ポケモン「絵描き」の旅【未完】   作:yourphone

99 / 109
チャンピオンの余裕~電話にバトル~

「いけっ、ハッサ――」

 

プルルルル プルルルル プルルルル

 

「あ、ブール。そういちろうさんからよ」

「え!?」

 

何て言うかこのタイミングで!?

 

「あー、すいませんちょっと待ってて下さいシロナさん」

「ええ、良いわよ」

 

ニッコリと笑いかけられる。

後ろを向き、ホログラム通信に出る。

 

あ、voiceonlyだ。

 

「はい、ブールです」

『おお、やっと繋がったか! すまないブール、どうにも俺は機械が苦手でな……通信出来るまでこんなにかかっちまった!』

「お父さん……ちゃんとカロスに戻れたんだね」

『当然だろ。俺はお前のちちお『ブール、ブール!』『生きてるんでしょうね!』『キリ!ケン! お父さんの邪魔になってるでしょ!』おいおいお前ら……』

 

ホログラムがガンガンぶれる。

 

「カラお姉ちゃんキリお姉ちゃんケンお兄ちゃん……元気そうで良かったよ。……クルお兄ちゃんは?」

『……良かった。忘れられたのかと』

「あはは、まさか。むしろ僕の事を忘れてないか心配だったよ」

『……。……実はちょっと――――』

「え? ちょっと……何?」

『なんでもない』

 

なんでもなくないよね!?

 

『クル! 速く変わりなさいよ!』『……』『ふん、それでいいのよ、それで』

「キリお姉ちゃん、虐めは良くないよ」

『い、虐めじゃないわよ!? ……速く帰ってきなさい、良いわね? そしたらわたしがボコボコにしてあげるわ!』

「出来るといいねー」

『ムキー!!!』

 

ドタンバタンと暴れる音。

 

『はいはいキリ姉ちゃんは落ち着いてねー。暴れなーい暴れなーい。ブール、姉ちゃんを怒らせないでよ……』

「あー、ごめんなさい」

『まったく。……ちゃんと帰ってこいよ?』

「分かってるよ」

 

おお、ケンお兄ちゃんがお兄ちゃんっぽい。

 

『はい、カラ姉ちゃん』『うん。ぶ、ブール? カラです。元気? 怪我してない? あと、えっと、えっとぉ……』

「大丈夫だよ、カラお姉ちゃん。そっちこそ病気とかしてない? キリお姉ちゃんに虐められてない?」

『そ、その、病気はしてないわ、よ』

「虐められてるんだ……」

『あーあーあー!? 大丈夫大丈夫されてないされてないわよ!?』

「あはは。……元気なら良いんだよ。大丈夫。ちゃんと帰るから、ね」

『うん。――でも、その言葉を聞きたいのは、私じゃないの』

「え? ……あぁ」

 

そうだ。まだ一人、話してないね。

 

『あ、お父さん……はい』『おう。……ブール』

「うん。お母さんは?」

『あー……ちょっと、その、病気で、声が出せないんだ』

「病気!? そ、え、だ、大丈夫なの!? 風邪!? 熱!? それとも……」

『落ち着け、命に関わるような危ないやつじゃない。だから声だけでも聞かせてやってくれ』

「分かった。お母さんは?」

『ちょっと待て――――』

 

――長い。移動が長い。それともそう感じるだけ?

 

『シリル。ブールから電話だ』

 

お父さんへの返事はない。そ、そんなに酷い病気なの?

