ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~ 作:そらなり
前回、藍斗にアドバイスをもらった希。一体どんな選択をするのでしょうか?
それでは、今回も後悔の少ない選択をした少女と違和感を感じてどうしても知りたいと思っている少女の物語をご覧ください!
空也side
時は過ぎ去り、日曜日。最初の予定通り空也の家にμ's全員が集合していた。
みんなはラブソングの歌詞に参考になるように考えていた。
希「ん~……」
希は経験がない恋に関してなかなかアイディアが出ないで悩んでいる。
そんな中穂乃果が立ち上がり閉じた瞳を勢いよく開いてそのまま話す。
穂乃果「……! 好きだ! 愛してる!」
刹那、穂乃果の言葉にどう反応していいのか全員が分からずただの沈黙がリビングの中を支配する。
その沈黙が恥ずかしかったのか立ち上がっていた穂乃果は急にしゃがみこみ頭を抱えていた。
穂乃果「うわ~……。こんなんじゃないよね……」
女の子がする告白としてはどこか違うように感じる。それは穂乃果自身も感じていたのだろう。頬を赤くして恥じらいの様子を見せている。前回に空也と告白シチュエーションをしたというのにである。
でも、穂乃果がやったことが間違いではない。
絵里「まぁ、間違ってはないわね」
だから絵里は穂乃果のフォローをする。本当に間違ってはないから。
ただ、正しかったかというとそうではない。
穂乃果「ラブソングって難しんだね~」
ここまでいろんなことをやってもなかなかいいアイディアが出ないこの状況で難しさを穂乃果は感じていた。
まぁ、ただそれはラブソングに限ったことではない。言葉をメインにやることは全部が難しい。それは普通の作詞だって、作家としての活動だってそうだ。
空也「っていうか作詞そのものが基本的に難しいんだよ」
言葉に想いをのせて、聞き手に、読者にどういう風に伝えるのか。それは使う言葉、表現方法で変わってくる。同じ言葉を使った歌であったとしてもその言葉を使う場所、使い方次第では全く別のメッセージになることだってある。
そう考えたうえでラブソングは難しいということが分かる。なぜならそれは……、
絵里「ラブソングは結局のところ、好きという気持ちをどう表現するかだから、ストレートな穂乃果には難しいかもね」
どういう風に伝えるのかということをメインにおいているからだ。伝えかた。言葉もそうだし表現方法も人の胸に来るようなものにしていかないとラブソングの共感が得られない。ラブソングというのは人が最もイメージのしやすい音楽。こんな恋、あんな恋愛をつづった歌だったり、みんなもこんな経験したよねと投げかけるようなものだって存在する。
それがみんなの心にするりと入ってくるからラブソングの印象が強くなるのだ。だから、そのレベルの詩を書けないとそもそも話にならない。
未だに恥ずかしがっている穂乃果に向けて今度はにこが声をかける。
にこ「ストレートというより、単純なだけよ」
でもそれは励ましの言葉ではなく、いつもの軽口だった。これもにこなりの優しさなのだろうか? それとも今自分のことを優位におこうとしての苦し紛れの言葉だったのか。
それに関してはどうしてもわからないが、わかっていることが1つだけ。
希「といってるにこっちも、ノート真っ白やん」
それはにこが何かを書こうとして広げているノートには1文字も書かれておらず、悩んでいる時間しかなかったということだ。
そこを指摘されたにこは急いでノートを閉じて、胸に抱える。
にこ「こっこれから書くのよ」
そして頬を紅潮させて、そっぽを向いた。誰がどう見ても意地になっているのは明白だ。一応恋愛経験というか、それらしいことを経験しているはずなのだがなかなか言葉にならないのだろう。
みんなの考えが行き詰まると、ことりが青い袋に入ったブルーレイを取り出す。
ことり「まぁまぁ。じゃあ参考に、恋愛映画も見てみない?」
そこにはかなり昔に作られた色のついていない映画のタイトルがあった。
恋愛映画。その恋が実ったとしても実らなかったとしても2人の恋愛事情を描いた作品。見る人は見るし、見ない人はとことん見ないジャンルで好みが完全に分かれるものだった。
穂乃果「恋愛映画か……」
だが、ラブソングを書くのに対して一番手っ取り早いものでもある。実際の恋愛模様が客観的に見れるのだこんなに都合のいいものはないだろう。
ことりがみんなのために持ってきたそのブルーレイを見るために空也が行動をする。
空也「じゃあスクリーン出すから少し待ってて」
