ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

今回から『心のメロディ』回になりますね。そしてこの作品の重要な分岐点でもあります。覚えている方もいらっしゃると思いますが、この日に何が起こるのかはお楽しみに。

それでは、今回もこの物語を楽しんでいってください!


第8章 予知夢の行方
予備予選当日


 新曲ができ練習を重ねてきたμ's達を東京地区最終予選当日という日がむかえた。その時の東京は過去最大級の記録的な大雪に覆われた。

 

穂乃果side

 

 穂乃果の家でもある『穂むら』から妹の雪穂が出てくる。希の家にいた時に見えた雪とは比べ物にならないくらい空から雪がしんしんと降ってくる光景を見て雪穂は少しだけ感動していた。

雪穂「うわ~……、真っ白! すごいね~」

 一面雪景色というのは雪かきされている現状では言うことができないが例年積もったとしてもうっすらとしか残らないのに対して足が簡単に埋まるほどの積雪量に柄にもなくテンションが上がってしまう雪穂。

 

 そんな雪穂に今まで頑張って雪かきをしていた母親がある人ことを言い放つ。

高坂ママ「もぅ~。見てるだけじゃなくて手伝ってよ」

 今まで以上に雪が降っているのであれば当然人でだってほしい。娘である雪穂にそれを頼むのは何もおかしいことはない。

 

 だが、雪穂はそんな母親に目を合わさずに気になっていることを尋ねる。

雪穂「お姉ちゃんは?」

 雪かきがしたくないということもあると思うが、単純に今日が大事な日である穂乃果の状況も聞いておきたかったのだろう。

 

 穂乃果の部屋に行ったわけではないと思うが母親は強しというのがここで発揮されるのか、推測ながらも穂乃果の状況を話す。

高坂ママ「まだ寝てるんじゃない? 昨夜も早かったわよ。しっかり休んで体力整えておくって言ってたから」

 いつもは夜遅くまで起きていて、起きるのも遅くなるというのが穂乃果の生活習慣だった。でも今日という日を大事だと思っているから健康的な生活リズムのような行動をしていたみたいだ。受験勉強で忙しい雪穂は食事が終わるなり自分の部屋で勉強していたから穂乃果と母親とのやり取りは聴いていなかったみたい。雪穂も雪穂でやるべきことをしっかりとやっているみたいだ。

 

 そんな話を聞いた雪穂はあまりにも普段とかけ離れている穂乃果の行動に、当然と言うべきなのか驚きをあらわにする。

雪穂「おぉ~! お姉ちゃんらしくない」

 早くに寝るなんて穂乃果に行動上ありえない。楽しいことをするときはいつも早起きするのは子供のころから同じだけど、その前日は楽しみで眠れないなんてことがあったからなおさら。

 

 しかしその穂乃果はようやく目を覚ましたようだが、本当に今ちょうどという感じでまだ目が開ききっていなかった。

穂乃果「うぅ~……。寒い……。あと5分だけ……」

 まだ眠い。本当にそう感じてしまうほど穂乃果は寝ぼけている。

 

 穂乃果はもう一度夢の世界へと旅立つために自身のベットに横になって意識が飛ぶのを待とうとするが、それは窓の外から聞こえてくる声によって叶わぬ夢となってしまう。

雪穂「お姉ちゃん!」

 雪穂がタイミングよく穂乃果のことを呼んだのだ。きっとシルエットで穂乃果が起きたことはわかったのだろうが……。

 

 外から聞こえるその声に穂乃果はびっくりして窓を勢いよく開ける。

雪穂「今2度寝しようとしたでしょ」

 そうすると雪穂が大声を上げた理由が分かった。確かに雪穂の言うように穂乃果は二度寝をしようとしていた。姉妹のシンパシーとでもいうのか穂乃果の普通の行動なら雪穂にはわかってしまうようだ。

 

 ただ、それを素直に認めてしまうのは姉としてどうしたものかという葛藤が穂乃果の中であったため、

穂乃果「してない!」

 雪穂の言うことに強く反論をする。

 

