「どこへ行けば良いのよ?」
「ジャイアントホール。ブラック君が既に戦ってる!」
「嘘!? 速く行こう!」
『へんしん』を溶く。すぐに『そらをとぶ』で背中に翼を描き出す。
「サナ、お願い」
「サァ~」
「ギギギアル!」
「ギッギギッ」
Nさんはギギギアルに乗って、レナさんはサナのサイコキネシスで浮遊する。
「お坊っちゃんが先行しなさい! あたしらは後から着いてくわ!」
「分かった! トモダチ、お願いだよ!」
「ギギギッ」
意外とギギギアルって速く飛ぶんだね。知らなかった。
「……で、あの人って誰なんですか?」
「あれはお坊っちゃんことN。何でも、ポケモンの心が分かるとかほざいてる優男よ」
「ちょ、聴こえてるからねメイコちゃん!」
前から声がとんでくるが、
「聴かせてんのよばーか!」
メイコさんには露ほども効かない。
なんかNさん、疲れてるね。
「Nさんは前、マスコミに追われた僕たちを助けてくれてね。そこから少しの間一緒に旅をしたことがあるんだ」
「成る程」
結構なスピードで飛んでるからビュービューと風が吹き付けてくる。うぅ、なんか徐々に寒くなってきてる。
「レナさん、大丈夫? 結構寒くなってきてるけど」
「大丈夫です、これでもエリートトレーナーなんですよ?」
「なら良いんだけど……寒かったら言ってね。メイコさんに」
「あたしにかいっ!」
おお、流石はメイコさん。突っ込みの冴えが違うね、冴えが。
と、
「ん? 何か聴こえなかった?」
「僕にも少し聴こえました。なんか、ヤバそうな奴の雄叫びが」
「―――みんな! 危ない!」
うわぁっ!? 前の方から巨大な炎の球が飛んできた!
間一髪でよける。っ、翼の先っぽのインクが焦げた。
「くっ、ブラック君……無事でいてくれ……!」
「N! 今のは完璧にこっちを狙ってた!? それとも、流れ弾!?」
「分からない! ただ、少なくとも次の攻撃が飛んでこないから流れ弾の可能性が高い!」
「オーケー! ならこのまま突っ込むわよ! 良いわねブール、レナ!」
「「了解!」」
雲を避け、飛行ポケモンたちを追っ払い、飛び続ける。
……前から飛んできた帽子をキャッチする。
「Nさん帽子落としましたよ!」
「ごめんブール君! ありがとう!」
「着くまで持ってますね!」
「そうしてもらえると助かる!」
風が強いから自然、声が大きくなる。
「そういやN! あんたゼクロムは出せないの!?」
「黒の理想は僕には合わない! 僕が呼び出せたのはレシラムだけだ!」
「あっそう! 使えないわね!」
「聞いといてその反応は酷くないかい!?」
「そんなポンコツだから帽子も落とすのよ!」
「ぐっ…………」
メイコさん、ほどほどにしてあげて。
「ブールさん、前!」
「ん? ってうわ!」
前方に火柱が立っている。この距離で蝋燭ほどの太さって……でかすぎる!?
「ギギギアル、もっとスピードを出せるかい? 僕の事は気にしなくていい!」
「ギギギッ!」
ギギギアルが更に加速する。Nさんはもはやしがみついている。
あーもう、速すぎる。だったらインクの色は白!
「地味に使える『でんこうせっか』!」
「サナ、もっと速く!」
「サァ~」
「ほらほら遅いわよあんたら! カップルか! はぜてしまえ!」
俺とレナさん相手にその方向でからかわないで欲しいなぁ!
「着いた! ハンサムさん、連れてきました!」
「おぉ! ……ペラップの色違いに、ドーブルに、サーナイトを連れたお嬢さん!」
「ドブ!?」
なんでハンサムさんがここに!?
