ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

今回は前回に言った通り答え合わせをしてみましょう。今までの中でいったい何がこれから起きてしまうのかということを……。

さて、それでは今回もこれからの未来を知る彼女たちをご覧ください!


宣戦布告

空也side

 

 場所は音ノ木坂学院生徒会室。そこで穂乃果たち生徒会は今日の入学者説明会に参加してくれる人窓から見つめていた。

穂乃果「わぁ~! こんな天気なのにたくさん来てくれてる」

 過去に見ない大雪が降っている中で人が途切れることがなかった。次から次へとやってくる人たちを見て、これから後輩になるのかもしれない人たちに穂乃果は心が躍っていた。

 

 でもそれは穂乃果だけではなく、この学校を守ろうとμ'sの活動を始めたことりと海未も同じだった。

ことり「うん!」

 ことりからは母親がこの学校の理事長であるからかこの学校に来たいと思っている人がこんなに多くいることに心から最高の笑顔で後輩になるかもしれない人たちを見ていた。

 

 ただ窓を開けながら外を見ていたため、思いっきり風が吹き込んできてしまう。雪が降ってるほど冷たい外の空気にあてられた穂乃果は急いで窓を閉めた。

穂乃果「うひー、寒い~……。雪はうれしいけど寒いのは嫌だよ~」

 雪というのは子供のことからどこか心躍るものがある。が、穂乃果の口からはどうにもならないことが告げられる。今日が入学者説明会で壇上で話し、そのあとに最終予選に出場するとは思えないほど普通の穂乃果だった。

 

 穂乃果の言葉に海未もいつもと同じように返す。

海未「雪が降ったら寒いのは当たり前です。それよりそろそろ行動に向かいましょう」

 そう。当たり前。気温が下がっているから雪が降っている。だから穂乃果の言ったことは無理難題なことに過ぎない。

 

 こんな会話をしている女子高生がこれから学校の主催する入学者説明会に出るのかと思うとそうとは思えなかった。

穂乃果「うん!」

 でも、あくまでも穂乃果らしく本人らしく今の時間を過ごしていた。

ことり「そうだね」

 それはことりと海未も同じで、変に気負うような感じはなかった。

 

 でも明らかに穂乃果の瞳には闘志の炎が存在していた。ただし、しっかりと周りは見えていたようで……。

穂乃果「挨拶ビシッと決めてライブに弾みをつけるよ! ってどうしたの空也君。さっきから全然喋ってないけど?」

 ここにいる4人で一番の違和感を醸し出している空也に穂乃果が話しかける。

 

 穂乃果に話を振られると何か考えるような素振り見せてから考えがまとまったようで話を始まる。

空也「…………。そうだな。一応教えとく、約束だったし」

 重い顔だった。今日は確かに大事な日ではあるけど、空也の醸し出しているのはこれからまるで葬式が始まるのではないかと錯覚してしまうほどのものだった。故に真剣に、覚悟を決めるように。

 

 ただどうして空也がこんな状態になっているのかことりたちにはわからなかった。

ことり「何のこと?」

 だから本人に聞いてみる。約束をしたということだったし、何か力になれることがあるかもしれないと思ったから。

 

 ことりに聞かれると空也は一度目を閉じ、当時のことを思い出す。最悪の夢を見た時とそのあとのことを。

空也「初音島にみんなで行った時さ、穂乃果に何か悪い予知夢見たんじゃないかって聞かれたろ?」

 それは予知夢だった。雪の降る中、ラブライブの会場に向けて走っている空也と穂乃果たちの4人の。そして穂乃果の考えていた悪い予知夢であったのかという穂乃果の問いはほぼほぼ正解だった。

 

 気になっていた張本人の穂乃果は空也にその話を聞かされた瞬間すぐにそのことを思い出す。

穂乃果「うん。そうだね」

 あそこまで夢にうなされている空也を見るのは初めてだった穂乃果もそのあとの会話が印象的でそのことが強く頭の中に残っていたのだろう。

 

 ここでその話題を出したということはその夢の内容を3人に伝えることに空也が決めたということだ。

空也「その内容を教えとく」

 確実に良いことではない。そのことを雰囲気で出していくかのように覚悟にまみれた空也の声がいつもの口から語られる。

 

