では第6話どうぞ。
A.P.238 3/11
両手に現在を携えた男が十数体のダーカーに囲まれていた。
ダーカーは数の利を活かして一斉に男に襲い掛かる。
しかし男はその剣で次々と迫るダーカーの攻撃を防ぎ、躱し、隙を見つけて確実に1体ずつダーカーを切り裂いていく。
そしてその場にいたすべてのダーカーが切り裂かれた。
『目標殲滅を確認、仮想戦闘を終了します。』
◇ ◇ ◇
非番の今日は、午前中はマトイとアークスシップを散歩をしながらいろんなところを回っていた。その後昼食を食べ、俺はVR空間の中にいる。
『目標の殲滅を確認、仮想戦闘を終了します。』
訓練が終わり、休憩所に向かうとそこにはマトイがいた。
「お疲れシロウ。強いね。」
そう言うとタオルを渡してきた。
「ありがとうマトイ。退屈だろう?先に帰っていてもいいのだぞ。」
「ここにいる。」
首を振って答える。
「そうなのか?まぁマトイの好きにしたらいいけど。」
「うん」
そんな時休憩所の扉が開いた。
「お〜、シロウ元気してたか。」
「やぁ、シロウ君久しぶり。」
「ゼノさん、エコーさん久しぶりです。」
「その後ろの女の子………あの時保護した女の子か?」
二人が入って来た瞬間、マトイは俺の後ろに隠れていた。
「そうです。ほらマトイ挨拶しといたら?この二人も君が倒れている時に助けに来てくれた人たちなんだから。」
マトイは俺の後ろのから出てきて
「マトイです。よろしくお願いします。」
「おう、よろしくなマトイ。」
「うん、よろしくねマトイちゃん。」
「しかしシロウ、こんな可愛い子と同棲してるだなんてな。」
「本当だわ。マトイちゃん、シロウに酷いことされてない?何かあったらすぐに相談にのってあげるからね。」
俺とマトイが一緒に住んでいるのは多くの人に広がっているのだ。原因はわかっている
「エコーさん、それちょっと酷くないですか。俺は女の子を悲しませることはしませんよ。それに同棲ではないですよ。ただ一緒に住んでいるだけです。」
「ふ~ん。本当なのかね?
まぁ冗談はさて置き、シロウ暇なら久しぶりに俺と1戦やらないか?」
VR空間はアークスのトレーニングルームだ。仮想空間を作り、訓練を行う。ダメージなどの直接被害は肉体になく、少しの痛みと衝撃が伴う程度だ。なのでこの空間では、怪我の心配なく訓練を行うことが出来る。
「良いですね、お相手します。」
「よし来た、じゃ早速やろうぜ。」
そう言うとゼノさんは近くにあった端末を操作し始めた。
「えっと空いてるんは……お!あったあった。設定は………仮想戦闘、対人…1vs1……1本勝負……よし。じゃ行こうぜシロウ。」
「マトイちゃん、私たちはここで座って見てよっか。」
エコーさんが空いていた椅子に座り、テーブルを挟んで向かい側の椅子に座るよように促した。
「あ、…はい。」
「行ってくるよ、マトイ。エコーさんマトイをよろしくお願いします。」
マトイは人見知りなところがある。けど記憶を取り戻すために多くの人と関わったほうが良い。今回はエコーさんに任せよう。
そうして俺はゼノさんの後に続きVR空間に入って行く。
◇ ◇ ◇
VR空間の真ん中で二人は向かい合う。
その手にはすでに互いの武器が握られている。
シロウはツインダガー
ゼノはその身の丈ほどのソード
「いつでもいいですよ。ゼノさん。」
「よし。じゃあ行くぜ!」
その言葉を合図に互いに駆けだし中央で衝突する。
ツインダガーを使うシロウではソードを使うゼノに力勝負で勝てるはずもなく、少し押し飛ばされる。
ゼノはそれにより空いた空間を利用して突きを放つ。
シロウはそれを横にをよける。ゼノは両手に力を込めて突き出した剣を横に振るう。しかしシロウは上体をそらすことでそれもよける。
その後もゼノは攻撃を仕掛けていくが、シロウに一撃も入れられないでいた。
シロウは少しずつ後退しながらそれらを冷静に避けて、避けることができないと攻撃は両手の剣でいなし軌道をそらしていのだ。
それでもゼノは隙を与えないためにも剣を振り攻め続けた。
しかしゼノの体力も無尽蔵というわけではない。当然ずっと剣を振り続けるなんてことは不可能だ。
