ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~ 作:そらなり
久しぶりすぎてどこまでの話になったか覚えていない人だっていると思います。それに、前話を読んでいるのにもう一度読みに行くのって手間ですよね。自分もそう感じているので、ここで大まかなあらすじを……。
それでは、久しぶりですがこの作品をこれからもよろしくお願いします!
あらすじ
ラブライブ最終予選の結果が明らかになってから数日後、大晦日を迎えた空也は穂乃果の家で過ごしていた。ちょうど黄白歌合戦が終わったころ、海未とことりが初詣に行くため穂乃果の家にやってくる。年越しの瞬間を着替えで過ごすというアクシデントがあったものの新年のあいさつを終えた穂乃果たちは神田明神に向かう。
そこで一緒になった花陽達1年生組と話をしていると、男坂のほうから見覚えのある人が……。
最終予選で一緒に競い合った『A-RISE』。ツバサから本大会へのエールをもらい穂乃果たちはより一層本選でのやる気を出すのだった。
あらすじ終わり
ツバサたちからエールをもらった後穂乃果たちはお参りをするために列に並ぶ。待っているととうとう順番が来た。空也を含めた7人は横に並び一緒になってお願いをする。お賽銭に入れるのも同じ金額。これはみんなで考えて決めた金額だ。10円玉を投げると"遠縁"になるからよくないとかそういうあまりよくないことは避けながら自分たちにいいと思える金額。それは『55円』。50円玉1枚と5円玉1枚の単純なものだけど、五十にご縁がありますようにという想い、そしてラブライブに向けて"Go Go!!"と前に突き進めるようにと願う。
目をつむって真剣に祈る7人。
凛「かよちんは何をお願いしたの?」
でも次第に終わってくるメンバーが出てきて終わったら終わったで凛のように何をお願いしたのかを聞いたりしている。
こういう時願いを言ってしまうとかなわなくなるとかいうことも言われている。
花陽「秘密だよ~」
だからなのか花陽はお願いしたことを秘密にした。
その答えにすぐ引き下がる凛。けど、ここにいるのは花陽だけではない。
凛「ことりちゃんは?」
だから一緒にお参りをしていたことりに花陽と同じ質問をする。
聞かれたことりは腕を前に構えながら1つのお願いしたことを凛に教える。
ことり「もちろんラブライブ優勝だよ」
そう、きっとほとんどがこのお願いをしているだろう。こうやって言葉にすれば自分でも認識できて意志が強く持てる。
そしてそれに同調するかのように凛は笑顔で答える。
凛「だよね」
という凛も同じことをお願いしていたから今、彼女たちの中にはラブライブで勝つことしか考えていない。だからこそ、こういう時出てくるのは優勝を祈願するものだった。
やがてだんだんとお願いし終わった人たちが増えてきた。
海未「さぁ、あともつかえてますから次の人に……」
そのこともあるのか海未がここから離れることを提案する。8人がこの場所を占有してしまえばもちろん後ろの人に迷惑がかかる。だから終わったのであれば場所を移動するのがベストだろう。
でもそんな中穂乃果と空也だけはまだ祈り続けていた。目をつむり真剣にお願いをしているのがよくわかる。
海未「穂乃果? 空也?」
あまりにも真剣な様子に異常を感じた海未は2人に対して声をかける。
凛は凛で穂乃果と空也を見て想ったことを素直に口にする。
凛「穂乃果ちゃんと空也君随分と長いにゃー」
お賽銭をしたのは同じタイミングであったのにいまだお願いをしている穂乃果と空也。高校生がしている時間としてはかなり長い方だと思う。けどそれだけ真剣なお願いをしているということだ。ただの上辺だけのお願いではなく心から叶いますようにと想っているように。
だけど、真姫の言うように見られてしまうことだってある。
真姫「また欲張りなお願いしてたんでしょ」