 重苦しい雰囲気から海未たちの緊張感も自然と高まってくる。

海未「その内容とは……?」

 良いことではないだろうということだけは察しが付くがどんな内容七日まではわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数秒の間の後に閉じていた目を開いて空也は夢の内容を穂乃果たちに告げる。

空也「今日、俺たちは会場に行く途中で交通事故に巻き込まれ、死ぬ」

 それはまさに最悪の出来事。会場に行く途中ということは出場できていないということ。あれだけ楽しみにして必死に練習したことが全くの無駄になってしまうという自分たちにとってまたしても夢に届かなくなってしまう出来事が起きるということを言い放った。

 

 この言葉で前回のラブライブを辞退する原因を作ってしまった穂乃果にとってそれは重くのしかかってくる。

穂乃果「……!?」

 また自分がやってしまうのかと不安になり始める穂乃果。先ほどまで雪ではしゃいでいたとは思えないまで気分が沈んでいた。

 

 こんな話をしたらこうなるのはわかっていた空也は本番前に気分をおとさせてしまう行動をするのかどうか迷っていた。けど、絶対に大丈夫だという自信ともし3人が想定外の行動をした時のことを考えるとこのことを教えておいたほうがいいという結論に至った。

 

空也「まぁ安心しろ。そうならないように策はあるから。でも、あまり派手に動かれると助けられる自信ないから教えておいた」

 

 だから、助ける確率を上げるために穂乃果たちに言った。そのために空也は魔法をこの初音島ではないところでつかう準備をしていた。簡単なものは準備なしでできるがこれからやろうとしていることはどうしても今の空也には前もって準備をしておかないとできない。だから失敗は許されないし、失敗は穂乃果たちの死を意味する。

 

 そう言ってくる空也には今までのような重苦しい雰囲気も感じるがどこか安心できる空気も醸し出していた。

ことり「信じていいんだね?」

 だから自分の死が近くにある状況でもいつも通りに会話することができる。

 

 安心してほしい。今はとにかくそれだけしか考えていない空也は、3人を落ち着かせるために懐からワンドを取り出し拳を突きつけるように前に出した。

空也「もちろん。俺はカテゴリー5の魔法使いだぞ。こんくらいは可能にしてやる」

 出来るできないじゃない。これこそ可能にしないといけないことだ、どんなことを犠牲にしたって絶対に。

 

 空也の自信満々で安心できる声に海未は心配というものを拭い去った。

海未「では、お願いしますね」

 今の海未たちには何もできない。事故に気を付けて行動することはできたとしても起きるときは起きてしまうのが交通事故。だから、身の安全は空也に託したのだ。

 それに空也の話からすれば会場に行くまでの間に起きるということだったからこの学校内は安全であると言える。その時まで自分たちは夢の中で生きていたのだから。そう言ったことを思い出すと3人とも落ち着いた、いつも通りに戻る。先ほどまで死の危険が近くにあることを聞いていたのに。

 

 それを落ち着かせるまでに空也は信頼されているのだ。……いいや、信頼なんて生ぬるいものじゃない。

空也「あぁ」

 身を任せられるということは簡単にできることではないはずなのに、いとも容易く任せられるほど3人の空也に対しての想いは強いのだ。

 

 この空也の言葉は一番頼りになる。だからこの話はいったん終わり。今は直前に迫っている入学者説会をしっかりとやり遂げること。だから生徒会の4人は会場である講堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もうすぐ入学者説明会が始まるため講堂に向ったが席はところどころ空いていた。そしてまだ始まる気配すらないこの場所に空也たちは一抹の疑問を覚えた。

 

 そこで先生の話を聞くとつい先ほど決まったと思われるであろうことが告げられる。

穂乃果「えぇ~!? 1時間も開始遅れるんですか!?」

 開始時間の延期。それはこれから予定のある穂乃果にとってかなり厳しいものになった。

 

 しかし、こう判断した先生側の考えも残念ながらわかってしまう。

先生「仕方ないだろ……。この調子じゃ」

 雪のせいで交通機関のストップまたは遅延が発生してしまっているこの状況で参加者が遅れてしまっているそう。学校説明会が入試試験前これが最後ということもあり、参加希望者は極力招き入れたいというのがあるみたいだ。