 が、雪穂には根拠はないものの確信に近い自信があったためそれが嘘であることはすぐにわかった。

雪穂「嘘だ! なんとなくわかるもん」

 そう。本当に根拠がないのだ。でもわかる。長い時間を一緒に過ごしていろいろと面倒を見てきたから。

 

 そしてその姉が今日、大事な日を迎えている。

雪穂「……いよいよ今日だね。最終予選」

 だから頑張ってほしいという想いが雪穂の胸の中にあった。出場しないのに雪穂もなんだか感慨深いとそう思っているようだ。

 

 今日がラブライブに優勝できる可能性が残るか消えるのかという大事な日。今日が終わってしまえば絵里たち3年生と活動できるのも今日で終わりになってしまう。何より結果が残せない。

穂乃果「うん!」

 でも負けるかもなんて考えは穂乃果にはない。今日という大事な日をみんなと楽しもうという気持ちだけが穂乃果を笑顔にさせる。

 

 だからこそ、見ている雪穂も心配はない。安心して頑張れのエールを送ることができる。

雪穂「頑張ってね。うぅ~寒い……。もう無理~」

 ……ただ、最後は寒さに負けて家の中に入っていったがいつも通りの雪穂のエールは穂乃果の中にあたたかく根付いたのだった。

 

 するとちょうどそこへ空也と海未とことりがやってきた。音ノ木坂の制服に身を包みコートを羽織っている3人が。その3人はそろって笑顔を浮かべている。緊張はしているのかもしれないけど、今日を楽しみにしていたのはμ's全員が同じだ。だから、こわばった表情よりも笑顔に自然となる。

 

 やってくる3人を見た穂乃果は、穂乃果はふいに空を見てあることを呟く。

穂乃果「雪……神様の悪戯かな」

 新曲が、この日に歌ってほしいと言っているようで、そしてそれを空が願っているようにそう思ってしまうほどこのタイミングは運命のように感じていた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里side

 

 その頃絵里の家では起きた絵里が最終予選の階乗に行く準備をしていた。

 

 そんな絵里のもとに今日という大事な日を自分も感じているかのようなテンションで妹の亜里沙はやってくる。

亜里沙「お姉ちゃん!」

 穂乃果の妹である雪穂と同じで姉が大事な舞台に立つということは純粋にうれしいことだし、μ'sという大好きなグループのライブが見ることができるのであれば興奮もするだろう。それにちょっとだけ慌てているというようにも見える。

 

 でもそんな亜里沙に向けて言った絵里の言葉には覇気がこもっていなかった。

絵里「亜里沙……おはよう」

 まだ起きたばかりであるから仕方ないと言えば仕方ないのだが、それでもいつもの絵里ではなかったのは明白だ。

 

 しかも、亜里沙にとって今こうして絵里が自分の部屋で身支度をしているのがよくわかっていなかった。

亜里沙「おはようじゃないよ。行かなくていいの!? 穂乃果さんたちはもう出たって雪穂が」

 大事な大会に遅刻してはならない。それは一番やってはいけないことだから。だから急がなくていいのかと亜里沙は絵里に尋ねる。

 

 ただ、亜里沙が心配していることはまったくもって問題がなかった。

絵里「穂乃果達は学校説明会で挨拶しなきゃいけないから、一度学校に行ってそれから会場に来るのよ。だから大丈夫」

 それは穂乃果たちにはμ'sとしてではなく、音ノ木坂学院生徒会長としての仕事があるため早く家を出た。しかし、生徒会ではない他の6人はこれからゆっくりと最終予選の階乗に向かうのだ。

 

 だから安心して絵里は一度伸びをして、白く輝く外を見つめていた。

絵里「でも、雪がこんなに積もるなんて困ったものね」

 そこには当然雪が降り積もり、どこかロシアの懐かしさを感じる。バレエをやってきたのはロシアでのことを思い出しているのか絵里の瞳には少しの恐怖感が見えていた。

 