「ったく……ブーーーール! 遅いんだよ来るのが!」
慌てて『へんしん』。
「それは僕じゃなくてNさんに言ってよブラックさん!」
「な、ドーブルが人の姿に!」
と、メイコさんがベレー帽の上に降り立つ。
むぅ、ベレー帽がずれちゃうじゃん。
「へいそこな茶色コートのイケメン。あたしらのお相手はあそこにいる……」
と、
「ホワイトなキュレムで良いのかしら? それともそれと奮闘してる色違いのタブンネ?」
「あのタブンネは俺の相棒だ騒音! 勝手に敵にしてんじゃねぇ!」
あの紫色のタブンネ、やべぇ。ホワイトキュレムと力で互角にバトルしてる。
あ、『りゅうのはどう』! タブンネに向かって放たれて……!?
「て、手で、吹き飛ばした!?」
「おい、流石にあいつでもそろそろ限界だ! ブール、メイコ、それとおまけのエリートトレーナー女!」
「レナです!」
「さっさとポケモン全部出せ! そんで一斉攻撃だ! そんくらいしないとあれは倒せない!」
了解、と言おうとして。
「ふははははは! 無理ですよあなた方にこのホワイトキュレムを倒すのは!」
「とうさん!」
ゲーチスだ。黒幕が高笑いしてる。様になってはいるけどさ。
その手にはいでんしのくさび。
「……はぁん、そこは一応原作通りなのね」
「すまないが自己紹介は後だ。あいつを倒してくれ、お願いする……!」
「ふざけてられるような状況じゃ無いわね。ブール、全員出しなさい」
「はい! ハッサンペティギィカレイカ!」
「レィシー、ツービー、出てきて!」
「アオーンッ!」
「ペァギュアアアアア」
「ギッ…………ガアアアアアアア!」
「ナットゥ……」
「サァッ!」
「ベアァァァァ!」
「ハッサンは遠距離技が無いから『ふるいたてる』を限界までやりなさい。んであたしとブールはトレーナー側。レナ、ツービーは」
「昨日『ふぶき』を覚えさせました」
「……効果はいまひとつだけど、この際気にしちゃ駄目ね。よし、総員準備!」
準備完了。後は撃つだけ!
「いいか?」
「「はい!」」
ブラックさん、お願いします!
「タブンネ、下がれ!」
「よしっ、ハッサン『ふるいたてる』フル、ペティは『どくどく』からの『ベノムショック』、ギィカは『うちおとす』、レイカは『ラスターカノン』!」
「サナは『シャドーボール』レィシーは『サイコカッター』、そしてツービーは『ふぶき』!」
「ペッ、ギュアアアアア!」
「ギッガア!」
「ナァ~ットゥ!」
「サァ~ッ!」
「レッラァッ!」
「ベアァァァァ!」
六体の攻撃がホワイトキュレムに着弾。
よしっ、流石に伝説のポケモンっていってもこれだけ喰らえば――――うっそでしょ。
「ふはははは! その程度の攻撃でホワイトキュレムが倒れると思っていたのですか!?」
よろめきさえしてない。ただ、パチッと目をつぶっただけ。
「~~~っ! もう一回よ! N、あんたもやりなさい!」
「分かった! トモダチ!」
ギギギアルも含めて、もう一度!
「みんな、お願い!」
「ペッ、ギュアアアアア!」
「ギッガア!」
「ナァ~ットゥ!」
「サァ~ッ!」
「レッラァッ!」
「ベアァァァァ!」
「ギギ……ギアッ」
全てがホワイトキュレムの顔面に当たった。
なのに、
「キュルキュルァァァァ!」
「ちっ、ぜんっぜん効いてないわね」
「で、でも猛毒になってる筈!」
「おい! くるぞ!」
『コールドフレア』
ホワイトキュレムの口から低温の炎が吐き出される。
「ハッサン『まもる』!」
ハッサンが飛び出て、緑色のシールドを展開。『コールドフレア』を受け止め……きれず吹き飛ばされ、俺が受け止める。
「うわっ、ハッサン!」
「グ、グルルルル……」
良かった、傷は無さそうだ。
「……こりゃあ、きっついわね」
「ホワイトキュレムは伝説のポケモン二体分の力を持つのですよ? 勝ち目はありません! たったの一欠片もね!」
……いつだったか聞いた神様の言葉を思い出す。
『伊達や見栄で伝説を名乗れるわけじゃあない』
でも、確か、こうも言ってた。
『ただ、転生者は伝説や幻と互角以上に戦える……やもしれん。『選ばれた』転生者のお主ならなおさらじゃ』
「……僕が、俺が行く!」
「ブール?」
「ハッサンペティギィカレイカはメイコさんの指示に従って! レナさん、これお願い!」
「え、わっとと」
モンスターボールを付けられるベルトを外し、レナさんに放り投げる。
『へんしん』を溶く。
「ドブラッ!」
大声を出して走り出す、駆け抜ける!
