよね」

 たしかに空也はあの時に穂乃果が最後という言葉を言い放つ前に話した。空也ならあの時にルールを忘れていたなんてことはあり得ない。それは長年一緒にいた穂乃果だからこそわかる。後ろでも前でもなく隣でずっと空也のことを見ていた。そんな空也のことだから穂乃果は確実にあっている自信があった。

 

 もう言い逃れはできない。そう直感したのか空也はそれ以上誤魔化そうとはしなかった。実際にほのかのための行動になったことには間違い無いのだし、せっかく感謝してくれているのだからその言葉を無下にするのもおかしなものだろう。

空也「気が付いてたのか。まあそうだな。感謝するんだぞ」

 それでも、ただただ感謝の言葉を受けることだけはしなかった。けどそれは空也が恥ずかしかったからに過ぎない。頬を赤くして穂乃果のことを直視できない空也の姿を見ればそれは簡単にわかることだろう。

 

 もちろんそのことに穂乃果も気がついていた。なかなか素直にならない空也のことを見て少し呆れていた。

穂乃果「はぁ……。今の一言がなければ最初に行ったように感謝してたんだけどね」

 もう何年も一緒に過ごしているというのになかなかこういう感謝するときは誤魔化したり、恥ずかしがったりする様子はもう見飽きてしまっているようだ。早く普通に感謝の言葉を受け取って欲しいと穂乃果は思っているのだろう。

 

 予想外の穂乃果の悪態に驚きながらも空也はそのままの態度で言葉を続けた。

空也「なんだよそれ」

 そんな他愛もない会話を続けていると空也と穂乃果は自動販売機のある場所にたどり着いた。それからは特に話すこともなく淡々と罰ゲームのジュースを購入していく。ちょうど2種類のドリンクは紙パック型の物で簡単に多くの量を持つことができる。それにほぼ半分の割合のため空也と穂乃果の持つ量もそんなに変わらなかった。

 

 そのままみんなの待つ中庭に向かっているとおもむろに空也は口を開いた。まるで今思い出したかのように、そしてそれは多くの人に知られないように注意していたかのように。

空也「あ! もし俺を学院内で見失ったら講堂に来てみ。たぶんそこにいるから」

 明らかに何かを企んでいる。そう公言しているようなものだけど、空也は隠すことなく穂乃果に見失った時の対応を伝える。これだけでは何かを企んでいるということはわかっても何をしようとしているかまではわからない。

 

 きっと穂乃果は空也が何かを企んでいることは気がついているのだろう。

穂乃果「ん……? わかった」

 それでも真剣な空也の表情を見た穂乃果は何をしようとしているのかなんて聞くことはできなかった。だから素直に穂乃果は空也の言ったことを受け入れることだけをした。絶対に思い出せるように頭の中で何回も反芻しながら。

 

 そんな話をしていると中庭にたどり着いた。中庭にある大きな木の周りにある石でできた椅子に座りながら穂乃果と空也の帰りを待っていた絵里たちの視線が一斉に空也たちの方を見ていた。そんな光景に意地汚いというかなんというか人間らしすぎる反応に若干空也は呆れていた。

 

 全員にリクエストされた飲み物を渡していくともらった順にパックの飲み物にストローを刺して飲み始める。

絵里「空也のおごりのジュースは、おっいしっいな~」

 空也の目の前で飲んでいた絵里は最高の笑顔で空也に向かってそう言った。

 

 別にこの罰ゲームも空也にとっては痛くもなかったことからそこまで気にしていたわけではないけど、絵里の挑発するような笑顔に対抗心を燃やしてしまった。

空也「全く……。まぁこれっぽちの出費は問題ないから平気だけど」

 言うことでもないことを公言し、あくまでも問題ないことをアピールする空也。普段は冷静で影でみんなのことを支えていた空也もこんな子供っぽい挑発に乗ってしまうということをいまの今になって知った絵里たちはどこか嬉しい気持ちになっていた。

 

 そんな意外な一面が見れたながらも、罰ゲームとはいえ奢ってもらったことには変わりない。

希「空也君ありがとう」

 ジュースを飲みながらもいつもはおちょくってくる希が素直に空也に感謝していた。

 

 希の言葉には特に嫌味を返すようなことはないため素直に受け入れる。

空也「どういたしまして」

 奢った結果その人が笑顔になってくれれば、幸せだと思ってくれたのであれば奢った甲斐があるというものだ。今回は罰ゲームという面もあったとはいえ、希のように嬉しそうな笑顔を見ることができたのであれば、これは奢って良かったと思ってもいいものだろう。