そしてゼノは限界が近づき、つい力ない一振りを放ってしまった。
シロウはそれの待っていたかのように
両手の剣に全体重を乗せて弾き返した。
ゼノの体勢は崩れ、そこからシロウが攻勢に転じた。
◇ ◇ ◇
ここは先ほどまでゼノとシロウがいた休憩所。現在、エコーとマトイは椅子に腰かけていた。
「さっきは冗談交じりで言っちゃったけど、本当にどう?困っていることとかない?」
「心配ありがとうございます。けど大丈夫です。」
「そうか。それじゃシロウ君との同棲は上手くいってるんだね。」
「へっ?!…いや、同棲とかじゃなくて……住まわせてもらっているだけで……」
「どっちでもいいわ。シロウ君との生活はどうなのよ?」
「シロウとの生活は……その…楽しいです。それと…ごはんがとてもおいしいです。」
顔を赤らめながら答える。
「あ~、もうマトイちゃんシロウ君に胃袋つかまれちゃったか。まぁ彼の料理なら仕方が無いか。私も昔食べさせてもらったことがあるのだけど、とても美味しかったわ。その上家事も全てこなせるらしいし………女としてなんかすごい悔しわ。」
モニターを見るとシロウに剣をはじき返されて体勢を崩しているゼノの姿が映っていた。
「あ~あ、攻めきれなかったか。シロウ君はやっぱり上手いね。」
「ゼノさんとシロウってよく戦うの?」
マトイがエコーに質問を投げかけた。
「そうだよ。士官学校に特別講師として行ったときにね、とても強い訓練生がいると聞いてね。それを聞いた私たちはその訓練生を見に行ったの。そこにいたのがシロウ君、当時から教官でも倒せないほどの力を持ってたわ。それでね、それを見たゼノが訓練が終わったあとシロウ君に剣を教えてほしいって頼みにいったのよ。」
「えっ、アークスが訓練生にですか?」
「そうなのよ。私も彼も驚いていたわ。シロウ君は「俺はまだ人に教えられるほどではないので」って断ったわ。ならば剣術を見せてくれとゼノが頼んで模擬戦闘することになって、それ以来彼らはこんな感じに模擬戦闘してるわ。シロウ君は嫌がっているけどゼノは彼のこと師匠と思ってるそうよ。」
「師匠?二人の武器は全く違うのになんで?」
「私もそこは疑問に思ってゼノに聞いてみたの、彼曰く「シロウの剣は守ることに重きを置いたものでそれにあれは才能ではなく努力で身に着けた剣だ。使う武器が違っても今の俺には参考になる。」らしいわ。」
「そうなんですか。」
◇ ◇ ◇
ゼノさんの剣をはじき返した俺は首をめがけて剣を振るう。
剣と剣がぶつかる音が空間に響く。
ゼノさんは弾かれたソードを力で無理やり引き戻し防いだのだ。
俺は防がれた剣を引き戻し逆の剣で脇腹を狙う。
しかしこれも防御されてしまう。ゼノさんはその大きい剣を起用に動かいて俺の剣を防いでいく。
「どうだ、シロウ。俺もなかなかうまくなっただろう。」
「そうですね。」
つばぜり合いをしながら言葉を交わす。
「こっからはまた俺の番だぜ。」
俺の攻撃を耐えきったと思っているゼノさんは得意げに笑みを浮かべている。
「それはどうですかね!」
俺は足払いをして、ゼノさんの体勢を崩す。
「なっ?!」
何とかこけるのだけは阻止したようだが、
その踏ん張りの効かない状態では何もできない。
俺はゼノさんの剣を片方の剣で弾き、
もう片方の剣で肩口から胸まで切り裂いた。
「くっ!」
ゼノさんが倒れていく。
『戦闘不能相当ダメージを確認……勝者エミヤシロウ』
「剣の使い方はうまくなりましたけど、それだけに意識しすぎですよ。」
「ちぇっ、また勝てなかったか。なぁお前はその歳でどうやってそれだけの実力を手に入れたんだ?」
「それは、秘密です。」
別世界からきて実際の年齢はもっと上です、なんて言えるわけない。
「俺も疑問があったのですが。ゼノさん、どうして
「やっぱり気づいていたか。………俺はもとはレンジャーでハンターの適正は低いんだ。」
「ならどうして?」
「10年前、俺には力がなかった。守るべきものはたくさんあった。しかし守ることができなかった。あんな思いはもうしたくない。大切なものをこれ以上失いたくない。そんな思いから俺はレンジャーをやめてハンターになったんだ。ハンターならばその剣でその体で自分を後ろにある大切なものを守ることができると思ったんだ。」
