ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。今日は海の日ですか……。

え? 『海未は私ですが?』あぁ!! 海未の日ですね! そ・し・て!! 恵海の日でもありますね!! 3回目ですよ!! 読者の皆さんは予想できましたよね?

さて、いよいよ今回、ラストライブです。今まででなかったキャラがここで登場するかも……?

それでは、今回も最後の一瞬を楽しむ彼女たちをご覧ください!


ラストライブ!

空也side

 

 リハーサルも終わり後は本番を待つのみとなった。μ'sの出場する時間は最後。それまでみんなで談笑をしたり他のスクールアイドルのライブを見に言ってたりしたのだが、早いことにもうすぐμ'sの出番が近づいてきた。

 空也以外のみんなは衣装に着替えるためにそれぞれ更衣室で着替えをしていた。みんなが出てきている中まだ出てきていないのは穂乃果だけ。みんなでリーダーが着替え終わるのを待っているとその瞬間が訪れた。

 

 空也が夢で見た衣装と同じ姿。そしてどこかファーストライブの時を思い出すその姿に空也は心を動かされた。それはただ懐かしいとかそういう単純なことなのかもしれない。けど、空也にとってあの始まりの場所は、その思い出は大切なものなのだ。

空也「……!? (ダメだダメだ……。ポーカーフェイス……)」

 明らかに空也が動揺していることが本人とその視線の先にいる穂乃果以外のみんなは気がついただろう。それほどまでに普段とは違った様子だった。

 

 でも、なぜ穂乃果は空也のことに気がつかなかったのだろうか?

穂乃果「わぁ~! みんなかわいいねぇ~!」

 それは今の穂乃果の言葉が物語っていた。

 そう。更衣室から出てきた穂乃果の瞳にはまず空也ではなく、新衣装を着た他のμ'sのメンバーの姿が入って来たからだ。ほとんど空也と同じような状況と言っても過言ではないだろう。みんなの着ているライブ衣装に心を動かされその姿に感動をしていたのだから。

 

 そして今回褒められるべきはこの衣装を作った……

絵里「さすがことりね」

 この衣装を作ったのは今まで通りことりだ。

 

 どんな意図があってこのデザインにしたのかことり本人を除いてあの時と同じ色の衣装を着ているおそらく穂乃果と海未と、そしてそれを見ていた空也の3人だけだろう。だってこの衣装はどう見たって似ているのだ。あの挫折に挫折を重ねたような一番反省の残るライブの衣装に。

ことり「うん! 今までで一番かわいくしようって頑張ったんだ!」

 その衣装を今回で素晴らしいものにしようと、ファーストライブの時に来た衣装をもっと輝かせてあげたいと思ったからことりはこのデザインを完成させたのだ。ラストライブを最高のいい思い出にしようと心に誓った時から。

 

 その考えはおそらく幼馴染組にしか通用しないだろう。ライブに来ていた花陽や凛、真姫や絵里もただ見ていただけでは気がつかない。

海未「素晴らしいと思います」

 だから気がついているからこその言葉がここで漏れるのだ。

 

 衣装を着たことによって気持ちはどんどんと高ぶっていく。けど、楽しむことを忘れていないやる気というやる気を纏っているようなそんな雰囲気がみんなから漏れている。

希「いけそうやね」

 今までは普通の女子高生だったのに、たった数ヶ月でここまでの集中力とやる気を作り出せるものなのだろうか。……いや、できるからこうして今があるのだろう。このやる気と、楽しむ覚悟があるのならきっと穂乃果たちは止まることを知らずに前に前に進み続けるだろう。

 

 そう感じたからだろうか、空也は少し時間は早いのにみんなを連れてステージの方に行こうと声をかける、

空也「さぁ、みんな準備はいいな」

 もうみんなの準備は万端。今を逃したらいつこの状態になるのかわからない。それに、いつまで続くのかも……。だから早く行動したいのだ。この熱を冷まさないために、もっと火力を上げていくために。

