ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

今回でついにアニメ『ラブライブ!』2期13話分の話が始まります。……つまりTVアニメだと最終回です。

それでは、今回も旅立ちの日を迎える彼女たちを見届けてやってください!


第11章 桜が咲き乱れるところ
桜舞う季節


 窓からピンク色の花弁がちらりと目に入る。暖かな気候、鼻腔をくすぐる淡い桜の匂い。もうじきは完全に春になっていると告げていた。

 

 そんな時期にやってくる、喜ばしくも悲しい1日を迎えた。今日が3年生には最後の登校日……つまりは卒業式の日。

 

 絵里たちの旅立ちの日だ。

 

穂乃果side

 

 卒業式のある今日、穂乃果は昨日までずっと考えていた在校生代表の送辞を仕上げていた。そして学校に行かなくてはいけなくなる時間になると、どたどたとはしゃぎ気味の足音が穂乃果の実家である穂むらの中から聞こえてくる。

穂乃果「できたできたできたできた~!」

 どうやら穂乃果は悩みに悩みぬいた結果ようやく完成させたようだ。

 

 階段を下りた後に居間の扉を開けてそこにいた雪穂と亜里沙にもそのことを宣言する。

穂乃果「できた~! 出来たよ!」

 本当に完成したことが嬉しいのだとわかるくらいに朝からハイテンションな穂乃果。

 

 しかし、今の穂乃果の事情は雪穂も亜里沙も分かっていない様子だ。

雪穂「何が……?」

 だから首をかしげて穂乃果のほうを見る。その今の穂乃果の服装は完全にこれから学校に行こうとしている制服を着ているが、同じようなものを雪穂と亜里沙も来ていた。そんな雪穂が聞き返すのだから雪穂たちの服装に気がついてもおかしくないはずなのだが……。

 

 どうやら穂乃果は居間の雪穂たちの恰好については気がついていないようだ。

穂乃果「送辞だよ! 卒業式の送辞! あぁ~、やっとできた。ずっと悩んでたんだ~」

 ようやく書き上げることのできた送辞に満足し、そのまま体をくねくねさせて喜んでいた。

 

 そして時間を見た穂乃果は居間を飛び出し、家を出た。

穂乃果「行ってきまーす!」

 元気に家を出る穂乃果。その様子からこの卒業式をいいものにしたいという熱意が感じられる。微塵も悲しいとか寂しいとか思っているようなそぶりは見せなかった。それもそのはず。だって今の穂乃果には悲しむなんてことは頭にない。新しい旅立ちをする卒業していく絵里たちにいい思いをしてほしいという1つの想いの下行動しているのだから。

 

 穂乃果はそのまま通学路を駆け足で進んでいく。家の前にいた自身の母親にも元気に挨拶をしつつ、まるで鳥のように穂乃果の足は軽かった。

穂乃果「お母さんおっはよ~!」

 

高坂ママ「おはよう」

 

穂乃果「今日も~、いい天気!」

 スキップを織り交ぜつつもその足はだんだんと学校に近づいていた。

 

 しかし、途中で穂乃果は何かがあったことを思い出し、朝起きてからの記憶を少し前から再生し始める。

穂乃果「……!」

 その何かが分かった穂乃果は体を反転させて今自分が出た家に向かって走り始めた。どうやら雪穂たちの服装の変化に気がついたようだ。

 

 もう一度今の扉を開けた穂乃果はブレザーを着てリボンを完全に着けた雪穂と亜里沙の姿をじっくりと見つめる。

穂乃果「ごめん! 言いそびれた。2人ともすっごく似合ってる! ファイトだよ!」

 そして自分が見た感想を告げて、もう一度家を出た。

 

 そう。卒業式を迎えるということは後1月もしないで雪穂たちが入学する出会いの季節でもあるのだ。

 

 旅立ちの日に雪穂たちの服装を見た穂乃果はさっき以上に軽い足で音ノ木坂学院へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 穂乃果はそのままの足取りで音ノ木坂学院の正門前までやってきた。少し急いで来たのに一切の息切れすらなく穂乃果は卒業式と書かれた看板を感慨深く見つめていた。

 この看板を見ると途端に今日が卒業式なのだという実感がわいてくる。送辞を完成させ、卒業式の練習だって何回もした。だから来るべくしてきたこの日だけど、この瞬間になるとどこか思うところはあるようだ。

 

