終わりて
戦士たち
暗い。ピーピーと音が聞こえる。
あ、誰か来たみたいな音がした。ってことはここは何処かの部屋? にしても暗いなぁ。
「あら、レナ」
「………………」
あ、メイコさんの声。案外近くに居る。
「グレーキュレムと全く戦えなかったけどどんな気持ち?」
「…………」
「ねぇねぇ、今どんな気持ち? 愛しのブールのお手伝い出来なくてどんな気持ち?」
「……チッ」
「!?」
今のはメイコさんが悪いと思うけど、レナさん怖っ。
「……! ブールさん――起きてます?」
うん。……あれ、口が動かない。体も全く動かせない。
なんだろう、この世界に転生したばかりの時を思い出す。なら、暗いんじゃなくて目を開けられないだけ、か、ぁ。
―――ん? あれ、なんか、、、い、しき、が
~○~○~○~○~○~
目が覚めた。けど目を開けられないのはそのままだ。
「はーあー。レナは不機嫌だしNはハンサムに連れてかれたしブールは起き上がってこないし」
「あら、メイコさん。あなたもまだ起きちゃ駄目なのよ?」
あれ、ジョーイさんの声だ。ってことはここはポケモンセンターなのかな。
「いーのよ、別に飛んでる訳じゃ無いし」
「はぁ。全く……そんなに心配なの?」
「暇なのよ」
「―――またそんな事言って。意地っ張りなのね」
「今更ね」
そうだよね。まぁ、意地っ張りっていうよりは素直じゃない、みたいな。
「んで、ブールはどうなの?」
「そうね。心拍は一定。少なくとも、表面化している傷も無い。………ただ、血が。他の体液もまだ足りない様ね」
「あー。……使いまくってたしねぇ。………ねぇ。本当にお願いするわよ」
「はいはい」
「あたしだって……ブール――――
その先は、聞けなかった。
~○~○~○~○~○~
「まだなのか?」
「らしいわね」
いや、意識は戻ってはいるんだよ。ただ、何故かまだ体が動かせないんだよ。
「んにしても、そろそろ二週間だぞ? 基本ポケモンってのは三日あれば大抵の傷は自然治癒するんじゃないのかよ」
「
「あーー、いや」
普通、ね。チョイチョイ聞くところによるとグレーキュレムは居なくなって、ゼクロムがブラックさんの元に、レシラムはNさんの元に居るらしい。
強かったな、グレーキュレム。
「だけどお前はもう完治してるだろ?」
「どこがよ」
「全部がだよ」
へぇ、メイコさんもう治ってるんだ。俺も治ってはいるらしいんだけどなぁ。
「んなこと言ったってジョーイが出してくれないんだからしゃーないじゃない?」
「はぁん。ジョーイはメンタルケアもするらしいからな。そういうことだろ?」
「そういうことかもね」
どういうことなの?
……ん、また眠くなってきた。徐々に間隔は長くなってきてるけど、まだ半日も起きてられ、な、い……
~○~○~○~○~○~
「あらレナ。昨日はどうしたの?」
「ブールさんのポケモンたちを見てきてました。ギィカ以外は皆元気になってましたから受け取ってました。ギィカも、今日退院できます」
「ふむ、よろしい」
あ、皆元気になったんだ。良かった。
うーん、そういえばなんかお腹が空かないね。
「まだ、ですか?」
「そうねぇ。流石にそろそろ起きると思うけど」
「そうですか……」
「案外、叩けば起きたりしてね」
「…………」
「ちょ、冗談よジョーダン! ストップ!」
え、ちょ、レナさん!?
「落ち着きなさい、ね?」
「はぁ、はぁっ、………ブールさん、早く起きてください……」
そんなこと言われても。一応起きてるし。
「そうねぇ、レナ。ブールとあんたのポケモンたちに特訓してきなさい。その間になんか考えといてあげるわ」
「……何をですか?」
「ブールを起こす方法。ほら、行った行った」
誰かが部屋から出ていく音。
「さぁて。どうすりゃいいのかしら。キスでもさせる?」
フェアッ!?
「…しっかし……あ~。帰りたい。家に帰りたいわ。お父さんのあの声を聴きたいわ。……とぅー。違うわね。とぅー。やっぱりおかしい」
俺には全く同じに聴こえるけど。っていうかこんな弱音を吐いてるメイコさん初めて見た。
そっか、メイコさんと俺は元々カロス地方から飛ばされてきて。俺はお父さんに会えたけどメイコさんはお父さんに会ってないし……寂しくなったのかな。
「とぅー、とー、とーぅー、とぅー、とととととー」
その日は、眠るまでメイコさんの声が響いていた。
~○~○~○~○~○~
起きた。けど、暗い。朝なのか夜なのか分からないのはつまんないや。
……静かだ。メイコさんは寝てるのかな?
(((キュルアァァァァァア!)))
っ、グレーキュレム!? ま、マズ、動けない!
「ァッ!? ~~~ッ!」
熱い、熱い! 痛いいたいイタイ! 燃える! 燃えるぅ!
やめて嫌だいたい! 怖い恐いこわいコワイ!
助け、助けて、誰かぁっ!!!
「ァ~~~~~~~ッッッ!!!」
「―――ブール、ブール!」
メイ、コ、さん! 助けて、痛いよ、辛いよ、熱い熱い熱い! いたいいたいいたいいいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたい!
「ブール、落ち着きなさい! グレーキュレムは居ないわ! 痛いのは気のせいよ! ブール!」
気のせいな訳無い、痛い、痛い!
あ、ぐぁっ、く……あ……痛く、無くなったけど。
―――あぁ、死にそうだ。
~○~○~○~○~○~
「ジョーイさん、ブールはどうしたの!? ねぇ、痛がってたわ! ねぇ、ねぇ!」
「静かに!」
「! ……ごめん、なさい」
「……はぁ。これは多分フラッシュバック現象ね」
「……つまり、グレーキュレムとのバトルを思い出したの、ね?」
「そうなるわ。……でもほら、逆に言えば意識は有るってことだし、痛がってるっていうのは生きてる証拠のようなものだから――」
「ブールは」
「?」
「何で飛び降りたの? あたしには分からない」
「………」
「だって、夢の話よ? そんなのを真に受けて、普通飛び降りる? ううん、有り得ない。……ねぇ、ブールは、そんなに現実が嫌だったの? ねぇ。答えなさいよ……!」
2390文字です。
さて、ブールは目覚めるのか? 目覚めなかったら、この小説終わってしまうのだが……