ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~ 作:そらなり
乗り越えないといけない過去、成長しないといけない自分。勝つためには少しでも前に進まないといけない。ここが凛の転機となるのか、それとも変わらずに自分を極めていくのか……。
そんなわけで今回も弱気になる彼女の物語をご覧ください!
凛side
凛が代理リーダーになって初めての練習が終わり真姫と花陽の3人で帰っている途中、不意に凛が今日のことを振り返る。
凛「疲れるにゃ……。やっぱり凛にリーダーは無理だよ」
一度やってみて覚えた感想はやっぱり無理だということ。慣れないことを始めてやるのは疲れるだろう。そして思ったよりできないことを知れば、少なからず絶望する。
ただし、凛には少なからず実績が存在する。あの応援合戦の時チームをやる気にしたという確かな実績が。
花陽「そんなことないよ。きっとだんだん慣れていくよ」
だから今回も慣れればしっかりとリーダーの役割を全うすることができる。そう花陽は思っていた。
それに、今はまだ凛のリーダーとしての活動が始まったばかり。
真姫「そうよ。まだ初日でしょ」
人が成長するにはまず慣れないといけない。どんなことだってみんな初めてなのだから。まだ初日。これからどうなるのかは凛の今後の動き次第になる。
ただ、自分がリーダーをやることになったのはある意味ここにいる花陽と真姫のせいでもあった。……決定的なとどめを刺したのは空也だけど。
凛「そんなこと言って、2人共自分がリーダーになりたくないから凛に押し付けたんでしょ」
確かにリーダーという重要な役割を望んでやりたいと思う人が多くいるかといえばそうではない。自分の判断が周りに大きく影響するリーダーの役割は責任が伴い、それと同時にプレッシャーにもなる。
凛の発言がすべてではないにしろ、そう捉えられるような事柄だったため凛は疑いの目を花陽たちに向ける。
花陽「えぇ!?」
そんな目で見られた花陽はその場で驚く。
でも凛をリーダーとして他薦したのはしっかりとした理由があったから。
真姫「何言ってるの。本当に向いてると思ったから凛を推薦したの」
今は凛自身が向いていないと思っているかもしれないが、実のところ周りには向いていると思っている人しか知らない。
自分のことは自分が一番よく知っている。そんな言葉があるが実のところそうじゃない。自分のことは自分が一番わかっていない。客観的に見てようやく分かる自分では理解していない自分像が確かにそれぞれの人に存在する。
リーダーとしてしっかりとはしなくても、役割を果たせる人物は花陽の中では凛しかいなかった。
花陽「そうだよ。私、穂乃果ちゃんたちが別の人推薦しても凛ちゃんがいいって言ってたと思うよ」
だからこそ凛が適任だとそういう考えを告げた。
しかし自分のことになるととたんに盲目的になるのが人間だ。
凛「えぇ~。嘘だぁ~。だって凛なんて全然リーダーなんてむいてないよ……」
向いていない前提で話を進める凛はだんだんと暗くなっていく。
3人の考えの相違が今回の件をややこしくする。
花陽「どうして?」
なぜ凛がそう思うのか。体育祭ではあんなにやる気でみんなを引っ張って言ったではないか。それなのに、どうして……。
凛がその後に自分の評価の理由を話す。
凛「だって……。ほら凛、中心にいるようなタイプじゃないし」
中心にいる人物。団長をしたのにも関わらず、そんなことを口走る。
その言葉が言い終わると同時に真姫の手刀が凛の頭を襲った。
凛「いててて……。真姫ちゃん?」
叩かれた頭を押さえながら急に叩いてきた真姫に対してなぜこの行動をしたのかを尋ねる。
この行動をしたのは、真姫が凛の自分に対する考えを聞いたから。
真姫「あなた、自分の事をそんな風に思ってたの!?」
