Phantasy Star Fate    作:ラトヤ

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第17話 ~龍の想い~

僕は小さい時から研究施設で育った。

 

ある時、小さな少女と一緒に過ごすことになる。

 

僕は会話は出来ないが理解は出来る。

 

出会うと早速少女は話しかけて来た。

 

「初めまして!私はクーナ!あなたの名前は?」

 

言葉を伝えることが出来ないので答えることが出来ない。

出来たとしても自分には名前が無いので意味がないことだ。

 

「名前ないの?」

 

少女は察してたようだ。

 

「じゃ私がつけてあげる!う〜ん……」

 

悩みながら僕の首につけられたタグをみた。

 

「じゃハドレット!君の名前はハドレット!どう気に入った?」

 

タグには実験体の識別番号が記されている。

彼女のは97、僕は100

 

なんともない、安直な名前、だが今までのように番号で呼ばれより断然よかった。

 

それになぜかその名前で呼ばれるととても心が暖かくなる。

 

「よかった!喜んでくれたみたいだね!」

 

少女は屈託のない笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが僕とクーナの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから少女、クーナとの生活が始まった。

彼女は苦しい生活の中の支えだった。

 

 

僕は彼女の歌が好きだ、聴いていると心が安らぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はずっとこの研究施設で育った。ゆえに家族の記憶がない、いたかどうかもわからない。

 

 

 

 

 

けどもし家族がいればこんな感じなんだろうか。

 

 

 

クーナは僕にとってお母さん…いや違うな

 

 

 

 

僕の頭を撫でながら歌っているクーナを見る。

 

 

 

 

 

頼りないけどかわいくて優しいお姉ちゃんってところかな

 

 

 

 

彼女がいればどんな辛いことにも乗り越えられる

 

 

 

僕はあの時そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

しかしその生活は長くは続かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

クーナの実験は止んだ。

 

 

 

 

その代わりに始末屋として訓練が始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

そしてついに人を殺した。

 

 

 

 

 

その日、彼女はずっと部屋で泣いていた。

 

慰めてあげたい。しかしできない。

 

僕は彼女に何も言葉をかけてあげることが出来ないことを恨んだ。自分の無力を恨んだ。

 

自分に名前を、安らぎをくれた彼女に何かを恩返しをしたい、今がその時のはずだ。しかし何も出来ない。

 

彼女に寄り添って一緒にいることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

始末屋の仕事をこなすごとに彼女の感情はだんだん失われていった。

 

始末屋として生きるための心の防衛機能。

 

僕はそれも見ているのがとても辛かった。

 

 

 

 

だがある時からそんな彼女にも感情を露わにする時が増えていった。それは情報収集のために始めたアイドル活動の話をする時だ。

 

普段は自分の始末屋の仕事については話さないが、情報収集(アイドル活動)のことは話すようになった。

 

実験施設の中、始末屋として闇の世界で暮らしていた彼女が急に表の世界に立つのだ。不安はったかもしれないがアイドルは彼女の性に合ったいたようだ。口では「ただの仕事だの、めんどくさい」などといっていたがその言葉とは裏腹にその顔は今までの険しい顔ではなく楽しそうな表情だった。

 

「聞いてよ、ハドレット!ライブって凄んだよ!観客がいて、とてもキラキラしててもう凄いだから!」

 

僕も嬉しかった。

 

彼女が感情を取り戻し始めたこともだが、彼女の歌がいろんな人を認められていることが嬉しかった。

 

 

そして会うたびに彼女はその歌を僕のためだけに歌ってくれるそれがどれだけ誇らしかったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の実験は続いていた。龍族の造龍計画。

 

龍族を改造してダーカーと戦わせようという計画だ。

 

他にも実験を受けている同族がいるのは知っている。

 

実験は上手くいってない。

 

ダーカー因子を吸収して、力が増すことはできる。しかしそのダーカー因子を浄化する力がどうしても備わらなかった。

 

これではまだ実践投入出来ない。

このまま投入したところでダーカーを増やすだけである。

 

 