 

 ジュースを飲みながら話をしていると真姫がとあることに気がついた。この場所はラブライブがもう一度開かれると真姫、花陽、凛、にこの4人がパンを食べている穂乃果に教えた場所。そんな場所でこうして話をしているととあることが気になってしまった。

真姫「そういえば穂乃果、最近パン食べてないわね」

 それはラブライブの2回目が開かれるとわかって以来、パンを間食に食べている姿を見ていないということ。パン好きの穂乃果にとって長い間パンを食べないでいられるということは思い返して見れば異常なことであった。

 

 そんな穂乃果もなんとなくとか気分でパンを控えていたわけではなかった。

穂乃果「うん。ラブライブがあったし我慢してたんだ」

 確かな理由の元穂乃果はパンを食べないでいた。ラブライブという大きな大会に出場するだけではなく、最初から優勝を目指していたのだから。アイドル活動をしている時に穂乃果は仕切りにダイエットという言葉を多く出していた。それを行動に移すことはなかなかなかったもののしようという気はあった。それくらいプロポーションに関しては気を遣おうと思っていた。

 

 そんな意図があったとはいえ、穂乃果は2回目のラブライブに出場すると決めた日からラブライブまでの間にダイエットをしたのも事実。

海未「それでも結局ダイエットしましたけどね」

 パンを食べなくても大幅な体重の増加があり、パンを食べてても食べていなくても変わりなかったような気がしなくもない。

 

 ダイエットをしたことによる後ろめたさからバツが悪くなってしまったのか穂乃果は冷や汗をかきながら海未から目をそらす。

穂乃果「いやあれはその……」

 目をそらすだけでは満足できなかったのか近くにいた空也の後ろに子犬のように穂乃果は隠れてしまった。

 

 そんな穂乃果をサポートするかのように話題を変えようとする空也。

空也「さて、これからどこに行く?」

 実際、空也の罰ゲームが入ってしまったとはいえ、みんなはこの学校にある思い出を巡ろうとしていた。それが流れに流れてしまった結果、今こうなっているのだがそろそろ移動を始めていかないとなかなか全部を周ることはできないだろう。

 

 それに空也はこれからやろうとしていることがある。学校に居られる時間にも限りがある。やろうとしていることが多い分早めに周ろうとすることに悪いことはないだろう。

 

 空也がどこを周りたいかを聞いたらいの一番に反応をしたのはことりだった。

ことり「飼育小屋!」

 これが卒業生である3年生の思い出巡りだというのに本当にそこに行きたいようだ。ことりの提案に反対するものはいなかったためみんなで飼育小屋を目指すことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みんなで飼育小屋に来て見ると中にいるのはいつも通り白いアルパカと茶色いアルパカの2匹。

ことり「久しぶり~。モフモフ~」

 穂乃果のように今まではラブライブがあったためことりはこの飼育小屋に来ることを控えていたようだ。それは今日になってようやく解禁になった。その反動からなのだろうことりは今まで以上に白いアルパカにべったりとくっついていた。

 

 ことりが触れ合っている白いアルパカとは別の方向にいる茶色いアルパカは何故だか絵里の事をにらめつけていた。

絵里「……!」

 きっと思い出したのだろう。以前飼育小屋に来た際、茶色いアルパカに唾をかけられてしまったという過去を。その影響か絵里は今まですがすがしい顔をしていたというのにいまの絵里は恐怖に覚えるかのように目を見開き、体は小刻みに震えていた。

 

 あまりにも絵里の様子がおかしいのは見れば誰だってわかる。それがアルパカが関係していることもある程度の事情を知っていればわからなくもないだろう。

海未「どうしたんです?」

 けど、海未は絵里がアルパカに唾をかけられた時のことを知らない。この場で知っているのは希と凛と花陽の3人ほど。だからきっとほとんどのみんなが何故こんなに怯えているのかわからないのだ。海未もその1人だったということだろう。

 

 しかし、アルパカに唾をかけられたという過去があるとはなかなか言えないものがある。それが卒業式の後ならなおのこと。卒業生として恥ずかしいと思ってしまうのもわからなくはないだろう。

絵里「いや……」

 だから何を話すでもなく絵里にできるのは茶色いアルパカに近づかないようにして目を合わせないようにするくらいしかなかった。

 