同じグループとしてやってきて、"自分が中心にいるようなタイプではない"そう思っているとは思いもしなかった。それと同時にそんな考えを持っている凛自身に対して少しの怒りを覚えた。
それは一緒にいた花陽も同じ。
花陽「そうだよ。μ'sに脇役も中心のないの。グループにいる限りみんな一緒だよ!」
リーダーを決めようとしたとき、最後の最後で穂乃果が言ったこと。みんながセンター。実際にそういう心持で活動をしているからこそ、センターもいろいろ変わるし、活動自体も分けて行うことができる。
ずっと活動をしてきたのだから、そこ考え自体は凛もわかっている。
凛「それはそうだけど。でも……、凛は別だよ。ほら、全然アイドルっぽくないし……」
しかし、自分の中で『自分は別』そう考えてしまっている。何かが原因で。
凛が引き合いに出した言葉を聞いてより花陽が熱くなる。
花陽「それ言ったら、私のほうがアイドルっぽくないよ!」
アイドルというコンテンツが好きで、誰よりも憧れていたからこそ思っていること。アイドルっぽくはない。だけど、目指そうとしている心持ちがあるから頑張れる。
でも凛にとって花陽はアイドルのようにかわいい存在だった。
凛「そんなことないよ。だってかよちんはかわいいし、女の子っぽいし……」
女の子らしい。そんなことを話す凛の表情には劣等感のようなものが感じられる。どうもしようがないことを考えているかのように。
凛の言葉に反論をする花陽。
花陽「えぇ!? 凛ちゃんのほうがかわいいよ!」
いつまでも平行線のまま話が進まず、それでいても両者一向に引かない。
話が進まないことに苛立ちを覚えたのか突如、凛がその場で大声を上げる。
凛「そんなことない~!!!」
可愛いと言われたくないのか、それとも自分を褒められるのが嫌なのかは定かではないが凛の心の叫びが花陽と真姫の耳に入っていった。
凛の叫びによって話し合いの熱がリセットされたため、今まで口を開かなかった真姫が再び口を開く。
真姫「はぁ、よほどの自惚れ屋でもない限り、自分より他人のほうがかわいいって思ってる事でしょ」
以前空也の言っていた言葉ではないが自分より他人のほうが優れて見えるのはどんな人にだってあることだ。隣の芝生は青い。だからこそ劣等感を感じてしまう。
最も望ましいのは劣等感に感じたことだとしても自分なりの努力をすること。それが自分自身を救うことになるのだが……、
凛「違うよ! 凛は違うの!」
再び凛の心からの叫びが放たれる。それ以上、この話を深く進ませないように。
2度目の怒鳴り声に戸惑いが隠せない真姫はきょとんとしながら凛のことを呼んだ。
真姫「凛……?」
その後も、凛は自分の言葉を続ける。
凛「引き受けちゃったし、穂乃果ちゃんたちが帰ってくるまでだからリーダーはやるよ でも、向いてるなんてことは絶対ない!」
引き受けてしまった以上の責任は感じているようで続けることを宣言するが、その言葉を最後に仲良く帰っていた3人グループの中を凛は我先にと飛び出していった。
走り去っていく寸前に何かの雫が落ちていた。空に雨雲はないはずなのに。
花陽「凛ちゃん!」
走って行ってしまった凛を呼び止めようと声を出すがその言葉にも反応せずにそのまま前に走って行く。花陽の声は今は届かなかった。
side out
花陽side
走り去ってしまった凛を追いかけることはしなかった。誰もが独りになりたいと思う時があるように、今回の凛はまさにそれが当てはまると判断して。
とにかく今はどうして凛がああいう風になってしまったのかを考えないといけない。
花陽「もしかしたら、まだ昔の事……」
そこで思い浮かぶのが花陽の記憶の中にに確かに存在していた。
真姫の知らない、花陽と凛の過去が関係していることに真姫は初めて知る。
真姫「え……?」
昔のことをかいつまんで話そうと花陽はその口を開いた。