 ロシアでは想うような結果を出せなかった過去がある絵里には苦い思い出。絵里の体がいつもより硬いことに亜里沙が気が付いた。

亜里沙「……お姉ちゃん、緊張してる?」

 それは確実に緊張しているように見えて、

 

 そう言われた絵里は突然のことで驚く。今まで普段と変わらないように行動していたのになぜわかったのかと言いたそうにしている。

絵里「え?」

 

 でも、亜里沙にはわかるのだ。ロシアにいた時のことも知っていて、どんな顔で会場に向かっていたのかということを。

亜里沙「バレエのコンクールの時と同じ顔」

 それは今のように緊張していることが目に見えてわかり、体がいつもより硬い。だから亜里沙は気が付いたのだ。妹は姉のことをちゃんとみているのだから。

 

 言われて初めて気が付く。自分が失敗してしまったときと同じようなことが起こっていることに。

絵里「…………! そうかしら……」

 暗い過去、もし今の状況が同じだったとしてこのまま行ってしまえばまた失敗してしまうんじゃないかという最悪の考えが脳裏をよぎる。

 

 しかし、亜里沙は落ち着いた様子で優しく絵里の手を握る。

亜里沙「大丈夫。みんなお姉ちゃんの味方だよ!」

 そこからは亜里沙の体温が伝わってきてだんだんと絵里の心が癒されていく。亜里沙の言葉もこの暖かさもが絵里をいつもの調子へと戻してくれる。

 

 支えてくれた亜里沙には感謝してもしきれないだろう。さっきのままで臨んでいたらきっと失敗してしまう。

絵里「亜里沙……」

 いつまでも子供だと思っていた妹の亜里沙が、自分を支えられるように成長した姿を見て絵里は感慨深い気持ちになった。

 

 でも、亜里沙は亜里沙のままで、その根本にあるのは楽しく頑張っているμ'sの姿が見たいというただただ単純な子供のお願い。

亜里沙「応援いくからね」

 だからこそ、その言葉は心からの出てくるものでなおさらそれが絵里の胸をあたたかく包み込んだ。

 

 外は雪が降っているというのに今の絵里は寒さなんて感じないくらいあたたかかった。

絵里「ありがとう」

 こんな最高のコンディションは今まで経験したことがない。今までで最高だと思ったことがちっぽけに見えるくらい負ける気がしない。

 

 そんなやり取りを亜里沙と絵里がしていると唐突にインターホンが鳴る。

 朝早く、雪が降っているこの時間に尋ねてきたのは誰だろうと絵里は思ったが、なんとなく着た人物の見当がついた。彼女を迎えるために絵里は玄関に向かい外にいるであろう人に話しかける。

絵里「希」

 そう、やってきたのは今まで生徒会として一緒にいて親友というべき存在の希だった。

 

 玄関から顔を出している絵里に笑顔で挨拶をする希。

希「おはよう。まだ着替えてなかったん?」

 だけど、その視線に入ってくる絵里の格好は外に出るには寒くて合わないだろうという服装、言うなれば部屋着で出てきたため準備ができていなかったのかと思っていた。

 

 希に言われ思い出したかのように自分の格好を見てみる。出かける準備はしていたものの、自分の服装に関しては全く気にしていなかったため忘れていたみたいだ。

絵里「あ! すぐ用意してくるわ」

 部屋着のまま自信満々に出てしまったため少しだけ恥ずかしさを感じた絵里は扉で今の服装を隠し、そのまま部屋の中に向かおうとする。

 

 だけどなんとなく、抜けている絵里にしては抜けすぎていると思ったのか、

希「えりち。もしかして、緊張してる?」

 希は絵里の状態に関して尋ねてみる。

 

 だけどそれはさっきまでの話。

絵里「……。さっきまでね」

 今は成長した妹からもらったあたたかさと他の9人の存在がある絵里には緊張はなかった。ただただ楽しむことだけを意識しているから。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛side

 

