ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

124 / 145
どうも、そらなりです。

なんか、毎週更新するのが久しぶりすぎて投稿当初のような緊張感を覚えています……。でも、やることはただ1つ!!

今日は過去編で登場してきた空也の父親と、今回初登場の母親が登場します! さて、前回の後書きでの答え合わせと行きましょうか。

それでは、今回も親子のやり取りをお楽しみに!


母は強し? 子も強し!

 今日、元旦は久しぶりに空也の両親が帰ってくることになっている。普段はこの時期になっても帰ってこないのだが、今年は時間をとることができたようで帰ってくることができたみたいだ。けどそれも今すぐに帰ってくるわけではない。

空也「ただいまーっと」

 帰ってくる時間までいろいろと用意しようと穂乃果たちと別れすぐに家に帰ってきた。

 

 今は誰もいないけどこれからここに久しぶりに会う大切な人が来る。それだけで空也の胸はときめいていた。

空也「さて、昼頃には着くって言ってたし早く準備しないとな……。そういえば、母さんに会うのって何年ぶりだろ?」

 だって久しぶりだったから。父親とは中学まで一緒にいたわけだけど母親に関してはもっと前に離れて過ごすようになっていた。けど、それは両親の仲たがいが原因というわけではない。

 

 階段を通り過ぎてリビングに向かおうとすると誰もいないはずなのに横から空也の口から漏れた言葉に対しての疑問の答えが聞こえてくる。

???「5年ぶりよ」

 

空也「そうそう! 確か小学校卒業と同時に海外で仕事を本格的に始めたんだっけ」

 その言葉を聞いて母親がこの家を出ていった時のことを思い出していく空也。海外で仕事をしている空也の母親はそれまではたびたび海外に行くことはあったけど空也の卒業をきっかけに本格的にイタリアに行ったのだ。

 

 空也が物思いにふけっているとまたもや隣から聞こえるはずのない声が聞こえてくる。

???「そうよ! だからこんなに大きくなったあんたに会うのはなんか感慨深いわね……」

 しみじみと空也と同じように昔を懐かしんでいる様子だ。しかも空也に会うのは久しぶりな様子。

 

 この状況で空也は聞き覚えのある声についに反応して見せる。

空也「……で? なんで母さんはここにいるんだ?」

 そう。ずっと空也に向けて話していたのはこの世ならざる存在ではなくただの、ここにはいないはずの母親だった。

 

 けど、言い当てられた空也の母親、"時坂(まもり)"はどこか不満そうにしている。

守「え~。そんな反応ないじゃない! せっかく早く帰ってきたのに」

 確かに、空也の話だと両親は昼頃に帰ってくるとのことだったのに、なぜ今この家に家に帰ってみたらもうすでに母親がいればそれ相応に驚くだろう。

 

 けど空也は何の反応も見せず、そして反応したと思ったらそっけないものだった。それが守の不満だったみたいだ。

空也「……早く帰ってきたからだよ。こっちはいろいろ準備しようと思ってたのに……」

 そしてこれが空也があきれたように反応していた理由。守がずっと家を空けている間に空也は成長をしていた。それを見せるために何かをしようと思っていたのに出ばなをくじかれればあきれるしかないだろう。

 

 その空也の言葉を聞いてすぐに何かを察した守は何をしてくれようとしたのかが気になった様子。

守「あら? もしかして、何かやろうとしてくれてたの?」

 だから本人に尋ねてみる。少しだけからかうように、でも本当にうれしいと思っているようなそんな感じがひしひしと伝わってくる。

 

 まだ何をどこまでやるかは決めていなかった空也だけど、聞かれてしまっては秘密にしたところであまり意味はない。だってすぐに見られるのだから……。

空也「俺が料理できるようになったのって知らないだろ? だからちゃんとしたものを作っておこうかなって思ってたんだよ」

 その中でもやろうとしていたことはなんとなくは考えている。守がいない間に修得した料理や一人で過ごすようになって得た家事スキル。それに一番見てもらいたいものがいっぱいあった。その中でも空也が選択したのは料理。理由は簡単、守たちが帰ってくるのが昼頃だと聞いていたからだ。

 

 ただ、守は空也が言うように料理ができるようになったことは知らない。

守「あら、本当!? それは楽しみだわ! じゃあ楽しみにしておくわね」

 だからこそそのことを知って純粋にうれしくなっていた。

 

