どうも、崖崩れでメイコさん、ハッサンとはぐれたブールです。
幸いなのはモンスターボールを一つも無くしてないことと、レナさんが一緒に居ることだね。
ただ、ね。
「あてて。」
「ブールさんっ!」
「大丈夫だよ、足が挟まっただけだし……イテテ。」
はぐれた時に足を負傷した。うーん、ついてない。死んでないだけましだけどさ。
「これじゃあ動けそうにないし、メイコさんが見付けてくれるまで待った方が良いね。」
「そうですね……メイコさんは無事でしょうか?」
「メイコさんが、怪我で動けない?」
…………うーん。
「無いね。」
「無いですね。」
二人同時に呟く。うん、やっぱりそうだよね。
「……暇だね。」
「そんなこと言ってると怖いポケモンが出てきますよ?」
苦笑しながら注意してくるレナさん。
「噂をすれば……ってやつだね。」
「はい。」
と、何かの唸り声が何処からか聴こえてくる。
「……ハッサン? にしては……声が低いような……」
「ぶ、ぶ、ブールさん、あれ、あれ!」
「何、レナさ……ドブ!?」
「ぐるうぅっうぅぅ」
「「ツンベアーだっ!?」」
まずい、まずいよ? 俺は逃げられないから倒すしか無いんだけど、何このツンベアー!
「お、大きい……」
「ねぇ。ツンベアーってこんな大きさなの?」
「い、いえ、これは大きすぎます……!」
このツンベアー、明らかに大きすぎる。四つん這いなのに天井を背中が削ってる。――それなりに長身のレナさんがジャンプしても届かない天井に、だ。
「戦う?」
「に、に、逃げたいです。」
「なら、逃げなきゃ……イテテ。」
「ブールさん!」
う……足を負傷したのを忘れてた……。
「大丈夫、レナさんは逃げて。」
ここはレイカを出して時間を稼げば良い。よし。
「駄目です!」
モンスターボールを手に取るより速く、レナさんが俺を抱き上げて走り出す。
「ベアァァァアァァァ!」
当然、逃げた獲物を追い掛けるツンベアー。
「レナさん良いから! このままだと追い付かれるし!」
「キャアーーーーーー!」
駄目だ、聞こえてない!?
ツンベアーはけっこうなスピードで追い掛けてくる……ただ、この洞窟が狭いせいかなかなか全速力を出せないらしく追い付いてこない。
これ、意外と逃げ切れるかな?
「はっ、はっ、はぁっ!」
あ、無理だ。レナさんが力尽きるのが先だこれ。俺が荷物だから。
…………でも、レナさんは俺を置いていかないだろうな。……となると。
「レナさんそこを右!」
出来るのはナビゲーションしかない。幸いなのかどうなのか、ツンベアーは大きすぎる。
未だに攻撃してこないところを見ると走りながらの攻撃は出来ないみたいだし、より狭い通路に飛び込めば逃げ切れる……筈。
「はっ、はっ、はっ、はっ!」
「…………っ、そこは左!」
少しでも、狭い通路に。
「頑張ってレナさん!」
「はっはあっ、はい!」
そして、数分たったのか、もしくは数秒か。
「ん! そこの穴に飛び込んで、右!」
「っ!」
人が一人入れるかどうかの穴に、飛び込む。
「ベアァァアァァ!」
ドシン、ドシンとツンベアーが体当たりしてくるけど、中に入ってはこれない。
「はっ、はっ、はあっんく、はぁっ!」
「お疲れ様、レナさん。なんとか逃げ切れたみたいだよ」
「そっ、ですっ、かっ」
「あ、うん、先に息を整えて良いから」
息を整えるレナさんを横目に、ツンベアーの様子を確認する。
…………諦めていないらしく、まだ穴の前でこっちが出てくるのを待っている。
「ふぅー。ブールさん、大丈夫ですか?」
「レナさんよりは大丈夫だよ、多分」
ポケモンの治癒能力をなめないで欲しいね。なんちゃって。
立ち上がる。少し痛みはあるけど、まぁ、歩けない程では無いね。走るのは……ちょっときついかな。
「ほらね」
「良かった……」
レナさんが胸を撫で下ろす。
「あ、この穴奥に続いてるみたいだけど……もう少し休む?」
「い、いえ、大丈夫です!」
「じゃあ、行こう」
うーん、メイコさんみたいにビシッとは言えないんだよね。