確かに多くお願いしているかもしれない。けど、本当はそうじゃないと思っているからこそ真姫はそのことを言葉にできた。
真姫の言葉に反応した穂乃果はお参りが終わったようでみんなのほうを向いてお願いしていたことを答える。
穂乃果「そんなことないよ。ただ私たち9人が最後まで楽しく歌えてその歌を空也君の分の思いをみんなに伝えられますようにって。空也君は?」
本選に出場することができたのだからこそのお願い。そしてステージには立たないけど同じ仲間である空也の分も頑張れるようにとのことだった。その後同じく長い間お参りをしていた空也に話を振る。
穂乃果と同じタイミングでお参りが終わっていた空也が聞かれたことを答える。
空也「俺? 俺は健康に過ごせるようにと、今後もみんな離れないようにって」
これが空也がお願いしたこと。ここにいる誰もがラブライブのことについてお願いしていただろう中で空也だけが直接的にかかわることのないことをお願いしていた。けどよく内容を見てみれば少しだけ意識しているようにも思える。どんなに練習でうまくなったとしても本番に参加できなければ意味はない。だからこそ、確実に出場して最高のパフォーマンスをするためにこのお願いをした。
でもそれに気が付けるのは言葉以外のことに注目したときにはじめて気が付けるもの。だから今この瞬間だけは誰も気が付かない。
ことり「あれ? ラブライブについては何もないの?」
その結果、ラブライブのことについてお願いをしていないことに疑問を持ったことりはそのことを空也に聞いた。
もちろん、ラブライブのことを気にしていないわけではない。けどこの場面で優勝したいとお願いしなかったのは理由があった。
空也「そんなもん神頼みしなくても叶うってわかってるからな」
神頼み……いや、神社でのお参りは自身への想いを宣言するという意味だって含まれている。けど、それすら空也はしなかった。それこそ初めてスクールアイドルの活動をしたときは穂乃果たちが途中でくじけないように支えていくという意味を込めてお参りをしたことのある空也が、である。きっとそれは今までの時間を一緒に過ごしてきたメンバーたちを見ているとできるという確信があったからなのだろう。
決して慢心ではなく、何物にも揺るがない自信が今の空也の中にはあった。
空也の言葉を聞いた穂乃果はその考えも一理あると思った。
穂乃果「……そうだね」
だからこそ穂乃果はうなずく。空也と同じく慢心とは違う、けど空也の持っている自信ともまた違った自信を胸に秘めながら。
こんな話をしていると今まで一緒にいた人が1人いなくなっていることにいち早く真姫が気が付く。
真姫「あれ? 花陽は?」
そう。花陽がいないのだ。どこかに行くとしても一言位かけてから行くはずの花陽が急にいなくなればかなり不安になるだろう。その証拠にいなくなったことに気が付いた真姫と凛は少々取り乱している様子だった。
けど冷静に周りを見た海未がすぐに花陽のことを見つけ出す。
海未「あそこです」
そう言って海未が指さしたのは自分たちが今まで並んでいた参拝の待機列の方向だった。
みんなが海未の指す方を見るとそこには大人数に鳥居のほうに押し戻されている。
花陽「誰か助けて~!」
手を海未たちのほうに向けて振って助けを求めている花陽。だけど、大きい声で助けを求めても、止まることはなかった。
そんな花陽を見て穂乃果が面白そうにつぶやく。
穂乃果「おぉ、花陽ちゃんが流されていく!」
確かに流されて行ってる花陽は可愛くも見えた。けど今は……
空也「って! 早く助けないと!」
どうにかして花陽を救い出さないといけなかった。早くしないと救い出せるものも救い出せなくなってしまう。
だから穂乃果たちと一緒に場所を開けてから空也は流されている花陽の方向けて走り出す。
空也がとった行動は人ごみの中をかき分けて走り出すわけではなかった。花陽が流されているであろう場所まで列を離れて近寄り近づいたところで列に紛れる。横入りのようで少し後ろめたい気もするが今はとにかく花陽をこの場所から出すことが最優先だ。
