ポケモン「絵描き」の旅【未完】   作:yourphone

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せっかくサブタイトル五七五にしたのに三話じゃ終わらなかった。むむぅ。


転生者 ~倒したい~

「そんな……」

「うっそでしょ……?」

「あ、ありえねぇ」

 

さっきのあの攻撃は…俺は攻撃しなかったとはいえ……かなりの攻撃だったのに。

 

「「「 ギグュェアァァァァ!」」」

 

三体の伝説のポケモンが融合したポケモン――グレーキュレムがタマゴを壊し……吸い取り………姿を現す。

 

その姿は、巨大。かなり大きいツービーを縦に五体並べてもまだ足りないぐらい。チラッと後ろを見るとグレーキュレムの影が遠くの森さえも隠していた。

 

右半分はゼクロムで左半分はレシラムの体。そして、まるで日曜の朝にやる戦隊もののロボのように胸元にキュレムの顔。右半身の黒と左半身の白、その境を隠すかのように体が凍っている。

 

背中から一対の大きな翼。羽ばたきはしていないけど……

 

「「「 ギャレリャアァァァァァッ!」」」

 

ブヴゥゥゥゥウンと奇妙な音をさせながら浮かぶ。

 

「くっふははははは! 分かる、分かるぞ! グレーキュレムゥ!」

 

ゲーチスが高笑いし、グレーキュレムに指示を出す。

 

「『凍る過去』です!」

「「「 キュルリアァァァア!」」」

 

は? 何それそんな技無い。知らない。

グレーキュレムが吼え、冷たい風が吹き付けてくる。

 

「っ!? これ、は」

「ギッ!?」

「ギィカ?レナさん?」

「ブ―ルさ―――」

 

レナさんとギィカが凍り付いた。氷漬けになった……!?

 

「レナさん! ギィカ!」

 

「……あいつ、ポケモンも人間も一緒くたに攻撃しやがったぞ!」

「しかもなんてえげつない技なのよ!」

「………戻って、ギィカ」

 

ギィカをボールに戻す。

 

「ペァギュアァァ」

「ナットゥ……」

「バウッ」

「大丈夫。大丈夫だよ、みんな」

 

レナさんの方を見る。ここまで見事に凍ると、むしろ称賛したい気持ちになってくる。

 

「レィシー、サナ、ツービー」

 

レナさんのポケモンたちに声をかける。三体ともこっちを見たね。

 

「レナさんを連れて近くのポケモンセンターに行って」

「レラ!?」

「サァ、サァ~!」

「グルルルル………」

「今はレナさんの命が最優先! ここは僕たちがどうにかする!」

「………サァ~」

「レラ……ラッ!」

 

サナが『サイコキネシス』でレナさんを浮かせ、レィシーと共にツービーの上に乗る。

 

「うん、行って!」

「ベアァァァ!」

 

ツービーが走る。その姿を最後まで見送ることなく、前を見る。

 

「フフフ……どうせすぐに世界はわたくしの物となるのに。まぁ良いでしょう。グレーキュレム、『神鳴る現在』」

 

「「「 バリバリュウゥゥゥ!」」」

 

グレーキュレムの巨体から大量の電撃が放たれる。

一発一発が『かみなり』レベルの大技なのが分かる。

 

「ちっ……戻れジャローダ! ローブシン! シビルドン! クリムガン!シャンデラ! 全力で吹っ飛ばせ!」

「みんな、一々指示はしない! 行くよ!」

「ハッサンあんたはあたしを守んなさい!」

 

『へんしん』を溶く。駆ける。

 

レイカはブラックさんの前で触手を上下に伸ばしている。きっと避雷針になっているつもりだ。

メイコさんはハッサンと共に大きく迂回しつつゲーチスに近付いている。

ブラックさんのポケモンたちも、それぞれの技を限界まで放っている。

 

『神鳴る現在』がクリムガンに当たる。一撃で倒れる。

確認出来たのはそこまで。真横に『神鳴る現在』が一発落ち、衝撃が襲ってきて吹き飛ばされる。

 

「うわあっ………ペティ!?」

「ペァギュアァァ!」

 

飛ばされた先、ペティが受け止めてくれる。よし、なら!