ともかく奥へ向かう。
俺は身長は低いからまだ立って歩けるけど、レナさんは少しかがまないと歩けないみたいだね。
「…………」
「…………」
無言で歩くこと少し。三叉路に出た。
メイコさんが居ないとお喋りが無くなって少し寂しいね。速く合流したいよ。
「さて、ど・っ・ち・に・し・よ・う・か・な」
左の通路から指差していく。
「ア・ル・セ・ウ・ス・の・い・う・と・お・り」
右かぁ。メイコさんが居たら『じゃあ左にしましょう』って言うんだろうなぁ。
「…………あの」
「ん、なに? レナさん」
「その……えぇと……」
「?」
なんだろう、顔を真っ赤にして。と、こっちを睨んでくる。あんまり怖くはない。
……ただ、ふざけた答えは許されない雰囲気だ。
レナさんのこの顔は何処かで見た。確か……そうだ。鏡で見た、飛び降りる前の俺の顔にそっくりなんだ。
そう、何かを決心した顔だ。
「その、こんなこと、ここで言うことじゃないかもしれないですけど、ようやく二人きりになれて、今しかないって、その、迷惑だったら断ってくれてもいいんですけど」
「うん」
待つ。何が言いたいのか、薄ぼんやりも見えてこないけど、待つ。
「……ブールさんの事が好きです」
「…え?」
「ブールさんの事が好きです。……付き合って、くれますか?」
…………………………はい? え、告白? 告白?え、はい? 予想外なだけに余計混乱する。
「駄目、ですか?」
~○~○~○~○~○~
「――それでなんとか、返答は待ってくれ、とだけ言ったと」
「……はい」
「うん、頭を冷やす時間を設けたのはナイスよ、ブール」
「……なんで、俺のことを?」
「言葉使い崩れてるわよ。……てか、気付いて無かったの?」
「……うん」
「あのねぇ…いや、いいわ。そうね、元々はファンとしての『好き』だったんでしょうけど、ひょんな事から一緒に行動することになったでしょ?」
「うん」
「一緒に行動する内に本気の『好き』になっちゃったんでしょうね。そうでなくても、あの子ファン一号でしょ?」
「……そういえば」
「さて、これでホワイは分かったわね? 5w1h……
俺は…………どうしよう。
「さぁ、そろそろ待ちくたびれる頃合いよ。行きなさい。どんな結果になっても全力でフォローしたげるわ」
レナさんの事は………………嫌いじゃない。
「っ! ブール、さん……」
………………ただ。
「ゴメン」
「っ…………」
「レナさんの事は嫌いじゃないよ。むしろ好きの方に入る」
「…………」
「だけど、僕は……俺はポケモンだし、レナさんは人間だし」
「それは――」
「でもそれは、本当はそんなに関係ないね。だって多分、俺は、レナさんとずっと一緒には居られないから。そんな気がするから」
「………………」
「だから、付き合えない。ゴメン」
「…………そう、です、か。そうですよね。ブールさんは、このまま戦っていって、チャンピオンになっで、そじで、がえんるでずもんね」
「……」
途中からは涙声で、でも、レナさんは、気丈にも、泣いてるけど、笑う。
そして、両手で涙を拭い、続ける。
「…………分かりました。……なら。ブールさんがチャンピオンになって、帰るなら。新しい旅に出るなら。私も、もっと強くなって、隣に立てるようになります。…………ブールさんに、置いていかれないぐらい、強く強く、なります」
「…………うん」
「……待っててください、絶対に辿り着きます」
「うん」
「辿り着いて、戦って。そして、その時に、また……。……その時まで……頑張ります」
「うん。そうなったら……うん。でも、その時に勝つのは僕だけどね」
「……私です。絶対に、勝ちます。勝って、改めて、告白します。……だから、負けないでください」
「勿論」
3192文字です。
遅くなりました。
恋愛描写とかいう鬼門。書ききるのにここまで時間がかかるとは。
おかげでブールの性格が変わりかけてる気がする……。
次回、恋愛フラグ~こんなことなら……あの時……~(大嘘)