空也「あ、すいません! ちょっと通してください!」
入り込むようにして花陽に近づこうとする空也。少しだけ声を張り上げて通してもらいやすくしようとしている。
そんな声を聴いたからなのか空也にとっては聞きなれた声が横から聞こえてくる。
???「お、空也じゃん。どうした? って目的は小泉か」
空也に親しげに話してくるこの男性。彼の名前は大泉月。体育祭の時の短距離走で空也と一緒に走った同じクラスの友人。でもここに空也がわざわざ列の後ろを見ていることからここにやってきた理由を推察する。それはもちろん正解なのだが、花陽のこととは誰も言っていない。
じゃあなんでわかったのか。それは考える暇も与えられることはなかった。
なぜならそれは、月の横から恥ずかしそうにしている花陽の姿があったからだ。
花陽「空也君! すいません、止めていただきありがとうございます」
空也が来たことに月同様に気が付いた花陽は少しだけ頬を赤く染めながらもこの場所で止めてくれた月にお礼を言う。
それに合わせて空也も月に対してお礼を言う。
空也「あぁ、おかげで早く花陽が捕まった。ありがとう」
このまま花陽が流されていたらもう少し合流するのが先になっていたかもしれない。それを回避してくれたという意味ではとても助かることだった。
そんな空也と花陽の2人に対して月は軽く口を開く。
月「大丈夫大丈夫。ただ、並んでるときに前から流されてくる人がいたから止めただけだし。助けてーって言ってたからな」
月自身、花陽の助けを聞いたから止めたらしい。この話方からすればきっと月は元居た場所を動いていないのだからこうして花陽を止めることができたのも偶然。そこまで気にするようなことでもないと月は思っていた。
けど実際に助かったことには助かったのだ。
空也「本当に助かった」
花陽「ありがとうございました!」
だから2人でもう一度お礼を言ってこの場所をあとにしようとする。
2人の言葉を受け取った月は軽く手を振りながら言葉を返す。
月「おう、分かったから早く抜けたほうがいいぞ。抜けられなくなっちまうから」
こうやって話している間にも列は少しずつ前に進んでいく。前に移動すれば前の人との距離もだんだんと狭くなり通るのが難しくなってくる。一番ベストなのは今のような動いている最中。一度止まってしまうとまた動き出すのに時間がかかってしまうからだ。
月の助言を受けてすぐさま花陽を連れて外に出ようとする空也。
空也「あぁ、そうするよ。じゃあな、月」
別れ際に空也はそう言って花陽の手をつかみ、その一方で花陽は一礼をして空也と一緒に離脱をした。
その後穂乃果たちと合流して希達3年生組が手伝いをしてるところへと向かった。けど、花陽の頬が元の色に戻るまで少しだけ時間がかかったようにも思えた。
希たちが手伝いをしているというところに着いた穂乃果たちは一度周りを見渡して希たちがいるかどうかを確認する。
穂乃果「あ! いたいた。希ちゃーん!」
すると穂乃果がいつもの巫女服を着た希を見つけた。
それをきっかけにみんなで希のほうへと駆け寄る。
希「あら。あけましておめでとう」
駆け寄ってくる空也たちに気が付いた希はみんなに向けて新年のあいさつをする。
それに返すように穂乃果が代表して笑顔で答えた。
穂乃果「おめでとう」
神社というものはこの時期になるとかなり人が来るため見ている側のことりたちからも本当に忙しそうに見えていた。
ことり「忙しそうだね」
だから、希のことを心配してことりが話をかける。
その言葉に対して希は少しだけ笑うといつもと変わらない笑顔をみんなに見せる。
希「フフッ。毎年いつもこんな感じよ。でも今年はお手伝いさんがいるから」
流石長い間このバイトをしているだけあってそこまで慌てている様子も見られず、落ち着いている。それに今年はいつもとは違う心の余裕といえるものもあるようだ。