 

 空也にそう言われたμ'sはまた一段階やる気が上がる。小さな闘志が宿った18の瞳が空也に注がれる。

μ's『はい!』

 そして遅れてやる気に満ち溢れた声がこの楽屋の中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もうすぐに出番になるためステージ裏にやってきた。

 

 前のグループが出てきたことによって観客たちが盛り上がっていることがこの場所からでもわかる。

歓声『わぁ~~~~!!!!!』

 それは、このスピーカーを通していない大迫力の黄色い歓声を聴けば分かる。自分たちが聴いた歓声は今まで聞いてきた物以上だった。学校の講堂でライブをしたとき以上だし、ラブライブ最終予選の時のライブの時以上だった。

 

 それもそのはず。だってこの場所には東京の人だけではなく、遠征までして自分の応援するスクールアイドルのライブを見ようとここに来た人もいっぱいいるのだ。つまり、最終予選の時以上の人数がこの場所に集まっている。

ことり「お客さん、すごい数なんだろうな……」

 ステージのほうから聞こえてくるその歓声から人の多さを改めて実感したことりは、少しだけ心配になることがあった。スクールアイドルを始めた時から何度も何度も経験した海未の体育座り。

 

 けど、そんなことりの心配をぶん投げるかの如く、海未はことりの隣に凛として立っていた。

海未「楽しみですよね」

 今までだったらあり得ない言葉が海未の口から発せられた。あれだけ恥ずかしがって、多くの観客の前に立つことをためらっていた海未。それがまだ見ていないとはいえ今まで経験した以上の人数がいる会場でライブをする事に楽しみだと言った。

 

 それを聞いた幼馴染3人は驚いた様子で海未のほうを見ている。

ことほのくう『え?』

 3人の行動は最もなものなのだろう。初めて海未が人前で歌うことを拒否したファーストライブの前日。そして当日の更衣室での出来事。学内放送をしたときの海未の様子を見てきたら、ここまで成長しているとはなかなか思わない。

 

 けど、海未は成長をしていた。

海未「もうすっかり癖になりました。たくさんの人の前で歌う楽しさが」

 嘘でも何でもない。本当に思っているからこそ、本当に楽しみにしているからこその優しい笑顔がそこにはあった。今までに何度も無理ですの言葉を聞いてきた穂乃果、ことり、そして空也にとってそれは本当に嬉しい成長であり、喜ぶべきことだった。

 

 この状態の海未は幼馴染3人と一緒にこれから始まるライブの始まりを待った。

 

 一方、もう一人のあがり症の花陽は観客の前に緊張なんてしていなかった。

花陽「大丈夫かな? 可愛いかな?」

 自分のことで精いっぱいでまだ観客まで目が言っていない様子だ。それが今は幸いしているのか今はいたって普段通りの小泉花陽その人だった。

 

 自分の衣装に変なところはないか、着る段階でおかしくなってしまったところはないか不安な花陽に見たまんまの感想を凛は言う。

凛「大丈夫にゃ! すっごくかわいいよ! 凛はどう?」

 花陽の来ている橙色の衣装は普段の花陽のイメージカラーではないとはしてもしっかりと着こなし、似合っていた。

 成長した凛だから、可愛さに敏感になっているから花陽に今度は自分がどうなのかを聞いた。あのファッションショーがなければきっとこんなことを凛が聞くなんてことはなかっただろう。

 

 その成長を改めて感じ、嬉しく思いながらも花陽は凛と同じように見たままの感想を凛に告げた。

花陽「凛ちゃんもかわいいよ!」

 凛の衣装は黄色が強い黄緑色。オレンジがかった髪をしている凛。それは草原に輝く太陽のようにも見え、着こなしているのが伝わってくる。

 

 そして話を聞いていた同じく1年生の真姫が2人の恰好を見て感想を呟いた。

真姫「2人ともかわいいわよ」

 2人を安心させるように普段聞くことはないほどやさしい呟きをかける。

 