 凛と花陽は最終予選の会場に向かおうとしていた。ただし、この2人でだけではなくもう一人の同い年の赤髪の少女と共にだが。

凛「寒いにゃー! これで本当にライブできるの~?」

 今は真姫の家の前で真姫のことを外で待っている凛と花陽。雪が降ってコートを着込んでいてもいつも以上に寒さを感じてしまう。今の2人の服装は音ノ木坂の制服にコートを羽織っているだけ。つまり、下がスカートの状態。素足が出て、男声が感じている以上の寒さを凛と花陽は今感じている。

 

 しかし慣れというのもあるのか寒がっている凛とは違い花陽はいつも通り雰囲気のまま凛に話す。

花陽「予定通りあるみたいだよ」

 凛は本当に猫の要素があるのではないかと思えてくるほど寒がっているが、雪が今降っていたとしてもラブライブの最終予選は今日確実に行われるのだ。

 

 花陽の言った情報を聞いた凛は花陽のほうを向き目を見開いて驚く。

凛「えぇ~!」

 気温が一桁前半の状態で雪も降っている。学校であったら休校になる可能性だってあるほどの積雪。でもやるということを聞いてびっくりしないわけもないだろう。

 

 でも、何も考えずに運営も今日の開催を決めたわけではない。天気予報から、開催時間の状況を予想し、それまでに出場者が到着できるかを考慮したうえでできると判断した。

花陽「昼から晴れる予報だし、大丈夫じゃないかって」

 という情報が公式サイトより掲載されていたことを凛に告げる。

 

 が、凛はその事ではどうやら不服のようだった。

凛「寒いだけでもつらいにゃー!」

 ありがちのブーイング。それが猫の凛だったらなおさらだろう。ぴょんぴょんとジャンプしながら抗議する。

 

 そんな凛の言葉は確かに本音なのだろう。それは花陽も同じ。こういう状況でないのならの話になるが。

花陽「でも凛ちゃん。がんばろうね」

 そう。今日は今後の未来をかけた大舞台に立つ日。最終予選。ここから勝ち上がれるグループは1つの身のこの状況でトップスクールのA-RISEに勝たないとこの先の未来はない。でもそんなことに緊張している花陽たちではなかった。花陽の言葉通り、ただただ今日を頑張ろうと、楽しもうとしている。

 

 それはさんざん文句を言っていた凛も同じ。

凛「もちろんにゃ!」

 傘を持った手に力を入れる。やる気が満ち溢れていた。

 

 そこへがチャリとドアが開き、真姫がやってくる。

真姫「お待たせ」

 服装は花陽たちと同じで制服の上にコートを着ていた。でも、今まで室内にいた真姫は外にいた花陽たちとは違いそこまで少しだけあたたかそうにしていた。そして手に持っているバスケットを大事そうにしながら花陽たちのもとにやってくる。

 

 今までずっと外で待っていた凛はようやく来たお姫様に向かって、

凛「遅いよ~」

 と身体をくねくねさせながらブーイングを入れる。

 

 しかし、そんな凛の言葉を華麗に受け流すかの如く真姫は話を続ける。

真姫「だから言ったでしょ。待っててくれなくていいって」

 確かに寒いとわかっているのに外でずっと待ってるように言うような真姫ではない。だから別にあたたかいところに至ってよかった。

 

 そんな真姫の言葉を受け流すのではなくスルーして話を進めるのが凛だ。どんな行動をしたのかというと真姫の頬を自身の両手で触る。ずっと外で待っていた凛の手は……

真姫「冷たっ!」

 冷たくなっていた。だからこそあたたかいところにいた真姫には余計に冷たく感じる。

 

 こんな小さなことでも真姫にとっては十分なものになった。

凛「待たせた罰だよ!」

 なぜなら暖房が聞いた家から出てきた真姫の顔は当然ながらあたたかい。そこに今まで外にいた凛の手のひらが当たったら高いところから急に落とされることで温度差が発生し余計冷たくなってしまうからだ。こんな些細なことでも今は十分すぎる罰になった。

 