そんな話をしていると希の後ろから段ボールを持ったにこがトテトテと歩いてくる。
にこ「希~、これそっち?」
目を思いっきりつむって重たそうにしているにこだけど、歩みは確実に希のいる方へと向かっている。
もちろん今のにこの姿も希と同様に巫女服で普段見ることのないにこの巫女服姿に凛たちは少しだけ興奮していた。
凛「にこちゃん!」
と凛が大きい声でにこのことを呼ぶと今まで閉じられていたにこの瞳が開き、凛たちの姿が目に入ってくる。
にこ「わぁ! なによ来てたの?」
けど、それと同時に見知った顔があることへの驚きで持っていた段ボールを落としてしまう。
それを拾いながらあたかも何事もなかったかのように話しかけるにこ。
でも今の凛たちには巫女服を着ているにこのことしか目に入っておらず、にこの質問に答える人はだれ一人としていなかった。
凛「可愛いにゃー!」
海未「巫女姿似合いますね」
みんなが口々ににこの巫女服姿を褒める。μ'sメンバーの中で一番黒が濃い髪の色をしているからなのか和風な巫女服がとても似合っているというメンバー全員の意見が一致していた。
ここまで正面から褒められることになれていなかったにこにとってみんなの反応は予想外以外の何物でもなかった。
にこ「え、そっそう?」
だからこそ、いつもは自信家のにこが少ししおらしく首をかしげる。調子が狂っているようなそんな印象を覚えた。
ただし、そんなにこを置いておいての凛はいつもの様子と変わらなかった。
凛「なんか真姫ちゃんと和風ユニットが作れそうにゃー!」
マイペースに話を進めていく凛。でもそう思うのも無理はない。今この場には普段和服を見ることのない2人の和服姿があって、しかも2人の性格はどこか似ていてユニットを組むにもどこかぴったりのように思えた。
ただ、その凛の発言を聞いていた真姫はあまりに唐突だったことから驚きをあらわにする。
真姫「ユニット!?」
そんな真姫に追撃を与えるかのような穂乃果の発言がされる。
穂乃果「それだ!」
真姫「それだじゃないわよ~」
そんな穂乃果の発言に対して恥ずかしさのあまり頬を赤くして真姫は否定する。
そして今度は凛の発言を穂乃果がサポートしたようににこも真姫の援護射撃を開始する。
にこ「そうよ、色物じゃない!」
この格好のまま踊ったりができるわけでもないから確かににこの言い分もわかる。
と、そんなやり取りをしているとまだ会っていないμ'sメンバーである絵里が希やにこと同じ格好をしてやってきた。
絵里「あら、みんな」
絵里からすれば急に穂乃果たちがやってきたという状況のため少しだけ穂乃果たちがいることに驚く。
そんな少しの疑問符を浮かべるかの如く首をかしげている絵里を見て穂乃果たちは見とれていた。
穂乃果「あ~ぁ……。絵里ちゃん」
今の絵里の恰好はにこと希の2人と同じ。つまりは巫女服姿である。そして絵里の髪はキレイな金髪。和風の服装を外国の血の強い絵里が着こなすことで純粋な日本人には見ることのできない新鮮な雰囲気を醸し出していた。
だからこそ、見る人からすれば、
花陽「かっこいい!」
花陽のようにかっこいいという人もいる。
そして海未のように絵里の姿を見て見とれるような反応を示すものだっていた。
海未「惚れ惚れしますね」
いつも見慣れている希でも、日本人らしい髪色をしたにこでも出すことのできない魅力に見たすべての人は何かしらの見とれる感情を覚えていたのだ。
だからこそ、希にもにこにも言わなかった提案が出てくるわけで。
凛「絵里ちゃん。一緒に写真撮って?」
あまりにも珍しく、きれいだったからこそ凛は絵里と一緒に写真を撮ってほしいとお願いをした。
仲がいいことから二つ返事で了承してくれると思っていた凛なのだが、その凛に対して絵里が放った言葉は至極まともな答えだった。
絵里「ダメよ。今、忙しんだから。希も早く」
