迫り来る
無数のポケモン
蹴散らして
「ハッサン、『とっしん』!」
「バゥアッ!」
「クシュッ!?」
よしっ。これで……十五体目!
「私も終わりました!」
レナさんもモグリュー倒したみたいだね。
「ほら、どんどん行くわよー。あまいみつ掃射!」
メイコさんがどこかからあまいみつを取り出し、洞窟に撒き散らす。豪勢にもビンごと放り投げて割っていっている。
「ん、あれは……フリージオ! ハッサン、『とっしん』!」
「サナ、『シャドーボール』!」
ハッサンがフリージオに『とっしん』をかます。
同時、サナが投げた『シャドーボール』がハッサンを巻き込みつつフリージオに当たる。
「ハッサン! ちょ、レナさん!?」
「『シャドーボール』はゴーストタイプだから大丈夫です! ほら」
いや、まあ確かにハッサンは無傷だけどさ。
「これ、あくまでハッサンの進化の為の特訓なんだけど」
「強くなるって言いましたもん」
「むぅ…………」
そうだけど、そうだけどさ。
「お喋りはおしまいよ! あまいみつ!」
メイコさんがまたもあまいみつを撒き散らす。
多分、メイコさんなりに気まずくならないようにしてくれてるんだろうなぁ。きついけど。
現れたのはドテッコツ。……が、五体。
「ハッサン、『とっておき』!」
「サナ、『サイコキネシス』!」
ハッサンとサナが一体ずつ倒す。残りの三体がそれぞれ『きあいパンチ』『ビルドアップ』『いわおとし』を放ってくる。
「ハッサン、避けて! 真ん中に『とっしん』!」
「サナ、耐えて『サイコキネシス』!」
『きあいパンチ』は見事に空振り、『いわおとし』は外れる。
『気合いパンチ』を外したドテッコツは隙だらけ。『ふるいたてる』を六回したハッサンにぶつかられ、吹き飛ぶ。
『ビルドアップ』したドテッコツは『サイコキネシス』で壁に叩き付けられて動かなくなる。
「ド、ドツゥ……!?」
「サアァァ~」
「バウッ!」
「ド、ドドッ!」
残ったドテッコツはきびすを返して逃げようとする。
が、
「悪いわね、経験値になってもらうわよ」
「ドッ!?」
メイコさんに行く手を塞がれる。
「ハッサン!」
「サナ!」
今回は動かなくても攻撃できるサナが仕留めた。
「さて、んん……これだっけ? 確か赤いやつだった気がするんだけど……あぁ、これこれ」
メイコさんが放ってきたのはヒメリのみ。
ハッサンはガツガツ食べる。
「サナはこっちで良いでしょ? レナ、ほい」
「わっ、とっ、とっ!」
レナさんには……ピーピーマックスか。そりゃ、そっちの方が手軽だよね。
「あんたらも少し休みなさい。ほら、メイコさんのおいしいみずよ」
「「ありがとうございます、メイコさん」」
むぅ……同じことを同時に言うとなんか恥ずかしく感じる。ましてや直前にあんなことあったし……
「……いや言うまい。既に付き合い始めたばっかのカップルのように見えるだなんて言えるわけないじゃない」
「ばっちり聞こえてるんですけど」
「あらやだ、じゃあブールはこれつけなさい」
「えぇ!?」
投げ付けられたのはきょうせいギプス。
メイコさんの命令でレナさんが手早く装着させてくれ……まてまてまて。
「いやいや、冗談ですよね?」
「あたしが一度でも冗談を言ったことがあるかしら?」
「一回どころか百回越えそうな勢いだよ!」
「あーらあらあらあら、そんなに言われたら仕方無いわねぇ。パワー系一式をプレゼントするわ」
きょうせいギプスの上に更にパワーウエイトパワーリストパワーベルトォパワーレンズゥパワーバンドォパワーアンクルゥゥ、うあぁあぁぁ!?
「お、おぉ、重い、重いよ見辛いよ頭が絞められてお腹も絞められて動きがぁ!」
「一気に成長ね。やったじゃない」
「バトル出来ないですよこれじゃ!」
と、クスクスと笑う声が。
「ちょっ、レナさん、これ、笑うとこじゃない」
「す、すみません……クス」
「ほらほら、レナ。今こそシャッターチャンスってやつじゃない?」
「確かに」
「ちょっとぉーー!?」
ハッサン、プリーズヘルプミー!
「クウゥゥン……」
ハッサンじゃ無理か、無理なのか。
パシャ
「良いわね、ナイスショット!」
「そうですか? そ、それじゃあもうちょっと……」パシャパシャ
…………あぁ、泣きたい。ドブドブ。
ズン……
――――ん、何だ?