花陽「凛ちゃん、小学校の頃ずっと男の子見たいって言われてて、スカートとか履いてくとからかわれたりして……、もう気にしてないのかなって思ってたんだけど……」
それが凛のトラウマになった出来事。花陽にアイドル部に入ることを進めた凛があの時に話していたこと。乗り越えたと思っていたがためにまだ気にしていたことを知り残念な気持ちになった。
この話を聞いていると、今まで凛の服装を思い出してみると、衣装と制服以外でスカートをはいていなかったことを思い出す。
真姫「そういえば、私服でスカートはいてるとこ見たことないわね」
練習着ですらショートパンツ。自分から望んで着るようなもので凛がスカートをはいている姿はまだ花陽以外のμ'sは見ていなかった。
side out
穂乃果side
現在の沖縄はいまだ大雨に見舞われ部屋待機の時間が続いていた。やることがなく暇になった穂乃果達は3人でババ抜きをしている。
現状はことりと海未の一騎打ち。穂乃果は持ち前の運で一番最初に上がっていた。
海未「次こそ……、次こそ勝ちます!」
しかもこれは1回目の勝負ではなく、もう何回やったのかわからないくらいの回数をしていた。それまでの結果としてはことりの穂乃果がトップ争いをしていたとしても最下位はずっと海未固定のまま進められていた。ちなみに不正は一切なかった。
現在ことりの目の前には、海未の握っている2枚のカードが存在していた。
ことり「えぇ~っと……」
悩むことりは交互にそのカードを持ってみる。すると左側を持つと嫌そうな、右側を持つと嬉しそうな顔を海未はしていた。
このことが意味することとはことりから見て左のカードを引けば勝てるということ。
ことり「やったー! 上がりー!」
ことりは海未の右のカードを触ったすぐ後に左側のカードに持ち替え一気に引き抜く。結果、ことりの手札は揃いこのババ抜きに上がったことになる。
ゲームが終わり、勝ったという達成感を感じた穂乃果とことりは互いにハイタッチを交わしゲームクリアを喜んだ。
ことり 穂乃果「「いぇ~い!」」
どんな些細なことでも勝てばうれしい。楽しいと思えるのが人間のいいところだ。
しかし、そういうことがあるのであればまた逆も然り。
海未「どうして負けるのです」
負けに負けを重ねた海未のフラストレーションがたまっていった。勝利できないという不満によって。
イライラしている海未のことを見て、もうやめたほうがいいと判断した。
ことり「…………。もうそろそろ寝たほうがいいんじゃないかな?」
どんな凄腕のプレイヤーだって負けるときはとことん負けるし、負けが重なることが負けにつながることだってある。それに、精神状態が悪いのも問題だし。
そんな話をしていると突然穂乃果たちの部屋のドアがノックされる。
穂乃果がそのドアを開けると、そこには空也がいた。
空也「悪い、ちょっと先生から伝言で明日の飛行機が欠航になったから帰るの1日遅れるって」
入ってきた空也が先生からの伝言を穂乃果たちに伝えた。現在の天候と空の状態を考え安全策として取られたのがこの対策。台風が来ているため仕方ないと言えば仕方ないのだが……。
空也の伝えた言葉を最初はただただ聞いていた。
穂乃果「そうなんだ……。ってライブ間に合わないじゃん!」
しかし、このことがどういうわけなのかを理解した穂乃果は空也にツッコミを入れる。
そう。修学旅行から帰ってきた翌日にイベントがあるためこの1日のズレで穂乃果と海未、ことりはショーには出れないことが確定した。
つまりはイベントには6人で出てもらうということになった。急なメンバー変更になるがどうしようもないことにあちら側で何とかしてもらうしかない。
空也「まぁそこは、6人に任せるしかないか。ってババ抜きやってたのか、この3人だと海未、負けたな」