 いつまでも感慨深く看板を見ていることは出来ない。だから穂乃果は看板から目をそらし、正門を通り過ぎたところで凛たち1年生の姿を見つけた。

凛「お~い!」

 どうやら凛たちも穂乃果のことを見ていたようで大きく手を振って穂乃果のことを呼んでいる。

 

 呼ばれた穂乃果はそのまま凛たちのいるところに向かう。

花陽「穂乃果ちゃんおはよう」

 

穂乃果「おはよ~。みんなは?」

 朝の挨拶をしながら他のμ'sメンバーはどこにいるのか花陽に尋ねる穂乃果。花陽達もいるから他に誰かもいるかもしれないと思ったようだ。

 

 けど、穂乃果の考えはどうやら見当違いだったのかもしれない。

真姫「私たちも今着たところよ」

 真姫たちも穂乃果とほぼ同じ時間にこの登校してきたようだ。それじゃあ、一緒にいる3人くらいしかここにはいないだろう。

 

 と、穂乃果が内心で思っていると花陽がある人物を見つけた。

花陽「あっちにはにこちゃんも」

 花陽がさした場所には黒いスーツを着て、後ろで髪をお団子のようにまとめている女性の後ろ姿。様子を見ていると誰かと何かを話しているように見えた。

 

 そしてにこだと思ったもう一つの理由が、その女性の足元から垣間見える。

こころ「あ! 穂乃果さん」

 

ここあ「久しぶり~」

 

虎太郎「μ's~」

 いつか、この学校で矢澤にこのライブをしたときに観客として来ていたにこの妹と弟たち。きっとこの3人の存在が目の前にいる人物はにこだと裏付けたのだろう。

 

 けど、どこかおかしいと本能のように穂乃果は気がついたようだ。でも、どこがおかしいのかはよくわかっていないよう。

穂乃果「みんな。久しぶり」

 だから子供たちに近づいて久しぶりに挨拶を交わす。初めてこの3人に会った時はμ'sは矢澤にこのバックダンサーと呼ばれ複雑な気持ちになったものの、3人がしていた誤解を解くとただのバックダンサーとしてではなく姉の友達としても見てくれるようになったみたいだ。

 

 穂乃果が子供たちと話していると凛は目の前にいる黒いスーツの女性に話しかける。

凛「にこちゃんおはよ!」

 穂乃果が感じた違和感はどうやら凛は気がつかなかったみたいだ。

 

 凛の呼びかけで後ろ姿しか見えなかった女性が振り向いた。

にこ?「ん? あら!」

 瞳の色はにこと同じ。なのに身長、プロポーション、服装。そして声。すべてが違った。

 

 大人特有の余裕のある声を聞いた凛は自分が間違えたことにようやく気がついた。

凛「にこ……ちゃんじゃないにゃ!」

 この学校は高校だ。大学ではない。卒業生は全員制服を着て式に臨むからスーツなんてことはあり得ない。だから全くの別人であることは穂乃果はどこか分かっていた。

 けど、ここまで似ていると赤の他人であるとも思わない。それに、こころたちも懐いたように足に抱き着いていることからかなり親しい関係なんだということが分かる。

 

 間違えてしまった凛の声に呼ばれたにこ似の女性は穂乃果たちを見てどうやら何かを理解したみたい。

矢澤ママ「初めまして」

 間違えたことに怒るでもなく、知らない相手に気まずい雰囲気を与えるでもなく笑顔で挨拶をしてきた。しかも初めましてだということがしっかりとわかっていたらしい。

 知らない人に話しかけられた時、人はその人物ともしかしたらあったことがあるかもしれないと思考を巡らせる。けどこの女性はそのことをしなかった。

 

 ということは、この女性は知っていたのだ。穂乃果たちと自分が出会ったことがないということを。

花陽「私たちのこと知ってるんですか!?」

 そう言う人物は大きく分けて2通りいる。1つはただのファン。動画で見たことがあるから顔は知っているけどあったことはないと断定できる人。

 

 そしてもう一つ。それは……。

矢澤ママ「もちろん! "にっこにっこにー"の母ですから」

 そう。μ'sメンバー誰かの血縁者である人。実際に、初めてなのにこころは穂乃果たちのことをμ'sだと認識して話しかけてきた。出逢ったことがなかったとしても見たことがあれば話しかけることは出来るのだ。

 