 きっと真姫がそう言ってくれたことが意外だったのだろう。花陽と凛はお互いの顔を合わせ、次にどうするかをアイコンタクトで伝える。

りんぱな『真姫ちゃんもかわいいよ!』

 それはおそらく真姫が待ってるであろう言葉をかけること。実際に真姫が来ている紫色の衣装は真姫の特徴である赤髪に合っていて似合っていた。

 

 予想外の2人の反撃に真姫は当然驚いた。

真姫「え!? ……その、ありがとう」

 けどその後赤らめた頬のままに少しそっぽを向いて2人に対してそう呟いた。

 

 今彼女たちの中にあるのはステージに立てるという興奮と、可愛い衣装を着こなせているという自信。それを胸に抱いて始まる時間を待っていた。

 

 そして、最初で最後のラブライブのステージに立つ3年生は誰よりもこのステージを楽しみにしていた。

希「今日のうちは、遠慮しないで前に出るから覚悟しといてね」

 これがμ'sの最後のライブになるから。少なくともスクールアイドルとしてはそういうことになる。だから目立ちたくて、思い出に残したくて必死だった。けど、楽しむことを忘れていない。

 

 でも希の言葉は近くにいた絵里やにこだけではなく少し離れていた穂乃果の耳にも聞こえてきた。

穂乃果「希ちゃんが?」

 普段であればなかなか聞くことができない言葉だ。周りのために控えめにしているといってもいいくらい前に出ることはなかなかなかった希がそう呟いたのは本当に意外なことだった。

 

 けど、希の言葉が3年生をもっともっとやる気にさせた。

絵里「なら私もセンターのつもりで目立ちまくるわよ! これからしばらく踊れなくなるんだから」

 曲に対してのセンターは1人か2人。μ'sは全員がセンターだといっても全員が真ん中にぎゅうぎゅうになって歌うわけではないのだ。だからおそらく普通にやっていれば観客はセンターに目が行くだろう。

 しかし、全員がセンターのつもりでダンスを踊って歌を歌えば、ステージ上での差は無くなる。μ'sはセンターを引き立たせるだけようなパフォーマンスはしない。全員がセンターだからみんなが主役なのだ。

 

 だから、ある種の宣戦布告のようなものがグループ内でできる。

希「面白いやん」

 そうすればみんなが負けないように個人個人でより素晴らしいダンスができるように意識が高まる。

 

 しかもそれは3年生だけではなく、学年を関係なしでフラットな関係だからこそ一番下の学年である凛たちも負けないように気合を入れなおす。

凛「あ! やる気にゃ! 真姫ちゃん! 負けないようにしないと!」

 

 凛にそう焚きつけられた真姫はいつものようにクールながらもいよいよライブが始まる状況にスイッチが入った。

真姫「わかってるわよ。3年生だからってぼやぼやしてると置いていくわよ。宇宙ナンバー1アイドルさん」

 その真姫はちょうど近くにいたにこを挑発するかのようにそう言い放った。

 

 それは先ほど絵里がやったのと同じ手段。闘争心を駆り立てるための手段に過ぎなかった。

にこ「フフ。面白いこと言ってくれるじゃない。私を本気にしたらどうなるか、覚悟しなさいよ!」

 真姫の言葉のおかげか、今まで以上ににこはやる気になっていた。憧れの舞台を前に緊張しているのかと思っていたがどうやらその心配は完全に要らないようだ。

 

 と、そんな話をしているといよいよ時間になる。ラストライブの時間が。

空也「さぁ、そろそろだ」

 前のスクールアイドルが最後のサビに入った。そのタイミングで空也がみんなにそう告げる。

 