 

「足元までで良い! 連れてって、ペティ!」

「ペァギュッ!」

 

特性『かそく』のおかげで極限まで素早く走るペティ。

う……しがみつくだけで精一杯だ……!

 

だけどその分、近付くのが速くなる。

 

「むぅ、三匹程度しか倒せませんでしたか。まだ使いこなせないということですか? ……ならばグレーキュレム! 『咆哮』!」

 

「「「 キュルキュルキュル――――」」」

 

グレーキュレムが顔と胸、二つの口から息を吸い込む。

そして巨体というのは、それだけの行動でも周囲にかなりの影響を及ぼす。

具体的には、豪風が吹く。

 

「っわあ!?」

 

ペティから引き離された! うわっいたっ、ぐぐ……。

ゴロゴロ転がってようやく止まる。

でも、寝てる暇は無い!

 

 

そして、起き上がろうとして…………

 

 

 

 

 

 

「「「 ――――ッ!!!!!!!!!!! 」」」

 

 

 

 

 

 

逆さに飛ぶキャモメが三匹見えた。

 

 

……気付いたら世界が横倒しになっていた。

身体が動かない。手を、脚を、顔を、動かしているつもりなのに、行動に出ていない!?

 

「――――! ――――レーキュレム、『燃え尽きる未来』です」

 

ようやく見えてきた視界を覆いつくすかのようにグレーキュレムが存在している。

まずいまずいまずい、技名からしてほのおタイプの技なのは分かるけど身体が動かない、避けられない!

 

狙われてるのは、俺だ……!

 

「「「 キュルリアァァァア!」」」

「っ~~~…………あれ?」

 

何も起きない。あれ?

 

ま、まぁ、ならチャンスってことでインクの色は白。『そらをとぶ』で一気に上へ。『神鳴る現在』の発動は終わってるから電撃が飛んでくることもない。

 

「ブール!」

「メイコさん! ハッサンは!?」

「進化してすぐにやられたわ!」

「そうですか!……え、はいぃ!?」

「詳しくは終わってからよ!」

 

並んで上を目指す。かなり頑張ってるのにまだグレーキュレムの腹の辺り。

 

「くっそでかすぎんのよ……チリ?」

 

メイコさんが何かぼやいた後に、何か呟く。チリ?

 

「メイコさん?」

「…………ちっ、ブール。こいつは任せたわ」

「はい?」

 

メイコさんが俺の背中を撫で、急転換して下へ。あっと言う間もなくに地面に墜落する。

ぐっ……助けるか? いや、任せられた。

ならやることは決まってる!

 

「メイコさん、レナさん、俺はやるよ!」

 

飛ぶ。………下から絶叫が響いてきた気がしたけど、振り向かない。そんなことどんなことだろうが良いから飛べ! それしかない!

 

「「「 バリバリュウゥゥゥ!」」」

 

グレーキュレムから雷がほとばしる。

 

「あぶっ、あぶなっ、うわっとぉ!」

 

避けろ避けろ避けろ! 多分だけど攻撃は顔面にしか意味が無い! あの一番高い顔のところまで飛ぶんだ!

 

「どっぶりゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 

「「「 キュルキュルキュル――――」」」

 

またも豪風。抗えず、吹き飛ばされる。そして風の行き着く先は、グレーキュレムの口! ラッキー!

 

……いや待て、このままだとさっきの『咆哮』とやらを喰らっちゃうんじゃ?

 

「それは止めれば良いだけだろっ!?」

 

インクの色はオレンジ。いままで、このタイプの技は使ってこなかった。何故なら俺の技は全て自分のイメージを絵にしたもの、イメージしづらいのは使いにくかったからだ。

だけど、これなら知っている!

 

「うおおおおっ、レィシーの『インファイト』だぁっ!」

 

狙うは顎。上に向けて殴れ蹴れ頭突け肘膝肩踵全身を使って口をふさげ!

 

「「「ッ! …………! ――――!」」」

 

よしっ、上手くいったっぽい!

こっからはようやくこっちのターンだ!