 そして穂乃果は目の前にいる人物がにこの母親だということを知って思わず反応してしまう。

穂乃果「えぇ~!?」

 にことは違って身長は高く、落ち着いた雰囲気を醸し出している。容姿は確かに似てはいるものの本当に母親なのか若干疑ってしまうのも仕方のないことだ。それに、予想外のところで知り合いの母親に会えば驚くのも無理はない。

 

 それは穂乃果だけの感情ではなく、この場にいた全員が思ったこと。

花陽「はっ初めまして」

 だから花陽達にできたのは話しかけた時に帰ってきた初めましてに答えることくらいしかなかった。

 

 そんな話をしていると校舎の中かから今度は完全に見知ったツインテールの小さい女の子が出てきた。その女の子はにこの母親に抱き着き、盛大に甘えてるところを穂乃果たちの前で見せた。

にこ「ママー! なにしてるのよ~。早く来てよ~! 見せたいものがあるんだから! ねぇ~、ママはーやーくー」

 我儘を言うようににこの母親の袖をぐいぐいと引っ張る。甘えている女の子……にこは穂乃果たちがこの場所にいることに気がついていない様子だ。

 

 しかし、甘えまくっているにこに向かって穂乃果が話しかける。

穂乃果「にこ、ちゃん?」

 先ほど、目の前にいたスーツの女性がにこの母親だと知って驚いた余韻もあるのか目の前に広がっている光景をなかなか受け入れることができない。

 

 呼びかけられた穂乃果の声を聞いたにこは穂乃果のいる方を見た。そこには穂乃果の姿だけではない。花陽に凛、そして真姫の姿もある。

にこ「あ! んん! おはよう」

 見られたくないものを見られてしまい、自分の威厳がなくなってしまうことを危惧したにこは一度大きく咳払いをした後いつものように挨拶をし始める。

 

 けど、もう聴いてしまったことを忘れることは出来ない。深く追求するのはなかなかににこに悪いかと思いながらも、平然と真姫はにこの言っていた内容のことについて尋ねる。

真姫「にこちゃん。見せたいものって何なの?」

 にこが母親に甘えてまで見せたかったもの。それが何なのか確かに他のみんなも気になっている。

 

 真姫の問いにもう隠すことができないと悟ったにこは開き直って見せたいものについて話し始める。

にこ「決まってるでしょ。あれよ、あれ」

 代名詞しか出てこないがおそらく今から見せるものの名前を自分の母親に聞かれたくないのだろう。さっきも見せたいものがあるといって駄々をこねていたのだから今日約束をしていたわけでもない。つまりは見せたいものはあってもそのものに関しては何も知らせずに置きたいということだろう。

 

 だけど、ヒントもなしにそのあれを思いつくことはなかなかに難しい。

穂乃果「あれ? なにあれって?」

 どうやら穂乃果にはわからなかったみたいだ。頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。

 

 そんな穂乃果を差し置いて真姫はにこが何を見せようとしていたのかなんとなくではあるが分かった。

真姫「あぁ、部室にあるあれね」

 そう。それは今月の初めごろからずっと部室に置かれているもので、誇るには十分すぎるアイテム。

 

 小さいものではないから持ってくることは出来ない。そのため見せるには部室に来てもらうことしかできないのだ。

花陽「じゃあ部室まで行きましょうか」

 真姫の言った言葉でにこが何を魅せようとしていたのか分かった花陽は先頭を切ってアイドル研究部部室に向かった。

 

 その最中、少し後ろを歩いていた凛は先ほどのにこのことを思い出していた。

凛「にこちゃんの意外な一面発見にゃー」

 まさか卒業式の日ににこが母親に対してはものすごく甘えん坊になるということを知った凛は普段のにことのギャップに若干まだ戸惑っていた。

 

 ずっと進んでいき、穂乃果たちはアイドル研究部部室にたどり着いた。ここにくる最中、いろんな保護者の人たちが卒業式に来ているのが分かるくらいには多くの人とすれ違った。それに、普段の学生もどこかそわそわしているように感じ、いよいよ卒業式が始まるという実感が穂乃果のことを攻撃していた。

 

 ……けど穂乃果は泣くこともなく普段通りに堂々と元気な様子を見せてくれていた。卒業式で大きな役割を持っているのに穂乃果は普段通りのまま部室のドアを開けて見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部室の扉を開けたにこたちは急いで部室の中に入り、見せたかったものを堂々と大きく見せる。