「………。」
俺もその気持ちはよく分かる。俺も同じだ。
誰かが傷つくは見たくない。だから俺は剣を握り護るべきものの前に立つ。
「あ、この話エコーには言うなよ。あいつが知るとめんどくさそうだから。」
「わかってますよ。じゃ戻りましょうか。」
◇ ◇ ◇
「お、帰ってきた。ゼノまた勝てなかったね~。」
「うるせえ!」
「二人ともすごかったよ。」
「ありがとうマトイ。」
俺とゼノさんも椅子に座り、4人でテーブルを囲む。
「そういえば、シロウ。お前もあの謎の部品を見つけたんだってな。」
「謎の部品?……あ、あれですか。」
ある日の任務のとき俺はフーリエと惑星リリーパに来ていた。
昔、フーリエがリリーパに助けてもらったことがあったらしくて、そこで恩返しをしたいが彼らは臆病で滅多に姿を現さない。そこで探すのを手伝ってほしいと頼まれて断ることができず、リリーパ族探しを手伝うこととなった。なんとかリリーパ族は見つけることができたが機甲種に襲われていた。それを助けた俺たちは逆に恩返しされることとなり、お礼としてあの謎の部品を手に入れたのだ。自分で解析しても何もわからなかったので、とりあえずカウンターに解析をお願いしたのだ。
「あの部品がどうしたのですか?」
「俺もナベリウスの凍土地帯で同じような物を見つけたんだが、そのとき仮面を被ったダークファルスが襲ってきたんだ。たぶん狙いはあの部品だと思う。そっちは大丈夫だったか?」
「いえ、こっちにあいつは現れなかったですよ。………しかしそれは何かありますね。あれはなんなんでしょう?」
頭を悩ませていると、
「あ、シロウ。そういえば、用事があったんじゃなかったっけ?」
マトイの言葉で、思い出し時計を見る。
「お、もうこんな時間か。ゼノさんエコーさん用事があるので失礼します。マトイはどうするんだ?」
「もう少しエコーさんと話してたいから、ここにいる。」
「マトイは私が責任もって君の部屋に届けるよ。」
「じゃ、よろしくお願いします。」
マトイとエコーが仲良くなったようで良かった。
◇ ◇ ◇
今朝こんなメールが届いていた。
『差出人:ロジオ
宛先:エミヤさん
この前お願いした調査のことで、あなたに伝えたいことがあります。午前中は用事が入ってしまいましたが、昼過ぎには終わると思います。
場所は私たちが初めて会った場所で5時に待ってます。』
そして今指定された場所にいるのだが……
約束の時間を過ぎてもロジオさんが姿を現わすことはなかった。
俺は仕方がなくロジオさんの研究室を訪ねることにした。
研究室の扉を叩き、
「ロジオさん、いますか?」
そうすると中から人が出てきた。
「あなたはこの前の…。すみません、先生は今日は朝から用事といって外出したまままだ帰ってきてません。」
「そうですか。お邪魔しました。」
まだ用事が終わってないのだろう。
俺は研究室を後にしてマイルームに帰ることにした。
「まだマトイは帰ってないか。」
あることを思い出す。
「そういえば、今日は端末を持っていくのを忘れてたのだったな。」
自室に入り端末を探す。
目的の物はすぐに見つかった。そしてメールが1件きている事に気付いた。
ロジオさんからのメールだった。
内容は意味の分からないもので、ただの8ケタの文字と数字だった。
メールの内容に疑問も覚えたが、時計を見るとそろそろ夕食の準備を始めなければならない時間だったので、ただ「今日は何の話だったのですか?それとさっきのメールはどういう意味ですか?」という文を送り、台所に向かった。
その後マトイは帰ってきた。
送り届けてくれたエコーさんとゼノさんも夕食に誘い、4人で食卓を囲んだ。
◇ ◇ ◇
次の日、俺は上層部に呼び出されていた。
「俺に何か用ですか?」
一介のアークスの俺がこんな所に呼び出されるなんて明らかにおかしい。
「単刀直入に言う。今朝早くにナベリウスで学者のロジオの死体が発見された。」
「……え?」
だんだん原作から離れて行ってる。
まぁ気にしないが
クラリッサの部品捜索はほとんどカット
VR空間でアークスどうしの戦い
ロジオは生存せず