 そうすればみんないつものように円陣を組むかのように円形になる。

穂乃果「うん。みんな! 全部ぶつけよう。今までの気持ちと思いとありがとうを。全部のせて歌おう!」

 そしていつものように穂乃果に士気を高めてもらって全神経をライブに集中させる。精一杯のありがとうを届けるために。出逢ってくれてありがとう。応援してくれてありがとうと。

 

 ただ、その後みんながピースを作っていよいよ気合が高まるとなった場面のはずなのに穂乃果は一言も話さなくなった。

海未「どうしたんです?」

 その事に疑問に感じた海未は心配そうに穂乃果のことを見ていた。

 

 けど、海未の視線の先にあったのは困った表情の穂乃果ではなく、その逆。笑顔だった。

穂乃果「なんて言ったらいいのかわからないんだ」

 そして清々しいようにそう呟いた。

 

 言葉だけを見ればマイナスの印象を受けてしまうだろうが、今の穂乃果は笑顔。

にこ「何よそれ」

 それに気がついているからこそ、心配の言葉ではなくいつもの会話のような受け答えをにこはした。

 

 そのにこの言葉を受けた穂乃果は自分の中にあった答えをみんなに伝える。

穂乃果「だって本当に何もないんだもん。もう全部つながってる。もう気持ちは1つだよ。もうみんな感じてることも考えてることも同じ。そうでしょ?」

 余計なことはいらない。もう今は全力で楽しむだけ。

 

 だから反論の余地もなかった。

希「そうやね」

 素直に受け入れ、後に続く穂乃果の言葉を待った。

 

 これがスクールアイドルμ'sの最後のライブ。そのことを頭に入れつつ、今日のライブを楽しんでいこう。穂乃果の心の中にはそれだけしかなかった。そして、ルーティンのようになったものが始まる。

穂乃果「μ'sラストライブ。全力で飛ばしていこう! 1!」

 

ことり「2!」

 

海未「3!」

 

真姫「4!」

 

凛「5!」

 

花陽「6!」

 

にこ「7!」

 

希「8!」

 

絵里「9!」

 

空也「10!」

 μ'sと空也。表と裏の人間の想いは違うのかもしれない。だけど、ライブを成功させたいと思う心は同じだ。μ'sであってμ'sでない空也もこのライブにかける想いの根は同じ。だからこの想いが重なった状態で空也はみんなの背中を押す。

 

10人『μ's ミュージック、スタート!』

 

 頑張れという気持ちを込めて空也はみんなを送り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静かなイントロから始まる『KiRa-KiRa Sensation!』急激にアップテンポに変わりみんなの笑顔が観客の前に映し出された。

 

 この曲はμ'sの……穂乃果たちの集大成。今まで踊ってきた曲たちの振付をところどころに散りばめて作った1つの作品だ。

 μ'sの始まりの衣装で今までやってきたからこそできたダンスを魅せ、そして今があるからこそかけた真っ直ぐな気持ちを表した歌。詩についている音楽も音ノ木坂の生徒は聞き覚えのあるものに聞こえたかもしれない。今までのものを寄せ集めていいものを作ろうとみんなで決めた曲だから。いろんなところにそういう部分をちりばめたのだ。

 

 その1曲をやりきった。そうやりきったのだ。練習の時に見たどのパフォーマンスより完成されたもの。会場を大きく響かせるために広げた喉から通る声は力強く、ただマイクを通して歌っているだけには聞こえない。歌には想いが籠っていた。

 

 μ'sのライブに圧倒されてしまったのか、歌い終わってから数秒の間会場には息すら聞こえないほどの沈黙が続いた。しかし、その後に野太い歓声や、黄色の歓声、多くの拍手が穂乃果たちのことを包み込んだ。大成功。そんな言葉すらぬるく感じるほど自分たちでも手ごたえを感じた。

 

 後は挨拶をしてステージからはけるだけ。そのはずなのに穂乃果がステージ上で脇にいる空也を手招きしていた。

 しかもそれは穂乃果が今独断でやっていることではなく、すでにやろうとみんなで相談して決めたのだろう。横一列に並んだμ'sのみんなは空也が来るのを待っていた。

 