僕は研究員の会話を盗み聞きし、情報を得ていた。

 

 

 

 

ある時、研究員の会話を聴いていると

 

「もともと龍族という連中はやはり体質的にダーカー因子を自己浄化出来ん。今回の実験でこれまで以上の成果を出せない場合この実験は凍結せよとの上からのお達しだ。」

 

「凍結ですか。じゃこの実験体どもは凍結保存ですか?」

 

「いや、こんな馬鹿でかい連中を冷凍保存していては場所がいくらあっても足りない。全て処分だ。」

 

そうか僕は死ぬのか。

 

「次の実験はなんなのですか?」

 

「アークスの生産と強力だ。まぁ生産に関しては他の部署がアークスのクローン化に成功しているからな。こちらの担当は造龍計画の最終目標であったアークスの強化だ。実験体には被験体97番を使う。」

 

耳を疑った。

 

「97番ってたしか…あのクーナですか。けど彼女は確かアイドル活動してましたよね。始末屋の仕事はいいとしてもアイドルが急に居なくなったら問題になりません?」

 

 

あんな(アイドル)の遊びだろう。適当に理由をつけて引退とさせればいい。」

 

 

「そうですか。彼女の歌は好きだったですけどね。」

 

「なんだお前反対なのか」

 

「いやいや、彼女は身体の性能は一級品です。それを弄れると思うと興奮が治りませんよ。そんでもって、あの美声の悲鳴が聞けるなんて、最高じゃないですか!」

 

「やはりお前はここに向いてるな。さっさとこれを終わらせて次の実験に移ろう。」

 

興奮している男を横目にもう一人の男がコンソールを操作しだした。

 

クーナが次の実験体?

 

クーナがアイドルを辞めさせられる?

 

 

だめだ!だめだ!

 

せっかく彼女があの時の彼女に戻ってたんだ。

 

こんな暗いところではない、明るい世界に出れたんだ。

 

 

 

こいつらがいてはクーナは幸せにならない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では実験を開始する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、僕の中で何かが弾けて意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

気が付けば、どこかはわからない場所にいた。

 

 

 

うっすらと思い出す。

 

 

自分の中のダーカー因子が自分の負の感情に反応して暴走し、その場にいた研究員を殺し、施設を壊し、脱走をしてきたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の体は実験によってすでに体はダーカーのみしか受け付けないようになっている。

 

 

本能が生きるためにダーカーを喰えと囁く

理性が生きるためにダーカーを喰うなと叫ぶ

 

 

ダーカーを喰わなければ餓死、

喰えば精神の浸食

 

 

肉体の死か、精神の死か。

 

どちらにせよ自分には死しか待っていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

意識がないときがある。気が付けば周りは倒されたダーカーや、傷ついたアークスがいる。そして思い出す。

 

 

 

 

もう時間がない。意識がある時間が短くなっていっる。

 

ダーカー因子の浸食が進んでいる証拠だ。

 

 

 

 

 

 

彼女の歌が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

もう限界だ。精神が保っていられない。

いま自分がどこにいるかもわからない。

 

どこからか彼女の歌が聞こえる。体が勝手にそちらに向かう。

 

気が付けば彼女が目の前にいた。

 

そして彼女は待ってろと言った。なら僕は待つ。

 

この心が持つまで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が呼んでいる。行かなきゃ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いは終わった。

戦いの最後、彼女は笑顔を浮かべながら「ありがとう」と言った。

 

 

 

こちらこそありがとう…名前をくれて…家族になってくれて…

 

 

身体の力が抜けていく。死ぬのだろうな。

 

もう体の感覚はない。体が消え始めている。

 

 

 

 

彼女見送られながら逝けるのだ。

これ以上はない。

 

 

 

 

 

 

しかし心残りならある。

 

 

 

彼女はステージはキラキラ輝いていたといっていた。

たぶんそこで歌っている彼女の姿もキラキラと輝いて美しいんだろうな

 

 

 

 

そんな彼女を見たかったな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----------------------------------------------

 