 ずっと明るいテンションのままいる守に少しだけ空也は疲れが出てきていた。それもそのはず今の時刻は深夜2時。1日中ずっと起きていた空也にとっては徹夜になれているとはいえ、辛くなり始める時間。守も時差ボケで眠くなると思っていたのだが、いま日本が夜だということは守が暮らしていた国はまだ寝るには早い時間になる。

空也「さいで……。で、父さんは?」

 少しだけ疲れが見え始めた空也は今ここにいない父親のことについて守に聞きただす。普通に一緒に帰ってきているものだと思っている空也は少しだけ周りを見て父親である氷里がいないことを確認する。

 

 しかし、その行為もすべては守の言葉で無駄になる。

守「あの人なら昼頃に着くわよ」

 …………守はいったい何を言ったのだろうか? 一瞬空也は何を言っているのかがわからなくなる。

 

 けどそれも本当に一瞬のことだった。

空也「なんで一緒じゃない!?」

 理解した瞬間の空也の反応はもっともだ。先ほどのように母親が帰ってきているのであれば同じ職場で働いている父親も一緒に帰ってきているだろうという考えのもと動いていたこともあって守の発言に衝撃を受けていた。

 

 でも、氷里を置いてきたことも少なからず理由がある。

守「だってもし仕事のほうで何かあったら困るじゃない」

 ただ単に不仲になってしまったわけではないようだ。社員の質向上を図る意味でも守は早めに日本のこの家に帰ってきたと言う。

 

 けどこの話を聞いて1つだけ疑問が出てくる。

空也「けど立場は母さんのほうが上だよな!? 父さんはタダの社員だし」

 いくら社員の質を向上させようとしても社内のトップがいなくてもいいのかということ。このことからもわかるように守はある会社の社長をしている。であれば不測の事態に対応するために残っておいた方がよかったのではないかと普通ならそう考える。

 

 しかし守はそのことを考えたうえでしっかりとこの場所に帰ってきたようだ。

守「だからよ。なんにでも私に頼られたらやってられないわ。少しは会社内の人たちも成長してもらわないと」

 いくら不測の事態とはいえ何も対応できないわけではない。どうしようもない場合は父親を通して連絡が来る。穴があるとはいえ、社員の成長を促すには十分な手であったと思う。

 

 しかも自分たちだけで成長させようとする方法を見てしまえばそれは昔空也が見てきた母親の姿と重なった。

空也「なんというか、母さんらしいというか……」

 それはそうだろう。なぜなら同一人物なのだから。子育てと一緒の方法をとっている守にどこからしさを空也は感じていた。

 

 そんな昔を懐かしむ空也だけど守のほうはどうやら少し違ったみたい。

守「まぁそんなことはどうだっていいのよ! 久しぶりに一緒に寝ましょ?」

 先ほどの話はもうおしまいにしたと言わんばかりに話題を変えてくる。しかも今日一の笑顔でこんなことを言っていた。

 

 高校2年生にもなって母親と寝るのは恥ずかしいし、それよりも確実に空也をからかっていることが見え見えだったからこそ空也の反応も即答できる。

空也「寝ません。そういうのは父さんとやってください」

 即答の否定を守にぶつける空也。しかも、カウンターを乗せての攻撃だった。

 

 ただし、そのカウンターよりも一番最初のジャブが守にとって大ダメージを与えていたため無意味となってしまう。

守「グッ……。空也に振られた……。やっぱり距離が離れると心も離れてしまうのね……」

 最後にあったのが小学生の時だったからいい反応を見せてくれると思った守の一番の予想外のことにショックを受ける。が、その反応は自然のものであってもそれをからかうために生かしていくのがこの守という人物。今度は両手を目に当て泣くような仕草を見せて嘆くように呟く。

 

 だけど5年間ずっと会わなかったとはいえ、的確な返しをするのが空也だ。

空也「そんなリアクションとっても一緒に寝ないから」

 自分のことをおちょくっているというのが分かるからこそ、受け流すことができる。今まで普通に話をすることができていたが空也自身少しだけ緊張している節があった。5年間。5年間も会わなかったのにどうやって話せばいいのかわからなくなるのが普通だ。でも空也はそれを言葉に出さず、表にも出さないでいた。けどこうして話をしているとずっと一緒に過ごしてきた親子のようなやり取りができるようになっていた。

 