 

「『二重の炎雷』です!」

 

「「「キュルリアァァァア!」」」

 

『クロスファイア』と『クロスサンダー』が混じったような物体がグレーキュレムの頭上に現れる。見たまんまの技っぽいね。

問題があるとすれば……流石にこの距離じゃ避けられなさそうなぐらい大きいって事かな。

仮に避けられる距離まで行ったとしたら、今度こそ『咆哮』を喰らう。

 

こうなったらがむしゃらに行く!

 

「『がむしゃら』あぁぁぁぁぁあ!」

 

尻尾を叩き付ける。

 

―――その先に、インクが出ていない。

 

ふさっと気の抜けた音が鳴る。

 

「………………」

 

フッと背中のインクが蒸発し、翼が消える。

当然落ちる。

 

「…………」

 

インク切れ。始めてだよ、こんなの。このタイミングで、インク切れは……あんまりだよ。

 

『二重の炎雷』が迫る。

 

下を見ると、ブラックさんがこちらを見上げてる。その周りには倒れ付したポケモンたち。

それ以外にも、俺のポケモンたちはみんな倒れてる。

……真下にある赤いのはメイコさんかな? ピクリともしていない。

 

「………はは、あははは」

 

こんなの笑うしか無いじゃん。伝説のポケモンに、勝てる筈が無かったんだね。ましてやグレーキュレムは伝説三体分。

転生者だからなんだって。『選ばれた』からなんだって。…………意味、無いじゃん。

 

『二重の炎雷』が当たる。

 

熱い、痛い、身体中を燃やされて中身さえも焼かれて。

自分が叫んでいるのか笑っているのかも分からない。

 

何か、硬いものにぶつかる。地面、なら良いんだけど……目の前が見えない。

見えているのは、赤と黒の視界だけ。

 

死んだのかな、俺。

 

「…へい……ブール。……重いのよ……どきなさい……」

 

……メイコさん。メイコさんも死んだの?

 

「……まだ死んじゃいないわよ」

 

そう、ってことは俺も生きてるの?

 

「…どうかしら。もうすぐ死にそうだけど」

 

………だよね。…レナさん、大丈夫かな。

 

「生きるわよ、あの子なら」

 

…寒い。ここ、そういえば寒いね。

 

「……ねぇ、ブール。そろそろグレーキュレムが止めを刺そうとしてくるころだけど。止めてきなさいよ」

 

無理だよ、勝てない。尻尾のインクも切れた。

 

「うじうじと……。てか取り敢えずどきなさいよ。こっちはさっきまで全身火だるまだったんだからね」

 

……そうなの?

 

「そう。あんたの身代わりになってあげたのよ」

 

…………?

 

「んーで。あんたがここでやられたら……そういちろうさん、なんて言うかしらね。名前も知らないあんたのお母さんは。レナは、あんたのことをどーゆーかしらねー」

 

さあ。分かんない。興味も無い。

 

「ちっ、『わるあがき』って技があるのよ、知らない?」

 

知ってるけど、グフッ

誰かに蹴られた。

 

「よくもまぁわたくしの邪魔をしてくれましたね、ポケモンの分際で」

 

なんだ、ゲーチスか。

 

「『二重の炎雷』でやられたと思ったのですが……まさかまだ生きているとは。しぶといですね」

 

ドブッ。また蹴られた。

 

「ならばわたくしが直々に終わらせてあげましょう」

 

蹴られた。痛い。

蹴られた蹴られた。痛い痛い。

蹴られた蹴られた蹴られた。痛い痛い痛い。

 

「痛い……」

「ふむ…まだ息があるのですか。これだからポケモンというのは。仕方ありませんね、グレーキュレム!」

 

「「「 キュルリアァァァ」」」

 

「『凍り付く過去』です。このドーブルと……ついでにそこの赤いべラップを凍らせなさい」

 

……ん、なんか熱い。これは…ビリジオンから貰った草笛…。そうだ、来てもらおう。

 

「む、待ちなさいグレーキュレム。……その草。何かありますね」

 

あ…………踏みつけられた。踏みにじられた。

 

 

空を見る。 グレーキュレムが見える。そのさらに上は、雷雲。それとも、雪雲?