 でも、神はそんなことを許してはくれなかったようだ。凛が気付いた1つの変化によって周りのみんなは盛り上がることに絵里はまだ知らない。

凛「でもずいぶん太ったにゃー」

 それは先ほどまで絵里のことを威嚇していた茶色いアルパカのお腹あたりが出っ張ってきているということ。

 

 凛がそういうとみんなが茶色いアルパカのお腹部分を凝視する。

空也「言われてみれば……確かに」

 見て見れば凛の言う通り太ったかのように感じるだろう。

 

 けど、医学に通じ用としている真姫だけはみんなとは違う答えにたどり着いた。

真姫「待って! これってもしかして赤ちゃんじゃ……」

 妊娠。ここにいる白いアルパカはオスで茶色いアルパカはメスであることは飼育委員であった花陽を含めて構内にいるほぼ全生徒が知っている事だ。

 

 それでも、卒業生である3年生が在学中に子供が生まれた経験がないこともふまえただ肉がついただけじゃないかと思っていた穂乃果たちには十分な衝撃を与えた。

真姫以外『えぇ~!?』

 みんなが驚いている最中、オスである白いアルパカは誇らしげに茶色いアルパカのお腹を凝視している真姫たちのことを見ていた。

 

 確かに妊娠は驚くべきことだ。実際に穂乃果たちは驚いていたし、飼育委員としてこの場所に来ていた花陽は余計に驚いていた。それでもただ驚くだけではない。

花陽「わぁ~! これでまたにぎやかになるね!」

 飼育委員としてこの飼育小屋を見て来た花陽にとってこの場所に住人が増えるというのはとても喜ばしいことでもある。それがこの卒業式……旅立ちの日、この学校から多くの生徒が旅立ってしまう時にわかったのはこの学校を寂しくさせないとアルパカたちが訴えかけているようなそんな気がした。

 

 妊娠していることがわかったみんなはアルパカたちをおめでとうと言って撫で始めている中、今まで以上に動揺している人がいた。

絵里「つっ次に行きましょう」

 それは言うまででもなく絢瀬絵里その人。早くこの場所を離れたいと思っている絵里は次にどこかに行こうと提案をする。よほど茶色いアルパカに唾をかけられたことがトラウマになっているようだ。

 

 でも、その絵里の言葉は空也にとっても都合のいいものだった。確かに妊娠は喜ばしいことなのだが時間は刻一刻と迫って来ている。だから他の場所に行く口実を作ってくれたのは嬉しかった。

空也「そうだな。で? どうする?」

 だから絵里の言葉に便乗して次に行くべき場所を決めようと空也が仕切る。

 

 次に場所を提案したのは希だった。

希「講堂は? 初めてみんなが集まったとこやし」

 今明かされる衝撃の真実を希が告げる。きっとみんなが一斉に集まったのは絵里たちの教室だと思っていたのだろう。全員が全員お互いに認識して顔を合わせたのは確かにあの教室が初めて。でも、希が言っていることもまた本当のことなのだ。

 

 予想もしなかったことを知らされたことに今日何度目かの驚きを覚える穂乃果。

穂乃果「そうなの!?」

 そんな反応をしてつつも足は自然と講堂に向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その最中、空也は思い出しながらあの日に講堂にいた人物を思い出す。

空也「確か、花陽と凛と真姫は中にいたな。絵里も最後には中に入ってたし」

 あの時、空也が花陽と凛と真姫は空也が連れ込んだ為講堂内にいたことはわかっている。それとほぼ同じ理由で自分から客席の方にいたのを確認した絵里もいたことがわかる。それに穂乃果と海未とことりはステージの上にいた為言わずもがな。あとは希とにこの2人はどうしていたのかは全くわからなかった。

 

 あの日、ライブが始まった直後にコソコソと入って座席の陰からステージのことを見ていたのがにこ。

にこ「私も入ってたわよ」

 だからにこもあの講堂にいたと言ってもいい。

 

 それに講堂の入り口付近には希もいた。気になって穂乃果たちのライブが聞こえる場所まではいたのだ。

希「うちも外にはいたよ。だから全員集合したのはあの時が初めて」

 しかし生徒会長と副会長が同時に行けばそれはそれでプレッシャーになる。そのため希は講堂内に入らずに中の様子が確認できる程度の場所に潜んでいたようだ。

 