 これは守の狙い通りなのかそれとも単なる偶然なのかはわからないが守のおかげであることには変わりない。……のだが、それを知ってか知らずかスルーして話を進めていく。

守「あんた……父さん以上に私の性格読んでるんじゃない?」

 というのも空也の守りに対しての反応がいつもよりうまくいっていると感じたよう氷里よりも守の性格をつかんでいるように感じていた。

 

 けど実際その通りな部分も出てくる。氷里の場合は長く一緒に過ごしてきたからこそわかることがあるのだろうが、空也の場合はその2人のやり取りを見て育ってきている。いくら一緒に会わなかった期間が長かったとはいえ親のことを忘れるようなことはなかった。だからこそどういう反応をすれば何とかなるのかということは学習している。

空也「誰に育てられたと思ってるの?」

 そして空也自身も経験したことがあるからこそ反応もしっかりできていた。

 

 その空也の言葉に守はどこか理解できたような気がした。

守「やっぱあんたは私たちの子だわ」

 理解したからこそ守はこの結論が出てきた。空也の悪乗りをする性格はもしかしたら精神的な守からの遺伝だったのかもしれない。

 

 ということで空也の主張が順守され、空也と守の2人は別々の部屋で寝ることになった。この家には内側からしか鍵が開けられない部屋がある。もちろん空也の部屋は以前から変わっていないから壊されない限り守が入ってくることは不可能なため安心して空也は眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから特にアクシデントが起こることはなく、父親の氷里が帰ってくる時間になっていた。守が言ったようにお昼ごろに帰ってきた氷里を出迎えるべく空也は張り切って料理をしていた。

 空也が料理ができるようになったのは初音島で義之に料理を教わったから。しかし空也が初音島から帰ってくるタイミングでそれまで一緒に暮らしていた氷里も守と同じく海外での仕事に専念すべく家を空けてしまっていた。だから空也は自分の成長をまだ両親には見られていないということになる。

 だからだろうか、ランチレベル以上のもはやディナーと呼んでもいいくらいの豪華な料理が時坂家の食卓には豪華な料理が並んでいた。

 

 肉料理、魚料理、サラダにパスタ。様々な料理が並んでいる様子を見て守と氷里は空也が料理を本当にできるようになったことに心からの喜びを感じた。その成果、感動で目尻に涙が溜まっている。

 

 しかし、その涙も一瞬のうちに終わってしまうのだ。それはなぜなのか……。

守「お……美味しい!! 今まで食べてきた中で一番美味しいわよ!!」

 理由は簡単。空也の作った料理を食べた守と氷里はその美味しさのあまり、今泣いていることすらも惜しいと思ったからだ。いろいろな料理があるため味に飽きが来ないということもあるかもしれない。自分の息子が作った料理だからという贔屓があるのかもしれない。

 けど今の2人にとってこれ以上に美味しいものは今まで存在していない。そう思ってしまうくらいには衝撃を与えた料理たちになっていた。

 

 空也の料理を食べて、テンションが上がって感激していた守としみじみと噛みしめるようにして味わっている氷里。

氷里「そうだな……。もしかしたら母さんを超えてるかもしれないな。本当にうまい」

 そして昔食べた守の料理の味を思い出していた。

 

 そんな氷里の言葉を聞いた守は少しだけムキになってしまう。

守「そんなこと……ないとは言い切れない……。じゃあ夜は私が作るわよ。……久々に」

 母親としてのプライドだろうか空也に対抗しようと意気込みを述べる守。しかし最後に少し不穏なことを言っていた気もするがそれは守の周りの環境が原因だったりするのだ。

 

 空也の料理を食べて、感動していた守と氷里。一通り料理が食べ終わると、今空也の周りでやっていることの話に自然となっていった。

 

 その話題を振ったのは母親である守だった。

守「そういえば、穂乃果ちゃんたちスクールアイドルを始めたんだってね」

 たかが日本のスクールアイドルのことを知っているかのように守は話し続ける。この情報が100%正しいということを確信している様子だった。

 

 守の言ったことは実際に正しいのだが、問題はなぜそのことを知っているのかということ。

空也「あぁ……。なんで知ってるんだ?」

 ネットで公開しているとはいえ、興味がないとまず見ないだろう。それに、空也が作詞をしていることだって親に隠してきたことだ。なのになぜ知っているのか。それを空也は気になっていた。

 