 

『ブール、良いぞ』

「ぁ……お母さん! お母さん!?」

 

あ……っと、お母さん病気なんだから大声は駄目かな。

 

「お母さん、僕だよ。ブールだよ。その……僕は元気だよ。だから、ええと、ありきたりだけど、元気になってね」

『……ブール?』

 

小さいけど、お母さんの声だ。掠れてるけど、聞き間違えないよ。

 

「うん。そうだよお母さん」

『ブール?』

「うん」

『本当に、ブール、なの?』

「偽物の僕でも居るの?」

『ブール……ブール……! 良かった……死んでしまったのかと……良かった……!』

「死なないよ!?」

 

あ、そっか。お母さんから見たら急に自分の子供がどこかに連れていかれたみたいに……。

 

「うん……ごめんなさい。速く連絡しておけば良かったね」

『良かった……』

 

ブツッ

 

「へ?」

「通話……切れましたね」

「充電? 通信障害? ……ったく、いいとこだったのに」

 

ん……でも、まあ、きっと大丈夫。だって生きてればまた会えるし。

 

「さて。すいませんシロナさん、遅くなりました」

「いいのいいの。正直、ドブドブとしか聞こえてなかったし、ね」

 

なんで残念そうな顔するの……?

 

「……んじゃあ、外に行きましょうか。流石に家の中じゃポケモンバトル出来ないでしょ?」

「そうですね……ブールさん、し、シロナさん」

「うん!」

「ええ!」

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

サザナミタウンのバトルフィールド。

ブールとシロナが向かい合う。

 

「いって、クーリャン!」

「ハッサン!」

 

シロナが出したのはグレイシア。ん……耳で上手く隠してるけど、スカーフを着けてるわね。

 

「クーリャン、ねぇ……」

「メイコさん、どう見ます?」

 

レナが聞いてくる。

 

「んなのブールの負けに決まってるでしょ」

「え?」

「見てりゃ分かるわよ」

 

火を見るより明らかだけどね。

 

「クーリャン、『れいとうビーム』!」

「ハッサン避けて『ふるいたてる』!」

 

「グ~、ル~~」

「バウッ」

 

ハッサンが横に跳ぶが、その足を『れいとうビーム』がかする。

 

「バウッ!?」

「ハッサン!?」

 

結果、足の一部が凍り、滑って転倒。

そしてシロナはその隙を見逃すようなトレーナーじゃないわ。

 

「クーリャン、『れいとうビーム』!」

「ルル~~!」

 

ハッサンが一瞬で凍る。どうみても戦闘不能ね。

 

「く……戻って、ハッサン」

「そんな、ハッサンがあんなにあっさり……!」

 

レナは有り得ないものを見たような顔してるけど……。

 

「ま、想定内ね。グレーキュレムとやりあってから一度もバトルしてないんだもの。それに加えてハッサンは進化したばかり。動きが鈍るのも当然」

「そう、ですか……」

 

納得いかない? そういうものよ。

さて、ブールは次に誰を選ぶのかしら。

 

「ギィカ! お願い!」

「ギッガアァァァ!」

 

ふーん。

 

「そう……『れいとうビーム』!」

「『まもる』!」

 

一回は止めた。次は……

 

「『れいとうビーム』!」

「『じしん』!」

 

スカーフのグレイシア……もとい、クーリャンの方が速い。

だけど、ギィカは特性で一撃は必ず堪える。

 

『じしん』がクーリャンに当たる。

 

「……。まさかクーリャンを一撃だなんて……なかなかやるわね」

「やられっぱなしじゃカッコ悪いですしね!」

 

うんうん、ブールも調子が戻ってきてるわね。さっきはバカみたいに緊張しまくってたしね。

 

「なら……行って、ハート」

 

出てきたのはトゲキッス。……トゲキッス(白い悪魔)!?

 

「うげぇ!?」

「行くわよ! 『エアスラッシュ』!」

「『うちおとす』!」

 

あーーー。

 

まあ、すばやさの差があるからね。

しかもさっき限界まで削られたし……。

 

「……まあ、仕方無いよ。ありがとうギィカ」

 

ギィカは倒れた。と、なると次はどうするのかしら。

 

 

てかシロナ、あんた誰にウィンクしてるのよ。

 

 

~○~○~○~○~○~

 

 

「さあ、次はどうするのかしら?」

「…………」

 

残りの手持ちはペティとレイカ。そして相手はハートこと、トゲキッス。さっき『エアスラッシュ』使ってきたってことは……となると……。

 

「レイカ!」

 

ペティじゃ少し荷が重い。

 

「ナットレイ……?」

「ナットレイですよ。色違いですけど」

 

触手がピンク色になってるんだよね。普通は緑。

 

「へぇ……可愛いわね♪」

「ナトゥッ!?」

 

レイカが触手をうねうねさせる。あー……照れてる?