そして空也は気が付いた。テーブルの上にある数字がそろえられているトランプにくしゃくしゃになったジョーカーで今まで何をしていたのかということを。そしてここにいるメンバーから結果がどうなったのかということを。
急に言い当てられた海未はそのことについて大げさであるかのように驚く。
海未「なぜ知ってるのですか!?」
結果を見ていない空也が何で知っているのか。ここにある状況だけではその結果にたどり着くことができないはずなのに。
どうして負けたのか知りたいと思っている海未に気が付いて空也がどうしてほしいかを尋ねる。
空也「教えてほしいか?」
一体どうしてその結論に至ったのか空也の悪魔のささやきが海未を襲う。
その問いかけに、ババ抜きでの勝利を渇望している海未は即座に答える。
海未「はい。是非!」
どうしても勝てない。それには理由があるはず。そう思っているからこそ、少ない可能性を見出し、空也にその答えを聞いた。
しかし、すぐ答えを教えるほど空也は甘くない。
空也「う~ん。全部教えると面白くないから、ヒントだけな。お前、普段と全然違って焦りすぎなんだよ」
そのヒントですら、かなり答えに近いもの。焦りという単語からどんなことを想像できるかで答えにたどり着けるかどうかが決まってくる。
ただ、それだけが答えだとは思わなかった海未は簡単なものだっただけに困惑してしまう。
海未「焦り……。それだけですか?」
しかもなかなかに漠然とした内容から海未自身はいまだ結果にたどり着いていない。
だけど、空也自身の言いたいことはもう終わり。これ以上は海未に行ったとしても変化がないと思うから。
空也「あぁ、じゃあな」
その言葉を残して、伝えることを伝えた空也は自身の部屋に戻っていった。
side out
凛side
凛がリーダーになって2度目の練習が始まる前に穂乃果たちのことで入った情報が絵里から告げられた。
凛「えぇ~!? 帰ってこれない~!?」
それは飛行機の影響でイベントまでに帰ってこれないということ。つまりこの6人でイベントを成功させないといけないということだった。
穂乃果たちが戻ってこれない原因は飛行機の欠航。沖縄は日本で一番台風が来るところ。この時期に来るのは珍しいがなくはないことなので仕方ないと言えばそうなのだが……。
絵里「そうなの。飛行機が欠航になるみたいで」
おかげで穂乃果たちが帰ってこれないということになって今まで決めていたことが少しだけくるってしまった。
つまりは……だ。
花陽「じゃあ、ファッションショーのイベントは?」
花陽の言うようにイベントはこの6人によって行われるということになる。
今までの活動の中で穂乃果たちがいない中、イベントを行ったことがない。
絵里「残念だけど、6人で歌うしかないわね」
活動を始めて初となる今回の態勢でライブをしないといけないことが確定した。歌に関してもパート分けをを変更していかなければならない。2年生だけが歌う場所も確かに存在したから。
イベントは明後日。少ない時間でいろいろな変更点を正しく処理して完成させないとライブは成功にはならない。
真姫「急な話ね」
どうしようもないとはいえ、いきなり変更しないといけないのはμ's側として慌てるものがあった。
しかし引き受けた以上できませんでしたは通用しない。それにいくらスクールアイドルとはいえこれからの印象は確実に悪くなるだろう。
にこ「でもやるしかないでしょ。アイドルはどんなときも最高のパフォーマンスをするものよ。にこ!」
そして、どんな状況でもその場で最高のパフォーマンスをすることがアイドルとしての理想形。プライドと意欲の高いにこは、こんな状況でもやる気になっていた。
勿論危機的状況に陥ったとしてそこから最善の手を打つということは今回のようなことだけではない。
希「そうやね」
生徒会としても重大なミスをしたこともこういう状況のようになんとかしてきた希は力強い言葉でにこの発言に同調する。