 ずっとステージの上にいるわけにはいかない。だけど作詞を担当しているだけでステージに上がれるとは到底思わない。だからしり込みしてしまったのだろう。なかなか空也はステージに上がらなかった。だけど、空也はある時の言葉を思い出す。サインを書くときに凛に言われた作詞家が表に出ることはざらだという言葉を。だから空也は恐る恐るステージに出ていく。

 

 でもいつもいる穂乃果の隣までは行くことは出来なかった。出来て一番近かった花陽の隣に心細そうに立つくらいしかできない。

花陽「空也君。穂乃果ちゃんがお礼を言ったら作詞の後にフルネームね」

 けど、花陽が小声でどうすればいいのかを教えてくれてから、空也は堂々とするようになった。この場所に立っているのは自分だけではない。今自分がそわそわしていたらμ'sが変な目で見られてしまうかもしれないとそう思ったから。それに空也自身やることを把握することができた。きっとそれが空也の自信に火をつけたようだ。

 

 そしてその時はやってくる。

穂乃果「ありがとうございました!」

 穂乃果の言葉とともに、空也がやることが始まりを告げた。

 

 花陽に言われた通りのことを空也は堂々と始める。

空也「(キタ!)作詞! 時坂空也!」

 この詩を書いたのは自分なんだと誇るように。

 

希「東條希!」

 

真姫「西木野真姫!」

 

海未「園田海未!」

 

凛「星空凛!」

 

にこ「矢澤にこ!」

 

花陽「小泉花陽!」

 

絵里「綾瀬絵里!」

 

ことり「南ことり!」

 

穂乃果「高坂穂乃果!」

 μ'sがここに来た証をここにいる観客たち、見てくれている人たちに焼き付けるように名前を言い放った。

 

 でも、穂乃果たちはただ個人であるだけではない。

穂乃果「音ノ木坂学院スクールアイドル『μ's』!」

 音ノ木坂学院にスクールアイドルであるμ'sがいたと記憶と記録に焼き付けた。

 

 そして最後にもう一度、今度はみんなそろえてお辞儀をして声を合わせる。

10人『ありがとうございました!』

 空也もこうなることはわかっていたのだろう。何も言われることなく9人に合わせ、歌声とは違うマイクを使わずに会場に響かせたその感謝の言葉が耳ではなく聞いてくれたすべての人の心に送り届けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やることを終えた穂乃果たちは全員でステージ裏へと戻って来た。そしてみんなの中にはやりきった達成感と、そして終わってしまったという空虚感が残った。この曲が終わればスクールアイドルとしてはもう終わってしまう。それが分かっているから嬉しい感情と一緒になって悲しくなって涙が出てくる。もう終わってしまうんだということがより現実味を帯びてきているから。

 

 けど、ステージの向こうに待っているファンのみんなはその涙なんて知ったことじゃないといわんばかりに大きな声がステージの裏まで響いてきた。

 『アンコール!! アンコール!!』や『μ's!! μ's!!』といった自分たちを待っている歓声が。

 

 もちろんそれはみんなの耳に届いた。そしてそれが今まで涙を流さなかった空也の涙腺を崩壊させることになった。

空也「…………。聞こえ、たか……。まだ終わったわけじゃ、ない……。早くこれに着替えて、みんなに答えてやれ……」

 嗚咽交じりに空也がそう言った。空也の隣にはいつか着た『僕らは今の中で』を披露したときの衣装が9人分並んでいた。

 

 その衣装を見た、そして空也の涙を見た穂乃果は今自分がやるべきことを理解した。

穂乃果「空也君……。うん! みんな行こう!」

 ステージの向こうに待っててくれる人がいるのなら出ないわけにはいかない。もう一度穂乃果はステージに立つ決意をして衣装を持って更衣室に走っていった。そんな穂乃果につられて他のみんなも自分の衣装を持って更衣室に駆け出して行った。