 だんだんと冷たくなってくる頬の感覚と顔を触られているということで恥ずかしくなったのか頬を赤らめながら反論をする。

真姫「うぅ~、放しなさいよもう! しょうがないでしょ」

 準備に手間取ったのか遅れた理由を真姫は話そうとする。真姫が反論し終わると同時に凛は真姫の顔から手を離してどんなことが話されるのかを待った。

 

 それは花陽も同じで真姫が遅れる理由となったことがどんなことなのか少しだけ気になっていた。

花陽「うん?」

 しっかりとしている真姫だ。寝坊なんて単純な理由ではないだろう。では何が理由だったのかが気になってくる。

 

 花陽が首をかしげるのと同時に凛も同じくして花陽が首を曲げた方向とは逆に首を倒す。

凛「どうしたの?」

 花陽と横に並んで頭が当たらないようにして首をかしげる姿はまるで双子のような印象を覚える。

 

 そんな2人に対して真姫は手に持っていたバスケットを前に突き出した。それが遅れた理由であるかのように。

真姫「これ! お母さんがみんなにって」

 真姫の言葉からきっと真姫のお母さんが願掛けにみんなの分を作ってくれたのだろう。10人分を急に準備するのは確かに大変だ。だから遅れてしまったのだろう。

 ちなみに、夜に願掛けに勝つなどの脂っぽいものを食べると本番当日に胃の調子が悪くなってしまい本当の力が発揮できない可能性がでいてしまうため避けたほうがいい。

 

 ただし、真姫から出されたものが何なのかよくわからない花陽はその中に入っているものについて話を聞く。

花陽「これは?」

 バスケットには蓋がしてあるため中を覗き込むことはできない。

 

 花陽に聞かれた真姫はそのバスケットの中身のことを告げる。少しだけ恥ずかしそうにしているのはちょっとだけ照れくささがあったからだろう。

真姫「カツサンドよ!」

 願掛けとして最もメジャーなもの。勝つをかけたことから大事な日に食べることにしている人も少ないくないだろう。しかもサンドイッチにしていることでその意味は"勝つ三度"となる。μ'sが勝たないといけないのは3グループ。A-RISEだけではないのだ。だから3回……とは違うが、3度勝たないとμ'sには次がない。そのことをしっかりと考えたうえでの願掛け兼エールなのだろう。

 

 その真姫の母親からの差し入れについて聞いた花陽と凛は2人で顔を見合わせながら笑顔になった。真姫は、少しだけ恥ずかしそうにしてほっぺを膨らませていた。どうやら本当に恥ずかしかったみたいだ。

 

 とにもかくにもこれで1年生の3人が合流した。あとは現地で3年生と合流するだけだ。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にこside

 

 最終予選当日の朝、にこは朝早くに出ていく母親の代わりに他の妹たちに朝ご飯を作っていた。

ここあ「にっこにっこにー」

 その後ろでこれから大事な舞台に立つ姉のにこに対してエールを送るようにいつもの『にっこにっこにー』をこころとここあはしていた。

こころ「にっこにっこにー」

 

 それにつられ本家であるにこが2人に対して指導するかのように料理の手を止めて、

にこ「にっこにっこにー」

 いつもと変わらない笑顔で披露する。

 

 にこの本物を見たこころたちは見れたことに対して興奮した様子でいた。

ここあ「わぁ~、やっぱり本物は違うね」

 

 姉であるにこに対して尊敬の念を抱いている2人から見るとにこのこの『にっこにっこにー』はとても重大なものであったと言える。

こころ「えぇ。さぁ、もう一度お姉さまにエールを」

 

ここあ「うん」

 本物を見れてうれしくなったこころとここあは楽しそうに笑顔のまま連続でエールを送るようにしていた。

 

 一回一回でにこには十分伝わっている。本当に応援してくれている大事な妹たちの想いを。

にこ「ありがとう! 絶対最終予選突破するからね」

 だから姉として、2人の考えている最高のアイドル姿を見せてあげるためににこはより頑張ることを決めた。

 