にこの言葉を聞いてほかのメンバーも頷き、アクシデントに立ち向かうことを決意する。
みんなが今回の件に向かいいそうで対策をしようとしていることからまず決めないといけないことを上げる。
絵里「それで、センターなんだけど」
センターは最初穂乃果がやる予定だった。リーダーである穂乃果が。しかし帰ってこれないとなるとセンターも変わらないといけなくなる。
リーダーだけでなくセンターもやらなくてはいけないということを理解した凛は急な提案に驚く。
凛「え!?」
そして絵里からとあるものが見せられた。女性の憧れで、誰もが一度は袖を通してみたいと思う服がそこにはあった。
なぜこの衣装があるのかという理由が絵里の口から告げられる。
絵里「ファッションショーだから、センターで歌う人はこの衣装でって指定が来たのよ」
そう。今回のイベントはただのライブではない。ファッションショーで行うライブだった。ファッションショーはプロのモデルが出る、正式なもの。運営としても間違ったことができない。
絵里が持ってきた服を見た花陽はその瞳を輝かせた。
花陽「きれい! ス・テ・キ!」
女の子のある種の目標の、ウエディングドレスを見つめながら。
目の前にあるのは短いスカート丈のウエディングドレス。髪飾りもしっかりとつけられて動きづらいということもなさそうだった。
希「女の子の憧れって感じやね」
そして何度も言うように、この服は女性のもっとも着てみたい憧れの洋服。
しかし、その服を見た瞬間から凛の様子がどうやらおかしいようだ。
凛「これを着て、歌う? 凛が?」
その声は震え、指さしている手さえも尋常ではないほどに震えていた。
リーダーが着るはずだった服を誰が着るのかを話し合ったとき、真っ先に出てくるのが現在代理リーダーをやっている凛しかいなかった。
にこ「穂乃果がいないとなると、今はあなたがリーダーでしょ」
前に立たないといけない人。それがリーダーだから。だからこの服は凛が着るのが筋だった。
にこの発言により肯定された凛の言葉がより凛の震えを加速させる。
凛「こっこれを、凛が? アはハハハはハ」
言葉はつまり、目を見開きつつも目が泳いている。途端に狂った笑ように笑いだし周りからは何が起きているのかさっぱりわからなかった。
急に変な笑い声をあげる凛に動揺したのか、にこは何があったのか尋ねてみる。
にこ「何笑ってんのよ!?」
そんなにこが凛に近づくと、急に猫のようになり……、
凛「シャー!」
威嚇をしてきた。近づいていたにこはその威嚇に驚き尻もちをついてしまう。
この凛の変化にようやく周りがどうなっているのかを察した。
真姫「凛が壊れた!」
確実に壊れている。とにかく通常の状態ではないのは確かだ。
尻もちをついたにこはそのままの状態で叫ぶ。
にこ「もぅー。どうにかしなさいよ~」
凛がおかしくなったならどうにかするしかない。だから誰かにどうにかしてほしいことを呟いた。
しかし次の瞬間凛は窓の外を指さし、あるものの名前を告げる。
凛「あ! 野生のちんすこうだ!」
それは昨日の話の中で最もインパクトのあった希の言った言葉を利用した。
真っ先に反応するのはその言葉を言い出した希。
希「どこ!?」
窓の外を見るすごい勢いで見つめその視界にとらえようとする。しかし、そこには昨日の雨が嘘のような雲一つない空しかなかった。
みんなが凛の指さす場所を見ている間に、とにかくこの部屋から出ようと扉のほうに向かう。
花陽「凛ちゃん!?」
しかし、凛が向かっている間に嘘の気が付いた花陽は出ていこうとしている凛を止めようとする。
急いでここから脱出したい凛はすぐにドアノブを回そうとする。
凛「鍵が!? なんでにゃ!」
だがそのドアには"内側"からカギがかけてあった。
凛が止まったその一瞬の隙をついてみんなが扉の前に追いついた。
にこ「なんでだと思う?」