「メイコさん、この音は?」
「んー?」
ズン……
「あ、これは大物が釣れたわね。ブール」
「サナ、準備」
「サアァァ」
「うっそでしょ……ハッサン『ふるいたてる』、取り合えず三回」
「バッフ! バゥッ!」
ズン……
「来たわ。凄くでかいわね」
「ベアァァァァアァァァアァァ!」
な、こ、こいつ!
「「 ツンベアー! 」」
あの異常に成長してるツンベアーだ! くっ、いつの間にかこいつが立って歩けるぐらい広い道にまで出てたのか!
「ハッサン、行ける?」
「バウッ!」
「サナ、やるよ!」
「サアァァ~」
「ふむ、偶然とはいえブールが逃げられないんだから全力で立ち向かうしかないわけね ――――ま、んなのまったく必要無かったけど」
当然。あの時はメイコさんもハッサンも居なかったうえに俺は動けなくてレナさんが焦ってたからバトルしなかっただけだ。
「ハッサン、『とっしん』だ!」
「『シャドーボール』で援護!」
「ベアブゥゥ!」
ツンベアーが天上に向かって氷の息を吐く。高い位置にある天上が凍り、つららが。『つららおとし』か。
「上から降ってくるつららに気を付けて!」
「バウッ!」
「サアァァァ」
ハッサンがツンベアーにぶつかる。そしてそこに『シャドーボール』が。
だが、びくともしてない。右手が振り上げられる。
「っ、ハッサン下がって!」
「サナ、もう一回!」
ハッサンがバックステップで退避。ツンベアーの『きりさく』は宙を切る。その隙を『シャドーボール』が襲うが、偶然上から落ちてきたつららがツンベアーの身代わりになる。
「サナ、『ねんりき』でつららをぶつけて!」
「ハッサンは『ふるいたてる』!」
「サアァァァ、サアッ!」
「アオーンッ!」
「ヅッベアァァ!」
駄目だ、『アクアジェット』でつららを弾きつつ突撃してくる。
「ハッサン前に出て『まもる』!」
「サナ、『でんげきは』用意!」
「バッウゥッ!」
「サアァァァ……」
ハッサンが緑のシールドでツンベアーを受け止める。その間にサナが電撃を溜める。
「ハッサン、『とっしん』で通り抜けて!」
「サナ!」
よし、ハッサンがツンベアーの股下を潜り抜けた。
ツンベアーが後ろを向こうとした瞬間にサナの『でんげきは』が放たれる。
「ベアァ!?」
「ハッサン! 『とっておき』だ!」
「サナ、『サイコキネシス』準備!」
ハッサンがツンベアーの上、天上すれすれに現れる。
そしてツンベアーの頭を地面にまで叩き付ける。
「よし! ハッサン下がって!」
「バウッ」
ハッサンの『とっておき』が決まったんだ、倒したと思いたい。……いや、ここは気を抜く時じゃない。
「ハッサン今のうちに『ふるいたてる』二回」
「バフウッ、バオォォオォォンッ!」
ハッサンが限界まで赤くなる。
「ベ…ア……!」
「やっぱりまだ立ち上がるのか……ハッサン、」「サナ!」
俺がハッサンに『とっしん』と言うより先にサナが『サイコキネシス』でツンベアーの動きを縛る。
「モンスターボール!」
「え」
レナさんがツンベアーに向かってモンスターボールを投げ付ける。
モンスターボールはツンベアーの頭に当たり、ツンベアーを中に入れる。
「あらあら?」
ウィンウィン。ウィンウィン。ウィンウィン。 ポーン。
「……」
「…………レナさん?」
「――――はっ! あ、あれ? 捕まえ、られ、たんですか?」
「ぽいわね。おめでと」
……なんか、なんだろう、腑に落ちない。
ハッサン。ねぇハッサン。なんか体が重くて動けないんだ。なんでかな。拍子抜けしたからかな。
「レナさんおめでとう。本当は拍手したいんだけど、なんか体が重くて」
「えっと……ありがとうございます。体が重いのはそのパワー系一式のせいだと思います、よ?」
「……そういえば」
誰か、これ外してよ。自分じゃ脱げないんだ、これ。
「レナ、駄目よ? これはブールの特訓なんだから」
「あ、はい」
「……まじ? 俺、なんかさ、疲れてさ、寝たいん、だけど」
「そーいや今何時よ」
「えっと……うわ、夜の十一時です」
「あら。んじゃ寝ていいわよ。いやー、洞窟の中だと時間を忘れちゃうわー」
「……立ったまま?」
「無論、問答無用」
……………………そうですか。寝れるのかな、この状態。…………はす…………あもら…………Zzz……
3411文字です。
長くなってますね。流石戦闘回。
しっかし、何時になったらハッサンは進化してネジ山を抜けるんでしょうか。