 

「でも手加減はしないわ! ハート、『でんじは』!」

「レイカ『10まんボルト』!」

 

ひこうタイプ入ってたよね!

 

フィールドを電気が飛び交う。……流石に耐えるか。

 

「『ジャイロボール』!」

「『エアスラッシュ』よ!」

 

レイカが回転を始める。

 

けど、()()()()『エアスラッシュ』が目元にあたり、怯んでしまう。

 

「ぐ……レイカ、もう一度!」

「そういうの嫌いじゃないわ……だけどゴメンネ!『だいもんじ』!」

「なっ!?」

 

大の字に広がった炎がレイカを包む。

 

レイカの回転が、止まる。

 

「ナッ…………トゥ……」

 

はがね、くさタイプのレイカにほのおの技は凄く辛い。

具体的には普通の四倍のダメージが入る。

 

「……大丈夫、後はペティが何とかしてくれるよ」

「ナッ、トゥ……」

 

レイカをボールに戻す。

 

「ペティ!」

「……ペァギュ」

 

あれ……なんか元気無いね。

 

「ペティ?」

「…………」

 

な、なに? 無言でこっち見てこないでよ……怖いから。

俺、何かしたっけ?

 

「あらあら……」

「ったく」

「ブールさん……」

 

シロナさんは頬に手を当ててるし、メイコさんは見てられないとばかりに首を振ってる。

レナさんは願い事でもするかのように、心配そうに、手を組んでこっちを見ている。

 

「…えぇと……ペティ、頑張ってね!」

「ペァギュゥ」

 

溜め息をつかれた。地味に……辛いです。

 

「準備はできたかしら?」

「あ、はい。(多分)大丈夫です!」

「なら。ハート『エアスラッシュ』!」

「避けて『どくどく』!」

 

飛んでくる風の刃はステップでかわされ、毒の塊が白い羽毛に当たる。

 

「へぇ……あれを避けるのね……」

「ペティ!」

「ペァ……ギュゥ――――アアァァァア!」

 

うっわペティなに怒ってるの!?

 

「『でんじは』!」

「『ベノムショック』!」

 

パリパリした電気が、紫の電流とぶつかりあい弾きあう。

 

「もう一度よ!」

「まだまだ!」

 

でんきタイプのポケモンが居ないのに電気が場を支配する。

 

「「もう一度!」」

 

お互い譲らない。

 

弾けて、打ち消しあって、当たらない。

 

そして。

 

「っ、きた! 『ベノムショック』からの『メガホーン』そして『おいうち』!」

 

こっちが先に戦術を変える(せめにはいる)

 

「迎え撃って! 『だいもんじ』!」

 

シロナさんが指示をだす。

 

 

が、遅い。『かそく』してなおかつマヒ状態になっていないペティには遅すぎる!

 

「やれぇ!」

「ペァギュゥアアァァァア!」

 

紫電を走らせ、角を光らせる。

 

飛び上がり、『ベノムショック』(でんげきをあびせる)

そして『メガホーン』(つのをたたきつける)

 

「とどめぇ!」

 

最後に踏みつけ、高々と跳躍。着地。

 

ハートは地面に落ちる。

 

「……」

「……」

 

瞬間の静寂。

 

「ありがとう、ハート」

 

シロナさんがハートをボールに戻す。

 

「調整に付き合ってくれてありがとうね、ブール君♪」

 

…………それは……つまり……

 

「勝っ、た?」




4008文字です。
二話分詰め込んだから長いこと長いこと。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。