 最終初戦を突破するのはこの2人にしてみれば当たり前のこと。

こころ「そうですよね。お姉さまがいてのμ'sですからね」

 だってそれはにこがずっとすべてにおいてナンバー1のアイドルだから。疑うことのない純粋な信頼がそこにはあった。

ここあ「一緒になったとはいってもお姉ちゃんがセンターなんでしょ?」

 それはここあも同じで、姉の活躍を存分に楽しみにしているのがその言葉から見て取れた。

 

 ただ、実際にセンターとして真ん中で歌うかと言ったらそれは事実ではないのかもしれない。

にこ「とっ当然でしょ。私がいないとμ'sは始まらないんだから」

 明らかに動揺した様子で、でも自信満々な表情は崩さずに……。

 

 ただにこがそう言い切った瞬間、虎太郎が思いっきりベランダの窓を開ける。

にこ「虎太郎!?」

 突如開かれる窓の音のほうにいる一番下の弟虎太郎のことを3人が見ている。にこは驚いた様子で、

 

 ここあは急に暴れたと思ったのか注意するようにして、

ここあ「静かにしなよ!」

 こころは静かに事の成り行きを見守っていた。

 

 そんな中で虎太郎がまた口を開く。あまり言葉を発しない虎太郎だが、話すときはしっかりと話す。ただ、それが聞き手に伝わるかと言ったら伝わらないときがあるのだが今回はその例に当てはまらずにしっかりと聞き取ることができた。その言葉とは……

虎太郎「できた……」

 だった。何かを作っていたのか雪が降る外にずっといた虎太郎は鼻水を垂らしながらそう言っていた。

 

 何かを作ったのか気になったにこたちは虎太郎がいるベランダのほうに移動した。

にこ「え?」

 今は何を作ったのかよくわかっていない。雪が降っているからただの雪だるまか、それとも雪玉か。そんな気がしたけど真剣な虎太郎の瞳からはただの遊びだけのものとは思えなかった。

 

 ベランダにあったもの。それは虎太郎の作った9つの雪だるまが手すりに、あと1つの雪だるまが窓の近くに作られていた。ツインテールをしている雪ダルマやポニーテール、サイドポニー。独特な髪形をしている者やロングのストレートヘアーやショートヘアーのものと明らかにμ'sをイメージしたものと窓際にある9人を見守っているかのようなやさしい目線で見ているのが空也なのだろう。

 

 虎太郎には心のどこかでしっかりと理解していたみたいだ。μ'sの中ににこがいるのではなく、にこがいて他のみんながいてμ'sなのだということに。

にこ「これって……」

 それが伝わってくる虎太郎が作った10体の雪だるま。

 

 やる気のないようなだらけた声だけど虎太郎が何を作ったのか明確に発言する。

虎太郎「μ's~」

 にこのことしか見てなかった虎太郎はあの日以来10人のことを見るようになっていたみたいでμ'sに引かれていたのだろう。

 

 にこだけのことを応援しているのではなくしっかりみんなのことも応援してくれているということを知って、にこは嬉しくなった。

にこ「ありがとう」

 だって今までは自分のことだけを応援してくれていただけなのだ。昔のにこだったらそれで満足していたのかもしれない。だけど、μ'sと一緒に歩いていくと決めた今、自分一人だけ応援を受けるというより、みんなと一緒に応援してもらえることが何よりうれしく思えた。

 

 最後に虎太郎は今一番言いたかったことを言葉として外に出す。

虎太郎「頑張れ~」

 頑張ってほしいと思っているのは雪だるまを見れば伝わってくるけど心から、純粋な気持ちを持って口から放たれるその言葉はストンとにこの胸に自然と落ちてきた。

 

 もう何も迷うことはない。ただの矢澤にことしてではなくμ'sのにことして答える。

にこ「うん。お母さんに会場に連れてきてもらいなさい。私がセンターで思いっきり歌うから」

 にこはセンターで歌うとそう宣言した。

 