 でもそれは、これからもう少しの時間この音ノ木坂学院に生徒会が拘束されることが決定した判断だった。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果side

 

 入学者説明会が遅れて始まるということを知った穂乃果は、空也と海未とことりが説明会の参加者を誘導してるときに会場にいる絵里たちに電話をかけた。

穂乃果「……なんだって」

 大雪の影響で説明会の時間を遅らせる。遅れてくる人たちにとっては嬉しいことかもしれないけど、この後に大事なライブを控えている穂乃果たちにとっては致命的なものだった。

 

 でも天気という人の力ではどうしようもできない自然の力には抵抗することができない。

絵里『そう……。それは仕方ないわね』

 仕方のないこと。確かにそうなのだがなかなか割り切れるものでもなかった。それに、もしも間に合わなかったらと考えると焦りというのもの出てくる。

 

 穂乃果たちの感情は理事長や先生たちもわかっているみたいで、説明会に出なくてもいいと言ってくれた。でも、生徒会の役員が話す演目もあるこの説明会に出席しないわけも行かない。

穂乃果「理事長は説明会を欠席してもいいって言ってくれてるんだけどそういうわけにもいかないし」

 ジレンマ。そんな選択が穂乃果たちに課せられている。そんな中で選んだのが説明会に出席して何とかしてラブライブの会場に行くという何とも難しいものだった。

 

 その選択は生徒会長として本当に正しいことだった。それに少しでも間に合うと思っていなければできない選択。

絵里『わかったわ。私から事情を話して6人で進めておく』

 だから元生徒会長の絵里もその意見を尊重した。

 

 会場でのことは絵里が何とかしてくれる。その言葉を聞けただけでもなんとかできる気がしてきた。今は説明会を何とかしてやり遂げることが最優先だ。

穂乃果「お願いね」

 ずっと空也たちに入場案内をさせているわけにはいかない。だから穂乃果はそういって電話を切り、空也たちのもとに向かう。少しでも早く説明会を再開させるために。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里side

 

 穂乃果の連絡を受けるともうすでに集まっている全員に向かって絵里がそう提案する。

絵里「ひとまず、控室に向かいましょう」

 今は外で会場の下見をしている。だけど、雪が降って寒いこの状況で長居をしてしまえばもしもということが考えられる。

 

 そんな中我先にとステージを見に行ったであろうにこの叫び声が響き渡る。

にこ「うわぁーーー!」

 それは悲鳴というよりも驚きから出た声。

 

 何事かと思った絵里もみんなを引き連れてにこのもとに向かう。

絵里「にこ? え?」

 そして、そこにはこの日のために建てられ、広く大きなステージがあった。ステージだけにとどまらず、その奥にはイルミネーションとして使うであろうアーチがいくつも並んでいた。今まで踊ったステージの中で一番大きかったのはファッションショーで踊ったステージ。今回のステージはそのステージよりも小さいが、ライブをするための専用のステージだと考えるととても6人だけの未完成なパフォーマンスは出来ない大きなステージに絵里たちは圧倒されていた。

 

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空也side

 

 雪の影響で遅れてしまっている人に対して案内をしている生徒会の空也たちは元気ながらもどこか焦っているように感じられた。

穂乃果「こんにちはー! 足元の悪い中ありがとうございま~す! すいません。1時間遅れての開始予定です」

 1時間の遅れ。それがいったいどれだけ影響が出てしまうのか。確実にぎりぎりの時間にライブ会場につくことになるだろう。観客なら少しだけ遅れたって問題はない。でも出演者である穂乃果たちには前もって会場に入り着替えや準備運動などをしないといけない。だから自然と焦りの色が見てくる。

 

 入場の案内をしている穂乃果の携帯の着信がなる。

空也「出てきていいぞ。まだ俺たちで何とかなるレベルだから」

 穂乃果が案内を優先して出ようとしなかったが今なら全然手が足りている状態だ。だから穂乃果に電話に出てもいいことを告げる空也。

 

 それを聞いた穂乃果は場所から少しだけ離れ通話を始める。

穂乃果「ごめんね。何度も何?」

 その瞬間電話をかけてきた人をしっかりと見たためわかる。絵里からの着信だった。さっきまで話していたのに何をかけなおす必要があるのだろうか。焦りが出ている穂乃果はかなり強めに何があったのかを尋ねる。