そんな中にこは少しドスの利いた声で話す。それはいろいろな不満を爆発させているかのように。
そのにこの問いには全く心当たりのない凛は、
凛「さっさぁ?」
扉に背中を預けながらもにこの持っている答えを待った。
その動きはまるで人口兵器かのようで、ゆっくりとそしてうつむいていた顔を勢いよく上に戻すようにして凛をにこの視界にとらえた。
にこ「それはいつもあなたに捕まえられてるからよ~!」
次の瞬間、にこの口から先ほどの問いかけに対する答えを教える。にこが加入する前にもあった、第二回のラブライブ開催が分かった時だって凛に追いかけられたようなものだ。
そう言ったにこを筆頭に凛を捕まえようとするがギリギリのところでドアのカギを外して外に飛び出す。とにかく今は逃げたい。そう思っていた凛の足は自然と屋上に向かっていた。
凛の向かった先にたどり着くとそこはいつも練習をしている屋上。そのドアの近くの団さに凛は座り込んでいた。下をうつむきながら暗い表情をして。
凛「無理だよ。どう考えても似合わないもん」
やってきた絵里たちに向かってあのドレスのことを言う。
しかし、凛が来ている姿を想像していた絵里の脳内では似合わないなんてことが一切なかったため、
絵里「そんなことないわ」
凛に向かって反論をする。絶対に似合うという確かな革新が絵里の中にあったから。
でもそのイメージと反対のものを持っている人だっている。それが凛だ。
凛「そんなことある! だって凛、こんなに髪短いんだよ」
かたくなに似合うことを認めようとしない。どんな些細なことを似合わない理由にしても。
その意見には一つ抜け穴があることにも気が付かないで。
希「ショートカットの花嫁さんなんていくらでもいるよ?」
そう。それはショートカットで結婚式に出る人だっているということ。
しかし、凛の言いたかったことはそういうことではなかったらしい。
凛「そうじゃなくて、こんな女の子っぽい服。凛は似合わないって話……」
一瞬意見を出した希のほうを見るがすぐにうつむきなおしてしまう凛だが、その言葉には何か悲壮感のようなものが込められてる気がした。女の子っぽくないと自分に言い聞かせているようで。
ただ、何を女の子っぽいと判断しているのかはわからないが、当てはまりそうなことをあげて話してみる。
真姫「普段はともかくステージじゃスカートはいてるじゃない」
凛はステージの上では女の子らしいスカートをしっかりと履いている。しかし、そんな凛がこんなことを言うからには理由があるのだろう。
その理由とやらが凛の口からしっかりと告げられる。
凛「それはみんなと同じ衣装だし、端っこだから……。とにかくμ'sのためにも凛じゃないほうがいい」
確かに凛がステージに出るときはセンター側に来た時が少ない。それに一体感を出すために同じような衣装にしているからそう思うのもわかる。『これからのSomeday』の時はバラバラだった代わりにパンツだったから。
それに現状あの衣装には問題点がいくつか存在していた。
希「でも実際、衣装は穂乃果ちゃんに合わせて作ってあるから、凛ちゃんだと手直しが必要なんよね」
本来切るはずだった穂乃果に合わせて作ってある衣装をしっかりと着るには少しだけ作業が必要だった。
そのことを聞いた瞬間に凛のうつむいていた顔があげられる。
凛「でしょでしょ。やっぱり凛じゃないほうがいいよ。ね?」
まるで今がチャンスだと思っているかのように。
続けて希がこの中のメンバーで作業を少なくできるかを考えていたのだが、どうやらそのメンバーの見当はついたみたいだ。
希「この中で穂乃果ちゃんに近いとなると、花陽ちゃん?」
花陽を指名した希。何を見て判断したのかは希にしかわからないがなぜか花陽の胸を見ているのはきっと気のせいだろう。
突然名前の上げられた花陽は驚く。
花陽「私!?」