 この話を聞いているとこの10人が初めて集まったのが本当に講堂だったことがわかる。

穂乃果「そうだったんだ。でもあの時3人しかいなくて挫けそうになったな~」

 ファーストライブの話になって思い出すのは幕が上がった時に幕の向こう側に見た光景。思い描いていた光り輝く光景はそこにはなくて、あったのは予想の何倍も少ない観客だけ。観客がいたからライブをすることができたが、あの時誰もいなかったとなるとゾッとしてしまう。

 

 過去と現在は必ず繋がっている。いい意味でも、悪い意味でも。辛いことがあって、それでも折れずにここまでやって来られたのはあの時に諦めなかったからだろう。

海未「でも続けてきたから今がある。っということですね」

 きっとそれはみんなが思っていること。順調に進んだことなんて一切なかったグループがμ’sだ。ファーストライブは観客が一桁で、生徒会長からは目の敵のように扱われ、ラブライブが射程圏内に入ったと思えば文化祭のライブで穂乃果は倒れる。2回目のラブライブの時だって新曲はなかなかできなかったし、メンバーそれぞれには抱え込んでいた物があった。雪の日、ライブ会場に間に合わない可能性だって十分にあったのだ。それなのに、諦めずに走って来たから今こうして笑いあえる幸せな今がある。

 

 そんな話をしているうちに目的の場所である講堂にたどり着いた。

空也「お、ついた」

 

 最近はこの場所に来ることも少なかったため久し振りにステージに立ってみようとなりみんなで横一列に並んでステージに立ってみる。ここはμ’sが始まった場所で、μ’sが再スタートを切った場所でもある。

穂乃果「久しぶりに立つとやっぱひろー……くない?」

 改めて立って見た感想は今までの穂乃果では言わないようなことだった。始めたころはこの講堂が大きなステージの一つだった。それなのに今立ってみると、ここは何の変哲もないただのステージ。ラブライブの会場で歌ったためなのかこのステージが大きくは見えなかった。

 

 感覚が麻痺している。それを言ってしまえばそれまでなのだが、こうして新しい角度から見えるようになったのは一つの成長とも言える。

空也「そう感じるのはみんな成長していろんなステージを経験したからだよ」

 そして空也の言う通り、このステージはμ’sにとってライブをして来た一つの会場に過ぎない。今のμ’sはいろんな場所でライブをこなして、この行動よりも人が多く入る場所で経験もした。そのことがこの行動が広くないと感じる要因の一つなのだ。

 

 おそらく穂乃果が言ったことはここにいる全員が感じていること。だって穂乃果たちはスクールアイドルの大舞台ラブライブの会場に立ったのだから。

花陽「まだ信じられないもんね」

 こうして思い返してみると順調でなかったこのμ’sがあの大きなステージに立てたことはまだ完全に飲み込めていないのだ。優勝できたと言う実感はあっても、それが飲み込める華道家が別の話のようにステージに立てたこともまだ飲み込みきれていない。

 

 だって花陽を含めるμ’sの面々は言ってしまえばただの女子高生。今まで特に特出してアイドルになろうとして来たものだって少ないわけだ。それなのに、ラブライブの舞台に立てたとなればそれは当日を迎え終わった今でも夢のような体験のままなのだろう。

ことり「……うん」

 

花陽「ラブライブのステージで踊ったなんて……」

 それほどまでにラブライブのステージで踊れたことは穂乃果たちにとっては完全な非日常だったと言える。

 

 しかし、講堂にいてラブライブの話になってしまえばなかなかに話し込んでしまうだろう。実際にこうして次から次へと話題が出て来てしまう。そうしてしまえば、空也の目論見の達成は難しくなってしまう。それに、今気づかれてはいけないものもあるのだ。あまり長居はさせたくないと言うのが今の空也の本音なのだろう。

空也「次はどうする?」

 だから今度も空也が次の場所を決めようと提案した。

 

 空也が話題に出したことによりみんなはラブライブの話ではなく、次に回ろうとしているところを考える。

穂乃果「う~ん。屋上は最後だよね」

 次にμ’sとして、一緒に行きたい場所を考えると穂乃果は屋上が思いついたよう。でも、一番思い出が詰まった場所は最後にしたいと思っているようで、それはみんなも同じだった。

 

 少しの間待っても場所が出てこない。そして空也は1つだけ行きたい場所に心当たりがあった。

空也「じゃあ俺の行きたいとこに行ってもいいか?」

 だからそこに行くためにみんなに行きたい場所があることを告げる。

 