 

 絵里もこんなすぐ後にかけなおすことになるとは思っていなかったため、申し訳ない気持ちにはなる。が……

絵里『ごめんなさい。今会場の前に着いたところなんだけど……』

 今絵里の目の前にはあるのはライブをするステージだ。その大きさを見てしまった絵里は電話をかけずにはいられなかったのだ。

 

 ライブをするためだけの今回だけのものだと見ているとそのステージにかかっている運営の本気具合がうかがえる。

 

花陽『すごい……。ここが最終予選のステージ』

 

 中途半端な状態では決してできない。

 

凛『大きいにゃー』

 

 そんなことが本能的にわかってしまう。そんな会場が完成していた。

 

 圧倒的な迫力を醸し出しているこの会場に、ラブライブなら当然だと想定していたにこは、驚きながらもなんとか完全には圧倒されていなかった。

 

にこ『当たり前でしょ。ラブライブの最終予選なんだから、なにビビってんのよ……』

 

 だけどその迫力、そしてライブが始まった時のことを考えれば今以上に圧倒されてしまうだろう。

 

真姫『すごい数のお客さんになりそうね』

 

 外でやるライブだ。入場の制限はかなり緩いと言ってもいい。このままでは確実に多くの人が見に来る。

 

 そんな会場に全員がそろっていない状況で立てるだろうか。

 

希『これは9人揃ってないと……』

 

 いや、それは無理だろう。立てなかった3人も後悔が残り、たった6人はステージからの景色に圧倒され最悪トラウマを植え付けられかねないこの状況。なんとしても9人でステージに立つ必要があった。

 

 それを穂乃果たちに伝える。どうしても9人でしないと意味がない。それを分かってもらうために。

絵里『とにかく、終わり次第こっちに急いで』

 最高のパフォーマンスをする以前の問題。全員集まってこそのステージに必ず集まれるように穂乃果にそう言った。

 

 絵里がそう言ってくるということは相当大きいステージなのだろう。そんなステージで踊れることを少しだけ楽しみになった穂乃果は必ず時間に間に合わせるようにと決意を固める。

穂乃果「うん!」

 絵里との電話をその言葉で切り、案内をしている空也たちのほうへ戻る。

 

 生徒会長として案内をしっかりと努めなくてはと思っていた穂乃果は3人に対して謝る。

穂乃果「ごめんごめん」

 確かに生徒会長はいろいろな仕事をしないといけない。

 

 でも、案内程度なら書記でも、会計でもできる。なら生徒会長は生徒会長にしかできないことをしたほうがいい。

ことり「来た人たちの案内終わったよ」

 それに穂乃果はμ'sのリーダーでもある。やらないといけないことは多いだろう。

 

 そして一番の問題なのがこれから来る参加者の案内。

海未「あとは遅れてこられる方への案内ですね」

 遅れてくるということはいつこの場所につくのかが分からない。近くにある秋葉原駅でも電車が遅れてしまってはいつ到着してくるのかすら分かるはずもなかった。

 

 じゃあ何をすればいいんだろうか?

穂乃果「うん!」

 元気に返事をする穂乃果も多分分かっていない。むしろ正解がないのだ。今は雪が降っていて交通機関が混乱している。だけどそれは人の手でどうにかできるほど小さな問題ではなかった。

 

 穂乃果たちはこの場所でずっと待機をするしかないと思っていたのだろう。穂乃果たちはこれから大事なことを控えている。そう行動をしてもらうことは都合のいいことだった。

空也「じゃあ俺は外行くから」

 でも、空也は違う。ステージに登らない。体力を使う仕事もほとんど残っていない。であれば少しでも今の現状をよくするために行動しなければならない。それがこの場所から会場に向かう時にも大事なことだから。

 

 この大雪の中、外に行くというのであればやることは1つだろう。遊ぶなんて選択肢はもうすでにない。それほどみんなは真剣なのだ。

ことり「もしかして雪かき?」

 そう。少しでも足場をよくして歩いてくる人たちがスムーズにやってこれるために雪かきをしようというのだ。もうすでに手伝える生徒たちが雪かきをやっているが少しでも手が増えれば作業も早く進む。