あ、なんか雲がレナさんみたい。

 

『ブールさん』

 

雲のレナさんが声をかけてくる。幻聴かな。

 

『負けないでください』

 

無理言わないでよ。

 

『絶対に、勝ちます。勝って、改めて、告白します。……だから、負けないでください』

 

あの時のか。……なんて答えたっけ。確か―――

 

 

「勿論」

 

そうか。そうだった。約束は守らないとね。

 

「ふむ、ここまですればもう使えないでしょう。ではグレーキュレム!」

 

ゲーチスがグレーキュレムに指示を出す。

 

「ねーぇあんた」

「『燃え尽きる未来』です!」

 

メイコさんの言葉を無視するゲーチス。

 

「チェックメイトよ」

 

「一人忘れてるぜ! ジャローダ!」

「シャアッ!」

「!?」

 

ジャローダがゲーチスに巻き付く。

 

「さりげなくボールに戻しといて良かったぜ。ジャローダ、絶対に緩めんなよ」

「ぐ…くく……」

「どうだゲーチス、ジャローダに攻撃したらそのままお前に攻撃が来るぜ? 見た感じあれに小回りが効くような技は無さそうだしな」

 

俺も、ようやっと起き上がる。身体中が痛い。

 

「ふ、ふふふ……ダークトリニティ!」

「!?」

 

黒ずくめの三人が現れる。あの、電気石の洞穴の前で出会った三人だ。

 

「助けなさい!」

 

ゲーチスが命令する。

 

 

「どうしたのです! 速くわたくしを助けるのです!」

「…………」

 

三人は動かない。

 

「ゲーチス様、終わりにしましょう」

「!? な、何を」

「そこのメイコとやらが言った通り、チェックメイトです」

「……裏切るのですか」

「いえ。これはあくまで……」

「裏切るのですか! ならば良いでしょう! グレーキュレム! こいつらを消し飛ばしなさい!」

 

「「「 キュルキュルキュル――――」」」

 

まただ。この鳴き方は…『咆哮』。

 

「ちっ、わざわざ大人しくしてあげてたらこれよ!」

 

メイコさんが悪態を吐く。なんだかんだで元気そうだね。

 

そうだ……止めなきゃ。俺が止めなきゃ。

 

「ド………ブッ……!」

「あらブール、起きて……?」

 

尻尾を……駄目だ、グレーキュレムは浮かんでる。飛ばなきゃ届かない。

 

「ブール、伏せなさい!」

 

『そらをとぶ』? インクが無い。

『じゅうりょく』で落とす? インクが無い。

『うちおとす』? インクが無い。

 

 

 

 

 

「「「 ――――ッ!!!!!!!!!!! 」」」

 

 

 

 

 

 

 

(タオセ)

 

なんだ、この声。

 

(タオセ)

 

どっかで聞いたことあるような。

 

(タオセ、タオセ)

 

……あぁ、そうか。俺の声だ。

 

『そうです。貴方の本能の部分です』

 

あ、二番さん。スマホじゃないの?

 

(タオセ、タオセ)

 

『そもそもは、こうして脳内に直接話していました』

 

そうだった。

 

(タオセ、タオセ、タオセ)

 

うーん、ちょっとうるさいかな。

 

『…………』

 

(タオセ、タオセ、タオセ)

 

どうしたの二番さん。

 

『ブールさん。もしもグレーキュレムを倒したいのならばこの声をよく聞くことです』

 

……ん?

 

(タオセ、タオセ、タオセ、タオセ)

 

『そうすれば恐らくグレーキュレムを倒せます』

 

そうなの?

 

(タオセ、タオセ、タオセ、タオセ)

 

『えぇ。ただし、知識を消費します。知識を使い限界を超えます。オススメはしません』

 

ふぅん。

 

(タオセタオセタオセタオセタオセ)

 

………なら。どうなるかは分からないけど。

 

世界を救ってみようかな。

 

(タオセタオセタオセタオセタオセタオセ)

 

 

「タオス」




5549文字です。

まあ、落ち着いて。
色々言い訳するから。
取り敢えず、オリポケはこれと次回だけしか出しません。
正直、某人形の二次創作に引っ張られてます。

次回、ブール覚醒。

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