「馬鹿ねぇ…若さっていうか…ハッサンはブールの盾になりなさい!」
「バウッ!」
「ペティは『かそく』溜めてなさい。『どくどく』が効いてない時点であんたの役目は無いも同然だからね」
「ペァギュア……」
「ギィカ、レイカは撃ちまくりなさい! この際当たる当たらないは気にしないわ!」
「ギガアアアアアアア!」
「ナトゥッ!」
ホワイトキュレムが顔を上に向ける。その先、巨大な火の玉が生成される。
『クロスフレイム』か。
俺はドーブル。残念な事にドーブルの耐久は低い。当たれば一撃でやられる。
「だけど突っ切る!」
だって俺には
「サナ、『サイコキネシス』であれをずらして!」
「サァ~!」
仲間が居る!
『クロスフレイム』は軌道をずらされ、俺の真横にぶつかる。あっつ、熱い!
しかも衝撃が凄い、危うく転ぶところだった。
「バウバウッ!」
「ハッサン!」
ハッサンが追い付いてきた。ハッサン速いね。
「キュルキュルァ!」
ホワイトキュレムが吠える。何だ?
ゴゴゴゴゴゴゴ……
空から何か轟音が聴こえてくる。走りながらちらと上を見る……隕石が。『りゅうせいぐん』か!
だけどホワイトキュレムまでの距離はもう数メートル。
「ババウッ!」
「お願いハッサン!」
「ギィカ、レイカ、『うちおとす』に『ラスターカノン』よ!」
後ろからメイコさんの声が聞こえた。
ハッサンが俺を狙ってきた『りゅうせいぐん』を『まもる』ではじく。
他にもいくつもの『りゅうせいぐん』が不自然な軌道を見せる。
俺は走るだけ。みんながはねのけてくれるんだ!
やっと足元に着いた! インクの色は藍色ぉ!
「『ドラゴンテール』だぁ!」
飛び上がり、尻尾を両手で持ち、ホワイトキュレムに向けて、切り上げる!
「キュルァァァァ!?」
「まだまだぁ!」
塗れ! 塗れ! 塗れ塗れ塗れ塗れ塗れ塗れ! 藍色に染めるんだ!
「さっさとぉ……」
左足を振り上げ、尻尾を後ろに。
「倒れろ!」
左足を降り下ろしその勢いで尻尾を叩き付ける。
「キュルキュルァァァァ!」
よっし、少しは効いただろ!
「張り付いてりゃ攻撃出来ないでしょ!?」
ホワイトキュレムは確か炎、ドラゴンタイプだったはず。ならインクの色はそのままでいい!
『げきりん』で仕留めきれなかったら……いや待てよ?
「俺の特性はマイペース! 『げきりん』だぁ!」
怒れ! 倒せ! 消、え、ろ!
「ドブドブドブドブドブドブドブドブ!」
やったらめったらに殴り、蹴り、尻尾を叩きつけ、頭突き、噛みつき、体当たり、そして殴る。
「ちっ……カッタイなぁ!」
ホワイトキュレムが手で叩こうとしてくるけど、そんなのが当たるわけ無いだろ! むしろその手を踏んで上に、ホワイトキュレムの顔まで飛び上がる。
「ここなら……」
拳、まだいける。脚、大丈夫。尻尾、余裕しゃくしゃく。
「どうだ!」
『げきりん』
『げきりん』『げきりん』
『げきりん』『げきりん』『げきりん』
相手のターン? 知ったことか!
4336文字です。
絶対今までで一番長いですね。