この部屋にはテレビがなくどうやって見るのかと思ったら空也がリモコンを操作した瞬間に天井から白いスクリーンと床からプロジェクターが出てきた。
みんなが驚いている。……いや、穂乃果と海未とことりの3人を除いた6人が驚いていた。それもそうだろう。簡単に家にスクリーンとプロジェクターを用意できるわけがないのだから。真姫もお金持ちに部類に入るがここまでのことを家でできるわけではなかった。
そうして映画の上映会が始まった。スクリーンには3から始まるカウントダウンが映し出され0になるとようやく本編が始まる。
映画を見ていくとようやくラストシーンまでやってきた。車の中でもうすぐ遠くに行かないといけない女性を男性がどうしてもだめなのかと問いかけているシーンだ。
花陽「かわいそう……」
結ばれることを願っていた2人は離れ離れにならないといけない。だけど男性の勝手なわがままで夢に向かって行こうとしている女性を止めるのはどうかと思って行動できないみたいだ。……でも、女性はこのまま遠くに行くことを望んでいるようには見えなかった。
故に、運命が2人を引き離そうとしているのはわかった。だからこそ花陽のような感想が出てくる。
そんな花陽と同じように涙を浮かべている絵里とことり。その後ろの壁で開始3分で夢の世界へ旅立った穂乃果と凛。映画を見て号泣してるにこに落ち着いてみてる希と真姫、ホラー映画のように隠れている海未。そして映画を見ずに言葉を考える空也がいた。
涙が瞳から次々と流れてくるのににこはなぜか強がっていた。
にこ「何よ。安っぽいストーリね」
感動していることが恥ずかしいのだろうか。一向に感動していることを認めようとしない。
そんなにこにうっすらと涙が出ている希がツッコミを入れる。
希「涙でとるよ?」
泣くことは恥ずかしいことではない。だから希は隠すことなく涙を流していた。こういったストーリーは女性全般が弱いのだろう。
ただ、それでも例外は存在する。
海未「うぅ……」
まるでこれからホラー映画の驚かすシーンが始まるのではないかと想えてしまうような反応。耳にクッションを押し当て音が聞こえないようにしている。
そんな海未の様子に疑問を持ったことりが海未のほうを見てその疑問を投げかけた。
ことり「なんで隠れてるの? 怖い映画じゃないよ」
そう。これは怖い映画ではない。
むしろ、感動するラブストーリーの作品なのだ。
絵里「そうよ。こんな感動的なシーンなのに」
その証拠に絵里だって感動のあまり涙を流しているし、にこ、希だってそうだった。
そう言われた海未だが、これが怖い映画ではないことはもちろんわかっている。
海未「わかってます! 恥ずかしい……。はっ!」
しかし、わかっていても海未の中にある恥じらいスイッチを入れるのには十分すぎるハードルの作品だったみたいだ。
そう話しているとスクリーンの中では映画の主人公とヒロインのキスシーンになっていた。
それを見た瞬間、まるでゾンビが出たのではないかと思わせる悲鳴がリビングの中を支配した。
海未「あぁ……。いやーーーー!」
あと数センチで2人の唇と唇は触れ合うだろう。しかしそれを興奮気味に見ることりたちはその映像を見ることはできなかった。
海未は再び悲鳴を上げ空也が操作したリモコンを操作してプロジェクターのスイッチを切って上映会を強制終了させたのだ。
あまりに海未の心を乱したせいか、海未は肩で息をしていた。
海未「はぁはぁはぁはぁ」
完全にスタミナを使っていたのだろう。少し休めば落ち着くと思うが映画一本でここまで披露してしまうのはどこか心配な気がしてしまう。
突然最後のシーンを切られてしまったからかえりが肩を落として落ち込んでいた。
絵里「あ~ぁ」
そこまで続きを楽しみにしていたのだろうか? 授業中に見ていた映画を最初は興味がなかったのに続いていくにつれてのめりこんでしまうようなあの減少と似ているようにも感じた。
海未の行動に不満を持っていたのは絵里だけではなく、先ほどまでスクリーンを凝視していたことりも同じだった。
ことり「海未ちゃん!?」
しかし、海未は悪いとは思っていてもどうしてもそうしないといけない理由があった。
海未「恥ずかしすぎます。破廉恥です!」
極度の恥ずかしがり屋の海未はキスという恋人がするような行為自体にも恥ずかしいと思ってしまうのだ。そうすれば平静を保つことはできないし、海未の心の健康上よろしくないことになる。
ただそれは個人がどう思っているかによって変わってくる。
花陽「そうかな?」
恥ずかしいと思うことがあればその気持ちが分かるし、そうでもないと思えな海未の気持ちはわからないだろう。
でも、なぜそう思うのかを説明すれば納得する人も出てくる。海未は自分の考えを口にした。