 

 それに、男子生徒が増えたとしても現状は少ない。雪かきは力仕事。男子生徒の手はかなり重要なものだろう。

空也「あぁ、せっかくの男手だ手伝える範囲は手伝わんとな」

 だから、空也は外に行く。

 

 ただ、それを聞いた穂乃果は空也だけに押し付けるのは悪いと思ったのか自分もと申し出てくる。

穂乃果「なら穂乃果も……」

 

 でも、雪かきは体力を筋力を持っていかれてしまうものだ。であれば、これから大事な負けることが許されないライブ会場に立つ穂乃果たちに雪かきという重労働をやらせるわけにはいかなかった。

空也「ダメだ。本番でお客さんの前に出る3人はここで体力温存しとけって」

 少しでも体力を温存しておかないといけない。無駄なところで無駄に消費してライブの瞬間に力を出せないなんて絶対に許されない。

 

 穂乃果にそう言い放った空也はそのあとの答えを聞かずに昇降口から外に出る。そこにはもうすでに雪かきをしているクラスメイトのヒデコ、フミコ、ミカの3人がいた。完全に雪かきをする格好。防寒着を着て雪かき用のスコップ。滑りづらいようにするためのスノーシューズ。がちがちの装備で雪かきをしていた。

空也「雪かきを手伝う。スコップくれ」

 そんな3人に道具を貸してほしいということを告げる。

 

 でも生徒会の人間がここにいる、しかも説明会で登壇する空也がいることに驚いていた。

ミカ「空也君!? こんなとこにいていいの?」

 穂乃果たちと一緒にいるものだと思っていたからその驚きはなおさら。

 

 ただ、大丈夫だから空也はここに来た。

空也「少しでも来れる人たちが安全になったほうがいいし。俺本番出ない。話す内容覚えてるし問題はない」

 空也は男子生徒の代表として説明会で話すことになっている。だけどその内容を覚えていればあとは本番になるまでやることはないのだ。だからこうして手伝いに来たというわけ。

 

 その空也の様子を見ていると見栄を張っているような感じも無理している感じもなかった。きっと本当に大丈夫だと思ってここにきているのだろう。

フミコ「じゃあはい。防寒着は?」

 だったら穂乃果たちのサポートにもなりえることだから快く了承する。でも空也の現在の格好はヒデコたちとは違い雪かきをする…・…いいや運動をする格好にはふさわしくないものだった。制服。当たり前かもしれないけど空也の格好は学校指定の制服を着ていた。

 

 でも、防寒着を着ているほど時間に余裕があるわけでもないし、自分に合わない服を着て作業が遅れるのは何としてでも避けなくてはいけない。

空也「いらないよ。鍛え方が違う」

 一時の寒さなんてガマンすればいい。今はとにかく未来のために行動をしないといけない。

 

 自信満々に言う空也のその言葉はある種のヒデコたちに対しての挑発に他ならない。

ヒデコ「言ってくれるね。じゃあ校門のほうお願いね。副会長さん」

 空也の言葉を聞いたヒデコたちの内心は『こき使ってやろ……』だったが、そんなことは空也は知らずに作業を始める。

 

 ここに来た時から最大限時働くと決めていた空也にとって道具がそろった以上作業しない道理はない。

空也「了解、じゃあやりますか!」

 空也は雪かきを体力を一定の数残すように雪かきを始めた。少しでも自分たちにとっていいことがあるようにと願って……。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里side

 

 控室のある建物に入った絵里たちは中から先ほど見たステージを見下ろしていた。

凛「わぁ~!」

 先ほど見ていた場所からは異なる角度。奥行きも上から見るとはっきりとわかってくるその大きなステージに凛は少しばかり興奮していた。

 

 ステージの全貌が分かる。本番に自分がどこで立つのかが明確にわかるその景色に凛だけではなく花陽も同じだった。

花陽「すごい! 今からここで歌うなんて」

 夢にまで見たラブライブが関係したステージに立てることがよほどうれしいのだ。

 

 それに深々と雪が舞うこの景色は……

凛「きれいだにゃ」

 都会のこの町にとって見てみればそれはとても幻想的で魅力的な光景だった。

 