 今まで、どこに行きたいと聞かれた場合、行きたい場所を答えて来た。けど、空也は行きたい場所に行ってもいいかと尋ねて来ただけ。肝心な場所を知りたい真姫は空也に詳細を聞く。

真姫「どこに行くの?」

 

 真姫にそう聞かれた空也はもうその場所に向かおうとしていたようでみんなの少し前を歩いていた。真姫にそう聞かれた空也は一度足を止めて顔だけをみんなのいる方向に向けて一言喋る。

空也「この学校で一番落ち着く場所」

 爽やかな笑顔を浮かべた空也の表情を見て場所の詳細は教えてくれなかったまでもいい場所であることは雰囲気で察したみんなは足早に空也の後について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空也の案内でやってきた場所は太陽の光が心地よく当たるグラウンドわきにある芝生の広場だった。穂乃果たちはその芝生に寝っ転がって9人で手を繋いでゆったりとした時間を過ごしていた。そんな9人を見守るように空也は近くの木の根元に寄っかかりながら座っている。

凛「こんなとこがあったなんて……」

 この場所は普通であれば来ないような場所。だから今ここにいる10人でもこの場所を知っていたのは空也だけだった。

 

 それはこの中で一番長く学校生活をしていた3年生たちも例外ではない。

にこ「3年間通って全然知らなかったわ……」

 春の心地いい太陽の光を浴びてふかふかの芝生の上で眠る。そんな自然の贅沢を感じたのかにこの表情は完全にリラックスしている。

 

 そんな中雲一つない青空を懐かしそうに見ている人がいた。

絵里「…………」

 それが絵里だ。

 

 何故そんな表情で空を見ているのか、希にはわかっていた。

希「最初に9人で歌ったときもこんな青空だった。そう思ってたんやろ?」

 だってこの空は初めて完全なμ'sになって開催したライブの時のような空だったから。あの時から絵里と希は誰もが分かるようにμ'sの一員になれたのだ。その時と似た空を見れば懐かしそうに見てしまうのも無理はない。

 

 自分が思っていたことを言い当てられても絵里は特に驚かなかった。

絵里「えぇ……」

 それはにこのように完全にリラックスしているからではない。もっと他の……ほとんど希と同じような理由。

 

 何故絵里が思っていたことが希にもわかったのか。普通空の事なんて見ているだけの姿を見て思っていることはわからない。ミステリアスな希だからできるというのも完全に心を見透かすことなんてできるわけがない。ではなぜできたのか。それはとても簡単な理由からだった。

希「うちもや……」

 希も絵里と同じくしてあの場所で初めて関係者ではない外の人たちに自分がμ'sに入ったことが告げられた。今見ている空は希と絵里だけの始まりの空なのだ。生徒会としてずっと一緒にいた絵里と希にとってこの程度のことは以心伝心出来る。言わなくても分かる。それくらい考えていることは同じだった。

 

 数分だけでもここにいるだけでみんなの心は完全にリフレッシュされていた。清々しい表情をしたみんなは最後に1か所向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後にくる場所。それはアイドル研究部として、μ'sとして一番長く過ごした場所。穂乃果たちがやっとのことで見つけることができたμ'sの練習場所である屋上。

絵里「最後はやっぱりここね」

 もうここでμ'sとして練習できないと想えば、ここに来たいとも思うだろう。

 

 そしてそれは卒業していく絵里たちだけではなく、一緒に練習をしてきた穂乃果たち在校生側のみんなも思うこと。

穂乃果「うん!」

 

 最後の日にこうして練習場所である屋上に来てみると、いろんな思い出が思い出される。

海未「考えてみれば、練習場所がなくてここで始めたんですよね」

 そう。グラウンドも体育館も、空き教室も使えない状況で十分な広さを持っている屋上だけが練習できる唯一の場所だった。

 

 

 正式な部活動になって違う場所で練習できるようになったのに変わらずにこの場所で練習をし続けた。

ことり「毎日ここに集まって」

 

真姫「毎日練習した」

 

空也「時に対立もしたけれど、いつもここで解決した」

 

穂乃果「できないことをみんなで克服して」

 

絵里「ふざけたり、笑ったり」

 

にこ「全部ここだった」

 改めて思い返してみるとこの場所であった出来事が鮮明に思い出すことができる。いろんなことがあった。それだけで片づけてしまうこともできるけど、それだけでは語りつくせないほどの濃密な思い出がこの場所にはある。

 