海未「そうです! そもそもこういうことは、人前ですべきことではありません!」
確かに見せつけるようなものではないとは思う。それはみんなも思っていると思うがそれをただの演出としてみてしまうのか、本当にしているのだから演出も何もないと思うのかもそれは見方の違いになる。
これはやったやってないのやり取りに近い。だから、このタイミングを狙ってなのか今までノートに向かい合っていた空也が会話に割って入ってきた。
空也「終わったのか?」
映画が終わったことにも気が付かなかったみたいで部屋が明るくなっていることでようやく気が付いたらしい。一番映画を見ていないといけなかった人物があまり見ていなかったということに少し驚きものなのだが。
その空也の言葉で壁に寄っかかって寝ていた凛と穂乃果が目を覚ます。
凛「終わったにゃ?」
眠気眼をこすって完全に覚醒をしようとしているが2人はまだ眠そうだった。
そんな状態の凛と穂乃果だが、ある意味すごいことをやっていた。
ことり「穂乃果ちゃん。開始3分で寝てたよね」
それはことりの言うように初めのほうですぐに寝てしまったということ。大音量の映画を見ているのに寝れるというのはある種の才能かもしれない。
まぁ、でもそんなことができる人なんて探せば絶対にいるのだからそこまでの話ではなかった。
穂乃果「ごめん。のんびりしてる映画だな~って思ったら眠くなっちゃって」
大体の恋愛映画というものは最初はただの日常風景が描かれることが多い。アクションとかそういうものがない今回のこの映画はシリアスなパートがあったとしてもそれでも同じような空気感を終わりまで保っていた。
そんな穂乃果の言葉を聞いた絵里は再び映画の話に戻っていく。
絵里「なかなか映画のようにはいかないわよね。じゃあもう一度みんなで言葉を出し合って……」
そのあとに映画を見るきっかけとなったこと、ラブソングづくりのほうを再開しようとしていた。
そんな中、今までずっと黙っていた真姫が口を開いた。
真姫「待って! もうあきらめたほうがいいんじゃない。今から曲を作って振り付けも歌の練習もこれからなんて、完成度が低くなるだけよ」
その口からはこの前も少しだけ出た諦めようという話。確かに完成度を求めるのであれば既存曲をやったほうがいいし、時間もそんなに残されているわけではない。だったら新曲を作ることを諦めたほうが確実だと真姫はそう思っていた。
ただ、それを素直に受け入れようとしない人もまたいる。
絵里「でも……」
それが続けようと言い出した絵里。今ここに新曲をやろうとする意見と既存曲を深めようという意見の2つの考えに分裂した。
まず、既存曲側に海未が加わる。
海未「実は私も思っていました。ラブソングに頼らなくても、私たちには私たちの歌がある」
自分たちらしいものにしたほうがいいのではないか。この前もそれで失敗しているのだから。そういうある種のトラウマがみんなの中によみがえる。
だからこそ、海未の言葉にはすんなりと受け入れることができた。
穂乃果「そうだよね……」
確かに、自分たちらしい曲のほうが聴いてもらえてこれといえばとなってくれるかもしれない。
それに対決しようとしているのは……。
にこ「相手はA-RISE。下手な小細工は通用しないわよ」
トップスクールアイドルであるA-RISE。未完成の曲で行ったら確実に勝ち目はない。
そういう現実的な意見が出る中、なかなか認めようとしたないのが絵里だった。
絵里「でも!」
明らかにらしくない。どうしてもそう思ってしまう。
それを止めるかのように希がつぶやき始める。特に理由が分からない絵里の抵抗を抑えるために。
希「確かにみんなの言う通りや。今までの曲で全力を注いで頑張ろう」
藍斗に言われていろいろ考えた結果がこれだった。自分のやりたいことは何か。自分たちが目指しているものは何かと。それを考えた結果優勝という結論が出た希は目先のやりたいことを諦めるという選択をした。勝ち上がればまたチャンスがあるからとそう自分に信じ込ませて。
明らかにいつもの声とは違った。低く落ち込んだようにも聞こえるその声は何かの助けを求めているようにも感じることができた。
空也「希……」
勿論それはただの気のせいかもしれない。でも、希の身にまとっている違和感は確かに実在するということはこのラブソングの話題が出た時からわかっていた。
でもそれをみんなに告げようとは希はしなかった。
希「今見たら、カードもそれがいいって」
いつもの常套句を使ってでもみんなをラブソングから遠ざけようとしている。
それに気が付いた絵里は希の行動を止めようとする。
