「ふぅ~~」
指で目元をほぐす。
「うぅ目が痛い」
ふと外を見る。うわ、真っ暗。
「……ん、ブール。ポケッターの方は大丈夫なの?」
「おっけーです」
ポケッター確認。うん、もはやレナさんをいじるようなポケートは流れてない。
「そう。んじゃ、明日ついにジム戦ね」
「そうですね、メイコさん」
レナさんは既に寝てる。さっきまで起きてたけどメイコさんに無理矢理寝かされてた。
「それにしても……」
「ん? なによ」
「見慣れない言葉があったんですけど。腰振ったとかビッ「ブーーーッ!?」うわ、きたな」
てか久々に台詞かぶせられたね。
「どういう意味なんですか?」
「さ、さ、さぁね。流石のあたしでも知らないし教えられないわー」
「ふーん」
なんとなく貶してるのは分かるんだけど……んん?
ビッチビッチビチビチビチ……魚?
「成る程」
「はん?」
「ビッチはきっとコイキングみたいに能無しって意味だね。今更ながらムカムカしてきた」
「――――当たらないけどムカムカしていいって意味では当たってるわね」
「そうですか。って知ってるんじゃ無いですか」
「えーそーよー気付かなくて良いことだけ気付くんだから。たく、良いから寝なさい」
「はーい」
それじゃあおやすみ!
~○~○~○~○~○~
おはよう、皆! 少し寝坊したブールだよ。今はセッカジムの前に居るんだけど……
「ジムリーダーが居ないぃ?」
和風な着物を着た男の人が立ち塞がってる。
「はい。ハチクさんは今朝、映画の撮影のためにポケウッドに行きました」
「ふぅん。なら仕方無いかな」
「そうね。仕事ならどうしようも無いわね」
「なら、ポケセンで調整しましょうブールさん」
そういってポケセンに帰ろうとして
「お待ちください」
「はい?」
「ブールさん宛に手紙をたまわっております。こちらをどうぞ」
「うん」
渡されたのは丁寧に封をされた……橋の描かれた手紙。
~○~○~○~○~○~
ピロンッ
『ブリッジメールCです。描かれているのはシリンダーブリッジ。八番道路と九番道路をまたぐ橋ですね』
ふぅん。イッシュ地方には橋が沢山あるから覚えきれないんですよね。
「らしいですよ」
「へぇ。んで、ブール中身は?」
「………………」
「ブーール?」
ブールさんの様子がおかしいです。顔が真っ青に……あ、青!?
「ブールさん、肌、肌の色が!?」
「ブール、何が書いてあったの?」
「……ハチクさん、バトル拒否、だって」
……え?
「ちょ、わけわからんわ貸しなさい!」
メイコさんがブールさんから手紙をひったくる。
バッと床に広げてくれたので私も横から覗き見る。
ふむふむ。
「………………ねぇ、ブール」
「なぁんでぇすかぁ」
「うざ。あんたが言ったのはこの文のことよね」
メイコさんが一文を指し示す。
「うん、『バトルをするのはよそうと思う』って」
「成る程ねぇ。たく、面倒な事になるわね」
手紙にはこう書かれていた。
『(前略)ポケッターでの荒れよう、まさに愚者のごとし。テレビに映る者として余りにも目に当てられぬ。故に某はバトルをするのはよそうと思う。他のジムにてバッチを受け取るべし』
「そんな、ブールさんは私の為に徹夜してまで頑張ってくれたのに……」
「しゃーないわね。ここは負け惜しみでも吐き捨てて前向いて行くしか無いわね」
「それ、前向きですか?」
「さて。ってことは分かる中で残るジムはソウリュウシティ、セイガイハシティ、タチワキシティの三つね」
あれ? ソウリュウシティのシャガさんは分かるけど、セイガイハにジムリーダーなんて居たかな。それにタチワキシティ? そもそも聞いたことが無い地名だ。
「それじゃ、まずソウリュウシティ目指すわ。そこでシャガなりアイリスなりを倒してセイガイハシティ直行……いや待って。確かタチワキシティって」
「海の向こうだったはずだよ」
ピロンッ
『タチワキは立ち上がる水蒸気。ちょうどポケウッドの南に位置する町ですね。行くならばヒウンシティから船が出ています』
あっちの方だったか。これはエリートトレーナーの名を返上しなきゃいけないかなぁ……。
「どうしようか。北に先に行くか、それともヒウンシティまで戻るのが先か……」
「ふぅむ……」
「な、なら!」
つい、言葉をかけてた。だって話に入れてなかったし、それに――
「南から行きましょう!」
「ほほう? その心は?」
「チャンピオンリーグがあるのはソウリュウシティの近くです。順番的にタチワキシティから行けばチャンピオンリーグが始まるときに間に合いやすいと思います」
「……そう、ね。そうしましょう。ブールも良いわね?」
「もちろん!」
ブールさんが笑顔で言う。
そう、この顔をもっと長く見ていたいから、だからずるいかも知れないけど、少し長いルートを提案した。
「んじゃ、まだ昼前だし外で色々やるわよ。ブールはパワー系一式ときょうせいギプス着けてランニング、その間にあたしとレナでポケモンたちのトレーニング」
「えぇ!?」
「ブールに限り異論は認めないわ。んで、明日はヒウンシティに向けて出発。ところで、空飛ぶ? それとも歩き?」
「歩きじゃない?」
「飛んだ方が速いですよ」
「じゃあ飛ぶわ。ブールとあたしは自力で。レナは…………乗る?」
乗る? ブールさんか、メイコさんに?
そ、そんな畏れ多い。
「サナの『サイコキネシス』で行きます。行ける? サナ」
腰のボールがカタリと揺れる。うん、大丈夫らしい。
「そんじゃあ――――」
メイコさんがしめようとすると、部屋の扉がドンドンと叩かれる。
「ブール君! メイコちゃん! 助けてほしいんだ! 開けてくれ!」
聞いたことないけど、若い男の声だ。しかも凄く切羽詰まった声。
「な、まさか……」
「レナ! 速く開けて!」
「は、はい!」
私が一番近くに居たから扉を開ける。
鍵を開けた瞬間勢いよく扉が開かれ、全身に強く打ち付けられて吹っ飛ぶ。い、痛い……!
「レナさん!?」
「あ、す、すまない。急いでたから……怪我はないかい?」
「大丈夫、です」
入ってきたのは、背が高く帽子をかぶった男の人。帽子から緑色の髪の毛が覗いている。
「お久し振りねお坊っちゃん。んで、何を助けて欲しいの? レシラム?」
「…………その、メイコちゃん。横から核心を突かれると結構動揺するんだけど」
「そう? んじゃ、予定変更よブール」
「当然! Nさん、僕は全力で手伝うよ!」
「ありがとう、本当にありがとう!」
えっと……話に着いていけないのですが……。
「レナ、Nについては空飛んでる間に教えるわ。今すぐ出発の準備!」
「はい!」
メイコさんが有無を言わせない。
でも、人助けなら結局行ったんだろうな。なにより、ブールさんがやる気なんだから。
2666文字です。
書きたいこと書いてたらこんな長さになってしまった。