 

 みんなの後姿を見た空也は少しだけ今の自分の状況を反省する。

空也(だめだな。みんながいる前では泣かないつもりだったのに……)

 このタイミングで自分の言葉が返ってくるとは思わなかったのだろう。『泣きたいときは泣け。感情を隠すな』にこに送った言葉だけど、それは今空也の中に響いていた。

 時間は少しだけ過ぎて衣装に着替えたμ'sがアンコールに答えてもう一度ステージに戻る。

 

 きっとその所を見ていたのだろう。頭上から空也にとっては聞き覚えのある男の声が聞こえた。

???「涙とは珍しいな。同志時坂」

 空也のことを同志と呼ぶその男は空也が衣装をここに届けるように頼んだいわば協力者。黒い学ランに身を包み不敵な笑みで空也の前へと着地した。

 

 この男は風見学園で大の問題児として有名だった男だ。学校から承認されていない部活のリーダー的存在で、いつもお祭りごとの時は問題を起こす。

空也「杉並……。仕方ないだろ、こんな素敵なものをもらったらな……。それより、ありがとうな。衣装を持ってきてくれて」

 その男の名は杉並。本当にミステリアスな男で、杉並という苗字以外ほとんどの人がこの男のことを知らないだろう。

 

 それに未だ実態のつかめていない組織もある。立夏たちがなぜ"公式"新聞部という名前で活動しているのが疑問に思ったことはないだろうか? その答えは本当に簡単で、原因はこの杉並であるといってもいい。

杉並「何、どうってことない。この程度の事、我ら非公式新聞部にとっては造作もないことだ」

 風見学園"非公式"新聞部の存在がそうさせたのだ。立夏と杉並は犬猿の仲であることから対抗して付けた名前であろうというのが清隆たちのとの共通の認識だった。

 そんな彼だからこそ、空也は頼んだのかもしれない。誰にも気がつかれずに衣装を持ってこれると思ったから。

 

 きっとアンコールが来るだろうということはなんとなく理解はしていた。だけど確証もないし、何よりアンコール前提でライブをしているつもりはなかった。だから衣装のことはみんなに黙っていたのだ。

空也「本当に助かった」

 そして極力誰も気がつかないようにしたかった。その結果頼ったのがこの杉並だった。

 

 空也が感謝の言葉を口にすると杉並は背中を向けて意地悪そうに呟く。

杉並「これは借りを返しただけだ。それでは、俺はもう行く。さらばだ!」

 最後に空也の方を振り向くと手には空也にとってはいつものことであるかのように閃光弾が握られていた。

 

 こんなところで爆発させるのはさすがに空也も許容できない。だから瞬時に杉並の手から閃光弾を取り上げる。

空也「はいはい。閃光弾は投げさせませんよー」

 しかし瞬きした瞬間に杉並は空也の視界から消え去った。

 

 そんなことをしているとアンコールに答えた穂乃果たちの曲が始まる。

 『僕らは今の中で』。3学期に入る時に披露して音ノ木坂の生徒は知っているだろうが他のみんなは知らない曲。

 

 その曲を歌い切り、第2回ラブライブ!は幕を閉じた。

 

 手ごたえは感じたものの、結果はまだわからない。

 

 




遂に……ラブライブが終わりました!!

そして満を持して?登場した問題児『杉並』。D.C.が関係しているのに出ないなんてことがあるわけないじゃないですか!! まぁ、出すタイミングを完全に逃して今までやってきたわけですが……。

そんな杉並を出すこともできたし、アニメ12話分が終わりましたし、……も頑張ってるし。

俺も頑張らないと!! ということでアニメ最終話。気合を入れて行きます!!

新しくお気に入り登録をしてくださったシルバークロウさんありがとうございます!

次回『桜の舞う季節』

それでは、次回もお楽しみに!



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