きっと自分は上げられないと思っていたのだろうが、希の分析の結果花陽が一番だということが提案された。
その提案を聞いた凛は、幼馴染の花陽があの衣装を着るところを想像して、少しだけ嬉しい気持ちになった。
凛「そうにゃ。かよちんなら歌もうまいしぴったりにゃー」
確かに花陽の声はきれいだけど、今はそれが関係あるわけではない。とにかく凛は花陽にあの衣装を着てほしいみたいだ。
それに、今回の件である一つのことを絵里は感じた。
絵里「確かに、急きょリーダーになった凛に全部任せるっていうのも、ちょっと負担をかけすぎな気もするわね。花陽どう?」
昨日凛がリーダーになったばかりでその翌日にいきなりセンターを頼むことになると、凛の負う負担がかなり大きくなるということ。それなりにプレッシャーが出てくるだろう。
その絵里の発言を聞いた花陽は少しだけどうすればいいのかを悩んでしまう。
花陽「私は……」
確かにあの服を着てみたいという気持ちも存在する。しかし、凛から奪ってまで来てみたいと思うようなものではない。
そんな花陽の考えを打ち消すかのように問題の人物である凛は花陽に話しかける。
凛「やったほうがいいにゃ。かよちんかわいいしセンターにぴったりにゃ」
やったほうがいいと提案を持ち掛ける。この時期であの衣装が着られるなんて早々にないことのはずだ。確かに今着てほいたほうがいいという考えもわかる。
しかし、気になるのは凛の意志。言葉でこう言っていても実際のところどういう感情を持っているのかは言葉に出さないとわからない。
花陽「でも……。凛ちゃん、いいの?」
だから再確認の意味を込めて、花陽から凛に本当にいいのか、公開がないのかを尋ねる。
その問いに凛はすぐに答えることができなかった。
凛「……。いいに決まってるにゃ」
悩んでいるわけではないがそれでも少しだけ真が空いた回答が花陽のもとに返っていく。
その答えでも納得しきるまでに到達しなかった花陽は再度同じような疑問を投げかける。
花陽「本当に?」
女の子のあこがれの衣装を着たくないのか。本当にいいのか。
今度はなぜもう一度同じ質問をしてくるのかという疑問が凛の中に芽生え、答える反応を少し伸ばした凛。
凛「ん? もちろん!」
しかし次に返ってくる言葉も先ほどと変わることのないものだった。
特に何の変化も見られない凛の様子と先ほどまでの嫌がり具合を見て真姫は少しだけ違和感を感じていた。
真姫「凛……」
違和感。そして、昨日聞いた凛の簡単な過去の話。それが今の真姫の胸に響いていた。
ただ、決めるべきことが先ほどのやり取りで完全に確定した。
絵里「決まりみたいね」
衣装を着ようとしない凛が花陽が着ることを許して、花陽は別に切ることが嫌だとは言っていない。つまりは、花陽が着ることになったということ。先ほどの会話の中で特に反対意見がなかったため、ほかのメンバーも賛成ということだろう。
しかし凛の対応を見ていた花陽にはまだ疑問が残っていた。
花陽「え!? でも……」
でもそれを許そうとしない凛はそのまま頷いて花陽が着るように話を進める。
凛「うんうん」
この話し合いの結果、結局は花陽がセンターということになり衣装も花陽が着ることになった。
少し壊れてしまった凛。何かに気が付きつつもどう行動すればいいのかわからない真姫と花陽。そんな彼女たちの答えはこれからどのような物語を紡いでいくのでしょうか……?
っと物語の意味深な語りはこの辺にして先日、8月3日は穂乃果の誕生日でした! いつも元気いっぱいでみんなを引っ張っていくその姿に尊敬の念を抱きながらも少し心配している作者ですが、これからもこの物語を引っ張っていってほしいかな?
ってことで穂乃果、誕生日おめでとう!
次回『花嫁にふさわしいのは』
それでは、次回もお楽しみに!
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