Phantasy Star Fate    作:ラトヤ

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短め


第16話 ~姉弟~

「ここは?」

 

クーナは連れて来られた場所に着くと疑問を投げかけた。

 

「ここは龍族が催しを行う際に使う場所だ。ここならば誰にも気づかれない。」

 

浮遊大陸のある場所、キューブによって作られた巨大な建造物の中にクーナとシロウはいた。

 

「龍族の長に相談したら、快くこの場を貸してくれたよ。『かの哀しき龍、その身、手遅れなれど、手向けが必要、生まれ出でし場、その身が変わろうとも、龍族の心がある限り、その心はテリオトーとともにあるべき、眠る場は用意する、送る責務は貴方たち』だそうだ、どうやら彼女なりに暴走龍に気をかけているのだろう。」

 

 

「龍族の長って……あなた本当に何者ですか」

 

 

クーナは自分で頼んでおきながらも呆れた顔でシロウを見る。

 

 

「まぁいいです……では始めましょう」

 

 

クーナはそういうと目を瞑り、ゆっくりと息を吸い、歌い始めた。

 

 

 

 

 

するとすぐにハドレットが空間を破り、現れた。

 

 

 

「来ましたね、ハドレット。…………思えば私たち姉弟のように育ってきたのにケンカなんてことはしませんでしたね。」

 

ハドレットは動かない。

 

「こう言うのはなんですが仲は良かったと思います。嬉しいときも、悲しいときも、辛いときも、一緒で……お互いに足りないものを補いあってずっと、ずぅっと……」

 

「……私はあんたがいなくてもしっかりやっていけるから、心配しなくてもいい……お姉ちゃんが終わりにしてあげる。始末屋らしく、誰にも気づかれず、穏やかに、安らかに、送ってあげる。だから最後の最後はびっくりするぐらい大暴れして見せなさい。」

 

 

「ここはあんたのために用意したステージ、そして観客は彼と私だけ、それでも明るく、激しく、鮮烈に!記録は始末され、どこにも残されない。けど裏に生きる私たちだからこそ見てくれた人の記憶に残るように!それが偶像ってものよ!あたしが目指し、あんたが支えてきたものの、全てよ!あんたはこのクーナの弟なんだからそれぐらいやってみなさい!」

 

まるでハドレットはそれに応えるように咆哮を上げる。

 

「シロウ、貴方の力を貸してください。」

「ああ、そのつもりだ。」

 

 

「さぁ姉弟ケンカ始めるわよ!」

 

 

 

 

クーナとシロウはハドレットに向かい駆け出した。

「右足から削ります!」

「了解した。」

 

クーナが指示を飛ばすとシロウはそれを了承し実行に移す。

 

ハドレットは2人を薙ぎ払うかのように腕を振るうが、そんな大振りな攻撃は簡単に避けられてさらに接近を許す。

 

 

2人の接近を嫌がったハドレットは飛び上がり、天井に張り付いた。

 

ハドレットが天井を移動すると天井が岩が落ちて来た。

 

シロウとクーナはそれを避けながらハドレットが降りてくる瞬間を待っていた。

 

しかしハドレットは降りて来ず、天井に張り付いたまま、咆哮を上げた。

 

するとに黒い霧が発生しだした。

 

そしてそこからダーカーがわらわらと姿を現した。

 

シロウとクーナはこの前の市街地のこともあり、ダーカーの出現は予想していた。

 

「クーナはハドレットだけに専念しろ!ダーカーは俺が…!!」

 

シロウがその言葉を、言い終える前にハドレットはそのダーカーの集団の上に飛び降りて、ダーカーを喰らった。

 

ハドレットの姿が変わっていく。

胸は膨らみ青く発光し、前足から黒い棘、背中からは羽が生えてきた。

 

ハドレットは前足を地面に叩きつけた。するとシロウとクーナそれぞれの足元の空間に歪が走った。

二人はすぐさまそこから飛びのく。

 

二人が飛びのいてすぐ歪が走った空間から赤黒い先の尖った柱が突き出してきた。

 

そしてまたシロウとクーナの足元の空間に歪が走る。

 

二人は次々突き出してくる柱を避けながら反撃の隙を伺っている。

 

そして攻撃のインターバルを読み切った二人はハドレットに向かって突撃した。

 

再び右足を削っていく。

 

そしてとうとう耐えかねたハドレットは膝をついた。

 

項垂れてその頭が地面に近づいた。

 

クーナはついた膝を足場にハドレットの頭部へ飛び上がった。

 

 

 

 

ハドレットが散弾のようにブレスを放った。

 

「くっ!」

空中にいたクーナは避けることが不可能、刃で受けるしかなかった。

 

ブレスは直撃こそしていないが、体重の軽いクーナは刃でガードした際の衝撃で飛ばされた。

 

数十メートル飛ばされた後クーナは地面に落ちた。

 

 

 

痛みに耐えながらもすぐさま立ち上がるが、

 

前を向くとそこには8つの赤黒い巨大な弾がこちらを向いていた。

 

「っ!」

 

そしてそのすべてがクーナに向かって発射される。

 

 

 

刃ではガードしきれないほど物量、除けようにも痛みでまだまともに動けない。

 

万事休す、

 

 

 

そう思った時が、

 

 

 

熾天覆う七つの円環(ローアイアス)!!」

 

クーナの前にシロウが割り込み、七つの光の花弁が展開された。

 

7枚の花弁は決して欠けることなく、2人を守りきった。

 

「クーナ大丈夫か!」

 

「ええ、助かりました。もう大丈夫です。」

 

「ならば、行ってこい。」

 

2人の視線の先には膝をつくハドレットの姿がある。

 

クーナは意を決して、ハドレットを向かって駆け出す。

同時にシロウはその手に黒い弓を投影する。

 

クーナはハドレットに接近する。

ハドレット再び巨大な弾をクーナに撃ち込む。

 

 

 

しかし全てシロウの矢によって迎撃されてしまう。

 

そしてシロウの一矢がハドレットの頭に直撃する。

 

その衝撃でハドレットの攻撃が止んだ。

 

 

 

その隙はクーナはハドレットの眼前まで迫った。

 

そして眼が合う。

 

クーナの中で今までのハドレットとの思い出が蘇る。

 

(楽しい時、辛い時、互いの支え合った過ごした、

 

私の唯一の家族

 

心配させないためにここで刃を鈍らせるなんてことはしない。

 

死んでいく弟に、新たなた旅に出る弟に、これだけは伝えたい)

 

 

 

「今までありがとう」

 

クーナの刃がハドレットに深々と突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ハドレットは力なく倒れた。

 

 

 

 

 

 

もうすでに虫の息のハドレットに近づく2人、

 

するとシロウがあることに気づく。

 

「・・・・・・・・」

 

「クーナ、きみを呼んでいるぞ。」

 

「何!何を伝えたいの!」

 

「…きみの…うたを………」

 

 

現実は残酷である。

最後を言葉を言い終えることさえ許さない。

 

 

 

 

 

「ハドレット!!」

 

 

 

 

ハドレットの身体は黒い粒子となって崩れ去った。

 

 

その場にはシロウとクーナとハドレットの黄色いバンダナが残されるだけだった。

 

 

 




次でやっとEP1が終わるぞーーー!

EP1だけで1年以上かかってしまいました。



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