ハドレットが消え、その場にはハドレットのつけていた黄色いバンダナだけが残されていた。

 

「ハドレット……」

 

クーナはそのバンダナを拾い上げると彼の名前をつぶやく。

 

「クーナ、少しついて来てくれないか」

 

クーナは今すぐに帰りたかった。一人になりたかった。

今泣くわけにはいかない。部屋で一人ならそんな情けない姿を誰にも見られることもない。

しかしシロウを言葉を断ることができなかった。

行かなければいけない気がした。

 

クーナは無言のまま頷き、シロウについていく。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「ここは龍祭壇、龍族たちの聖地で、彼らは死ぬと魂はここに帰ってきて新たな身体を得るそうだ。」

 

「じゃハドレットも!」

 

「あぁ最後のとき彼は自我を取り戻していた。ならばここにいるかもしれない。」

 

「そっか、ハドレットがここに……ならやることは決まっているわね。」

 

クーナは胸にバンダナを握り込んだ手を当て、歌を歌い出した。

 

歌を歌うをハドレットをの思い出が頭に浮かんできて自然と涙があふれてきた。

 

こんなところで泣くきなかったんだけどな

 

その姿はとても儚く尊いものだった。

近くにいた龍族や通りかかった龍族も、誰もが動きを止めてその姿にその声に見ほれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハドレット聞いていてくれたかな」

 

クーナは何もない空間に語り掛けた。

 

返事はない、

 

そう思っていたのだが、何処からかか細く今にも消えそう弱弱しい鳴き声が聞こえた。

 

クーナはまわりに訴えるが誰もが聞こえてないと言う。

 

 

クーナは声が聞こえる方に走り出した。

 

その先には一つの部屋がある。その中にはたくさんの卵がある。

 

クーナは部屋に入ると徐に一つの卵の前に座り込んだ。

 

卵はまるで彼女を待っていたかのように揺れがして卵の殻が破れていく。

 

卵から鮮やかな水色の龍が孵化した。

 

龍はその弱弱しい足取りで目の前のクーナのもとに向かう。

 

その行動は初めて見た者を母親と認識する生物の本能なのか

はたまた別の何かなのか

 

それは誰にも分らない

 

クーナは黙って龍が自らの元に来るのを待ち、両手で大切に抱き上げて胸の高さまで持ち上げる。

 

「きゅ~」

 

かわいらしく鳴く龍の顔はクーナの瞳からおぼれ落ちた涙によって濡れていた。

 

龍はそれを全く嫌がらずクーナに体を寄せていた。

 

クーナはさらに強く抱きしめる。

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、ハドレット」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇどうやってクーナさんのライブのチケット手に入れたの?人気過ぎて入手困難で有名なんだよ」

マトイは隣に立つシロウを質問を投げかけた。

「いや、任務で関係者と一緒になってな、お礼としてチケットをくれたんだ。」

「そうなんだ。あ、アンコールが始まった」

 

二人の目線の先にはステージに立つクーナの姿がある。

 

『みんなアンコールありがとう!!じゃあ特別にもう一曲だけ!!』

 

そういうとクーナは高らかに手を上げる。

するとそこに一匹の水色で首に黄色いバンダナを巻いた小さな龍が舞い降りた。

小さな龍はクーナの手から肩に移り、上に向かい氷ブレスを放つ。

 

放たれた氷ブレスは勢いを失い、雪のようにクーナをまわり降り注いぐ。

 

『これは私の大事な家族に向けて作った曲、』

 

クーナその中でゆっくりと大切に曲名を告げる。

 

 

 

 

 

『〜永遠のencore〜』

 

 

 

 

Episode1 END




これにてEP1は完結です。

いろいろと変更、ねつ造しました。

水色の小さな龍のイメージはSA〇のピナです。

龍祭壇で歌ったのも『永遠のencore』です。
本当は『永遠のencore』の歌詞を載せたかったのですがそれはできないので気になる人は調べて聴いてみてください。



皆さんの感想、評価とても支えになっています。これからも頑張っていきます。

では次はEP2で会いましょう。

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