 その言葉に後ろにいるこころとここあも自分のことのように飛んで喜んでいた。

こころ「わぁ~」

 

ここあ「本当!?」

 大事な姉が一番目立つところに立つと聞いたらそれは嬉しくなるだろう。

 

 さっきは少しだけ言いよどんでいたのには理由がある。にこはこころとここあが思っているようなセンターでは歌えない。でも、μ'sだからにこの言った言葉が嘘にはならない。それはなぜか……

にこ「えぇ、だってμ'sは全員がセンターだから」

 リーダーを決めようとしたときに穂乃果が言ったこと。みんながセンター。目立つとか目立たないとかそういうことじゃなくてμ'sとしてステージに立つ。だからにこは自信をもってそう答えるのだ。

 

 にこがそう3人にささやくかのようにしているとインターフォンがなる。突然の来訪者を確認するために妹たち3人を家の中に入れ出てくる。

希「にこっち。おはよう」

 そこにいたのは希と絵里の2人だった。

 

 なんでここに来たのかわからないにこは2人に対して聞いてみる。

にこ「なんであなた達が来るのよ」

 にこの記憶が確かならみんなで行くということにはなっていなかったはず。現地集合ということだけを決めていたのに希と絵里はにこの家にやってきた。だから理由が分からないのだ。

 

 とりあえず準備ができていないにこは質問の答えを待たずに扉を閉めようとする。が希にその行動が予測されていたのか足を入れられて閉めることはできなかった。

絵里「希がね。3人で行きたいって」

 そんな行動をしている希の代わりに絵里がここに来るまでの経緯についてを説明する。言われてみればそうだ。今日、負けるつもりはさらさらないが今日で終わってしまえば3年生は活動を続けることは難しいだろう。

 

 絵里の言ったことと、閉められなかったドアのこと。2重の意味でにこは驚いていた。

にこ「なんで!?」

 確かに活動が最後になるかもしれないけどあまりに急すぎて状況整理が追い付かないみたいだ。

 

 でも、発言したと言われた希は意外にもケロッとしていた。

希「うちやないよ。カードがね、一度くらい3人で行かないと後悔が残るかもしれないって」

 そして希はタロットカードを取り出し、にこに向かってそう告げる。確かに後悔を楽しいことで上書きできるような選択を希は取ったのだ。

 

 いつもの調子の希。相変わらずのその姿を見てにこはどうにかいつもの調子を取り戻した

にこ「何よそれ」

 少しだけ照れくさいのかほほをわずかに上気させていた。でもどこかにこは嬉しそうにしていた。

 

 そんなにことは裏腹に希は照れ隠しとしてタロットカードを使う時がある。

絵里「素直じゃないでしょ?」

 だからこそ、希に対して絵里が言えることだった。絶対に望みがしたいことなのだ。これは。

 

 でもそれは絵里も同じ。前もって言っておけばよかったのに今日提案されただけでついてくるのなら最初からそのつもりであったかもしれない。

にこ「絵里もね」

 だからまるで他人事であるかのように語っていた絵里に対してもにこは同じように想っていた。

 

 ただにこが何でそう思ったのかよく理解できていない絵里は、

絵里「え?」

 頭上にクエスチョンマークを浮かべていた。

 

 そのあとにこは家を出る準備をするために家に入ろうとするが少しだけ止まって、

にこ「待ってて。すぐ準備するわ。……寒いから、中入ってなさいよ」

 恥ずかしそう声を出して絵里と希の2人を家の中に招き入れたのだった。

 

 これでにこと絵里たちは合流し、あとは現地にて1年生と合流するだけだ。

 

 今日はまだ始まったばかり。最終予選本番まであと半日……。そのあとにこれからの運命が決まる。

 

 




遂に始まってしまいました。今作の一番の難所というべき場面です。これから先、何かが起きます。それはこの話をしっかりと読んでいればしっかりとわかります。

次回はその答え合わせということで、穂乃果たちと一緒にどんなことが起こるのかわかります。

次回『宣戦布告』

それでは、次回もお楽しみに!



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