 けどそれは1つの言葉で解決できることだった。

氷里「俺の情報収集力を見くびらないでもらおうか?」

 そう。氷里に関しては情報に興味があるないなんてことは関係ない。仕事の関係上強い情報収集力をもっている。氷里が知れば自ずと守が知る。

 

 つまりは空也のやっていたことは親に筒抜けだったわけだ。……もしかしたら空也が作詞をしていたこと自体も知っていたのかもしれない。

守「まぁ、そういうことよ。お父さんに頼んであなたたちのことはある程度は知っているつもり。最終予選はネットでも見てたしね」

 どうやら知ってからは空也たちのことを見守っていたらしい。

 

 でもそのカミングアウトが今の空也にとっては尋常じゃない驚きだった。

空也「今日一の驚きなんだけど!?」

 今日は自分の母親に会ったり、父親とは別に帰ってきたと言う驚くことはたくさんあった。けど自分たちのことを知っていたということはもっとも衝撃的で驚くことなのだ。いくら父親の情報収集力があっても自分たちの周りのことまでは把握しているとは思っていなかったから驚きは余計に大きくなっていた。

 

 けど、空也は予想できたと言えば予想できたのだ。

守「そうでもないわよ? ヒントはあったでしょ?」

 守の言うようにヒントはあったのだ。今まで空也が関係してきたあることに。それは守たちのしている仕事にも関係していること。

 

 守がそう言うと、1つの結論にたどり着く。

空也「ヒントって……。やっぱりあの依頼は母さんの差し金か?」

 普通ならあり得なかった依頼。あのステージができたことは今までなぜだったのかと謎に包まれていたがここで明らかになった。

 

 そのヒントとは……

守「そういうこと。でなきゃそう簡単に普通の学生がファッションショーに出られるわけないでしょ」

 ファッションショーでのライブだった。考えてみればそうだ。例え安価で依頼ができるスクールアイドルだからといって、プロのモデルが出るファッションショーに出られるわけがない。人気だから、今急激に伸びてきているからなんて理由だとブランドとしてのリスクが大きい。

 

 もしスクールアイドルが失敗したら? そう考えると依頼するなんて考え着いたとしても実際にやるなんて結論には至らないだろう。それにスクールアイドルを選ぶとしてもなぜμ'sだったのか。当時、スクールアイドルの頂点に君臨していたトップスクールアイドルのA-RISEを採用しなかったのかが今の守の発言で全部空也はわかった。

氷里「まぁ、最初から候補には上がってたんだ。地元のスクールアイドルだからってことで。それを最終的に決めたのが母さんだ」

 守が話したことに捕捉する形で氷里が言葉を続ける。

 

 なぜ、守たちがこんなことを決める立場にいるのか。それは守がファッションブランドの社長だからなのだ。そしてあのファッションショーは守たちが経営しているブランド『time world』のものだった。だから空也はタクトにチケットをねだられた時にすぐに行動に移すことができたし、"空也のもと"にファッションショーへの依頼が転がり込んだのだ。

空也「そういうことだったのか」

 今まで謎だったことが一気に解けた。そのせいだろうか空也は椅子に座りながらも自然と脱力してしまう。

 

 が、それは再び守の発言で変わってしまうのだ。

守「でも、わからないわね~」

 座っている椅子の背もたれによっかかりながら舟をこぐ守。その様子から本当に何かが分かっていないようなそんな印象を与える。

 

 でもそれだけではまだ何についてわからないのかがわからない。

空也「何が?」

 だから空也は聞き返す。話の流れからしてμ'sに関係あることだというのはわかっていたから。

 

 空也に聞かれると守は舟をこぐのをやめて空也のほうを真剣に見た。

守「私はファッションショーの時、確かに上達しているなとは思った。それは最終予選の時も思ったけど……」

 深く見ているからこその評価、上達はしていると言われ空也は少しだけ嬉しくなる。

 

 ただしそれは言い切られた時の場合だ。今気になるのは守が次に放そうとしている言葉。

空也「けど?」

 だから空也は息をのみながらも守の言葉を待った。

 

 そこからほとんど間を開けずに本当に思っていたことを口にする。

守「正直、あなたたちが何でA-RISEに勝てたのかはわからないのよ」

 それはある種、μ'sの勝利を汚すものだった。

 

 先ほどまで褒められてはいたのにいきなり落とされた気分を味わった空也はなぜそんなことを言ったのか気になっていたのだ。

空也「なぜ勝てたか……?」

 だからどういう意味でそう思ったのか空也は守に問いただす。

 