 ただそれは景色の話。現実を見ればこのまま開催したところで予定の人数が集まるのかどうかは怪しかった。

真姫「本当にここがいっぱいになるの? この天気だし」

 交通機関は乱れ、大雪で徒歩や自転車の移動ですら困難。こんな状況で客が呼べるのか。真姫はそこが気になっていた。

 

 だけど、それに関しては問題がないみたい。

絵里「きっと大丈夫よ」

 今この面子をまとめている絵里がそう断言する。天気予報の状態を見ればこの後天気が回復するというし大丈夫だろうということが分かる。

 

 そして、それを後押しするかのように1人がつぶやく。

 

 前大会の王者A-RISEのリーダー。綺羅ツバサがμ'sの前にやってきたと思ったらそんなことを言う。

ツバサ「びっしり埋まるのは間違いないわ」

 確かな自信。まるで自分たちを見に来る人が一定数いることを分かっているかのように言い放つツバサ。だけどそれは翼だけではなかった。

 

 ツバサ同様の自信を持っているのはA-RISE全体。そう感じるほど他の2人も会場に人が集まると信じて疑わなかった。

あんじゅ「完全にフルハウス。最終予選にふさわしいステージになりそうね」

 しかも、あんじゅはそれだけではなく必ず満員になると言った。最終予選東京地区のこのステージは確かにこの催しものに規模、そしてA-RISEの言う通りになるとしたら客入りもふさわしいものになるだろう。

 

 突然の登場に今までファンとして憧れていたにこの背筋が伸びる。

にこ「あっA-RISE……」

 

 でも、その行動は今となってはあまりいいものではない。

真姫「ダメよ。もう対等、ライバルなんだから」

 憧れというものは勝負ごとになると邪魔になる。憧れているからそれ以上でいてはならないという無意識がセーブをかけてしまうからだ。

 

 勿論それはにこにもわかっている。だから、すぐに踏みとどまることができた。憧れていた存在と対等に並ぶことができたという喜びもあるが、何よりも……

にこ「うん……!」

 勝ちたいという想いが、願いがにこをそうさせた。

 

 そう話していたA-RISEだがμ'sが現状6人しかいないことに気が付いた。

英玲奈「どうやら全員揃ってないようだが?」

 全員そろっていない。この大切な日に。本来であればこうしてメンバーがいるのなら全員いるようなものだけどいない。μ'sのことをライバルだとA-RISEが思っているからこその心配だろう。

 

 でも来ないというわけではない。正しくはまだ来ていないであって敵前逃亡をしたわけではないのだ。

絵里「あ……。えぇ、穂乃果達は学校の用事があって遅れています。本番までには何とか」

 スクールアイドルとして当然の理由。学校生活をしているただの女子高生である穂乃果たちにももちろん学校での仕事もある。だからこそ焦りがあるのだが、そこはどうにかするしかない。

 

 本番までには間に合うということを聞いたツバサは少しだけ安心した表情を見せる。

ツバサ「そう。じゃあ穂乃果さんたちにも伝えて。今日のライブでこの先の運命は決まる、お互いベストを尽くしましょう。……でも、私たちは負けない」

 そして絵里たちとすれ違うと少しだけ歩みを止めて振り向かずにそう宣言した。これが王者の宣戦布告というものだ。絶対的な自信からの信頼。負けることなんてみじんも考えていないプライドのかたまり。でもそれがA-RISEの強さ。堂々と見せつけられてしまえば不安になってしまう。そんな宣言だった。

 

 ツバサはそういった後再び歩みをはじめ、それを追うように笑顔のままあんじゅと英玲奈はついていく。

凛「穂乃果ちゃん……」

 圧倒的な自信を見せつけられた凛はここにはいない穂乃果たちが間に合うのかという不安にかられる。早く……早くこの会場に来てほしいと願いを込めながら凛は空にそう呟くのであった。

 

 




穂乃果たちに今後起きかねないことが告げられました。彼女たちも一人の少女。自分の死が見えて平気でいられるわけがありません。そんな状況でどう行動していくのかがこれから大事になってきます。

ですので次回以降をお楽しみに! 物語の山場はもう少しです!

新しくお気に入り登録をしてくださったbiscoさんありがとうございます!

次回『会場に向けて』

それでは、次回もお楽しみに!



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