にこ「じゃあ行くわよ! じゃ~ん! 見て! これが! 優勝の証よ!」

 優勝の証として、凛の持っているトロフィーと花陽と真姫が協力して広げている優勝旗をにこは自分の母親に見せたかったようだ。

 

 そう。あのラブライブの結果はμ'sの優勝で幕を閉じた。確かにあの時、穂乃果たちはアンコールを受け、確かな手ごたえを感じた。

 他を寄せ付けない圧倒的な得票数を得たμ'sは参加した全員が納得する結果を受け、表彰されたのだ。

 

 その時もらった現物がこの部室にある。

こころ「すごいです!」

 

ここあ「きれぇー!」

 

虎太郎「ウィナー」

 普通の人だって遠目に見ることでしか見ることのできない優勝の証が今、こころたちの目の前にある。子供だとしても今目の前に広がる光景は姉が頑張った結果に手に入れたキラキラと輝いたもの。それを見るだけでも自分のことのように喜んでいた。

 

 しかし、自分の事のように喜んでいても、当の本人たちの喜びにはかなわないものがある。

花陽「私たち勝ったんだよね……」

 本戦が終わってから約一週間。いまだに優勝ができたことに感動を覚えている。

 

 だからこの優勝旗を、トロフィーを見る度に当時の表彰の時の思い出が蘇り、テンションがぶち上がる。

凛「優勝にゃー!」

 確かに優勝を目指して穂乃果たちは頑張っていた。それが実ったのだから喜ぶのも無理はない。それが当時だったらきっとまだ実感は出来ていなかっただろう。実感というものは時が過ぎてじわじわとやってくるもの。それが1週間経った今ようやく花開いたというわけだ。

 

真姫「もう。まだ言ってるの?」

 そう言っている真姫だって本当に嬉しそうにしている。μ'sは大会で初めて優勝をした。その事実が本当に心から嬉しいのだ。

 

 それがにこにとっては人一倍うれしいことになる。

にこ「ね! ね! 本当だったでしょ!」

 アイドルを志して活動を続けてきていたにこにとって初めて取ったアイドルの優勝。自分が頑張ってきた、そして心から誇れる優勝を母に自慢したい気持ちはきっと誰もが分かる物だろう。

 

 必死になって頑張ってきたにこのことはもちろん母親は知っている。母は強し。知らないことでも母は知っていることがある。それは陰で必死になって頑張っていた姿もきっと見ていた。

矢澤ママ「おめでとう」

 だから、お疲れさまともとれる包み込むような優しいおめでとうがにこのことを包み込んだ。

 

 が、にこのその幸福感は長く続くことはなかった。

矢澤ママ「でも、これ全部あなたの私物?」

 この部室でにこの母親が次に目に入ったもの。それは多くのアイドルグッツだった。日に日に家にあるアイドルグッツが減っていたことも当然母親は知っていた。きっとこの部室に着て点と点が線でつながったのだろう。鋭い視線がにこのことを襲った。

 

 急に雰囲気が変わって戸惑い始めるにこはなかなか思ったように声が出なくなってしまう。

にこ「や、あの……」

 必死に弁解をしようと能をフル回転させようとしているが、なかなか親の前ではいつもの堂々とした若干偉そうなにこにはなれないようだ。

 

 そんなにこの言葉を待つことなく、にこの反応でここにある物がほぼすべてにこであることが分かったにこの母親は言葉を続けた。

矢澤ママ「立つ鳥跡を濁さず。皆さんのためにもちゃんと片づけていきなさい」

 今日は卒業式。この学校から旅立つ日。この場所からも旅立っていくのだから少しは綺麗にしなさいと母親らしいことを言っていた。

 

 やっぱり母は強しという言葉は本当のようでなかなか親に頭が上がらないにこは素直に話を聞くことしかできなかった。

にこ「はっはい……」

 さっきまではしゃぐようにしていたにこは借りてきた猫のようにしょぼくれてしまっていた。

 

 そんなにこのことは置いておいて、真姫がここに一緒に来た穂乃果に声をかける。

真姫「ところで穂乃果。行かなくていいの?」

 まるで穂乃果が既に行っていないといけなかった場所を知っているかのように真姫は穂乃果にそう言った。

 

 けど、肝心の穂乃果はその言葉の意味を理解していないようで、首をかしげる。

穂乃果「ほぇ?」

 可愛く声が漏れる中何か大事なことを忘れているような感じがじわじわと穂乃果の中から湧き上がってくる。

 