絵里「待って、希。あなた……」
だって希はあることをかなえるためにここまで行動してきたのだから……。
でもそれが叶わなくてもいいとそう希は感じ始めていた。
希「ええんや。一番大切なのは、μ'sやろ?」
なぜなら個よりも全を優先に考えるのは当たり前のことだから。
ラブソングの始まりの時よりも明らかな違和感を醸し出している2人に穂乃果は疑問に思った。
穂乃果「ん? どうかしたの?」
何かがあったのは明白だ。でもそのなにかが分からない。だからこそ2人に聞いてみようとした。
しかし、希の答えは……。
希「ううん。なんでもない。じゃあ今日はもう解散して、明日からみんなで練習やね」
あくまでも心の中にあることは告げずに、これからのことについて話すことで話の流れを移動させた。
希の言葉を違和感に感じながらも空也は受け入れる。みんなも希のどこかがおかしいことに気が付いているが、一番はあきらめることを提案したものが希の様子を誰よりも気にしていた。
空也「そうか。じゃあまたな」
今日の活動はこれにて終了。明日からはきっと希の言うように練習をすることになるだろう。これ以上新曲作りにみんなの手をかけることはできないのだから。
希の言葉で、今回の新曲に関する話し合いが終わると、希の宣言通り解散ということになった。そのため各自家に帰っていくがのだが家を出ると帰路についている絵里と希のことをずっと見ている少女がいた。
空也「真姫? もしかして希を付けるのか?」
その人物に気が付きやろうとしている行動を予想した空也が希と絵里のほうをにらみつけている真姫に話しかける。
真姫「そうだけど? 絶対に何かあると思うし それとも何? 悪い?」
先ほどの望みの違和感がどうしても気になってこれから行動するようだ。確かにみんな望みは少しおかしかったと思っているが、自分から話してこないのであれば……と考えて行動しなかったみたい。
そんな中真姫が行動に移すという。それも今。
このことが空也にとってとても助かることだった。このまま空也自身が希と絵里と追いかけるのもいいが周りから見れば隠れて女の子を追いかけている男がいたら問題になるだろう。
空也「いや、ちょうどよかった。だったらスマホを通話状態にして俺にかけておいてほしい」
だからこそ、周りからは特に気にかけられないような作戦を真姫に伝える。その間も希たちのほうに目を離さないままで。
ただ、空也のやろうとしている行為はあまり褒められたものではない。
真姫「盗聴? 趣味悪いわよ」
周りから見られて不審に思われるような行動をとるか、自分たちしか知らないところで非常識な行動をとるかという選択のなか、空也が取ったのは後者だった。
だけど、こんなことでもしないと希は話してくれないだろう。空也が何かあったのかを聞いたときも、何も言わずにしていた。あまり話したくない内容なのか、それとももっと踏み込んでいかないと話してくれない内容なのか。とにかく話をしてみないことには終わらない。はぐらかされない様に。そしてもし嫌がられた時はこれ以上踏み込まない。それがお互いにとって最善の方法だから。
空也「この際そんなことを考えてる余裕は俺にはない。だから頼む。少しでも今後役に立つようにしたんだ」
でも、今はとにかく踏み込んでみないと始まらない。それくらい余裕が空也にはないのだ。いつまでもミステリアスで意味深な行動をする希だからこそ、何を想っているのか何を考えているのか深く読めないから。
いつも自分のことを深く話そうとせずに他の人の手助けをしている希には絶対に何かがあるとそう思っていた。
空也が下心から盗聴の相談をしたんじゃないということはもちろん真姫もわかっている。
真姫「わかったわ。じゃあ私は行くわね」
だからこそ、スマホをいじりながら提案を受け入れた。その証拠に、空也のスマホに西木野真姫から着信が入る。
受け入れられたことを確認した空也は通話ボタンを押して家のほうに戻った。あとのことは真姫に任せてとにかく今は自分にできることをしようとして。
そして少し離れてしまった絵里と希を追いかけるようにして真姫は空也の家から出発をした。
希が諦めたことで空也はいてもたってもいられなくなったみたい。どれだけ焦っているのかは本文を読めばわかりますよね?
次回は希の過去が明らかに……! この時のためにとっておいたサブタイです!
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次回『希の望み』
それでは、次回もお楽しみに!
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