 こういう時はいくら家族であっても仲が良くても言いたいことをはっきり言う性格の持ち主である守は一切のごまかしをせずに、直球で空也に対して今守自身が持っている疑問を投げかける。

守「えぇ、確実に技術の面ではA-RISEに圧倒的な軍配が上がる。なのにμ'sは勝った。それはなぜなの?」

 それは絶対王者のようにスクールアイドル会に存在していたA-RISEをどうして破ることができたのかということ。見ていてもスクールアイドルとして活動していたスパンの長いA-RISEはそれ相応のパフォーマンスをしていた。無駄のない動きでダンスをし、踊りながらも音程は全くブレずに歌う。そんな完璧のパフォーマンスをすることのできたA-RISEになぜμ'sは勝てたのかと守は思っている。

 

 でもはっきり言ってしまえば空也が折れてしまうかもしれない。せっかくいい気分でこれから頑張っていこうと思っているのに水を差してしまったのかもしれない。

氷里「おい、母さん」

 そう考えるとこのまま守に話をさせていいとは思わなかった。最悪の場合、空也が大声をあげて離れていってしまうかもしれないとそんなことが氷里の頭の中をよぎる。

 

 しかしその未来が訪れることはなかった。

空也「大丈夫だよ、父さん」

 言い過ぎたと思っていたから氷里は止めたのだが、そんなことをしなくても空也は大丈夫だったみたいだ。

 

 こういう時、昔の空也だったら怒りに身を任せていただろう。だから氷里は止めたのかもしれない。けど空也も成長している。

氷里「空也……」

 それが分かったようで氷里は黙って空也を見守ることにした。ここから口を出さないと氷里は決めたのだ。

 

 自分のために動いてくれたと理解している空也はそのまま守の問いに答える。

空也「その理由は俺がよく知ってる。勝つための条件は揃ってたんだ。だから勝てた」

 あの時、勝てる確信があったのだ。なぜ空也が、穂乃果たち生徒会があの場所に立てたのか。どんな人のためにあの歌を歌ったのか、どういう想いを込めてあの歌を作り出したのか。それを知っている空也だからこそたどり着いた答え。主観的にも客観的にも見れるからこそ見つけ出すことのできるものだった。

 

 けどそれは守には分らない。

守「その条件っていうのは?」

 だから空也に聞き返す。一体どんな条件が揃っていたのかということを。

 

 もちろん口で説明するのは簡単だ。だけどそれは今穂乃果が悩んでいることと同じ。

空也「それは、俺たちを周りを見てれば自然とわかるよ」

 だから今は答えは教えない。せっかく興味を持ってくれたのだから、もっと深くまで見てほしいと空也は思っている。だから自分たちのことを見るようにその言葉を放ったのだ。

 

 相手の疑問から自分たちに興味を持たせるまでの流れがスムーズだったこと、怒りに身を任せて暴走しなかったことを見た守は少しだけ氷里と同じ気持ちになっていた。

守「……やっぱ成長したわね、空也」

 料理を見た時にも思ったけどそれは今回の日にならない。精神的に十分に成長した空也に親として氷里と守は嬉しくなった。

 

 自分の成長を認められた。それは子供にとって一番うれしいことで、何よりもやる気になることだ。

空也「あぁ! だって俺は……」

 それに、空也は成長しないはずがない。今の空也はいくつもの想いを形にして、想いに敏感なカテゴリー5の魔法使いなのだから。

 

 いくら守たちが知っていることとはいえ、そこまで宣言するのは恥ずかしいと思った空也はそのあとの言葉を口に出さなかった。けど守も氷里もわかっている。

 

 何はともあれ息子の成長を確認できた2人には空也は光り輝くように見えていた。そんな元旦になったようだ。

 

 




この作品初の母親の登場です! 登場しない=死んでいるなんてことはないんですよ。死んだなんて描写1回も入れてないですしね。

そして何回か登場したファッションブランドの『time world』の理由、もうわかってくれましたよね? 空也に最も近い企業だったからです。ここで思い出してほしいのが空也のできないこと……。以前感想でマシじゃね? なんて言われましたがこれが馬鹿にならないことだということをきっと皆さんはこれから知ることになるでしょう。

次回『キャッチフレーズ?』

それでは次回もお楽しみに!



Twitterやってます。
https://twitter.com/kuuya_soranari
どうかフォローよろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。