 その忘れているなにか。それは真姫が覚えていることだった。

真姫「生徒会役員は式の2時間前に生徒会室に集合だって。海未と空也に言われてなかったっけ?」

 卒業式は基本的にプログラム管理以外は生徒の手によって組み立てられる。座席の配置や、会場の準備などなど……。それを指導するのは当然生徒会の人間。それに生徒会は生徒会でやらなくてはいけないこともあるため、始まる前に集まっていないといけなかった。

 

 真姫の言葉でそのことを思い出した穂乃果は、これから起きるであろうことを想像しながら大声を上げる。

穂乃果「あ~~~~!!」

 完全に忘れていた。そう分かるような声を上げた穂乃果は大急ぎで走って生徒会室に向かった。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にこside

 

 穂乃果が生徒会室に急いで向かった後、しょぼくれていたにこがようやく普段通りに戻っていた。

にこ「うぅ……。ママに見せたかっただけなのに……」

 自分の母親を呼んだのは説教されるためではない。ただ単に見せたかっただけなのだ自分たちが頑張った証拠を。

 一度おめでとうをもらったときに得た喜びはあるため落ち込みようは余計にひどかった。

 

 とはいっても本当に落ち込んでいるわけではなく、ただただ愚痴を漏らしているくらいなもの。その愚痴を聞いた真姫がいつも通りに言葉を返す。

真姫「なに落ち込んでるのよ。結局少しは持ち帰るつもりだったんでしょ」

 確かに結局は持ち帰るもの。それが今日指摘されただけというそれだけの話。実際持ち帰るために小さいダンボールが何個かたたまれてこの部室においてあるから移動させる準備は出来ている。

 

 けど、今のにこにとっては今日やることになるとは思っていなかった。

にこ「それはそうだけど! 卒業式の日にやるとは思わないじゃない! 31日までは高校生なんだし!」

 そう。今日は卒業式。晴れやかな気分でこの学校の生活を終えたかった。そんな願望があったが故ににこは落ち込んでいたのだ。

 

 そんな落ち込んでいるにこにもう一度にこの母親は口を開いた。もしかしたらまとめて運べるように車を出してくれるのかと若干の期待をする。

矢澤ママ「あ、そういえば宗平君から卒業祝いを預かっておいたわよ。本人は用事で来れないからって」

 しかしその期待は大きく外れる。が、にこにとってその卒業祝いは今どんなものよりも特別なものになった。

 だけどにこは恥ずかしいのか頬を赤く上気させたまま、自分の母親から可愛きラッピングされつつもシンプルなデザインの小さな箱を少し乱暴に受け取った。

 

 にこはみんなに見られないよう部室の角でこっそりと仲を確認した。そこには銀色に輝く小さな輪っかが入っていた。それが何なのか全部出さなくても分かっている。指輪。宝石とかそんな大層なものはついていないけど輪の内側には『S to N』というメッセージが彫られていた。"周平"から"にこ"へ。そんなメッセージが入った指輪だった。

 

 唐突なことでにこの涙腺は緩んでしまったようだ。涙が止まらない。卒業式前にどうやら泣かされてしまったようだ。そうやって泣いているにこは現状隙だらけ。その隙に凛はひっそりとにこに近づきにこの手元を見た。

 

 凛が見た光景は大事そうに嬉しそうに指輪を眺めているにこの姿。アイドルとして頑張っている時とも、普通の生活をしている時とも違うにこの1人の女の子としての姿。

 

 だけど凛にとってそれよりもにこが指輪をもらっていたという事実のほうが印象強かったみたい。指輪をもらっていることが分かった凛はそのことを大きく真姫たちに伝え、こころたちとμ'sの1年生+にこの母親によるガールズ?トークがはじまったのだった。

 

 




にこ、誕生日おめでとう! なんか、時期的にぶっ刺さった話だったぽいです。

申し訳程度のオリジナル要素をぶっ込みました。式前に泣かされるのは絵里だけじゃないんだぜー的なことをやりたかったんですが……。にしても、にこの母親……にこを自分で上げて自分で落として自分でもう一回上げたんですね……。にこのあざとさは遺伝だったようです。

というわけで始まった2期最終回のエピソード。TVアニメ分が終わるまで残り4週……。駆け抜けます!

新しくお気に入り登録をしてくださったKAITONONAMEさんありがとうございます!

次回『成長』

それでは、次回もお楽しみに!



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