 色々あった思い出を思い出していると、何かを思いついたであろう穂乃果が屋上にある水道を捻りバケツに水をためていた。

穂乃果「あ! そうだ!」

 その後、書道のようにモップを水で濡らし、屋上の地面に大きく『μ's』と書き込んだ。

 

 

花陽「μ's……」

 自分たちを導いてくれた大切な名前。おもむろに花陽は呟いてしまう。

 

 長く続いてほしかった名前。その切符を手に入れたとしてもこの学校にずっといることは出来ない。

真姫「でもこの天気だからすぐ消えちゃうわよ」

 それに、快晴の空では水で書いた文字は蒸発して消えてしまう。思い入れのある名前だからこそ、消えることは悲しくなってしまう。

 

 けど、悲しさだけではない。穂乃果がこうして消えてしまうとわかっていてもこんな行動をしたのか空也はわかっている。

空也「……それでいいんだ。学校にあるμ'sは消え、外に出ていくんだから」

 そう。旅立ちは何も悲しいことだけではないのだ。切符を手にした今この学校に未練がましく入れるのはなかなかできない。それにもうスクールアイドルであるμ'sは終わるのだ。

 

 だから、ここまで成長させてくれた大事な名前に最大の感謝を込めてみんなで頭を下げる。

10人『ありがとうございました!』

 最後に声を揃えてそう言った。

 

 そしてこの場所から旅立つようにみんなが出ていく。そして残っているのは穂乃果と空也の2人。

空也「穂乃果。俺は行くぞ」

 穂乃果は出したバケツとモップを片している。そんな穂乃果に一言声をかけて空也もこの屋上を後にした。

 

 そんな空也を見送ってから穂乃果はやるべきことを始めた。

穂乃果「うん!」

 

 そこから空也は一人になった。みんなについていくわけでもなく、穂乃果に行っておいたように講堂へと足を向けていた。

空也(ここから講堂に行って、みんなを待つ。そしたら見とけよ? もう一回泣かせてやる)

 不敵に笑いながら、空也はみんなにばれないように講堂に向かった。これからみんなが来るまでの間でいろいろと準備をしないといけないことがある。これからみんなが見せてくれる表情を想像しながら、空也はワクワクしていた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果side

 

 空也と別れてから穂乃果は道具を片していた。屋上に一人で残っていると今までにあった出来事が出ては消えて、出ては消えてを繰り返していた。過去の想い出、そして過去に誓った約束の一つがフラッシュバックする。

穂乃果(やり遂げようね。最後まで!)

 

穂乃果「やり遂げたよ。最後まで!」

 始めた時に誰に言うでもなく呟いたその約束。それはこうしてみんなで叶えることができた。誇らしい表情をした穂乃果は過去にすがることなくみんなの待つ場所に穂乃果は向かって行った。

 

 ほどなくして待っているみんなのもとに穂乃果はたどり着いた。

穂乃果「お待たせ~! みんな」

 

絵里「穂乃果。来たわね」

 

穂乃果「うん! あれ? 空也君は?」

 しかしみんながいると思っていた穂乃果はこの場所に空也がいない事に気がつく。穂乃果より最初に屋上を出て行ったのにまだいないというのはどこかおかしい。だから、一度ここに来てからいなくなったのかもしれないと思い、ここにいるみんなに聞いてみる。

 

 けど、穂乃果の考えは元から外れていた。

海未「穂乃果と一緒ではなかったのですか?」

 元々、空也はみんなの待つ場所には来ていなかったのだ。

 

 そこで、穂乃果は一つ思い出したことがあった。

穂乃果「あ! そういえば空也君。学院内で見失ったら講堂に来いって言ってたよ」

 ジュースを一緒に買いに行ったとき空也に言われたこと。この時代なのだから電話をすればいいだけなのだが、空也は穂乃果にそう言い残していた。

 

 穂乃果からそう言われた瞬間に空也が何かを企んでいることは察した。

絵里「そう。じゃあみんな行きましょう」

 それでも何もしないわけにはいかないために、みんなは再び講堂へと移動した。不敵な笑みで待っている空也のもとに。

 

 




TVアニメ分が終わったー!! これから空也は何かをするようです。……何をするんでしょうかね? ヒント自体はこの作品にすでに出てきているので予想することはそんなに難しくはないと思います。

来週で一反のお話は終わりになります。もう少しだけお付き合いください。

次回『始まりの終わり』

それでは、次回もお楽しみに!



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