絵里たちはここにコスプレに来ているわけではない。希の手伝いとして働いているのだ。もともと生徒会長をしていた絵里にとってこのくらいのけじめはついている。そのため、いくら仲が良くても仕事中は仕事に専念をすると決めている。写真くらいは休憩時間にとればいい。
今のこの時代は中学生ですらバイトをすることが合法になってきている。その法が決まった時に高校生以上の学生の長期休業中の深夜までのアルバイトも合法になっていた。だからこそ、今こうして絵里たちが仕事をすることができるのだからしっかりとやるべき仕事をやり遂げる義務があるのだ。先ほどの絵里の対応は仕方のないことだった。
そう言われた希も絵里についていく形でこの場を去っていく。
希「はいはい。じゃあまた」
そう、今仕事をしているのは絵里だけではない。ただ少し話をする時間があったとはいえ希もにこも絵里と同様に仕事をしている。
そのためにこも絵里たちについていくように持っていたダンボールをしっかりと抱え込みながら踵を返そうとする。
が、そのにこの持っているダンボールを空也が一度触る。
空也「あ! にこ、ちょっと待って。ほっと……」
何かしらをしたのはわかるような掛け声をあげたと思ったらすぐにダンボールから手を離した。今まで空也を見てきた穂乃果たちなら、ことスランプになった時に空也と行動を共にした海未と凛なら何をしていたのかはすぐにわかる。けど、どこか違和感を覚えていた。
空也がダンボールから手を離すとにこにも変化が起きた。
にこ「あれ? 軽くなった!?」
そう。あれだけ重そうにしていたダンボールを今は軽々しく持ち上げている。
つまり何が起こったのかといえば、いつも空也がしていることに他ならない。
空也「魔法だ。さっさといけ、おいてかれるぞ」
それが、魔法。いつもはワンドを振って使っている魔法を空也は何も使わずに使用した。それが海未たちが覚えた違和感の正体。本来、ワンドは魔法と使うための補助具のような位置に属している。ということは、ワンドを使わなくても魔法を使うことはできる。しかし、空也の今までの状況ではワンドを使わずに魔法と使うことが不可能だったのだ。ただ1つの魔法を除いて。今使ったのはその例外的な魔法ではなく普段ならワンドを使わないと使えない魔法。
なぜ空也はワンドを使わずに魔法を使うことができたのか、それはきっとこの前の最終予選前の出来事がきっかけなのかもしれない。
だけどこのことは今まで魔法を使うところをたくさん見てきて、あのきっかけとなる出来事を見たものしかわからない。つまり一番気が付きやすいのは海未だけだった。
穂乃果「3人とも仲いいね」
だからこそ違和感を覚えても解決するまでは至らない。その結果今は目の前にいる3年生3人のこと微笑ましく見守っていた。
そしてその視線の先にいるのは楽しそうに話をしながら仕事をしている3人。
凛「姉妹みたいだにゃー」
その姿は凛の言うように長年ずっと一緒に過ごしてきた姉妹のようなそんな関係に見えた。
けどそのやり取りを見ているといつまでも一緒に入れるような錯覚に陥るのだけど、今日というこの日はどうもそうは思えなかった。
花陽「でももう3か月もないんだよね。3年生」
新年を迎えたからこそ時間の流れに敏感になり3年生が音ノ木坂学院生である時間は刻一刻と迫っていることを実感してしまう。
あまりにも不意に思ってしまったことから花陽はこの前に10人で決めたことを破ってしまう。
海未「花陽。その話はラブライブが終わるまでしないと、この前約束したはずですよ」
そう。今優勝が目の前に来てる状態で感傷的になることを避けるために3年生が卒業した後の話をしないようにと決めていた。
けど話してしまえば考えるなという方が無理でどうしてもそのあとのことについて考えてしまう。
花陽「わかってる……。でも……」
そんな花陽に穂乃果は一度思考をリセットするかのように話を始める。
穂乃果「3年生のためにも、ラブライブで優勝しようってここまで来たんだもん! がんばろう! 最後まで」
そう。3年生がラブライブに出場できるのが最後だと知って、この10人で足跡を残したいと想って出場している。
その想いは穂乃果だけが持っているものではなく、
ことり「うん!」
ここにいる全員が想っていることだ。これからも頑張っていくには後ろ向きな考えをしてはいられない。だから今は前を向こうと決めたのだ。
しかし、これからの話になると空也だけはここにいる誰とも違うことを考えてしまう。
空也「…………。悪い。そろそろ俺帰るわ」
それはななかから告げられたプロへの勧誘。あの時に保留にしていた2つ目の話をどうしても考えずにいられなかった。
だからだろうか、この場所から逃げるかのように空也がここから帰宅することを話す。
あまりに突然だった空也の言葉に穂乃果たちは耳を疑う。
穂乃果「え?」
何があったのか聞き返す穂乃果。それもそうだろう。今日は穂乃果の家に空也が泊まると思っていたのだから。
けど空也もただ逃げるためだけにこの話をしたわけではなく、どうしても早く帰らないといけない理由があったからなのだ。
空也「久しぶりに両親が帰ってくるからその準備をしないと」
そう。今まで離れて暮らしていた両親が帰ってくる。少しでも成長した自分を見てもらいたい空也はそのために少し気合が入っていたのだ。
けど、そうすると1つの疑問が出てくる。
ことり「じゃあなんで穂乃果ちゃんの家に御呼ばれしたの?」
それはことりの言ったように、大晦日だった数時間前に穂乃果の家に呼ばれたのを了承したこと。空也の両親が帰ってくるのだとしたらその時間も準備に使った方がよかったのではないかとみんなが思っている。
それにも空也自身の単純な理由があった。
空也「……大晦日くらい一人で過ごしたくなかった。それだけだよ」
単純だけど普段しっかりしている空也にとっては少しだけ弱気な一面。一人は嫌だという子供らしい考えだった。
そんな空也を見ると少しあきれるものがあった。
海未「まったく……だったら私たちも行ったんですよ。空也の家に」
ここにいるみんなは空也が言えば絶対に集まっただろう。空也の家はみんなが集まれるだけの広さがある。その証拠に花陽たちも首を縦に振っている。
少し弱気な一面を見せてしまったことから頬をわずかに上気させている空也は、それでも顔を背けずにしっかりとみんなのほうを向いて礼を言う。
空也「……ありがとな。まぁ、そういうことだからちょっとごめん」
言葉だけで十分うれしかった。そして何も言わなかったことに対して謝る。
そんなことを言っている空也だけど、穂乃果としては早く家に帰ってほしいと思っていた。幼馴染だから、空也がどれだけ両親と離れて過ごしてきたかを知っている。特に母親とは会っていないのだ。
穂乃果「いいから行く! 空也君、本当におじさんとおばさんに会うの久しぶりなんだから!」
だからこそ、穂乃果は空也の背中を思いっきり押して早く行くように言った。
空也は背中から感じた穂乃果の想いを受け、そのまま走り出す。
空也「あぁ!」
後押しをしてくれた穂乃果たちに心の中で礼を言いながら、はっきりとした返事をして。
これから、久しぶりの両親の再開に心を躍らせながら。
今まで登場しなかった両親の登場です。……登場しないからといって死んでいたわけではないですよ。安心してください。
ただ、ここまで隠してきたからには何かがあるということです。空也の弱点と今まで何度も出てきたある単語を思い出すともしかしたらそれが答えなのかもしれませんね。
次回、その答えが出ます。
新しくお気に入り登録をしてくださったvividだねぇさん、咲羅さんありがとうございます!
次回『母は強し? 子も強し!』
それでは、次回もお楽しみに!
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